インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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恋愛回は小っ恥ずかしいので苦手です。


第54話 プレイオンザルーフ

「……」

 

誰も居ない校舎の屋上、そこで俺は一人敗北を噛み締めていた。半裸で。

学園は人でごった返しているがここには誰も居ない、それが妙に俺の寂しさを誘い俺の心は更に冷え込んでいる。

太郎には悪い事をしてしまった、いくらアイツがめちゃモテ委員長でヤリチンのハーレムキングになってしまったとはいえ流石にあの態度は良くなかった。

いや、やっぱり許せない。五人ってなんだよ五人って、今の一夏以上じゃないか。

そんな事を色々考えていると屋上へと続く扉が音を立てて開く、そして誰かが俺に声を掛けていた。

 

「のりはる~、居る?」

「居ないよ」

「居るじゃない」

 

この声はシャルロットか、俺を探しに来たのだろうか。

 

「ほら、いつまでもそのままじゃ風邪引くよ」

 

その声と共に差し出された紙袋、それを受け取り中身を見てみると俺の制服が入っていた。

あんな事をしでかしてしまった俺に対してシャルロットはいつものように振舞う、そんな優しさが俺の身に染みる。

 

「落ち込んでる時に優しくするなよ、好きになっちゃうだろ」

「そ、そうなんだ」

 

そう言いながらシャルロットが隣に座る、そして無言の時間が始まる。しばらくそんな時間が続き、なんだか耐えられないので俺から話を始めた。

 

「別に太郎に彼女が出来たからって落ち込んでるわけじゃないんだ」

「太郎って、紀春の友達の?」

「ああ、初めてあいつと会ったのは……もう六年近く前になるか。あいつが野球の練習をしているのをなんとなく見ていたらあいつと勝負する流れになってさ、おれはあいつをコテンパンに打ちのめしてやったんだ。もちろん野球でね」

「それはまた穏やかな出会いじゃないね」

「まぁ、その後色々あって今では一番の親友と呼べる間柄になったんだと思う。あいつがどう思ってるかは知らないけど」

「多分彼も同じように思ってるんじゃないかな、紀春が出て行った後に酷く落ち込んでたから」

「そうか……」

「それで彼に酷い事を言ってしまったから落ち込んでるってこと?」

「いや、全然違う。あいつはあの程度でどうにかなるタマじゃないよ」

「だったらどうして」

「……さっきも言ったけどさ、初めてあいつと会ったとき俺は奴をコテンパンにしてやったんだよ。それ以来ずっと野球に関してあいつに負けたことがない、頭のほうも俺の方が圧倒的に良かった。運動神経は言わずもがなだ。俺はあの時初めてあいつに負けたんだよ」

「彼女が五人も居るってのは逆に褒められるようなことでもない思うけど」

「まぁ、そうかもしれないな。でも、それでも俺は太郎に負けたと思った。悔しかった、惨めだった、それより一番嫌だったのが自分が太郎を無意識に見下していたという事に気付いてしまった事だ。そんなんであいつを一番の親友だと思っていたことが恥ずかしかった、俺は簡単に見下せるあいつの側に居るのが気持ちよかっただけだったんだ。一夏とだって同じことが言える。今の俺はあいつより強い、だからあいつが死ぬほどもててても自分のプライドを保つことが出来る。だから俺はあいつの側に居ることが出来る。もし一夏が俺より強くなってしまったらって考えるだけで怖くて仕方がない、多分俺は自分を保てなくなる。そして見下す相手が居ないと自分を保てない弱い自分が嫌にな――ってうわっ! なにするんだシャルロット!」

 

俺の話はシャルロットに強引に中断させられた、というか抱きしめられていた、それより何より俺のオリ主フェイスがシャルロットのおっぱいにぴったりとくっついてるというか埋もれているというかもう訳が解らない。

 

「大丈夫、紀春は充分強いよ」

「それよりこの状態をどうにかしろって! というか優しくするなって! 本当に好きになっちゃうぞ!」

「……なら好きになってよ、僕のこと」

「はい?」

「……あっ」

 

その言葉と共にシャルロットは抱擁を解き、俺に背中を向ける。その顔はうかがい知る事は出来ないが、後姿から見える耳が心なしか赤く染まっているのか解る、多分その顔はさぞかし赤いのだろう。

 

「あのー、シャルロット……さん?」

「そのっ! さっきのは忘れて!」

 

振り絞るような声からシャルロットが動揺しているのが解る、これはもしかして……そういう事なんでしょうか?

 

「……」

「……」

 

唐突に訪れた恋愛展開に俺の心も緊張してくる、どうすればいいどうすればいいいやなんだかすっげぇ緊張してきたけどKOOLになれ俺あまりにも唐突だがオリ主たる俺にやって来たビックチャンスだここを逃すと二度とチャンスは巡ってこないかもしれないとりあえず状況分析ださっきの言葉からして多分シャルロットは俺狙いだ俺が自惚れていなければの話だがまぁとりあえずシャルロットが俺狙いだということと仮定して話を進めようそうでもしないと話が進まないしとなると俺的にシャルロットはアリなのかという話になるよしよーく考えろシャルロットは俺にやさしいし三津村のメンバーとしていろいろ気を遣ってくれているそしてなによりかわいいおバストのほうもまぁまぁあるから問題ないまぁ欲を言えばもうちょっと大きい方がいいけどそんなことを言えばキリがなくなるのでそういう話は程々にしておこうつまり俺的に言うとシャルロットはめっちゃアリだまぁこの学園で俺的にナシって人もそんなに居ないんだけど学園内俺的好感度ランキングでいうと現在シャルロットは二位だついで言うと一位はラウラだまぁラウラは妹だし手を出すつもりは無いので結果的にシャルロットが一位になるついでに最下位は織斑先生だってあの人すぐに殴ってくるんだもんおっと話が思いっきり逸れている修正しなければ兎に角俺の問題はオールナッシングだしかしシャルロット的に俺はアリなんだろうかいやいやさっきの言葉を聞いた限りではアリだと思うというか思いたいがいかんせん自分に自信が無さ過ぎるついさっきだって太郎を締め上げた短気暴力野郎だぞ俺しかもシャルロットに太郎や一夏を見下していると告白してしまった仮に俺が女だったらこんな奴を好きになるなんてありえない正直見る目がないぞシャルロットいや待て恋は盲目って言うしもしかしたらあの言葉は本当なのかもしれんねよーしなんだかいける気がする!ということでバッチ来いシャルロット!というか俺の方から行くぞ!

 

という思考がオリ主頭脳を0.5秒で駆け巡り俺は結論に至る、ここは格好いい台詞で決めてやろう……と思ったが無理、そんなの考え付かないので無難に攻めてみよう。

 

「忘れていいのか?」

「うっ……うん……」

「本当に忘れていいのか?」

「えっと……その……」

「俺は忘れたくないぞ」

「えっ……」

 

俺に背を向けているシャルロットの両肩を持ち少々強引に俺の方に向き合わせる、驚いたような顔で俺を見つめるシャルロットの顔はやはり赤く染まっておりその表情が俺を更に緊張させる。

しかしこの場面は俺の一世一代の勝負所だ、鋼のオリ主精神力でその緊張をなんとか押さえ込み次の言葉を搾り出す。

 

「その、俺だってな……ああ、なんだか小っ恥ずかしいな。これ」

 

あああああっ! 次の言葉がどうしても出てこない! もうなんなんだ、そもそも恋愛展開に入るのが唐突過ぎなんだよ! 心の準備が出来てないもんだから口説き文句の一つも思い浮かばない! どうすりゃいんだよ、『す』とか『き』とか言えば丸く収まるのかこの状況!? いやいや待て待て、オリ主たるこの俺がそんな無難な言葉で愛を綴っていいものなのか!? そうだ、もっとクールかつオシャレでトレンディな告り方ってもんがあるだろう。こんな所で恋愛経験の無さが俺の足を引っ張るとは思ってもいなかった、なんて言えばいいんだ俺!?

 

「どうしよう、何て言えばいいんだ」

 

そしてそのまま心の内を声に出してしまう俺、なんて情け無いんだ。

 

「その……言葉にするのが難しいなら態度で示してくれても……いいよ?」

 

態度……ここで言う態度とはつまり……接吻か! 熱いベーゼか! ということは俺の初めてのチュウか! 

ん? 初めてのチュウ……うっ、急に頭が痛くなってきた! しかし我慢だ俺! 折角のシャルロットの助け舟を無駄にしてはいけない!

 

「その……いいんだな?」

「うん、いいよ……」 

 

俺達はゆっくりと顔を近づけていく、その途中でシャルロットは目を閉じた。

 

階下の喧騒、屋上に吹く風の音、そしてどこかから聞こえる甲高い音。しかし、そんなモノなどまるで気にならない。

あと数秒後には俺は初めてのチュウをすることになる、俺は更にゆっくりと、慎重にシャルロットとの距離を縮めていった。

 

そして、俺は……

 

「おごっ!?」

「痛っ!」

 

後頭部を襲う鈍痛と衝撃、その衝撃のまま俺の前頭部はシャルロットの鼻に直撃する。

そして俺は何が起こったのか理解できないまま意識を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やってしまった」

「部長、ドンマイです!」

 

部活の出し物である模擬店でたこ焼きを焼いている最中に嫌な予感がし私は学園の屋上へとやって来ていた、あたりを見渡すと別棟の屋上で藤木さんとあの忌まわしきシャルロット・デュノアを見つけた。

 

様子を窺っていると、あろうことか藤木さんがあの女の両肩に手を置きゆっくりと顔を近づけようとしている。多分あの女が藤木さんを誑かしているのだろう。

藤木さんに忠誠を誓ったあの日から私の思いは変わらない、そしてあんな自己中心的な女に藤木さんの相手を任せるのは言語道断である。

ならば私のすることはただ一つ、藤木さんを全力で守る事だけだ。

 

たまたま持って来ていた金属バットを握り締め、一緒に来ていた後輩にトスを上げさせる。

そのボールを狙い澄まして打ち抜く、それは真っ直ぐにあの女の方へと向かっていった。

 

しかしそこで予想外の突風が吹く、それは打球の方向をほんの少しだけずらし藤木さんの後頭部へと直撃してしまった。

 

「……どうしましょう」

「部長! 逃げましょう!」

「そっ、そうですね。結果オーライです、今までの傾向から言って藤木さんは記憶を失っているはずです」

「それは結果オーライと言えるのでしょうか?」

「解りません、しかしあの女に見つかる前に逃げた方が良さそうなのは同意します。さぁ、行きましょう」

 

私達は足早にその場から去る、これで一件落着のはずだ。多分……




4113文字が短く感じるなんてオリ主ロードを書き始めたときには思わなかったけど、今になるとかなり短く感じるね。

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