インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
さっき、今度こそ俺達の欧州の日々は終わろうとしていると言ったな。アレは嘘だ。
サイレント・ゼフィルスの居るはずの爆炎の中から聞こえてくる断末魔が笑い声に変わる、奴はまだ戦いを続ける気らしい。
爆炎の中から六本のレーザーが飛んでくる、セシリアさん、ラウラ、有希子さんはそのレーザーを二本ずつ受け態勢を崩した。
その後爆炎が晴れる、そこには五体満足のサイレント・ゼフィルスが立っていた。
「やっとファースト・シフトが終わったか、随分と時間が掛かる……」
なんと、奴はファーストシフトも終わらないままに戦闘をしていたとは。
そんな状態であの三人相手にそこそこ戦えていたのだから奴の本当の実力とは如何なるものだろうか?
その期待というか危惧に、サイレント・ゼフィルスすぐさま答える。やられっぱなしだったお返しと言わんばかりに三人を圧倒する。
無謀ともいえるテロリストによるIS奪取計画はコイツの強さによって完遂されようとしている、これでは欧州全体の面汚しだ。その時、オープンチャンネルで通信が入る。
「黒ウサギ隊、クラリッサ・ハルフォーフ。これより援護に向かいます!」
ドイツのカタパルトからクラリッサが飛び出す、更に今度は別の通信が開く。
「MIE開発部のシャルロット・デュノアです。僕も援護に向かいます!」
トイレに消えていたシャルロットも戦闘に参加しようとしている、正直今のシャルロットに戦闘を行わせるのはかなり不安だ。
「シャルロット、無茶をするな! 今のお前がどれほど戦えるって言うんだ!?」
「紀春……でも僕は」
「お前は代表候補生でも軍人でもないんだ、この戦闘に参加しなくちゃいけない義務だってない」
「うん、そうだね。でも僕は行くよ、セシリアやラウラは大切な仲間なんだ。代表候補生とか軍人とか、そんなの関係ないんだ」
「関係あるに決まってんだろ!」
「ゴメン紀春……僕、行くね」
通信が切断された。
モニターのカメラがカタパルトを映し出している、そこからシャルロットのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡが飛び出していく様を俺はただ見ていることしか出来なかった。
アリーナ内部では戦闘が再開される、しかし二人の増援がやってきても戦闘の優劣はまるで変わらない。奴は化け物か。
考えろ、この状況を打開するために俺が出来ることは何だ?
高速回転する俺のオリ主頭脳はある答えを提示する、まだ俺に出来ることはあるらしい。
携帯電話の着信履歴からとある人の番号をコールする、電話の相手はすぐに電話に出た。
「状況は悪いようね」
「ああ、増援を頼めないか?」
「……無理ね」
「何でだよ!? こんな時のためにアンタが居るんじゃないのか!?」
「そもそも、今私ISをもって来てないの」
「はぁ!? どういうことだよ!?」
「ISを他国に持ち込むって事がどれだけ大変なことか知ってて聞くの? 日本やこの選考会は特例中の特例なのよ」
ISとは世界最強の兵器である。それを自国に易々と持ち込ませるわけにはいかないよう、他国のISの持込には厳重な規制がかけられている。電話の相手、ロシア国家代表のたっちゃんですらそれを認めさせることは出来ないようだ。
むしろ国家代表だから認められないのだろう。ISの能力はそのパイロットによって天と地ほどの差が出来る、強いパイロットであればあるほど自由に自分の力を振るうことは出来ないのだ。
現在たった一機のISが今の混乱を引き起こしている、それをさせないためのIS持込の規制なのだが今回はそれが裏目に出ている。そんな感じだ。
「……そうか、ゴメン……」
「悪いわね、力になれなくて」
「いや、悪いのは俺のほうだ。また怒鳴ったりしてすまない」
「いえ、いいのよ」
「じゃあ、切るね」
俺は通話終了のボタンを押した。
俺が電話している間にも戦況は悪くなる一方で、サイレント・ゼフィルスはまるで遊んででもいるかのように五人を蹂躙している。
見ていることしか出来ない俺のイライラも最高潮に達していた。
「畜生っ!」
持っていたスマホを床に叩きつける、スマホの画面は見事に砕け散りどこかへと飛んでいった。
そんな様子を見ていた成美さんと不動さんが驚くのだが、せっちゃんは俺のイライラなんて意に介さないように言葉を発する。
「刻印よ、冷静になりたまえ。女神が怖がっているじゃないか」
「アンタはこんな状況で随分冷静なようですね」
「あの野蛮人の目的はイギリスのISの奪取なのだろう? もう取られたも同然なのだからおとなしく渡してやればいいものを……」
「そんな事が出来るわけないだろう!?」
そんなやり取りをしながらもせっちゃんはノートパソコンのキーボードを打ち続ける、この人はこんな状況に何も感じていないのだろうか。そんな態度が俺を益々イライラさせる。
「アンタさ、いまの状況を解ってるのか!?」
「あー、うるさい。どうせ君には何も出来ないんだから黙っていたまえ、気が散る」
「せっちゃん! 言い過ぎでしょ、謝りなさい」
せっちゃんの態度に成美さんが怒った、怒られたせっちゃんはばつが悪そうな顔をする。
「すみませんでした……」
「うん、それでいいの。それに藤木君が何も出来ないってわけじゃないでしょ?」
「いや、しかしアレはまるで役に立たないぞ……」
「何かあるんですか?」
「ええ、一応ね」
成美さんがにやりと笑う、一体何があると言うのだろう?
俺は成美さんに連れられカタパルトへと移動した。
「今はこれしかないけど、何も無いよりもマシだとは思うよ」
「これは……」
俺の目の前には赤いIS、有希子さんが装着しているものと同じものが目の前にあった。
「ヴァーミリオン……」
「メガフロートで君がテストしたものと同じ機体、いわゆる二号機だね。予備機体として持ってきたから武装なんて何もついてない、それでもこれに乗る?」
「ええ、ただ見ているだけなんて嫌なんです」
シャルロットが参戦しようとした時、俺はシャルロットを叱った。無茶だと思ったからだ。
しかし、それだけではない。俺はあの時シャルロットに嫉妬していたのだ。
あの時、あの戦場に飛び出していけるだけの力を持ったシャルロットが羨ましかった。そして何の力もない自分が情けなかった。
何故自分は戦うことが出来ないのだろう? 俺は特別じゃなかったのか?
そんな思いが渦巻き、それでもなんとか自分の力を示そうとたっちゃんにすがり付いてみたがあっさり断られ物に当たりせっちゃんに怒鳴り散らした。
俺は凄く格好悪かった。
「そう、今からISスーツに着替えてる時間なんてないからそのまま行ってもらうけどそれで構わないわね?」
「はい、行って来ます」
靴を脱ぎ捨て、ヴァーミリオンに背中を預ける。そして、ヴァーミリオンが俺の体に装着されていった。
「…………」
無言でカタパルトに搭乗し、無駄だと思いながら武装をチェックする。
成美さんの言ったとおり武装は全く付いていない。しかし構わない、武装ならちゃんとある。
そう、ヴァーミリオンにはこんなにも立派な手と足が付いてるじゃないか。これで充分だ。
そうだ、ちょっとした策を思いついた。俺はとある人に通信を繋げる。
「おい、生きてるか?」
俺は通信の相手と二、三言言葉を交わす。
「じゃ、そういう事でヨロシクね」
通信を切り、赤い、いや朱い背中の羽を広げ深呼吸する。
「藤木紀春、ヴァーミリオン二号機。……行きます」
その言葉と共に背中のスラスターに火を灯す、俺は全速力でカタパルトから飛び出した。
状況は絶望的だった、敵性ISであるサイレント・ゼフィルスがここまで強いとは予想だにしなかった。
いや、強いのはISだけじゃない。それに乗っているパイロットの技量は私達のそれを圧倒的に上回っていたのだ。
自慢ではないが現在、サイレント・ゼフィルスと戦っている私達五人は世界でもトップクラスの腕前を持つ猛者のはずだ。
代表候補生である私とセシリア、それに劣らない実力を持つシャルロットに専用機を持つにふさわしい腕前であるクラリッサ。兄の師である野村殿に至っては私達よりも頭一つ抜けている強さを持っている。
しかし、それでもこのテロリストに敵わない。しかも奴はファースト・シフトを終えたばかり、その現実が私を更に絶望させる。
しかし、退くことは出来ない。私は軍人だ、そしてここは私達の国だ。
アリーナの避難はまだ終わっていない、せめて足止めだけでもしないと多くの関係者に被害が及ぶ。
それだけはさせるわけにはいかない、私の命に代えてもだ。
そんな思いとは裏腹に、私の体は動かない。相次ぐダメージの連続で体が言う事を聞かないのだ。
倒れている私の頭をテロリストが踏みつけた、悔しさで涙が出そうだ。
「専用機持ちの軍人なら少しは骨があると思ったのだがな……所詮はガキか」
ガキはお前も同じだろうと心の中で反論する、顔はバイザーで隠れて見えないがこのテロリストの歳は私と変わらないように思える。
その時だった、耳が壊れるかと思うくらいの凄まじい激突音と共に私の頭にあった重みが取り払われる。
ハイパーセンサーからの視界を確認すると、赤い羽根を生やしたISが私に背を向けていた。
あれは多分ヴァーミリオンだろう、野村殿も動けなかったはずなのだが復活することが出来たのだろうか?
「俺の妹に手を出そうなんていい度胸してるじゃねーか、覚悟は出来てるんだろうな?」
私の推測は違っていた。私を助けてくれたのは世界で最も私を愛してくれている人、そして嫁に並んで世界で最も私が好きな男、藤木紀春。私の兄だった。
「ラウラ、もう大丈夫だ。お前は俺が守る」
ああ、もしも私に嫁が居なかったら今の言葉で惚れているところだったな。そんな事を思いながら私の意識は途絶えていった。
「さあ、ショータイムだ。地獄を見せてやる」
先に戦った五人は全員が満身創痍でまともに戦えるのは俺しか居ない、相手はこの惨状を引き起こしたテロリスト。
普通にやっても勝ち目は無い、しかし俺には秘策がある。だが策謀の種が芽を結ぶまでまだ少々の時間が掛かる、今の俺がすることは時間稼ぎだ。
サイレント・ゼフィルスが立ち上がる、俺はそれを仁王立ちで見つめていた。
「懲りもせずまた増援か」
今まで奴の戦いを見ていたが、あいつは射撃戦を主に用いている。接近戦が弱いって事ではないのだが、そちらの方が活路を見出せそうな気がする。
俺は、サイレント・ゼフィルスに突撃を敢行する。
「おぅるあっ!」
渾身の右ストレート、そしてそこからのコンビネーションを連続して放つが奴は俺の動きを見透かしているかのように華麗に回避を続ける。
「どうした? 武器を持っていないのか?」
「ご名答っ!」
その言葉を発した瞬間、俺の右ストーレートにカウンターの喧嘩キックを合わせられ俺はサイレント・ゼフィルスと距離を開けてしまう。
そこに殺到するビットからのレーザーの雨、回避しようとランダムな機動で対応するが奴の射撃は正確でその多くをその身に受ける。
しかも、セシリアさんと違ってビットを動かしている時ですら奴は動けるようでライフルの射撃も容赦なく襲い掛かる。
早速だが非常にマズイ、射撃戦の間合いを取られていては俺はただの的にしかならない。
一か八かの賭けをしなくてはならないようだ。
襲い掛かるレーザーの雨に果敢に特攻し近距離戦の間合いに飛び出す。
まさか自分からレーザーの雨に飛び掛ってくると思っていなかったのだろうか、相手は一瞬驚いたように身構えるが俺が武器を持ってないことを知っているので冷静にガードの構えを見せる。
しかし、そこが盲点だ。俺はサイレント・ゼフィルスを真正面から抱きかかえ、フロントスープレックスで投げ飛ばす。
こんな時にプロレス技を仕掛けられるとは思ってもいなかったのだろう、サイレント・ゼフィルスは受身も取れず頭部から地面に激突する。
膝をつき起き上がるサイレント・ゼフィルス、そんな絶好の機会を見逃す俺ではない。
サイレント・ゼフィルスに俺は全速力で駆け寄り、シャイニングウィザードを決める。
「イーーーヤァッ」
そのまま俺は受身を取り片膝でプロレスLOVEのポーズをバッチリ決めた。
おっといかん、流石にこれをやるのはふざけ過ぎだ。
慌てて振り返ると、そこにはまたしてもレーザーの雨。いや、雨なんてもんじゃない。暴風雨が吹き荒れていた。
「グワーッ」
その暴風雨に一人晒された俺は吹き飛ばされる。本格的にヤバイ、シールドエネルギーが洒落にならんことになっているし、どこか頭をぶつけたのだろうか額から血を吹き出し左目の視界が血で塞がれてしまった。
「くっ、やべぇな……」
血まみれで尻餅をついてる俺に仁王立ちで向かい合うサイレント・ゼフィルス。俺の登場時と立場が逆転していた。
「よくもこんなにふざけていられるものだ。しかし、一対六で多少は梃子摺ると思っていたのだがな。情けない奴等だ」
その言葉を聞いた時、俺の策が嵌ったのを確信した。しかし、策の実行にはまだ時間が掛かる。
俺の華麗なトークスキルでこの場を持たせないといけないようだ。
「はぁ、はぁ……」
「どうした、もう終わりか?」
「なぁ、あんたさ……」
「……」
「ゴーオンジャーって知ってるか?」
「はぁ?」
この場には明らかにそぐわない話題にテロリストも面食らっているようだ、命のやり取りをしている最中に特撮ヒーローの話題なんてものを振られているなんてありえないもんね。
「知るか、これで終わりにさせてもらうぞ」
そう言って、ライフルを構える。しかし俺はそんな事を気にも留めないように言葉を続ける。
「まぁ、聞けよ。お前にだって実のある話になるはずだ」
「…………」
テロリストはライフルを構えたまま微動だにしない、どうやら話を聞いてくれるようだ。案外こいつ優しいやつなのかもな。
「炎神戦隊ゴーオンジャー、スーパ戦隊シリーズの32作目だ。まぁ、細かい話は置いておいて本題に入ろうか。ゴーオンジャーってのは最初三人だけの戦隊なんだ、でも途中から二人加入してきて五人の戦隊になるんだ。今回の戦いってそれに似てると思わないか? 最初の三人が有希子さんとセシリアさんとラウラ、有希子さんがレッドでセシリアさんがブルー、ラウラは色が違うけどイエローってことにしておこうか。そして途中から加わったグリーンとブラック、これはシャルロットとクラリッサだな。シャルロットは緑色じゃないけど……」
色々注釈をつけながら時間を掛け話す。まだだ、もっと時間を稼がないと……
「もちろん、恒例として六人目の追加戦士が出てくる。ゴーオンゴールドって言ってね、矢車兄貴の俳優の人がやってるんだ。これが俺ってことになるな」
ゴーオンジャーを知ってる人ならもうお気づきであろう、この話には一つ間違いがあることに。
「ゴーオンゴールドは厳密にはゴーオンウイングスって言ってな、実は別のユニットなんだ。まるでハリケンジャーにに出てくるゴウライジャーみたいだろ? ユニットって言うくらいだからもちろんゴーオンウイングスにはもう一人いるんだ、その名もゴーオンシルバー。役柄の中ではゴーオンゴールドの妹ってことになるな」
「だからどうした、さっきから聞いていればつまらん事をペラペラと……」
テロリストがライフルを構えなおす。もう少し、もう少しなんだ……
「ちょ、ちょっと待てって! もうすぐ話終わるからさ! まぁ、この状況をゴーオンジャーに例えるならもう一人必要だなーって思ってさ……」
「そんな奴は居ない、今度こそ終わりだ」
テロリストがライフルのトリガーに指を掛ける、その時俺に通信が入った。
『チャージ、完了しました』
俺はその通信に小声で答える。
『遅ぇよ、馬鹿』
俺はテロリストに微笑みかける。
「悪かったな、話に付き合わせて。最後に一言だけ言わせてくれ、ゴーオンシルバーの登場だ!」
「なっ!?」
その瞬間、超高速の弾丸がサイレント・ゼフィルスの側頭部を捉える。
それと同時に俺は
「イグニッション・ブーストナッコォ!」
二つの強力な攻撃を食らい、サイレント・ゼフィルスが吹っ飛びアリーナの壁面に叩きつけられる。
「紹介しよう、ゴーオンシルバーことイタリアのテンペスタ二型の人だ」
「テンペスタ二型の人って、私にはちゃんと名前があるんですが……」
この場にいた全員が忘れていたのではないだろうか、ゴーオンシルバーはゴーオンレッドと共に誰よりも早くこの戦場に居たことを。
「すまんが自己紹介はこの戦いが終わってからにしてくれ、まだ戦いは終わってない」
「そのようですね、アニ」
「アニィ!? 何でそうなるんだよ!?」
「私がゴーオンシルバーならゴーオンゴールドである貴方は私のアニなんでしょう?」
「また妹が増えた……」
「兄のことを兄(アニ)と呼んでいいのは私だけだ! その言葉、今すぐ取り消せ!」
俺とテンペスタ二型の人の会話にラウラが割り込む、周りを見るとボロボロのゴーオンジャー達が立ち上がっていた。
「大丈夫かゴーオンジャー!?」
「ゴーオンジャーじゃねーよ。まぁお前の時間稼ぎのお陰で少しは回復した、ありがとよ」
有希子さん、いやゴーオンレッドが俺に答える。この状況、負ける気がしない!
そして、土煙の中からサイレント・ゼフィルスが姿を現す。
「観念しろガイアーク! 俺達ゴーオンウイングスとゴーオンジャーが居る限りお前達にこの地球は汚させはしない!」
「だから私達はゴーオンジャーじゃねえし、アイツはガイアークじゃねぇって。いや、害悪って意味なら間違ってないのか?」
俺はレッドの突込みやなんやかんやらをを華麗に無視し、言葉を続ける。
「正義のロードを突き進む! 炎神戦隊ゴーオンジャー!」
「もうどうにでもなぁれ」
レッドは俺に突っ込むのを諦めたようだ。
「成程、私はお前の姑息な手にまんまと引っかかってしまったというわけだ。しかし遅かったな、もう終わりだ」
「終わり? 終わりなのはお前の方だガイアーク! アキラメロン!」
「ソフトウェアのダウンロードとインストールが完了した、もうここに居る意味は無い」
「ソフトウェア? 何のことを言ってるんだ?」
その時、成美さんから通信が入った。
『四時の方向から高速の熱源体! 一機だけど……速い! あれ? 熱源体が増えた! 数は約50!』
次の瞬間、甲高い音と共に俺達は爆撃に晒された。
爆撃を耐え忍んだ俺達の前にはサイレント・ゼフィルスともう一機……それは俺のよく知るものだった。
「何で……それがここにあるんだよ……」
サイレント・ゼフィルスがある物の上に立っていた。そのある物とは……
「ストーム・ブレイカー……」
「脱出手段も持たずにこんなに派手な戦いをするわけないだろう、ではな」
その言葉と共にストーム・ブレイカーは飛翔する、追いかけようと思い羽を広げるがそれをシャルロットに止められた。
「紀春っ! 無茶しないで!」
「アレは俺のだぞ! 黙って見ているわけにはいかないだろ!」
「そんな機体でアレに追いつけるわけないでしょう!? ストーム・ブレイカーの速度は紀春が一番知ってるはずだよ!?」
その言葉で思い出す、ストーム・ブレイカーは最速のISだ。シャルロットの言葉の通りそれは俺が誰よりも知っていることだった。
「畜生っ!」
拳を地面に叩きつける、俺の秘策のための時間稼ぎはあのテロリストにとっても時間稼ぎだったのだ。
だからアイツは俺の話を素直に聞いていた訳だ、それが悔しい。
基地の混乱は徐々に収まりつつある、こうしてこの選考会は幕を下ろしたのであった。