インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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第50話 それぞれの思い

目を開けるといつもの天井が俺を迎えてくれる、そこは学園内の俺的ナンバーワンリラクゼーションスポットである保健室だった。

 

「藤木さん、お目覚めですか」

 

その声に目をやると、ベッドの側にはソフトボール部部長であるディアナ・バートンが座っていた。

 

「えっ、起きたの!?」

「藤木さん……」

 

その声に反応したのは他のソフトボール部員達、彼女らは仕切りのカーテンを開けベッドの側へと近寄る。

彼女らソフトボール部員は一部で俺の狂信者という不名誉な称号を与えられている、しかし俺からしてみればみんな素直でいい子達だ。そんな彼女らは一様に不安そうな表情をしている。

 

「すまない、お前達の期待に答えることが出来なかった」

 

俺の敗北、それが意味するところは俺がソフトボール部を離れるという事がほぼ確実になってしまったということである。

学園祭で行われるバトルロイヤルには多くの部活が参加することになるだろう、幾ら今の俺が多くの学園女子の不興を買っているとはいえそれでも男というブランドはこの学園の中において絶大なのだ。

そして確実にこのバトルロイヤルに参加してくる実力者を俺は知っている。ラウラ・ボーデヴィッヒ、踏み台転生者にして俺の妹である。彼女とまともに戦えるだけの人材は残念ながらこのソフトボール部には居ない、そもそもラウラは一年生最強にして学園内で五指に入る実力の持ち主だ、そんなのに勝てるだけの戦力を持つことの方が難しいのである。

 

「いえ、藤木さんは気になさらないでください。あなたは私達のために戦ってくれました、それだけで私達には充分なのです」

 

一撃も入れることが出来ず、そして最終的には降参させられるというなんとも屈辱的な負け方をしたのにディアナさんはそう言ってくれる。ソフトボール部に居て良かった、俺は改めてそう思った。

 

「しかし、負けたら何の意味も無いじゃないか……」

「いえ、そうでもありませんよ。少なくとも私はあの戦いに勇気を貰いました。私、バトルロワイヤルに出場します」

 

涼しげな顔でディアナさんが言う、しかし彼女がバトルロイヤルに出場して勝てる見込みがどれ位あるというのだろうか。

 

「心配には及びませんよ。私、これでもアメリカ代表候補生ですから」

「いつの間に、そんな事聴いたことないぞ」

「つい先日のことです、代表候補生になるという通達を受けたのは。私の歳で代表候補生入りというのも珍しい事ですね、これも藤木さんが私達を鍛えてくださったお陰です」

 

命の危険を伴いながら行う地獄千本ノックや、体力が尽きるまで走り続ける限界ランニング、世界のO氏もやっていたポン刀素振り、ヤニキ的精神修行の護摩行など数々の練習メニューを繰り広げてきたがそれはあくまで野球やソフトボールの練習である。

つまり基礎体力や筋力や俊敏性の向上は確かにあっただろうがISでの戦闘向上とは直接結びつかないのだ、それでも彼女は俺のお陰だという。

ならば今一度彼女に酬いなければならない、それが俺に出来る最大限の事だ。

 

「そうか、解った。ならば俺も出来るだけのことをしよう、これを受け取ってくれ」

 

俺は左腕の赤い腕時計を外し彼女に差し出す。

 

「そんな、これは流石に受け取れません」

「あげるわけじゃない、貸すだけだ。それに練習機で勝てるような戦いにはならないと思うぞ」

「しかし、私がこれを使えばフラグメントマップが……」

「そんなの大した事じゃない。頼む、俺はまだお前達の側から離れたくないんだ」

 

ディアナさんの手を取りヴァーミリオンの待機形態である腕時計を握らせる、ディアナさんはしばらく腕時計を見つめた後それを自分の左腕に巻いた。

 

「解りました。藤木さん、貴方の為に必ずや勝利を勝ち取ってみせます」

 

そう言ったディアナさんの表情は決意に満ちていた。

ああ、これなら大丈夫だ。きっと彼女は俺に勝利をもたらしてくれる。

 

「よーしみんな! 明日からバトルロイヤルに向けた特訓を開始する、俺達の未来のために頑張ろう!」

「はいっ!!」

 

部員全員の声が保健室に響き渡る、さっきまでのしんみりした空気が嘘だったかのようだ。

 

「そういえばさディアナさん、俺の噂ってどうなったんだ?」

「その事でしたら、試合終了後に更識会長が直々に誤解を解いてくださいましたよ」

「そうか……良かった」

 

俺達の未来は明るい、この調子ならこの大きな障害もきっと何とかなるはずだ。笑顔の花々が咲く保健室で俺はそう確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~~家庭科室家庭科室」

 

今料理部の部活動に遅刻してIS学園の廊下を全力疾走している僕はIS学園に通うごく一般的な女の子

 

強いて違うところをあげるとすれば元々は男子生徒として学園に潜入してたってことかナ――名前はシャルロット・デュノア

 

ってこのネタは危険な香りがする、このあたりでやめてこう。

 

そんなわけで料理部が活動している家庭科室までやって来たのだ

 

家庭科室のドアを開けふと見ると僕以外の料理部員は全員集まっていた

 

ウホッ! ってまだネタが続いてる、今度こそやめよう。

 

「遅い! 十分の遅刻よ!」

「すっ、すみません!」

 

入ってくるなり部長さんに怒られた、まぁ遅刻した僕が悪いのだから仕方ないと思う。

ここに来る前に保健室で紀春の様子を見ておこうと思って立ち寄ったはいいものの、中に入れてくれないソフトボール部員と一悶着があり遅れてしまったのだ。そして僕は結局紀春に会えていないし、部長さんには怒られるし散々だ。

 

「まぁいいわ、主役の機嫌を損ねるわけにもいかないしね」

「主役? 一体何のことですか?」

 

部長の口振りからして僕が主役らしいってことは理解できるけど、僕は一体何の主役をやらされるのだろうか。

 

「私達料理部もバトルロワイヤルに出場するわ、もちろん戦うのは……デュノアさん、貴女よ」

「えっ……」

 

僕が……バトルロワイヤルに出場!?

 

「男子達に全く縁のない私達にはこの状況は願ってもないチャンスなの、織斑君は料理できるようだけど料理部自体には興味なさそうだしね。それに……ねぇ?」

 

部長が薄ら笑いを浮かべて僕を見つめる、周りを見回すと部員全員がニヤニヤしながら僕を見ていた。

 

「気になるあの子と一緒に料理なんてのも中々乙なものじゃないかしら? それに出来上がった料理を、『あーん』ってね」

 

『あーん』で思い出す、以前病院で紀春にそうしていた所を一夏達に目撃された事を。あの時は死ぬほど恥ずかしかった。

 

「シャルロット、お前料理上手いんだな。いいお嫁さんになれるんじゃないか?」

「そっ、そんな……でもお嫁さんになれるのなら紀春のお嫁さんになりないな」

「シャルロット……」

「紀春……」

「デザートにお前が食べたい」

「うん、紀春なら……いいよ……」

「なんつってな!! がははははっ!」

 

何時の間にやら目の前では奇妙な寸劇が繰り広げられていた、それを見ている部員達は大笑いしている。しかし、そんな笑いのネタにされている僕としてはたまったものではない。

 

「とまぁ、これは大袈裟だけどそんな事もあるかもよ?」

「あ……ぅ……」

「昔から男をつかむなら胃袋をつかめって言うじゃない、今の貴女は彼の胃袋に触れることもできてないというのに。まあ実際に触れられたら恐ろしい事になるんだけども」

 

確かに実際に触れられる状況とはかなり猟奇的な状況だろう、しかしそんな事より一緒の部活になればもっと紀春に近づけるチャンスではある。あの寸劇のような状況を起こす気はさらさらないけれど切欠を掴む事は出来るかもしれない。

 

「別に嫌っていうのなら強制はしないけれど、それでいいの?」

「いえ……僕、やります」

「そう、解ったわ。ということで今日はデュノアさんの勝利を願ってとんかつを作りまーす! みんな、準備してね!」

「うわーい、肉じゃあ!」

「やったー! お肉だ!」

「わしゃうろんがええよ!」

 

今時とんかつで喜ぶなんてどこの欠食児童だろう、そんな事を考えながら僕も調理の準備に加わる。

僕は個人的事情のためにバトルロイヤルに参加する、それでもみんなこうして応援してくれている。

頑張ろう、この料理部のみんなに酬いるためにも。

 

「そうそう、もし負けたら特別講師にオルコットさん呼ぶから覚悟しておいてね」

「えっ?」

 

この戦い、絶対に負けられない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幽霊部員の篠ノ之くん、あなたにはバトルロイヤルに参加してもらうわ」

「バトルロイヤル? 何故ですか?」

 

剣道場での剣の稽古が終わり、帰ろうとしていたところを部長に呼び出されバトルロイヤルに参加させられる事を通達された。

 

「現在、織斑君は無所属ではあるけれどアリーナ使用の都合や剣の修練のため週に一度位ははこの剣道部にやって来るわ。つまり彼は実質剣道部に所属しているっていうわけなの、ここまではいい?」

「ええ、しかしそれと藤木が何の関係が?」

「藤木君は関係無いわ、ただ一つ問題がねぇ……」

「問題? 一体何の問題があるというのですか?」

「私達はほぼ確実に『織斑一夏争奪戦』を勝ち抜けないってことよ」

 

『織斑一夏争奪戦』簡単に言うと各部活の出し物の人気投票一位になった部活に一夏が入るというイベントだ、昨日急遽発表されたこのイベントは今のこの学園において最大級の関心事だろう。

ちなみに『藤木紀春争奪バトルロイヤル』もそこそこ話題にはなってはいるが、全校集会での出来事で藤木の学園内の人気は大きく下がったため一夏のに比べるとそれほどではない。

会長が藤木に関しての誤解を解いてくれたのは今から約二時間前、以前の状態から抜け出したとは言えあの過激な噂の余韻はまだ残り続けるだろう。

 

「私達が『織斑一夏争奪戦』を勝ち抜けない? 確かに厳しいとは思いますが可能性はゼロではないと思いますが」

 

ちなみに私達が学園祭でやるのは剣道体験コーナーだったはずだ。

かなり厳しいとは思うが、可能性はないわけではない。一体部長は何が不満なのだろうか?

 

「私達は絶対に勝つことは出来ないわ、何故なら学園祭で毎回多くの生徒の投票を掻っ攫って特別助成金を貰い続けた部活があるからよ。このまま行けば今回もあそこが一位になるんじゃないかしら」

「あそこ? 一体何部なんですか?」

「陸上部よ」

 

陸上部、走ったり飛んだり投げたりと正直地味なイメージしかない。しかしそんな部活が毎度学園祭で大人気だという、一体彼女らは何をするのだろうか?

 

「陸上部が学園祭でやる出し物は毎回同じよ、多分今回もあれをやってくるんでしょうね」

「あれとは一体?」

「競走よ」

「競走? なんでそんなモノが何で人気なのでしょうか?」

「もちろんただの競走じゃないわ、客はそのレースの中で誰が勝つかをお金を払って予想してレースの結果を的中できればその走者の人気に見合った配当金を貰えるシステムになっているわ。来賓のおじ様方から勝負師の生徒達からも人気の出し物よ」

「それおもいっきり賭博じゃないですか! 法的にアウトですよね!?」

「いいえ、セーフよ。だってここはIS学園、治外法権なんだからなんでもアリよ。例を挙げるなら煙草とか酒とか武器持込とかとか……あっ、殺人未遂までなら許されるわよここは」

「いや……殺人未遂は流石にまずいのでは……」

「へぇ、私知ってるのよ。篠ノ之くん、あなた以前刀を持って藤木君を襲ったそうね? そしてあなたのお友達はその間ISで生身の織斑君に向かって銃撃ってたとか、しかも教室で」

「あっ……」

 

確かにそんな事もあった、よくよく考えてみると私達はかなり酷いことをしている。確かに学園外でこんな事をやればすぐさま刑務所行きだ、ここが治外法権で良かった……

というかこう考えるとIS学園とは無法地帯なわけである、学園の治安は個々の生徒のモラルによって維持されているわけであり私はそのモラルを乱す愚か者だということだ。

 

「ということで今のあなたは世間様からみればとんでもない悪党なの、陸上部のことをとやかく言える立場じゃないの。という事でバトルロイヤル頑張って頂戴ね」

「……はい」

 

愚か者の私はもうそう言うしかなかった、ならばせめてこの戦いに勝ちそれに気付かせてくれた部長に恩返しをしよう。

 

「ところで部長、なぜ藤木が欲しいんですか?」

「剣道部から織斑君が離れてしまえば私達の男成分がなくなってしまうじゃない、いわゆる持てる者の悩みってわけね」

「はぁ、そうですか……」

 

……頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、これで今日の練習は終わりですわ。片付けをした後は解散してください」

「はい、ありがとうございましたー」

 

テニス部部長であるマダムバタフライの号令の後わたくしの所属しているテニス部の面々は片付けを始める、もちろん一部員に過ぎないわたくしもそれに加わろうと思ったのだがそこをマダムに呼び止められた。

 

「セシリア、少しよろしくて?」

「はい、いかがされましたか?」

 

マダムバタフライというのは我がテニス部の部長のあだ名であるが、その本名を知るものは居ない。そしてマダムの髪は私と同じ金髪縦ロール、しかも口調も似ている。キャラが被っているというレベルではない、テニス部に入った当初はわたくしは『マダム二号』と呼ばれていたのだ。

 

「ええ、お願いがあるのだけれどバトルロイヤルに出場していただけないかしら?」

「ばっ、バトルロイヤルですか!?」

「ええ、あたくしは藤木紀春が欲しいの」

 

紀春さんはマダムとは対極にいるような人間だ、マダムを一言で表すなら『優雅』、それに引き換え紀春さんを言葉で表すのなら『武骨』である。そんな対極にいるような紀春さんに何故マダムが興味を持っているのだろうか?

 

「一つお伺いします、何故紀春さんをテニス部に入れたいのでしょうか?」

「あら? 彼はとても良い素材よ。適切な指導を受ければテニスの道においてもきっと大成するわ」

「大成ですか……」

「ええ、彼以上の身体能力を持つ人間はこの学園では織斑先生以外には居ないでしょう」

「確かに紀春さんの身体能力は目を見張るものがあります、しかし紀春さんは先の戦いで敗北してしまいました。これは一体どういうことなんでしょうか?」

「ISにおける戦いにおいて身体能力はそれほど大きなウエイトを占めるものではないわ、確かに無いよりはあった方がいいのだけれど先の戦いではそれ以上の技術の差があった。というとことでしょうか。仮に生徒会長を徒競走や腕相撲で決めるのでしたら今頃はこのバトルロイヤルも開催していなかったでしょうね」

 

マダムの言うとおりだ、単純な身体能力でISでの戦闘に勝てるのならこの学園はゴリラだらけになっているのだろう。

 

「それに幸いなことにテニスは個人競技よ、団体競技とは違って男一人でも大会に出ることが出来るわ」

「そうですわね、しかし……」

「勝つ自信が無いと」

「そうしてそれを!?」

「一年の子から聞いたわ、最近あなたが行き詰っていると」

 

夏休み明けの最初の実習、そこで自分は一夏さんに負けてしまった。そしてそれは専用機持ちでは自分だけである。紀春さんもあの時は調子が悪くシャルロットさんに負けてはいたが、先の戦いでは負けはしたもののその実力の高さは手に取るように解った。自分の見立てでは今の紀春さんの実力はシャルロットさんより上、ラウラさんより下、といった所だろう。

 

「負けるのが怖いのです、負けていく度に自分が今まで積み上げてきたものが失われてゆくような気がして……」

「負けることを怖がるのはおよしなさい! たとえ負けてもあたくしはあなたに責任をおしつけたりしない。 それより力を出しきらない戦いをすることこそを恐れなさい!」

 

マダムが声を上げる、彼女は厳しい人だがこんな声を上げる人ではなかった。

そしてマダムは立ち上がりラケットを拾い上げ、それを見つめて言う。

 

「わたくしがラケットを握ったのは7歳、その時からくる日もくる日もテニスに明け暮れたわ。とても苦しかった。いいえ、今も苦しい。でも、その長い月日の苦しさが今のわたくしを支えているのです」

 

苦しい……それは自分も同じことだった。

 

「セシリア、あなたも存分に苦しみなさいな。その苦しみはいつか掛け替えのない財産になるはずよ。絶対に勝てるなんて無責任なことは言わないわ、でもこの戦いはあなたをもう少しだけ大きくしてくれるはずよ」

 

その言葉に心が震えた、こんな事は初めてだった。

きっとマダムは紀春さんが欲しいわけではないのだろう、自分を成長させるためにこの戦いへと参加させようとしているのだ。

 

「マダム……わたくし戦います。自分のために、そして貴女のためにも」

「ええ、期待してるわ。でもこれだけは言っておきます。勝っても負けても、自分自身に決して言い訳をしないように。一番恐いのは自分自身に甘えることだから」

 

もう何も怖くなかった。自分には支えてくれる人がいる、そしてそれを知ったとき自分の心が軽くなったのを感じた。

存分に苦しみ、自分らしく戦おう。それが今の自分に出来る精一杯の事だから。

 

しかしマダム、貴方の人生をテニスに賭けているのは素晴らしいとは思いますが一体何故IS学園に居るのですか? テニスがしたいならここよりもっといい学校があるでしょうに……

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから! そんなんじゃ織斑君は勝ち取れないわよ!」

「なら他に案が有るんですか!?」

「いや、その……そう言われると……」

 

あたし達ラクロス部の学園祭の出し物についての会議は完全に行き詰っていた、あーでもないこーでもないとかれこれ二時間近く会議が行われてるが一向に終わりが見えない。

生半可のものでは投票を勝ち取るのは難しいとも思う、かと言って代案も浮かんではこない。そんな状況はあたしの眠気を誘う、というか現在あたしの意識はほとんど夢の中だ。

 

「まぁ、一度織斑君の件は置いておいて藤木君についての話もしないとね」

「あ、そうですね。この部で荒事向きと言ったらやっぱり凰さんですかね」

「う、う~ん。いちかぁ……むにゃむにゃ……」

「どうかしら。鈴、バトルロイヤルに出てくれるかしら?」

「えっ……そんな……でもいちかにならいいよ……ぐぅ……」

「本当!? こっちの方はすんなりと決まってよかったわ!」

「だいじょうぶ……ぜんぶあたしにまかせて……ぐへっ、ぐへへへへへ……すぴー……」

「頑張ってね、応援してるから! というわけで出し物の話に戻りましょうか」

「そうですね、しかし何をやればいいのやら……」

「ああっ……いちかったらはやい…………えっ、にかいめ?……うん……zzz……」

 

あたしは完全に夢の世界に落ちていく、その間も会議は続いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「スゥーッ! ハァーッ!」

 

部長が息を吸い込み、それを吐き出す。部長の胸は実際豊満であり、呼吸に合わせてその胸が揺れる。

 

「スゥーッ! ハァーッ!」

 

自分も息を吸い込み、それを吐き出す。自分の胸は実際平坦であり、呼吸に合わせて胸が揺れる事はない。

 

「さて、これ位で良いでしょう、今日の所は終わりにします。ボーデヴィッヒ、あなたは残りなさい、話があります」

「はっ」

 

部の仲間たちは片付けを始める、そんな彼女らを尻目に私は部長の元へと赴いた。

 

「さて、話の内容は言わなくても解りますね」

「もちろんです、バトルロイヤルの件ですね」

 

このバトルロイヤルには商品として兄が賭けられている、その兄の窮地を救うのは妹の私以上にふさわしい人間は存在しないであろう。

そして兄をこの茶道部に入れ共に茶道を極めるのだ、これほど嬉しい事もそうないだろう。

 

「その通りです。一応聞いておきましょう、勝てますか?」

「当然です部長。私には兄との絆がある、その絆は誰にも阻む事は出来ません。今まではソフトボール部に兄を独占させられていましたが今回のチャンスでそれも終わりを迎えることになるでしょう」

 

私がこの学園に転入してきた時には兄は既にソフトボール部に入っており、私と兄がタッグを組む切欠となった場所もソフトボール部のグラウンドだ。

彼女らには私と兄を繋いでくれた恩はある、しかしそれでも兄を独占している現状を見過ごすわけにはいかない。そこに現れた今回のバトルロイヤルは正に渡りに船だ、ならばこの好機を利用しない手はない。

 

「期待していますよ、ボーデヴィッヒ」

「その期待、答えてみせましょう。まぁ、スポーツなどと軟弱な事をしている部活如きが我々茶道部に勝てるとは思えませんしね」

 

そう言いニヤリと笑ってみせる、それを見た部長もニヤリと笑う。

 

「ではお願いしますね。茶道の力、とくと見せてやりなさい!」

「Ja!」

 

そう言って部長に敬礼する、それを見た部長もご満悦のようだ。

 

茶道の力をもってすればこの戦いは楽勝だろう、私の未来には兄と共に茶道に励む自分の姿しか見えなかった。

 

そう、私の所属している部活は茶道(チャドー)部だ。

茶道(チャドー)部とは、とは古代より伝わる暗殺拳を修練する部活なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっくっくっ、織斑一夏に藤木紀春ッスか。面白いッス、学園の男二人はこの陸上部がまとめて頂くッスよ」

「へー、頑張ってねー」

「ちょっ、バトルロイヤルには先輩が参加するんッスよ! やる気出してくださいッス!」

「ええー、面倒くさいなぁ……フォルテ、お前がやれ」

「マジッスか……」

「マジッスよ、という事で頑張れー」

 

陸上部の部室ではそんな会話が繰り広げられていた。

 

陸上部……そこは専用機持ち二人を有する学園内最大の戦力を有する部活であった。




これ書いた後に原作読み直したんだけど、シャルとラウラってこの時点で部活に入ってないことに気付いてしまった。ということでそこらへんは独自設定です。あと残りの専用機持ちの事が全然わかんねぇ。

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