インフィニット・ストラトス ~栄光のオリ主ロードを歩む~   作:たかしくん

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マナプリズム集めが辛いです……


第70話 ハンティングゲームは突然に

「…………」

「…………遅い」

「すみません、どうやら事故渋滞があったらしいですね」

 

運転手のヤクザこと瀬戸さんが俺に謝る。10月18日の国道1号線、そこは渋滞で激混みしていた。そして、俺達の乗る車はもう三十分位のろのろ運転を繰り返してようやく国道467号線と交差する場所まで来た。ここまで来ればIS学園までは一直線だ。

 

「しかし参りましたよ、織朱の一次移行が終わったらすぐ帰れるものだと思ってましたからね」

「キミのスケジュールなどボクの感知するところではない、文句なら楢崎君に言いたまえ」

 

織朱が一次移行した後、俺はその日のうちにレポートを書き上げ不動さんのヴァーミリオンの修理を手伝った。俺の頑張りのお陰かヴァーミリオンもその日のうちに修復が完了し、翌日にはIS学園に帰れると思っていた。

しかしそう思っていたのは俺だけだったようだ。

 

翌日からは俺は三津村の幹部連中を前にした織朱のデモンストレーションや、織朱大学理事長への表敬訪問、さらにインフィニット・ストライプスからの雑誌取材やその他諸々に追われIS学園に帰ってくるまで3日の時間を費やす事になった。

そうそう、インフィニット・ストライプスといえば最近一夏と篠ノ之さんもその取材を受けたとか。そして今回の表紙は二人が飾る事になるらしいと聞いた。こっちとしてもセンセーショナルなニュースを引っさげてやってきたというのに表紙になれないのは結構悔しかったりする。まぁ仕方ない、今回あの二人はインフィニット・ストライプスに初登場するんだ。それくらいは譲らないといけないか。……まぁそれに俺があの雑誌の表紙になったのは既に二回あるからね、まだまだ俺は一夏達には負けていないのだ。

 

「ふぅ、やっとまともに走れるようになったか」

 

車窓は一気に移り変わり、IS学園がその姿を現す。確か今日はたっちゃん主催のタッグマッチの日だ、もう10日以上ここから離れていた計算になるのでなんだか懐かしさすら感じる。

 

「危ないっ!」

「うぉっ!」

 

その時、車は急ハンドルを切りそのまま路肩に突っ込む。歩道には偶然にも人が居なかったので被害は出ていないようだが一体なにがあったというんだ。

 

「ど、どうしました?」

「…………」

 

運転手のヤクザこと瀬戸さんは俺の問いに答えず、ただ空を見ている。何があるのかと思い俺も窓から頭を出して空を見上げる、そしてそこには……

 

「成程、どうやら俺の出番のようですね」

 

赤いISが空を舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空に浮かぶ赤いIS、俺達の車の前には焼けて溶けたアスファルト、状況証拠としては充分だ。

 

「藤木、戦うのはいいが速攻で片付けろ。周りに余計な被害を出したくない」

「OKボス、瞬殺してやりますよ」

 

相手がどんな奴かは解らないが、俺を狙ってきたのは間違いないようだ。ならば容赦はしない。

 

「行くぜ、お嬢さん。死ぬほど痛い目に遭ってもらうからな?」

 

俺はその言葉と共に織朱を展開、空へと舞う。

 

『おっ、いきなり戦いかい』

『そんな事よりここ、市街地ですよ。まずいんじゃないですか?』

「相手はこの場所で俺を襲ってきたISだ、被害を出さないためにも速攻で片付けるぞ」

『りょーかい、援護は必要かな?』

「いや、今回はいい。ビットの射撃が外れれば大惨事は免れない、近接武装のみで戦う」

『そう、だったら応援してあげるから頑張ってね』

「そりゃ心強いねぇ、勇気が湧いてきたよ」

 

一気に迅雷跳躍(ライトニング・ステップ)で敵ISと距離を詰める、そして距離を詰めながら俺はエムロードを展開し、居合いのような格好で敵に切りかかる。

敵も俺に合わせてブレードを振りかぶりカウンターを決めようとするが俺は刃が当たる直前、右へと方向転換する。これが迅雷跳躍の本当の力だ、瞬時加速と違って移動中に方向転換できたり非線形の軌道を描いたりと自由自在だ。

 

「グッバイ、お嬢さん」

 

俺は超振動を発動し敵の首を刎ねるような剣筋を描く、そしてエムロードが敵の首筋に当たる、そして敵の首は刎ねられた。えっ、刎ねられた!?

力を失い、地面に叩きつけられる敵IS。最初の殺人はあっけないものだった。

 

「や、やっちまったのか。俺……」

『あー、大丈夫大丈夫。こいつ無人機だわ』

「解るのか?」

『うん、このISからは魂の気配を感じなかったからね。それに、ほら』

 

撥ね飛ばされた首が俺の前に落ちてきて、俺はその首を掴む。断面を見ると、それは人間のものではなかった。

 

「はぁ、良かった。悪い意味で童貞卒業したのかと思った」

『だったらいい意味で卒業してみる?』

「二人が生きてたらそれもアリだったんだがな」

 

そんな事を言いながら俺は地面に降り立つ、そこでは早速せっちゃんが無人機を調べていた。

 

「早速ですか、研究熱心ですね」

「……藤木、この機体に見覚えがあるか?」

「いや、ないですけど。誰が作ったのかは一目瞭然ですけどね」

 

この機体が無人機であること、以前戦った無人機とデザイン的な共通点が多々あることからこれはあの兎さんが製作したものに違いない。しかし以前と違い、勝負は一瞬でついてしまった。それも織朱のお陰であり、ひいてはせっちゃんのお陰というものだ。

 

「まぁ、そうだな。ふむ、とりあえずこれは我々で回収しておくか」

「そういえば以前も無人機を回収したことがありましたけど、あれってどうなったんですか?」

「研究のために解体した、色々と新しい発見があって有意義だったよ」

「ふーん」

「藤木、早速で悪いんだがIS学園に急行してくれ。もしかしたら学園も襲われているかもしれない」

「あっ、そう言えばそうだ」

 

IS学園、そこはイベント事があると何らかの勢力に襲撃される我が国屈指の危険地帯である。そして今日もタッグマッチというイベントが開催されているわけで。

 

「やっばい、もしかしたらラウラとシャルロットが危ないかも」

「ああ、そして織朱の力を見せつけてやれ。それと学園に着いたら頼みたい仕事があるんだが」

「頼みたい仕事?」

「そうだ、無人機が何機居るかは検討はつかないがそのコアを回収してきてくれ。出来るだけ多くな」

「家に火がついていれば、泥棒してもバレにくいって事ですか。そしてそのコアでヴァーミリオンを量産すると」

「その通り。それにISコアは世界屈指の貴重品だ、色々と役に立つ」

 

ISコアの製法はあの兎さんしか知らない、そして現在世界に正式に登録されているコアはたったの467個。新しいコアを1個でも多く発見できればそれだけその所持者は大きな力を持つことになる。そして今三津村が保有しているコアはグループ合わせてたったの五個、そのうち三個は俺とシャルロットと有希子さんに振り分けられており、自由に使えるコアはたったの二個しかない。

 

「OKボス、それじゃ行ってくるぜ」

「くれぐれも怪我をしないようにな」

「大丈夫、今の俺は最強ですから」

 

そう言った後、俺はIS学園に向けて飛び立つ。しばらく飛ぶと、IS学園の方向から大きな爆発音が聞こえる。どうやら急いだ方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「山田先生! 聞こえますか!?」

『ふ、藤木君!? 一体今どこに』

「IS学園に急行中です! そちらはどんな状況ですか?」

『どうもなにも……現在五体の無人機に襲撃されています、各タッグチームがアリーナに閉じ込められたままで……』

「アリーナに閉じ込められた、か……アリーナ内部に侵入する方法はあるんでしょうか?」

『いえ、今の所は私では手の打ちようがありません……アリーナには最高レベルのロックが仕掛けられているようですし』

 

無人機の襲来、閉じ込められた専用機否が応でもクラス代表戦の出来事を思い出させられる。

 

「ロックの解除は不可能と」

『はい、今専門のスタッフが対処していますが時間が掛かりそうです』

「そりゃやばいな……」

 

無人機ならどうとでもなるがアリーナのロックは俺でも手出しが出来ない。

そんな事を考えている間でも俺は飛び続け、IS学園に近づく。今話している山田先生もようやく目視できる距離までやって来た。そして俺はISを装備した山田先生を中心とした教師陣の輪の中に着陸した。

 

「何か効果的な対処法は……あったらやってるよなぁ」

「そうですね……」

「敵の配置はどうなってるんですか?」

「はい、各タッグチームに一機割り当てられているようになっています。そして更識さん姉妹と織斑君、篠ノ之さんが同じアリーナに居ますのでそこには二機居るという事に」

「まぁ、そこは問題ないでしょう。たっちゃんが居ますからね、あれそんなに強くなかったし」

「強くなかった、とは?」

「ついさっき一機斬ってきました。まぁ、こいつの力なら楽勝ですよ」

 

そう言って胸を張ってみる、そして山田先生は今になってようやく俺がいつもと違うISに乗っている事に気付いたようだ。

 

「あっ、藤木君また専用機替えたんですね」

「はい、また替えちゃいました。今回のはすっごい強いですよ」

「へぇ、すごーい……って、そんな事じゃなくてですね!」

「ああ、俺も襲われたって事ですよ」

「そういうのは先に言ってもらわないと」

「今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ、と言っても打つ手なしか……」

『藤木君、ちょっといい?』

「ん?」

 

俺の脳内からゆうちゃんが語りかける、俺は山田先生に怪しまれないように何もないような素振りをしながらそれに耳を傾けた。

 

『ああ、今は私達に話しかけないようにね。気付かれると色々面倒だから』

『実は今デュノアさんとボーデヴィッヒさんがいるアリーナですが進入方法があります』

 

俺は山田先生から離れて背を向ける、山田先生も状況把握が忙しいのか俺に構うような事はなかった。

よし、ここなら子声で話せば気付かれないだろう。

 

「どういう事だ?」

『昔言ったこと憶えてる? 私達がIS学園の事情通だってこと』

「幽霊だから学園内の見たいもの見放題てことだろ?」

『はい、それで実は今二人がいるアリーナの真下には廃棄された工事用の通路が通ってるんです。そこからならアリーナ内部に侵入出来るかと……』

「ほう、中々いい情報だ」

『そしてそこを経由すれば今度はオルコットさんと凰さんのいる場所まで行くことが出来ます』

「なんというご都合主義だ、そしてそこから今度はどこへ行けるんだ?」

『いえ、そこからはもう何処へも……』

「まぁ、いいか。あとは二年のイトノコ先輩と三年のばいんばいん先輩ペアとたっちゃん率いる四人組みだ、多分大丈夫だろう」

『酷いあだ名つけてるんですね』

「一応、両者公認のあだ名だぞ。以前一回会った事があるからな。さて、行こうか」

 

というわけで早速行こう、俺は山田先生に見つからないように静かにその場を離れていく。

 

『先生方と一緒に行かないんですか?』

「俺の任務はISコアを回収することでもある、先生達に見つかるとヤバい。ということで一人で行くぞ」

『まぁ、私達がついてるから問題ないか』

「そういう事、頼りにしてるからな」

 

先生達から十分離れたところで俺は静かに飛び立つ。さて、ミッション開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「砕け散れぇぇぇぇ!」

 

ラウラの大口径リボルバーカノンが連続で火を噴く、爆音と轟音を響かせながらその弾丸は無人機の方に向かっていくが無人機はそれを予測していたかのように回避する。

 

「ラウラ、ダメ! 下がって!」

 

僕の叫びも空しく無人機は一気にラウラとの距離を詰める、そしてラウラを切り裂くためのブレードは既に振りかぶられていた。

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)!? しかも、この出力は――」

 

ラウラは驚愕し、防御体勢すら取れていない。そして僕がラウラを守るにはその距離は遠すぎた。

 

「ラウラぁぁぁぁっ!!」

 

数瞬後にはラウラはあのブレードに切り裂かれる事になるはずだ。しかし、そんな時無人機の真下の地面が爆発したかのように弾け飛んだ。

 

「大丈夫か、ラウラ」

 

数秒後、爆発が巻き起こした土煙が晴れる。そこには見たこともないような、しかしながらどこか見覚えのあるデザインのISを纏った紀春が立っていた。

 

「あ、兄?」

「おう、お前を助けるために最強のお兄ちゃんが帰ってきたぞ」

「紀春、後ろっ!」

「ああ、それなら大丈夫だ」

 

紀春の真後ろに立つ無人機が紀春を撃とうと両腕を突き出す、しかし紀春はそんな事に動じることなはなく背を向けたままだ。ビームが発射されようとするその瞬間、無人機の両腕は二本のビームによって射抜かれる。

そして紀春は怯んだ無人機に対し振り向きざまに正拳突きを放つ、無人機は細かなパーツを撒き散らしながら吹っ飛んだ。

 

「しかし、相変わらず脆弱だな。この無人機は。俺を満足させてくれる敵はいないものか」

「その無人機に僕達相当梃子摺ってたんだけど……」

「まぁ、今の俺はマジで最強だからな。そうなるのも致し方無しか」

 

そんな事を言ってると不意に紀春とラウラの目が合う、その視線にラウラはびくっと体を震わせた。

 

「あ、兄……私は……」

 

ラウラが俯く、ラウラと紀春があんな事になってから二人は初めて再会するわけでその気まずさは僕が推し量れるようなものじゃなかった。

 

「よう、ラウラ。元気だったか?」

「ま、まぁそれなりに……」

 

まるで何もなかったかのように微笑む紀春に対し、未だ俯いたままのラウラ。ラウラの手助けをしてあげたい気持ちもあるけどこれはラウラ一人で乗り越えなければならない問題だと思う。

 

「あ、兄っ! 本当にすまなかった! 私が無知なばかりに兄を傷つけてしまった」

「ああ、そんな事気にするな。俺はお前の誤解が解けたんならそれで充分だ」

「し、しかしだな……」

「ラウラ、俺達は家族だ。でもな、家族だからってその人となりを全て知ることなんて出来ない。今回はそのせいで不幸な行き違いがあっただけだ、お前が気にするような事じゃない」

「…………」

「だからさ、今後はお互いのことをもっと知るように努力しよう。家族として暮らす以上これからも似たような事が起こるだろう、だからもっとお互いを知ってこういう事が起こるのを少なくしていこう。そして互いにより多くの事を許しあえるようにしていくんだ」

「あ、ああ……」

「ほら、問題は解決したんだからそんな辛気臭い顔するな。俺はラウラの笑った顔が一番好きだぞ」

 

そう言われてラウラはぎこちない笑みを浮かべる。ラウラとしても何かしらの罰を受けるつもりでいたのだろう、あまり納得はしていないようだったが紀春がもう許すと言ったのだからもう僕達には何もすることが出来ない。

そんな事を言ってる紀春の両肩に新しい装備が飛んできて装着される、あれが無人機を止めたビームを放ったとすると……

 

「紀春、それってもしかして……」

「ああ、ビット。俺の心強い味方だ」

「兄はビットまで軽々扱えるのか、益々凄いな」

 

いや、凄いなんてものじゃない。ビットは本来セシリアの専売特許みたいなもので、それを扱えるようになるには元々備わっている特殊な才能と気が遠くなるほどの訓錬を経て初めて使えるようになるものらしい。そんなセシリアの努力の結果を今の紀春は軽々と扱えるようになっている、凄いどころかむしろおかしい位だ。

 

「でも、ビットって……」

「まぁ、ちょっとした裏技を使って動かしてる。今は話せないけどいずれお前達にも教えてやれるはずだ」

「それを使えば私達もビットを扱えるようになるのか!?」

「いや、これもかなり特殊な物でね。多分俺以外じゃ扱うの無理なんじゃないかな?」

「ふぅむ、それは残念だ……」

 

ラウラは残念そうにしているけど、仮に今ここにセシリアが居たのなら彼女はほっとしているに違いない。なにせ彼女の努力の結晶が今後誰にも簡単に扱えるようになったとするなら可哀想すぎる。

 

そんな会話をしている僕達の遠く後ろでなにやら動く物体を僕は発見する。あの無人機だ、どうやらまだ倒しきれてはいなかったらしい。

 

「紀春、また無人機が」

「ああ、把握している。お前達は下がってろ、俺が片付けてやるから」

「しかし、私達も……」

「妹ならお兄ちゃんのいう事は聞きなさい、そもそもお前ら怪我してんだろ」

「ぐっ、まぁそうだが……」

 

紀春が振り返ると同時にブレードを構え突撃してくる無人機、そのスピードは今まで見てきたISの比ではない。しかしそれに対する紀春はさも余裕と言った表情だ。

 

「遅いっ!」

 

一瞬の交錯の後、無人機の両腕が吹っ飛ぶ。紀春はいつの間にか緑色の刃を持つ剣を握り締めていた。

 

「そして、サヨナラ!」

 

振り向きざまにもう一度剣が振るわれる。一瞬の静寂の後、今度は無人機の首と下半身が切り裂かれる。えっ、一度剣を振っただけなのに二箇所切り裂かれるってどういう事?

 

「最後に、ゲットだぜ!」

 

そして残っている胴体が剣を持っていないほうの腕で貫かれる、オーバーキルもいい所だった。

 

「おおっ、まさに瞬殺だな」

「最後の一撃は余計だった気もするけど」

「おいおい、一々いちゃもんつけてくんなよ。一応こっちはお前らを助けてやってる身だぜ?」

「ご、ごめん……」

「まぁいいって。というわけでお前らは帰れ、俺が来た所から外に出られるはずだ」

「紀春はどうするの?」

「俺は別の隠し通路を通ってセシリアさんと鈴を助けに行かなきゃならん、というわけで一旦ここでお別れだ」

「ついていく、と言っても断られるんだろうな」

「当たり前だ、今は俺一人で充分だから早く帰って怪我治してこい」

「うん、だったら気をつけてね」

「気をつける事が出来る程度の敵が出てくればいいんだけどな」

「そんな事言ってると本当に怪我するよ?」

「ほいほい、気をつけまーす」

 

そんな紀春の軽口を背に僕とラウラは紀春が作った大穴に潜り込む、そこは一面真っ暗だった。

 

「うわ、なんだか怖い」

「それにかなりカビ臭いな、かなり長い間使われてなかったんだろう」

 

そんな言葉を背にしながら僕達は暗闇を進んでいく、しばらく歩くと光が見えてきた。きっとそこが出口なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃ~これで一仕事終わりか」

「わ、わたくしの専売特許が……」

「いいじゃん、セシリアさんも新しい専売特許の曲芸ビームがあるんだから。今後はそれで頑張って」

「そ、そうですわね……」

「しっかし、あの通路どうにかならなかったのかしら? お陰で髪の毛が埃だらけよ」

「そんなのどうとでもなるだろ。さて、先生達の所へ行ってこい。俺は学園内をパトロールしてるから」

「解った、あんたも気をつけなさいよ」

 

そう言った鈴はセシリアさんを引き連れ飛んでいく、これでミッションコンプリートだ。

俺はシャルロット達と別れた後、また別の工事用地下通路を通りセシリアさん達を華麗に救出し、ここまで戻ってきた。もちろん肝心要のISコアはドサクサに紛れて回収済みだ。

 

『藤木君、あまり良くないお知らせがあります』

「どしたの霊華さん、俺は全然大丈夫だが」

『藤木君は大丈夫でも楯無さんはそうでもないみたいです。今楯無さん達がいるアリーナ、かなり劣勢に追い込まれてるみたいです』

「なにっ?」

 

IS学園生徒会長更識楯無、その力は学園最強に相応しく俺は幾度となくその力を目の当たりにしている。幾ら織朱が強いといったところで、実際今の力でたっちゃんに勝てるかといわれれば少々疑問が残るところだ。そんなたっちゃんが劣勢に追い込まれているとは俄かには信じ難い話だった。

 

「……兎に角、そこまで行ってみよう」

『そうですね、何か出来る事があるかもしれません』

 

その言葉を聞きながら俺は飛び立つ、何か出来る事があればいいが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ、劣勢どころじゃねーじゃねーか」

 

俺はアリーナ内のいくつかの隔壁を破壊しながらカタパルトまで移動してきた。しかしここから先は通行止めだ、アリーナのシールドが行方を塞いでいるのだ。

 

アリーナの内部を眺めるとたっちゃんが倒れているのを見つける。一夏、篠ノ之さん、簪ちゃんが無人機からたっちゃんを守るように陣形を組んでいるがこれがいつまで持つのだろうか。

とはいえ、今は俺も手の出しようがない。一夏に頼んで零落白夜でアリーナのシールドを破壊してもらえればいいのだが、ご丁寧にジャミングによって通信をすることも出来なかった。

 

「どうしよう……」

『地面を掘ってアリーナの下から侵入することなら可能だけど』

「そんな事やってたら日が暮れちまう、もっと現実的な案をだな……」

『はっきり言ってないです、もしくは織斑君にジェスチャーで意思疎通を図ってみますか?』

「あいつ、一つのに付きっ切りになると周りが見えなくなるからな……あれ、これって詰んでね?」

『詰んでますね……』

 

そのときだった、無人機を狙った一夏の雪羅があろうことか俺達の目の前のシールドを焼き尽くす。

つまり、今俺達はアリーナへの侵入が可能になったわけである。

 

「おお、なんというご都合主義」

『ぼやっとしてないで、早く行かないと!』

「はいはい、行きましょ行きましょ」

 

アリーナ内部に侵入成功したはいいものの早速一夏がピンチだ、無人機が一夏の正面に迫りブレードを振りかぶっている。

 

「やばいね、という事でお助けしましょうか」

 

迅雷跳躍を使い、一瞬にして無人機の背後を取る。そして俺はその勢いそのままに超振動を発動させ無人機の背中にエムロードを突き刺した。

なんだ、たっちゃんを倒したというからこっちの無人機は特別製だと思っていたのにこんなもんか。今の俺には失望しかない、俺を滾らせる事が出来る相手なんて今後出てくるのだろうかという気持ちにもさせられる。

 

「乾く、乾くねぇ……こんなんじゃ全然滾らないじゃないか」

 

そんな言葉が口から出ると同時にエムロードを引き抜き無人機の背中の切れ目から腕を差し込む、いままでの経験上ISコアのある位置は大体把握しているので簡単にISコアを掴むことが出来た。四個目、ゲットだぜ。

ISコアを引き抜くと無人機は糸の切れた人形のように力なく倒れる、そしてその向こうには目を丸くした一夏が膝をついていた。

 

「だ、誰だ……」

 

誰だとは失礼な、自分の友人の顔を忘れるなんて一夏も冷たい奴だ。しかし、誰だ……か。どう答えたものだろう、ここは『俺、参上』とか『通りすがりの男性IS操縦者だ』とか言ってみようか。いやいや、それはやめとこう。パクってるのがばれたら恥ずかしい。うん、ここは普通に自己紹介が無難だな。

 

「俺か? 俺はオリ主だ」

 

なんだか変なことを言ってしまった気がする、オリ主って一夏に言っても解らないだろう。いや、幸いにも今の俺のISは織朱だ、後で『俺がガンダムだ』的なノリだったと釈明すれば全く問題はないな。結局パクリには変わりないけど。

 

「おり……しゅ?」

 

一夏はまだ目を丸くしている、それに対して俺は一夏に微笑んでみせた。


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