現代に生きている一行の子孫?が登場
道場に放り込まれて、早2ヶ月、ようやく身体が慣れてきたところだ。剣術の方が段々と厳しくなってきた。
柔道と合気道、それに柔と空手に関しては合格をもらったが、剣術だけは未だに合格がもらえていない。
師範から「お前は心に何か引っ掛かりを抱えている」と言われてしまった。それは自覚している、恐らく珊瑚さんの事だ。
俺は珊瑚さんと別れる際に自分の気持ちを告白した。それが届いているかは分からないままに。
今思うと本当に珊瑚さんを好きになっていたのかと考える時がある。ただ憧れていただけなのでは?とも。
「よし、本日はここまで!残って練習する場合は一言声を掛けるように」
全体練習が終わり、一般の人達と共に自主練習を開始する。俺が教わっている場所は式神使い専用の道場で少し狭い。
そこから出て一般の人達にも教えている道場へ移る。そこでは竹刀を手に何度も素振りを繰り返す人、実戦的な稽古をしている人など様々だ。
「さて・・・と」
俺が向かった場所は居合いを練習する場所だ。基本の型から何度も居合いをして鞘に納める動作を繰り返すだけの稽古。
それだけでも長時間やっていれば、身体にかかる負担は大きくなる。その為に休憩しながら稽古を続ける。
そんな休憩時に思わず目で稽古を追ってしまう同年代の女性がいた。そう、その女性はあの珊瑚さんにそっくりだったから。
まるで、そのまま戦国時代から来たのでは?と疑いたくなるほどだった。視線に気がついたのかこちらへ向かってくる。
「あれ?枢木君?」
「え・・・ああ、えっと」
「忘れたの?同じゼミの藤乃森、だってば!」
「ごめん、俺は課題を終わらせてすぐ帰ってたから」
「そういえば、実家が神社だものね。仕方ないか」
そう言って藤乃森さんは隣に座ってきた。髪の縛り方といい、仕草といい珊瑚さんと本当に似てる。全くの別人なのに。
「なんで、藤乃森さんはこの道場に?」
「私の実家にも仕来りがあってね?10歳から通ってるんだ。なんでも初代様の武器を扱えるようになれとか」
「初代様?」
「その話は後でね?私は稽古を再開するから、それじゃ!」
話をはぐらかされてしまった。稽古をしているのは剣術と槍術のようで相当に鍛錬しているのだと今の俺にならわかる。
「俺も自分の稽古に集中しよう」
そう考えて、素振りと居合の動作の稽古を時間ギリギリまでずっと続けていった。
◇
同時刻、戦国。
戦国時代では犬夜叉達が奈落の仕向けた妖怪の群れと戦っていた。数で攻めて来ている為に弥勒は風穴を開き、珊瑚は飛来骨と呼ばれる武器で群れをなぎ払う。
「数が多すぎる!風穴を開き続けるのも限界だ・・・!」
「はぁ、はぁ・・・もう、これ以上は」
「矢が・・・もうない!」
「みんな、退いてろ!風の・・・・傷!!」
一振りで百の敵をなぎ払う妖刀、鉄砕牙。その基本技である風の傷によって妖怪たちの大半が消滅した。
だが、それでも妖怪達はしつこく楓の村に迫って来る。犬夜叉達が防衛している箇所を突破されてしまえば村は壊滅してしまうのだ。
「こいつら!」
「どうやら、この妖怪達は我々を消耗させるためにあてがわれたものようですな!」
「っ・・・!こんな時に彼がいたら」
「でやああ!っ居ねえ奴の事を言っても仕方ねえだろ!?かごめ!」
「オラがしっかりせねば、狐火!!」
七宝も犬夜叉達の援護をするが、ほとんど意味を成さない。こんな時に式神使いの彼がいればと思ってしまうのも無理はない。
式神によって自然の加護を受けた戦いでは、一人一人が一騎当千の強者のように戦う事が出来た。風の式神によって動きの鈍さが軽減され、水の式神において傷が回復し、炎の式神によって消滅と弱体化を可能にし、光の式神においては護りの加護を分け与えられた。
それ程までに自然の加護というものは心強い。だが、真嗣が現代に帰ってしまった今、それを受けることは出来ない。
そんな時、一本の矢と共に何かが空から飛来してきた。妖怪達はそれを恐れるかのように退散していってしまった。
「破魔の矢・・・桔梗か?」
「犬夜叉・・・」
「なんじゃ?これは?」
「七宝、どうしました?」
「何か、刀のようなものが地面に突き刺さっておるんじゃ」
「確かに古そうだけど、確かに刀だね」
七宝が指摘した場所には確かに少し古びた刀が突き刺さっていた。装飾された形から宝刀とも言えるだろう。
「なんでえ、ただの古びた刀じゃねえか」
鉄砕牙の変化を解き刀の姿に戻すと鞘に収め、古びた宝刀に近づくとその柄を握り、犬夜叉は剣を抜こうとした。
「おわっ!?」
「犬夜叉!?」
握った瞬間に刀から弾かれてしまったのだ。まるで妖怪が犬夜叉の鉄砕牙に触れた時に発動する結界のように。
「どうやら、刀自体に結界があるようですな・・・私でも触れられないくらいの強い物のようです」
「法師様でも?」
「恐らくは持ち主を選ぶ刀なのでしょう。む?これは・・・五色!?」
「五色じゃと?」
「んだよ、五色ってのは?」
「五色とは色彩による、地水火風空を表したものです。それぞれの性質によって世界が回っている事を意味しているのです。しかもこれは刀自体が五色そのもの、地水火風空を鎮められる者でなければ扱えません」
「なるほどね。それを鎮めることの出来る人間じゃないと無理って事なんだ」
弥勒は法師としての知識から、この刀が陰陽五行、地水火風空の加護を受けている事を見抜いた。
それだけに、妖怪や法師としての力があまり強いとは言えない自分では扱えないのだ。どうやって引き抜くか思案していると、かごめが刀に近づいていく。
「かごめ?」
「なんだか、刀が私を呼んでいるみたい」
かごめが近づく度に刀が脈動する。まるで自分を引き抜いてくれと言わんばかりに。かごめは柄を両手で握り引き抜くと尻餅をついてしまった。
「痛た・・・あ、刀が抜けた」
「かごめ様は桔梗様と同じ浄化の力を持っておりますからな、刀も認め・・・・なっ!?」
「かごめ、その刀」
「鋒が」
「折れてる?」
折れていてもあれだけの力があったのが驚きだ。皆が夢中になっていると空から三つ目を牛が降りてくる。
「刀々斉様?」
「なんじゃと?」
刀々斉、犬夜叉の持つ鉄砕牙を鍛えた刀鍛冶の妖怪である。彼の目はかごめが握っている刀に注がれていた。
「かごめ?・・・随分と懐かしいモンを持ってんなぁ。その刀どこで見つけたんだ?」
「え?」
「そいつは五色五行刃。このワシが人間に初めて打ってやった刀よ」
「なんだと!?人間に打ってやった刀!?」
刀々斉から衝撃的な言葉を受ける。今、かごめが手にしている刀の名称と人間に対して制作した刀だという事実を明らかにされたからだ。
「どういう事だ!?刀々斉のジジイ!?」
「まぁ、先ずは話を聞け。その五色五行刃はな、式神を扱う者や巫女に対して作った物なんだよ。最も使いこなせた奴は片手で数えられる程しか居なかったけどな」
吠える犬夜叉に対し、刀々斉は飄々とした様子でそれを受け流しつつ、話を進めた。
「依頼してきたのは一人の巫女だったんだがな、五色の柄巻きと四神の属性を持った物を使ってひと振りの刀を作ってくれと。そうして出来たのが五色五行刃ってな訳だ。こいつを作るのにワシでも三ヶ月を費やした程だ」
「三ヶ月も?」
「青龍水、玄武水、白虎土、朱雀炎といった物まで持ち込んできたからな」
「それで出来たのが、この刀だったて訳ね」
「ん~、なんだ?そいつ、鋒が折れちまってるじゃねぇか」
五色五行刃を見て、少し落胆したような様子で見定めていた。それに反してかごめが話しかける。
「直せないの?」
「繋ぎがあれば直せねえ事もねえが、その繋ぎになる物がねえなら直せねえな・・・。仮に直ったとしても自然の式神を使える奴はいねえし、扱えるとしたらかごめ位のもんだろ」
刀々斉自身も残念そうに話している。やはり自分の作った刀に愛情があるのだろう。
「そっか・・・・」
「とりあえずそれはおめえさん達が持っていな。繋ぎが手に入ったら鍛え直してやる」
それだけを言い残すと刀々斉は帰っていってしまった。式神使いと聞いて、皆が思い浮かぶのはもう一人の仲間の事だった。
「アイツの為の刀・・・かもな」
「そうね、でも・・・」
「あやつには此処に来るための繋がりがない」
「そうだね・・・」
「もどかしいのう。アイツの為の物が出てくるのに本人がおらんとは」
戦いも終えた一行は楓の村へと帰宅を早める。疲れもある状態のために早めに休もうと、かごめに提案されたのだ。
そして、皆が骨喰いの井戸の前に集まる。もう一度、戻ってきて欲しいという願いを込めて。
戦国へ連れて行く相手を少し出しました。
まだ戦国へ向かうための縁が薄いので飛びません。次回には跳びます。
願った仲間が現れ、もう一度再燃する恋。同じ相手同士の勝負。
次回!戦国お伽草子、犬夜叉
「再び戦国へ、旅の共の名は珊瑚!?」
お楽しみに!