インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第46話 裏の裏の更に裏は結局裏

そして朝が過ぎ、午前中の授業も終わり昼休み。俺はある場所を訪れていた。

そこは生徒会室だった、篠ノ之さんは早速GSに連絡を取りお札の準備を始めている。俺としても彼女に協力できるよう除霊する対象である天野幽貴と聖沢霊華の二人の情報を得るためここにやってきた。

たっちゃんは二人とは学年一緒だし生徒会長なのでもう少し込み入った事情も知っているはずだ、そんなわけで生徒会室の扉を開いた。

 

「たのもー!」

「あら、藤木君ですか。いらっしゃいませ、アイスティー作ったんですけど飲みますか?」

「いただきます、ところでたっちゃんは居ます?」

「お嬢様なら、あそこに」

 

生徒会役員で布仏さんの姉の虚さんが俺に応対してくれる、彼女の淹れてくれる紅茶は一級品でこれよりうまい紅茶を俺は一つしか知らない。そんな虚さんがたっちゃんの居場所を教えてくれる、たっちゃんはソファーで寝ていた。相変わらず彼女は寝不足なのだろう。

 

「相変わらずぐっすりと寝ていますな。これじゃ、俺…悪戯したくなっちまうよ…」

「それはやめておいたほうがいいんじゃないですか?」

「 いいや! 限界だするね! 今だッ!」

 

俺は懐からマジックを取り出し、額に『肉』と書いておいた。

 

「……怒られますよ」

「暗部組織の長の癖にこんなにも気が抜けているたっちゃんが悪いんだ、教えちゃ駄目だからね」

「いいですけど……後で絶対に酷い目に遭わされますよ」

「いいっていいって、水性だし致命傷にはならないだろ」

 

さて、寝ているたっちゃんには悪いが今日俺がここに来た目的を果たすためには起きてもらわないとならない。

俺は床に落ちていたスリッパを拾い、それでたっちゃんの頭を思いっきりはたいた。

 

「あいたっ!?」

「おはようたっちゃん、お邪魔してるよ」

「……今、何時?」

「昼休みの真っ最中だけど」

「何するのよ、放課後まで寝たかったのに……」

「いや、授業出ろよ」

「そんなの別にいいって、単位ならまだ大丈夫だから」

「典型的なダメ学生の発言だな、そんなんじゃ留年するぞ?」

「私は国家代表だからね、そのお陰で私にとって単位なんてあってないようなものよ。何もしなくても私の卒業までの道は確保されてるわ」

「うわぁ、どうでもいい事で権力使うなよ」

「で、私に何か用?」

 

そう言ってたっちゃんは起き上がりソファーに座る、俺も近くに用意されていた椅子に座る。その時虚さんがアイスティーを二つ持って来てくれた。

アイスティーを一口飲む、口から鼻にかけて広がる芳醇な香りと爽やかで繊細な渋みが俺の舌を唸らせる。一言で言うと超うまいってことだ。

 

「うーん、相変わらずうまいですな。ウチの午○の紅茶とは比べ物にならない」

「そうですか、ありがとうございます」

 

虚さんが微笑む、彼女も褒められてうれしそうだ。

 

「でも世界じゃ二番目だ」

「やっぱりそうですか」

 

虚さんががっくりと項垂れる、彼女には悪いが俺はこれよりうまい紅茶を知っている。転生時に飲んだカズトさんのアイスティーだ。あの味は未だに忘れる事ができない。

俺はアイスティーを一気に飲み干したっちゃんへと相対する。さて、前置きが長くなってしまったが本題に入ろう。

 

「天野幽貴と聖沢霊華について教えて欲しい」

 

そう言うと、たっちゃんの顔色が変わる。ビンゴだ、たっちゃんはあの二人について何かを知っている。

 

「それ、言わないと駄目かしら?」

「ああ、今俺はあの二人に関してちょっとしたトラブルを抱えているんだ。教えてくれないか?」

「トラブル? 何かあったの?」

「悪いがその内容は教えるわけにはいかない」

「自分は話せないけど私には話せって、都合のいい話だとは思わない?」

「全くもってその通りだと思う、でも頼む」

 

俺は椅子から立ち上がり頭を下げる。世の中は大体ギブアンドテイクで成り立っている、それを無視して事を進めようとするならばせめて誠意は見せなくてはならないのだ。

 

しばらく頭を下げて待っているとたっちゃんが溜息をつく。

 

「ふぅ、解ったわ。今回はそれに免じて話してあげるわ」

 

なんだかんだでたっちゃんは優しい人だ、今になって彼女の額に『肉』と書いたのを後悔してきた。

しかし、彼女は額の『肉』に気付くわけもなく俺に過去にあった事故の話を話していく。

 

「あれは……私達がIS学園に入学してから一ヶ月も経っていない頃の話よ。今の二年生は特に不作の年と言われててね、代表候補生も少なかったわ。そんな中で一番の友達と言えたのが幽貴、天野幽貴だったわ。その時私は既にロシアに国籍変更してたけど、まぁ元々は日本人だし彼女は私の肩書きの苦労もよく知っていたから学園に入って知り合ったけどすぐに仲良くなれたわ。そして幽貴と仲良くしているうちに、幽貴のルームメイトの聖沢霊華とも仲良くなったってわけ」

「へぇ、友達だったんだ」

「でも私達の友情も長くは続かなかった、あの事故のせいでね」

 

あの事故、つまり天野幽貴が死亡した事故ってことだ。

 

「一年生の序盤ということでその時の授業はISの基礎訓錬だったわ、私と幽貴は指導役となってクラスメイトの訓錬の補助をさせられていたわね。訓錬も中盤に差し掛かっていた頃事故は起こったの。幽貴が霊華を打鉄に乗せた瞬間、打鉄のパーツの一部が破損、初心者だった霊華は破損した打鉄をうまく操作できずに幽貴を下敷きにしてそのまま倒れてしまったの」

「それは……なんと言うか……」

「倒れた打鉄は私が何とか元に戻して急いで保健室まで連れて行ったけど……その時にはもうね」

「死亡確認ってやつですか」

「私の腕の中で徐々に冷たくなっていく幽貴の事は一生忘れられないでしょうね、正直言ってトラウマ物よ」

 

そんなトラウマ話を俺にしてくれる彼女には感謝しかない、しかしまだ聖沢霊華の話が残っている。たっちゃんには悪いけどもう少し話を続けてもらおう。

 

「で、その、聖沢霊華のことなんだけど」

「まぁ、その後霊華は事故の責任を感じてか塞ぎ込んで寮の部屋に引きこもるようになっちゃって友達ってことで私がご飯を部屋に運ぶようになったの。部屋には入れなかったけど部屋の前に食べた後の食器が置いてあったから食べてはいたんだろうけど、ある日部屋に行くと部屋の前の食事に手をつけられてないのを発見したわ」

「つまり……」

「慌てて部屋の扉を開けてシャワー室に行くとそこには手首を切った霊華が居たわ、遺書には『幽貴を殺した自分はもう生きていけない』って。というわけで私のトラウマ話はこれで終わりよ、もういいかしら?」

「ああ、もう充分だ。本当にありがとう」

 

あの幽霊二人の情報を少しでも得るため俺はココに訪れたわけだが出てきた話はたっちゃんの暗い過去というかドス黒いトラウマだった。

これだけの話をしてくれたたっちゃんに報いるためには頭下げるだけではとても足りないと思う、後で強強打破でも差し入れしておこう。そして額に『肉』って書いてマジでゴメン、本当に悪かったと思ってる。こんなに重い話になるなんて思わなかったし、しかもあの幽霊二人と友達とは全然予想してなかったんだ。

 

ふと時計を見る、もう昼休みも終わろうとする時間だった。

 

「さて、そろそろ行かないと。たっちゃん、ありがとうね。そして本当にすまなかった」

「ん? 別にいいのよ、私とノリ君の仲じゃない」

「そう言ってもらえると助かるよ、じゃ昼休みも終わるから……」

「そう、私もすっかり目が覚めちゃった。授業でも受けようかしら」

「そ、そう。でも基本的に寝不足なんだから寝てた方が良いんじゃないかな?」

「そういうわけにもいかないわ、学生の本分は勉強よ」

「起きた時の発言とはすっかり正反対だね」

「人間の心理とは時と場合によって簡単に変わるものよ」

「そ、そうだね」

 

そう言って俺は生徒会室を後にする、というか扉を閉めた後全力ダッシュでそこから逃げ出した。

 

たっちゃん、心の中で何度も言ってるけど本当にゴメン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やほー」

 

ノリ君のせいですっかり目が覚めてしまった私は自分の教室に戻ってきた、そんな私をクラスメイトたちが迎えてくれる。

 

「あら楯無、教室に来るなんて珍しいわね……って、それギャグでやってんの?」

「ギャグ? 一体何のこと?」

 

クラスメイトが手鏡を差し出す、手鏡の中の私の額にはペンで『肉』と書かれている。

少なくとも生徒会室に入った時にこんなものは書かれていなかったし、寝ている間に虚がこんなものを書く訳がない。

だとしたら誰か、思い当たる犯人は一人しかいない。

 

「あのクソガキ……ッ!」

「ど、どうしたの? あっ、取れた。水性だったのね」

 

そう言いながらクラスメイトはウエットティッシュで私の額を拭いている、もう一度手鏡で自分の顔を見ると『肉』の文字はきれいに拭い取られていた。

 

しかし、水性だろうとなんだろうと乙女の額に落書きをするとは許しておけない。私は密かにノリ君に復讐を決意するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、俺は自室で電話を掛けていた。相手は俺の秘書の楢崎さんだ。

今一夏は部屋には居ない、多分また色々振り回されているのだろう。

しかし流石の一夏でも今回の俺の振り回されっぷりには敵わないだろう、なんてったって俺の相手は幽霊なんだし。

 

数回のコールの後、楢崎さんが電話に出る。幽霊対策のための情報は多くて困る事はないのだ。

 

「あら藤木君、二学期が始まったばかりだけど早速何か用かしら?」

「単刀直入に言います、天野幽貴死亡事故の際に三津村は何をやったんですか?」

 

楢崎さんは俺の身内だ、たっちゃんの時の様な余計な前置きは要らないのだ。

 

「いきなりね、何かあったの?」

「ええ、ありましたよ。詳しい内容は教える事は出来ないけど」

「ふぅん、まあいいわ。天野幽貴死亡事故ね、ちょっと調べてみるから待ってなさい。1時間以内には連絡するわ」

「相変わらず早いね」

「それが私達の売りよ、貴方も三津村の一員なんだからそこのところは自覚しておきなさい」

「解りました、じゃ後はよろしくお願いします」

 

そう言って俺は電話を切った。

 

約一時間後、再度楢崎さんから電話が掛かってくる。

 

「おいっす、どうなりました?」

「調べてみたけど、大したことは解らなかったわよ」

「それでもいいです、教えてください」

「まず天野幽貴死亡事故の件だけど原因は三津村には無いわ、初心者が使用したせいで想定外の負荷が掛った他社の部品が原因だそうよ。そのせいでこっちの部品も壊れて一時期事故の原因が三津村だって噂が流れたそうね」

「らしいですね、俺も聞きました。ちなみに初心者が使用して想定外の負荷が掛ったって件なんですけど、対策はされてるんですか?」

「ええ、IS学園のISは全機初心者に配慮したカスタム仕様に更新されたわ。性能は少し落ちてるけど機体の剛性は飛躍的に増大してるわ、お陰でウチも結構儲けたみたいよ」

 

事故に便乗してでも仕事を取ってくる、俺のご主人様は根っからの商売人のようだ。

 

「しかし、事故の原因になった想定外の負荷ってどうなんですかね? IS学園は言うなれば初心者の集まりだ、想定外を想定する必要があったんじゃないんですか?」

「藤木君、貴方は忘れているかもしれないけどISは発表されて10年しか経ってないのよ。今もISは一ヶ月、一日毎に進化し続けている分野なの、言うなればISに対して世界全体が未だに初心者なのよ」

「ふむ、確かにそうですね。故に想定外は常に起こり続けるということですか」

「そういうことね」

 

そう、忘れていた。ISはまだ十年の歴史しか持っていない分野なのだ、しかしその十年でISの世代は第四世代にまで到達している。

そしてISの進化のスピードは留まるところを知らない、楢崎さんが言った一ヶ月、一日毎に進化し続けているというのは間違いではないのだ。

 

「そうですか、では次に聞きたい事なんですが天野幽貴の事故後に三津村が取った対応はどんな感じだってんですか?」

「三津村重工製の部品に問題があるという最初の調査結果が出た後、三津村重工はマスコミ及び天野家に対する口封じを行ったわ。主にお金でね、幸いマスコミに対しては元から太いパイプがあったし天野家は裕福ではなかったから簡単に口封じを行う事が出来たらしいわ」

「結局、事故の原因は三津村には無かったんでしょう? どうしてそんな事を」

「風評被害って言葉を知ってるかしら? それにその時は三津村が最も疑われていたんだからそれも仕方のない事なのかもしれないわね。 間接的にとはいえ三津村が代表候補生を殺害した原因になったと知られれば日本中、いや世界中からバッシングを受ける事になるわ。私達には敵が多いからね」

「そういうスタンスが敵を作ってるんじゃないでしょうか?」

「私にそう言われてもね、この風潮は三津村全体に蔓延してるから今更変えるのも無理な話よ。それに、そういうスタンスが三津村を大きくしてきたわけ。それに異を唱える人もそう居ないでしょうね」

「うわぁ、大人ってきったなーい」

「貴方も大人になれば嫌でも理解する事になるわよ」

「大人になりたくないなぁ……」

「モラトリアムはいつか終わるわ、精々今を楽しみなさい」

「アイドル紛いの事やらされてる今がモラトリアムではないような気がするんですけど、それは俺の気のせいですかね?」

「気のせいよ」

 

絶対に嘘だ、大人って本当に汚い。そんな事を考えている俺は前世も合わせて三十年以上生きているがまだ大人ではない、ないったらない。俺はナウでヤングな十五歳なのだ。

 

「まあ、一時間で調べられた情報はこんなものよ。他に知りたいことはあるかしら?」

「いえ、もう充分です。ありがとうございました」

「何やってるのかは知らないけどあまり危ない事はしないで頂戴、貴方の体はもう貴方だけのものではないのだから」

「へいへい、俺の心も体も全部三津村の物ですよ。それに危ない事って今更でしょう?」

「それもそうね、とにかく気をつけなさい」

「りょーかい」

 

そう言って電話を切った、いつの間にか外は薄暗くなっていた。

 

そして今日も夜が来る、怖くて怖い夜が来る……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局俺は一睡も出来ずに朝を迎えた、幽霊二人組みの猛攻は俺の精神を削り続け俺のSAN値は限界ギリギリだ。

もちろん隣のベットで寝ている一夏はそんな俺の状況に全く気づく事はない、少々怨めしくも感じるが流石にこの一件に一夏まで巻き込むわけにはいかない。巻き込むのは霊感少女でもある篠ノ之さんだけで充分だ。

 

午前の授業はISの実習で久々の模擬戦をシャルロットと行う事になった、寝不足のせいで俺のコンディションは最悪だしシャルロットから感じる謎の威圧感のお陰で俺は無様に敗北する。っていうかシャルロットの猛攻が凄い、仮に今の俺が万全の状態だったとしても勝てる気がしなかった。

 

「何だ今のザマは、それでも専用機持ちか!?」

「すみません……」

 

そんな俺を織斑先生が叱る、仮にも教師なら生徒の状態にも気を配って欲しいと思うのは俺のわがままだろうか? とにかく今の状態では模擬戦どころかまともに授業を受ける事も出来ない、幽霊二人組みも何故か昼はおとなしいので今のうちに保健室で仮眠を取っておこう。 

 

織斑先生に断りを入れアリーナから抜け出す、アリーナ内部の廊下を一人で歩いてると篠ノ之さんが俺を追いかけてきた。

 

「随分やられてるようだな、大丈夫か?」

 

とりあえず俺はそばにあったベンチに座る、正直立っているのもつらいのだ。

 

「全然大丈夫じゃねえって、夜な夜な幽霊が遊びに来て一睡も出来ない」

「そうか、しかしもう少しの辛抱だ」

「もう少しってどれくらいだよ、精神が削られすぎて体調までおかしくなってる。はっきり言って今夜が山田」

「なら大丈夫だ、今日の放課後にはお札が届くはずだ」

「マジか!? 期待してもいいんだな!?」

「ああ、今日の放課後に早速除霊を始めよう」

 

どうやら俺は助かるらしい、ならば放課後に向けてしっかりと休んでおこう。決戦の際に体調不良で何も出来ないとなってはまずい。

 

俺は篠ノ之さんと別れ、以前よりちょっと高揚した気分で保健室へと向かう。

決戦は放課後、その時に俺の運命が決まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

携帯の目覚ましのアラームが鳴る、俺は眠い目を擦りながらそのアラームを止めた。

今俺の居る場所は保健室、以前のようにこの場所に来る頻度も減ったがそれでもココのベットは1025室と特別室の次に慣れ親しんだベットがありなんだかんだで落ち着ける場所だ。そのせいもあってか久々に快眠出来た気がする。

時刻はもうすぐ四時、ホームルームが終わって少し過ぎた位の時間だ。

俺がベットから起き上がろうとした瞬間、カーテンが開く。そこには谷本さんが居た。

 

「あれ、藤木君。もしかしてあの授業からずっと寝てたの?」

「ああ、最近寝不足気味でね。谷本さんこそなんで保健室に居るんだ?」

「私、保険委員なのよ。知ってた? って知ってたらこんな質問しないか」

「そうだな」

 

さて、決戦の時間はもうすぐだ。よく眠れたので体力のほうもばっちりだ、篠ノ之さんを待たせるわけには行かないし早速行こう。

 

「じゃあね谷本さん、俺行くよ」

「そう、でも大丈夫? ここ数日調子悪そうだったけど何かあったの?」

「何かあったといえばあったんだけど、もう大丈夫だよ。その何かももうすぐ解決するしね」

 

谷本さんの疑問に俺は背中で答える、そして保健室のドアを手にかけたとき谷本さんがもう一度声を発した。

 

「そうなの。頑張ってね藤木君」

「ああ、頑張る」

 

そう言って俺は保健室を出てドアを閉めた。

 

あれ? なんで谷本さんは『頑張って』なんて言ったんだ? まるで俺がこれから頑張らなきゃいけないのを知っているみたいじゃないか。

まぁいいか、気のせいだろう。それより急がないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな」

「ああ、48時間ほど待った。しかしその衣装は何事?」

 

放課後俺は篠ノ之さんと特別室の前で待ち合わせていた、そしてその篠ノ之さんは巫女服で俺の前へと現れたのだ。

 

「こういうのは形も重要なんだ、しかしお前こそそのファ○リーズは何だ?」

「ああ、これか。篠ノ之さんに全て任せっきりって訳にはいかないからな」

 

以前ネットの記事で見た事がある。ホラーゲームを開発していたゲームクリエイターが幽霊に襲われた際ファ○リーズで退治したらしいのだ、その話が本当であればこれは大きな武器になる。

 

「俺の二丁ファ○リーズが水を吹くぜ」

 

そう言って篠ノ之さんに両手のファ○リーズを構える、そんな俺を篠ノ之さんは微妙な顔で見つめる。

 

「ファ○リーズじゃなければ少しは様になってたかもしれないが、台無しだな」

「やっぱりそうか……」

 

どうやら篠ノ之さんのお気には召さないようだ、しかし今の俺に用意できる武器はこれしかない。

 

「しかし……あの段ボールはなんなんだ? ずいぶんと大きいが」

「ん、あれか? 俺もよくわかんね、誰かの荷物じゃないのか?」

 

実は俺達のいる場所の近くに巨大な段ボール箱が置いてある、その大きさは人が五人は余裕で入れる位の大きさで物凄く目立つ。しかし今の俺達には全く関係ない話だ。

 

「あと、すまないがあの百万円を全て使ってしまった」

「いや、別にいいさ。元よりあの百万円はあげるつもりだったしな、それよりこんな事に付き合せてすまない」

「そんな事今更だろう。さて、無駄話はここまでにしておこうか。行くぞ、藤木」

「そうだな。期待してるよ、篠ノ之さん」

「ああ、任せろ」

 

俺達は特別室の隣の部屋の前に立つ。篠ノ之さんは一回大きく深呼吸をした後、扉を開き部屋の中に入る。そしてそれに俺も続いた。

 

さぁ、決戦の始まりだ。




明日は多分更新できません

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