インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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最近贔屓の試合を見るのが辛いです


第42話 ラヴ・インフィニティ

「デカイ!」

「マジでデカイ!!」

「本当にここが紀春の家?」

「ほう、凄いな。やはり男は甲斐性か」

 

あれから一週間、働き詰めだった俺に久々の休みがやってきた。

当分会えていない父さんと母さんに会うため実家へとやってきた俺だったが、一夏、シャルロット、ラウラの三人が俺の実家を見てみたいということでついてきた。

実家と言っても俺が中学生卒業まで住んでいた一軒家ではなく、三津村から用意されたVIP専用マンションである。

 

しかし、その立地や大きさは凄まじい。

東京駅からここまでタクシーでやってきたのだがここは東京駅から皇居を挟んでちょうど反対側に位置する所だ、ここら辺のマンションなんて家賃が凄いことになりそうだ、しかもざっと見る限りこのマンション20階は軽く越えているだろう。

 

しかも聞いた話では父さんと母さんはこのマンションの最上階に住んでいるらしい、家賃も凄い額になっていそうだ。

いくら父さんがカチグミサラリマンでもここに住み続ける家賃を賄う給料はもらっていないだろう、そんな事を簡単に想像させられるほどの風格と言うものをこのマンションは放っていた。

 

「よし、行こうか」

「き、緊張してきた」

「ああ、俺もドキドキする。しかしここが俺の実家になるんだ、いつまでも気後れしているわけにもいかない」

 

俺達は意を決し、エントランスへと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、凄かったな。ロビーがホテルみたいだし受付の人まで居るし。あれなんて名前だったっけ?」

「コンシェルジュじゃない? ちなみにコンシェルジュって言うのはフランス語でアパートの管理人って意味だよ」

「へぇ、そうなんだ。フランス語にするとオシャレ感が大幅にアップするな」

 

エレベーターに入り、そんな会話をシャルロットと交わす。

このエレベーターも清掃が行き届きモーターの駆動音もほとんど聞こえない、やはり高級なんだなと感じさせる。

 

そんな感想を抱いていると音もなくエレベーターが停止する、目的地である最上階に到着したようだ。

 

最上階には二部屋しかなくエレベーターホールから左右に延びる廊下の左側が我が家に繋がる廊下らしい、俺達はぞろぞろと歩き部屋の前に到着した。

 

「何だか落ち着かない感じ~、と言うわけでポチっとな」

 

意を決して玄関チャイムを押す、するとインターホンから懐かしい声が聞こえてきた。

 

『はい、あっノリ君お帰り~』

「ただいま、鍵開けてくれないかな」

『うん、ちょっと待ってね』

 

そんな会話の後、少し待つドアからガチャっと鍵が開く聞こえる。さて、全く懐かしくはないが久しぶりの我が家だ。

俺達は玄関扉を開け部屋へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

「お邪魔します」

「ええと……お邪魔します」

「ふむ、私は兄の妹な訳だからここはただいまでいいのだろうか?」

 

俺の第一声の後、連れの三人が口々に言葉を放つ。

一夏とラウラは普通な感じで挨拶をするが残るシャルロットはガッチガチに緊張している、そこまで緊張する必要もないと思うのだがきっとシャルロットは人の親と会うときは緊張しちゃうタイプなんだろう。

 

「あら、いらっしゃい。そしてお帰り、ノリ君」

「うん、ただいま」

 

多分リビングルームにつづくであろう扉から母さんが出てくる、約半年振りの再会であるが母さんはいつも通りだし俺もいつも通りだった。別れる時は母さんは泣いていたと記憶しているが再会に関しては別に感動的な要素は一切なくちょっと寂しい。

 

「あら、この子達がノリ君のお友達?」

「ああ、紹介するよ」

「でも玄関で立ち話もなんだからとりあえずリビングへどうぞ」

 

そう言って母さんはリビングへと引き返す、俺達も靴を脱ぎリビングへと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑一夏です、紀春君とは仲良くさせてもらっています」

「あら、君が噂の織斑君ね。ウチのノリ君が迷惑掛けてない?」

「いえ、そんなことは……」

 

その瞬間一夏の表情に影が差す。何て奴だ、そんないかにもな表情じゃ俺が一夏に迷惑かけっぱなしみたいじゃないか。

 

「やっぱりそうよね、ノリ君って親の目から見ても変な子だから織斑君には苦労かけてるでしょう? ごめんなさいね」

「いっ、いやいや別にそんなことないですよ」

 

一夏は焦ったような表情で切り返すが母さんの俺に対する印象はもう決まってしまったようだ。

 

「ノリ君、あんまり織斑君に迷惑かけちゃ駄目よ。二人っきりの男の子なんだからもっと支えあわないと」

「いや、別に一夏に迷惑掛けてないから! どっちかっていうとこっちが迷惑掛けられてるから!」

 

一夏の唐変木のせいで俺は散々な目に合わされてきた、大体一夏のとばっちりで織斑先生から出席簿を食らったり篠ノ之さんに蹴られたりセシリアさんに毒殺されそうになったり鈴に衝撃砲食らいそうになったりラウラに殴られたりしている。

反面俺が一夏に迷惑掛けた記憶なんて全く無い! 忘れているだけかもしれないけど!

 

「俺がいつ迷惑掛けたよ?」

「ああ、お前はいっつもそうだよな。そうだよ、お前のせいでいっつも俺が悪者にされるんだ。もう慣れたよ」

 

俺はそんな感じでやさぐれる、IS学園に入ってからやさぐれる機会が増えた気がする。それもこれもこの大正義織斑一夏のせいだ。万年Bクラスの俺はこの大正義に勝てる訳がないのである。

 

「で、こっちの女の子二人は?」

「えと、シャルロット・デュノアです! これ手土産でxhU%!?」

「大丈夫?」

「あい、だいじょうぶでふ……」

 

母さんがシャルロットとラウラの方に視線をやると、やたら張り切っていたシャルロットはいきなり舌を噛み悶絶している。

そのシャルロットを尻目に今度はラウラが自己紹介を始める。

 

「初めまして母よ、兄の妹をやってるラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「あら可愛い、でも兄の妹というのはどういうことかしら?」

 

母さんの素朴な疑問にラウラはドヤ顔で答える。

 

「私と兄は兄弟盃を交わした身、故に血より濃い絆で結ばれているのです。そして貴方が兄の母であるのなら私も貴方の娘なのです。どうか私を貴方の娘である事を認めてはいただけないでしょうか?」

 

ドイツ人お得意の超理論が飛び出す、俺達はもう慣れっこだが母さんは驚いてる様子だった。

しかし流石は我が母、一瞬驚きはしたもののすぐに表情を元の笑顔に戻す。

 

「あら、それはいいわね。私実は娘が欲しかったの」

「では、私は貴方の娘でいていいのですか!?」

「もちろんよラウラちゃん、あと敬語は禁止よ。だって私達は親子なんですもの」

「母っ!」

 

その言葉と共にラウラは母さんの胸に飛び込む、母さんはラウラをしっかりと受け止めた。

母の愛は無限大、母さんはその無限の愛でラウラを包み込む。そして俺達三人はなんだかおいてけぼりだった。

 

「どうでもいいんだけど母さん、父さんは居ないのか?」

「ああ、健二さんならフランスに行ってるわ。MIEの幹部になっちゃったから単身赴任してるの。それと、私も今年の年末にはフランスに移住するから一応頭の中に入れておいてね」

 

ラウラを抱いた母さんが微笑みながらそんな事を言う、今の発言は何気に重大なはずなのになんかさらっと言われた気がする。

 

「そうか、それは寂しく……別に寂しくならないな、そもそも普段会わないし」

「だからお正月にはフランスに来てね」

「はいはい」

 

というわけで父さんはフランスに居るようだ、まるで二号が出てきたときの一号だ。そんな感じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食を食べ、母さんとシャルロットとラウラは三人で買い物に行くと言って部屋から出て行った。

普段母さんが買い物に行く時は二人以上の護衛が付くらしい、しかし今回の同行者はいずれも専用機持ちなわけで更にはラウラは現役の軍人だ。

現在母さんの護衛はIS二機と言う世界トップクラスの戦力なわけで俺は特に心配する事もなく三人を送り出した。

暇を持て余した俺と一夏はベランダで焼いたり、アイスティーに白い粉(砂糖)を入れて飲んだりしてみたのだが相変わらず暇だった。

 

「そうそう、そう言えば今日が甲子園の決勝戦だったな」

 

不意に一夏がそんな事を呟く、野球少年だった俺だったが普段の忙しさにかまけて甲子園の決勝戦の日程すら忘れていた。

 

「マジで!? それは見逃せないな」

 

甲子園と言えば我が母校になる予定だった織朱大学付属高校が決勝に進んでいる事は火を見るより明らかであり、テレビを点けると当然と言わんばかりに次郎さんが投球練習をしている姿が映し出される。

 

「おおっ、次郎さんは相変わらずキレッキレだな」

「知り合いか? それにしてもこの人すごいデカいな」

 

確か今の次郎さんの身長は2メートルを越えているはずだ、小学生の時ですら現在の俺達より背が高かったし、それでも成長期を迎えていなかったのだから次郎さんが2メートルを超える身長になるのはある意味当然とも言える。

 

「ああ、俺の小学校からの野球の先輩だよ。そして野球において俺の全てを上回ってる人だ、あの人からヒットを打てた事なんてまぐれでの一回しかない」

「お前が野球で敵わない人が居るなんてな、世の中はやっぱり広いな」

 

そんな一夏の感想を聞きながらテレビを見続ける、スターティングオーダーの発表に入りレギュラーの名前が表示されていく。そのほとんどが中学校時代の先輩方の名前であったが一人だけ一年生、つまり俺と同学年の人物の名前があった。

 

「太郎……お前、レギュラーになれたのか」

「太郎? この人も知り合いか?」

「ああ、俺にとってお前で言う弾に当たるポジションの人間で俺は小学校の頃からずっとアイツと野球やってたんだ」

「親友ってことか、野球はよく知らないけど一年でレギュラーって相当凄いな」

 

田口太郎、次郎さんの弟で俺の一番の親友と言っても過言ない男だ。

太郎はメールを打つのが苦手らしく俺がIS学園に行ってからというもの交流がほとんどない、たまに送られてくる花沢さんからのメールで相変わらず野球を頑張っているということは知っているがレギュラーになれるまで実力をつけているとは知らなかった。

 

その時花沢さんからメールが入ってきた。

 

件名:驚いた?

 

本文:まさか太郎が一年でレギュラーになれるなんて思ってなかったでしょ?

    あいつかみやんに負けられないって相当頑張ってたからね。

   

    それにしても甲子園は本当にアツゥイ!ヾ(;´▽`A``

 

『ああ、驚いた。あいつも頑張ってるんだな。クーラーガンガン掛かってる部屋から応援してるよ、涼しくてンギモッチイイ!』と返信しておく。

そして俺はスマホをソファーに放り投げ再度テレビに見入る、その時一夏が声を掛けてきた。

 

「なぁ、紀春。IS学園に来て後悔したことは無いか?」

「どうした、急にそんな事聞いて」

「こう言うのもなんだけどさ、俺がISを動かしたからお前もIS学園に来ることになったんだろ。本当だったらお前だってあの人たちに混じって野球をしていたはずなんだ、でも俺のせいでその機会は失われてしまった。俺を恨んだ事は無かったのか?」

 

一夏の言葉に少し考え込んでしまう。

しかし、俺はオリ主でありこの世界に転生したときから闘争に巻き込まれるのは決まっていた事だ。

つまり俺が一夏を恨むなんてことは筋違いであるのだ。

 

「後悔か……確かにIS学園に入ってみれば学園は腐女子の巣窟だし、織斑先生は殴ってくるし、自由に自家発電出来ないし、アイドル活動略してアイカツのせいで休日なんてほとんどないし、戦闘訓練は痛いし、命懸けの戦いをさせられたり後悔する事を挙げればキリがないだろうな」

「やっぱりか……」

 

途端に一夏が暗い顔をする、俺の人生を大きく変えてしまったことでこいつにも思う事があるのだろう。

 

「でもな一夏、お前を恨んだ事なんて一度だって無い。IS学園に入って辛かったことは確かにある、でも良かったことだっていっぱいあるんだ」

「そうか?」

「ああ、そうさ。ほとんどは脳味噌腐ってるが学園の女の子はみんなカワイイし、ソフトボール部員は俺を慕ってくれている、友達だって沢山できたし、ラウラに出会う事が出来た」

「お前って本当にラウラ好きだよな」

「好きなんじゃない、愛しているんだ。しかも今は親公認だし。そうそう、妹と言えば最近妹がまた増えたんだ」

「増えた? どういうことだ?」

「ラウラの所属部隊の黒ウサギ隊11人とイタリアのテンペスタの人、ドイツに居る間にいつの間にかそうなった」

「なんだそりゃ? 訳がわからん」

「訳がわからんのは俺もだよ。まあ兎に角さ、All or Nothingなんてあり得ないのさ。何かを失えばその代わりの何かを得られる、得られるものが良い物か悪い物かは解らないけど少なくとも今の状況は悪くない。そうだ、IS学園に入って良かった事と言えばまだあったな」

「ん? まだあるのか?」

「ああ。一夏、お前と出会う事ができた」

 

そう言って一夏に爽やかオリ主スマイルを投げかける、今この場面はきっと俺と一夏の友情を確かめ合う場面なのだろう。俺の言った台詞は多少臭い感じもするがこの状況では中々いい感じに聞こえると思う。

そんな台詞を言う俺を一夏はキョトンとして見つめていた。

 

「紀春……」

「何だ? 一夏」

「さっきの台詞と表情がすげぇホモっぽい――ぐふぉっ!?」

 

俺の渾身の台詞を台無しにしてくれた一夏のボディーにストレートをお見舞いした、この朴念仁は恋愛関係だけでなく俺との関係にすらこんな感じだったのか。

今ならやたら一夏を殴る篠ノ之さんや鈴の気持ちが解る気がする。

 

「な……なんで……」

「お前が悪い、反省しろ」

 

うめき声を上げる一夏を尻目に俺はテレビに集中する。太郎頑張れよ、やっぱり俺の一番の親友はお前だ。断じてこの隣にで呻いている大正義主人公様ではない。

試合開始を告げるサイレンが鳴る、それと一夏のうめき声を聞きながら俺は親友の晴れ舞台を見守るのであった。


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