インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~ 作:たかしくん
ここまで遅れるとは思ってなかったけど……今後はもう少しペース上げないとね。
ということで今回は47話までやります。
「ここが篠ノ之神社か」
「ああ、中々いい所だろ」
「しかしあの無職が居た所か、俺としては微妙な気分にしかならんな」
「そんな事言うなって、箒だって祭りに向けて準備してきたんだ。楽しんでいけよ」
「そうっすか……」
IS学園から三津村の車でやってきました篠ノ之神社、今日は夏祭りで神社の境内には様々な屋台が軒を連ねている。そして屋台の店員は大多数が強面だ、多分ヤクザか何かなんだろうな。
「しかし、篠ノ之さんの実家が神社だったとは……全く知らなかった」
「中学時代にそんな話はしなかったのか?」
「全然、そのあたりのプライベートというか突っ込んだ話は俺がIS動かせるようになってから聞いたし、IS動かした後は学園に行くまで一回しか会ってなかったからな。実家の話なんて全く聞いた事もなかった」
「ああ、群馬か……お前も結構大変な生活してるよな、昨日まで仕事だったんだろ」
「まぁ、そのお陰でこれがあるんだから文句は言えないさ」
そう言って左手の赤い時計を一夏に見せる。
「おっ、格好いい時計じゃないか。高いのか?」
「ああ、超高いぜ。そのお値段なんと約600億円だ」
「はっ!? ああ、そういうことか。良かったじゃないか」
一夏も察してくれたようだ、この赤い腕時計はヴァーミリオンの待機形態だ。
ちなみに、600億というのは国家に販売する際のおおよその金額で開発費は含まれていない。
しかしこの俺の左腕に巻き付いている600億、その金額を知らされたときは軽く震えた。今でもちょっと落ち着かないのだ。
「まぁ、これも俺の新専用機が出来るまでの繋ぎなんだがな」
「マジかよ。贅沢な話だな、専用機を二回も乗り換えるなんて前代未聞だぞ?」
「俺もそう思うよ」
しかもこの600億は飽くまで次の専用機の繋ぎだというのだから恐ろしい話だ。
「さて、そろそろ神楽舞の時間だし行こうぜ」
「ああ、ちょっと待て。恒例の変装道具を持ってきたんだ」
「またかよ」
「仕方ないだろ、俺とお前が揃ってこんな人の多い所に来れば大パニックになるぞ。ということでこれつけて、どうぞ」
そう言って一夏にお面を手渡す、この夏祭りというシュチュエーションにはぴったりの変装道具だ。これなら俺達が世界で二人の男性IS操縦者だと知られることはないだろう。
「お面か……まぁ仕方ないか、ってこれ!?」
「格好良いだろう?」
「いや、これは目立つんじゃないか?」
「多少目立ったところでお前が織斑一夏だと周囲の人間にばれなきゃそれでいいんだよ」
「いやしかしこのデザインは、ちょっと……」
一夏がごねる、俺的には超格好いいものをチョイスしたつもりだったがコイツは気に入らないようだ。
「うるせえ、兎に角お前はそのお面を付ければいいんだよ。そして人間やめてしまえ!」
「あっ、ちょ……アッー!!」
一夏に強引にお面を装着する、一夏はビクンビクンと痙攣し動かなくなった。
その間に俺も自分のお面を装着する、俺のお面は不動さんお手製の特別なものだ。というか一夏のお面も不動さんのお手製だ。彼女も結構いい趣味していると思う。しかしこのお面は重いな、リアルさを追求したらしいのでそれも仕方ないことなのだろうが実際被ると辛いものがある。
「うっし、装着完了。一夏そろそろ行くぞ」
「あっ……ああ」
俺と一夏は送ってきてもらった車から出る、目の前には篠ノ之神社の鳥居。さて行きましょうか。
「このお面重い……」
「仕方ないだろ、俺も重いのは我慢しているんだ」
そうして俺達は歩き出す、目指すは神楽殿だ。
奉納の神楽舞を行っている最中、私の視界に奇妙なものが映る。
奇妙なものというのは語弊があるだろう、それは私を見つめる二人の男だった。
観客は大勢居るが、その二人はどの観客より目立っていた。
その二人の珍妙な姿に私の心は大きく揺さぶられる、多分あれは一夏と藤木だ。
「…………」
「…………」
二人のまるで睨みつけているような視線が正直怖い、いや一夏の視線はお面に隠されてよく解らないが藤木のつけているそれは口元しか隠していないのでよく解る。
二人のお面は珍妙なものだった。というか藤木が忍殺メンポで一夏が石仮面だった。
石仮面……いしかめん……いちかめん……
なんてつまらない駄洒落だ。いや落ち着け私、今は神楽舞の真っ最中だ。そんなつまらない事を考えている場合じゃないだろう。
そんなこんなで、私の晴れ舞台は妙な緊張と二人の奇妙な視線にさらされたまま続いていった。
「いやぁ、篠ノ之さんのコスプレ姿というのも中々新鮮でいいもんでしたなぁ」
「解ってて言ってるとは思うが、一応箒は本職だからな?」
「しかし、巫女のコスプレってのは中々いいもんですなぁ。ちょっと萌えましたわ」
「だから箒のはコスプレじゃねぇって」
忍殺メンポをつけた俺の気分は上々だ、しかし本職と聞くとヤクザが連想されるのは中学で篠ノ之さんと過ごした日々の賜物だろうと思う。
しかし、現在の俺はニンジャスレイヤー。ヤクザなんて怖くないのである。
その時、誰かとぶつかる。
「おい兄ちゃん、どこ見て歩いとんねん!? スッゾコラー!」
噂をすれば影、屋台の店員だろうか本職のヤクザが俺に因縁をつける。
年季の入ったヤクザスラングは俺の使うそれとは一味違う、そのヤクザスラングとヤクザの着ているTシャツからはみ出た刺青が俺の原始的な恐怖を刺激する。
「ひぃっ!? ごめんなさい!」
「……謝るんなら許してやるよ、次からは気をつけろよ」
やっぱりヤクザは怖い、多少オーバーに謝ってみたらあっさりと許してくれたので本当に良かった。
俺達はヤクザの背中を無言で見送る。調子こいた結果がこれだよ、笑いたければ笑うがいいさ。
「やっぱりヤクザには勝てなかったよ」
「ちゃんと前見て歩かないからだ」
そんな会話をしながら俺達は歩き出す、なんとなく一夏に先導されているのだが俺はいまどこへ向かっているのだろうか?
「なぁ、一夏。どこへ行くんだ?」
「箒の所にだよ、折角だし挨拶ぐらいしないとな」
「ああ、そうか。俺達お面被ってるし、篠ノ之さんも俺達が来たって事知らないだろうからな」
「そういう事、行くぞ」
そんな感じで、俺達はヤクザ娘こと篠ノ之さんの居る場所へと向かって行った。
「来たな変態共!」
「おろ? さっそく正体ばれてる感じ?」
「当たり前だ、そんなお面つけてる奴がお前以外に居るとは思えないからな」
篠ノ之さんに会いに社務所へ向かった途端、早速正体を見破られちょっとがっかり。
そんな俺の横で石仮面が口を開く、と言っても石仮面自体が口をひらくわけじゃないんだけどさ。
「それにしても、すごいな。様になってて驚いた。それに、なんていうか……キレイだった」
「っ――!?」
さっそ口説きやがりますかこの天然ジゴロは。しかし、石仮面付けててる奴に口説かれて顔を赤くしている篠ノ之さんも少々問題があると思う。
「夢だ!」
「な、なに?」
しかもいきなり現実逃避はじめちゃったよ、しっかりしろ篠ノ之箒。今お前を口説いている男は石仮面なんだぞ?
「これは夢だ。夢に違いない。早く覚めろ!」
なんだか篠ノ之さんが挙動不審になっていて見ている分にはおもしろい、その時篠ノ之さんの後ろから中々美人な人がやってきた。
「まあまあ、箒ちゃん。大きな声を出してどうしたの? ……あら?」
美人さんが俺と一夏を見比べる、そして篠ノ之さんに向かってこう言った。
「箒ちゃん、どっちなの?」
「えっ!? どっちって……」
石仮面と忍殺メンポの間で視線を泳がせる篠ノ之さん、ここは俺が助け舟を出してやらなければなるまい。
「俺やで!」
「まぁ♪」
美人さんの顔が綻ぶ、篠ノ之さんが混乱する、一夏はこの会話に置いてけぼり。そんな状況だった。
しかし、このまま美人さんに嘘をつき続けていたら後で篠ノ之さんに殺される。早速だが訂正しておこう。
「すみません嘘つきました、実際は両方です……」
「あらあら、箒ちゃんも隅に置けないわねぇ」
「ちっ、ちがっ……」
篠ノ之さんが俺を睨みつける、そろそろいじるのはやめておこうか。
「すみませんまた嘘つきました、本当はコイツだけです」
俺は一夏を指差しそう言った、指を指された一夏はキョトンとしている。
「さっきから話の内容が全く見えないんだが…… どっちって、何がどっちなんだよ? そして俺がなんなんだ?」
やっぱりコイツは解ってなかった、まぁそれを見越して俺はそんな会話をしていたわけなんだが。
「箒ちゃん、あとは私がやるから、夏祭りにいってきなさいな」
ほうほう、美人さんはどうやら篠ノ之さんと一夏を二人っきりにさせたいようだ。それならば乗るしかない、このビックウェーブに!
「でしたらお姉さん、俺とデートしませんか?」
「あら、それはいいわね。でも少し待っててもらえないかしら。箒ちゃんの浴衣を用意しないといけないから」
「ええ、いいですよ。お姉さんのためなら幾らでも待ちます」
そんな会話をしている一方、篠ノ之さんの心は現実から遠ざかっていた。
「……くっ、さすがは夢だ。あり得ないことばかり起きる。ならば……」
にやにやと笑いながら、ぶつぶつと何かを呟いている篠ノ之さんは見ていてちょっと気持ち悪い。
こんな顔じゃ彼女に対する一夏の好感度もダダ下がりに違いない、ここは俺が彼女を現実に戻してあげなければなるまい。
俺は懐からオリガミ・スリケンを取り出し、篠ノ之さんに向かって投擲した。
「イヤーッ!」
「あいたっ!?」
「シノノノ=サン、現実に戻って来い」
「あっ、ああ……」
ちょうどオリガミ・スリケンの角が篠ノ之さんの額に突き刺さり、篠ノ之さんは額を押さえている。しかし、そのお陰で篠ノ之さんも現実に帰ってくる事ができたようだ。
「ほらほら、急いで。まずはシャワーで汗を流してきてね。その間に叔母さん、浴衣を出しておくから」
そう言いながら美人さんは篠ノ之さんの背中を押し奥へと行く、そして去り際に振り向いて一言。
「ちょっとだけ待っててね。彼女を待つのも彼氏の役目よ」
「え?」
ぽかんとしている一夏を尻目に姿を消す篠ノ之さんと美人さん。
そして一夏は俺にこう言った。
「彼氏? 何で?」
「あの美人さんにはお前がそう映ったんだろうよ」
「??? 何でだ?」
この手の話に鈍感な一夏はいつも通りの反応だった、だから俺もいつも通りに一夏をディスる。
「相変わらずお前はこの手の話の理解力が無いな、まぁはなから期待してはいないが」
「俺も相変わらずお前らが何話してるのか全く理解できない、やっぱり俺が悪いのか」
「ああ、お前が悪い。いつだって悪いのはお前なんだ」
「腑に落ちない……」
いつも通りの光景がそこにはあった、いつもの場所ではないがそんな感じだった。
俺達、石仮面と忍殺メンポはそんな感じで篠ノ之さんを待つ事にした。
なかなかに……似合ってる……と、思いたい。少なくともおかしくはないはずだ。
雪子叔母さんに着付けの手伝いをしてもらいなんとか準備は完了した、風呂に入っている時間が長すぎかれこれ1時間以上一夏を待たせてしまっている。急がなければ……
そんな事を考えながら玄関に行こうとすると、私は居間に居る一人の男を見つける。
「おせーよ、待たせるにしても限度があるだろ」
「ああ、すまない。ところで一夏は?」
居間にいたのは藤木だった、奴は居間にある卓袱台に祭りで買ってきたのであろう焼きそばやたこ焼きやリンゴ飴を並べテレビを見ながら一人で食べていた。
初めて入った人の家でこの寛ぎよう、中々図々しい奴だと思う。
「一夏は外で待たせている、俺は別にお前の彼氏じゃないから待たなくてもいいのだ」
「かっ、彼氏だと!?」
藤木のその言葉に少し動揺してしまう。落ち着け私、落ち着け…………やっぱり落ち着かない!
「ちっ、違う! 一夏は私の彼氏などでは!」
「んー、相変わらずな反応……正直めんどくさーい」
「だからっ!」
顔が熱い、胸がモヤモヤする。それもこれも全部藤木のせいだ、そして一夏のせいだ。
「なぁ、篠ノ之さん」
「……何だ?」
急に藤木が真剣な顔をする、その視線を受けた私は少し緊張してしまった。
「もう少し素直になれよ、一夏が天然ジゴロなのは今に始まった事じゃないだろ? そんなのにいつまでも動揺していたらアイツに本当の気持ちなんて絶対に伝えられない、それとももしかして一夏に自分の気持ちに気付いてもらおうとでも思っているのか?」
「だから一夏はっ!」
「そういうのが良くないってのを言ってるんだよ、俺は。つまらない事でいちいち動揺するな、というか突っ掛かるな。面倒なんだよ。しかもなにが『これは夢だ』だよ、馬鹿じゃねぇの? 俺がどれだけ笑いを堪えるのに必死だったか解るか?」
「くっ……」
藤木が言わんとしていることはなんとなく理解が出来る、しかしこうもぼろ糞に言われるのも心外だ。
「まぁ……なんていうかさ、俺も一夏には早く落ち着いてもらいたいんだよ。そして今一番一夏に近いのはお前なんだと思う」
「そ、そうか?」
「ああ、ということで頑張ってきてくれ。俺はここで寝てるから帰ってきたら起こしてくれ」
そう言って藤木は寝転ぶ。この男、私の家を自分の家と勘違いしているのではないだろうか?
しかし、藤木も言葉は多少乱暴だが私を応援してくれているようだ。こいつはこう見えて結構言い奴なのだろう。
「解った、ありがとう」
藤木に礼を言い、その場から歩き出そうとする。
その時また藤木から声が掛かる。
「あっ、忘れてた」
「何をだ?」
「盛り上がるのはいいんだが、屋外でのセ○クスはやめたほうがいいぞ。この時期は蚊が多いから行為後に悲惨な事態になる可能性が高いし、盗撮の危険もあるからな。お前らの青姦なんて世間様から見れば超絶スキャンダルなんだからな、そこの所はちゃんと自覚しろよ。それでもやりたいんならコンドームはちゃんと持っていっておけよ、持ってるか? 無いんなら俺のをプレゼントしよう、学生の妊娠なんて大抵悲惨な「てぃっ!」――ぱしろぺんたす!」
私は持っていた巾着を藤木に投げつけ藤木を眠らせた。前言撤回、こいつ最悪だ!
さて、藤木との会話で時間を食ってしまった。早く一夏の所へと向かわなくては。
「ここはどこ? 私は藤木紀春」
さっそくだが緊急事態である、目を覚ますと俺はどこか知らない所に居た。
畳敷きの部屋には卓袱台とテレビとその他諸々が置いてあり、どこかの民家に居るという事は理解できたのだが何でこんな所に居るのかが見当がつかない。
いままで何度も記憶喪失にはなってきたがこんな厄介な状況になるのは中々無い、俺が目を覚ます時大抵介抱してくれる人が居るのだが今回はそんな人は居ない。
ええと、確か俺は一夏に誘われえてどこかの夏祭りに行っていたはずだ。卓袱台の上にある食べかけの焼きそばやたこ焼きから見てもそれは間違いないだろう。
しかしここは本当にどこだ? 俺はどうしてここに居る?
そんな俺の混乱はここに一夏と篠ノ之さんが来るまで続いたのであった。