特訓をせがむ。
戦国時代へと飛ばされてから数日、真嗣と彩水は犬夜叉達や楓の手助けもあって新しい生活にも慣れてきた。
「っと、この薪を運んでおくよ」
「おう、悪いな」
犬夜叉が鉄砕牙で割った薪を真嗣が運んでいる。現代とは違い戦国時代では自分の出来る事をやらなければならない。
かごめは料理を担当し、珊瑚と彩水は小川で洗濯、弥勒と七宝は山菜取りなどを行っていた。
昼食の時間となり、全員が集まる。昼食は質素だが時代からすれば、かなりの豪勢なメニューだろう。
「そうだ!ね!ね!真嗣くん、勉強見てもらえる!?今度、学期末のテストがあって!」
「数学?それとも国語?」
「数学でお願い!真嗣くんと彩水ちゃんの勉強の教え方、すごく解りやすいから、お願い!」
両手を合わせてお願いしますの格好をしてくるかごめさん。中学校の勉強は基礎は覚えるまでやっていたし、なんとかなるだろう。
「わかったよ。彩水さんもお願い」
「任せておいて!」
「おめえら、かごめに何を教えてんだ?あの訳の解らねえ本で」
「かごめさんに勉強を教えるだけだよ」
「そうそう、かごめちゃんは試験があるからね」
「妖怪の昇段試験と同じなのか?」
「似たようなものだよ」
七宝の質問に真嗣は答えつつ、夕食を口にして飲み込む。夕食後、勉強机の代わりになる台を準備する。
今回は国語が彩水で、数学が真嗣だ。他にも英語や社会、理科などもあるが、元々かごめの学力は学年30位以内に入る位のものなので、コツさえ教えれば理解が早かった。
戦国時代との行き来で勉強する時間が少なくなってしまった。それゆえに学力が下がってしまったのだ。
だからこそ、真嗣と彩水は少ない日数で効率よく記憶ができ、予習復習が出来るかのスケジュールなどを考え、かごめの勉強に協力している。
「ありがとう!二人のおかげで、なんとか試験もクリアできそう」
「かごめちゃんは勉強できる時間がなかっただけでしょ?元々、学力は高い方みたいだから」
「覚えが早いしね。かごめさんは中学三年生だし、高校受験もあるでしょ?それに備えての勉強も教えるから」
「本当にありがと~!二人には感謝しても感謝しきれない~!」
感動で嬉し涙を流しながらお礼を言うかごめ。真嗣がかごめをさん付けしているのは肉体が若返った事もあるが、以前と同じ呼び方でいい?とかごめが聞いてきたのが発端であった。
本来なら現代において年上になっている真嗣を君付けで呼ぶのは失礼かな?と考えたが、お互いに構わないと合意の上で納得したのだ。
此処は戦国時代、15歳と16歳の年齢差など無いにも等しい。だからこそ、気軽な関係も築きやすい。
「じゃあ、少し休憩したら数学だね。それから予想用のテストも作っておいたから、数学が終わった後にテストするよ」
「うん!」
◇
真嗣とかごめを見ていて面白くないのが犬夜叉だ。仲が良く見えるのでヤキモチに近いのだが、彩水と共に学問を教えていると言われてしまい、渋々納得している。
「けっ、やっぱ面白くねえ」
「そう言うな、犬夜叉。かごめ様は自分の国の学問をあの二人から学んでいるのだ。試験とやらのためにな」
「わかってんだよ。けどな」
「邪魔する訳にいかないだろ?楽しそうに見えて、かごめちゃんは真剣に学問に取り組んでるだから」
「う・・・」
弥勒と珊瑚に戒められ、バツが悪そうになる犬夜叉。それでもやはり男としては自分の近くにかごめが居て欲しいと思うのだろう。
「相変わらずガキじゃのう・・ふげっ!?」
「七宝、お前は一言多いんだよ!」
犬夜叉からのゲンコツを受けて、七宝は泣き出してかごめに声をかけた。
「うわああ!かごめー!」
「!あーもう!犬夜叉!おすわり!!」
かごめの言葉に犬夜叉が身に付けている念珠が光り始め、犬夜叉を下へと引っ張る。
「ぎゃふっ!?」
思い切り犬夜叉は下に叩きつけられ、彩水は驚き、真嗣はこれもまた懐かしいといった表情で見ていた。
「二人共、テストを続けて?」
「あ、うん」
「わ、わかったわ」
気にせずに模擬テストを再開し、採点すると国語が85、数学が94点だった。満点が目標ではあったが、採点した二人からケアレスミスがあったと指摘される。
「高得点ではあるけど、満点を取れるようにしないとね」
「うん、真嗣くんの言う通り」
「厳しいわね、二人共。だけど、似たような問題を続けてて大丈夫なのかぁ・・・」
かごめの不安は最もだろう。何故なら基本となる部分の反復する復習と成果を見るテストしか行っていないのだから。
「先ずは基礎学力を固めないと。基礎がしっかりすればどんな問題が出てきても大丈夫なはずよ」
「先へ先へ進む事も大切だけど、勉強だけは基礎を固めてからじゃないと問題は解けないからね?」
「う・・・おっしゃる通りです」
流石は大学生をしていただけあって、かごめの勉強に対する不安を二人は的確に見抜いてきた。
勉強が遅れてしまっている今は基礎を固めることが大切と言われてしまったのだ。試験まではまだ、学期末のテストまで三ヶ月近くある。学力を追いつかせ、高校受験に間に合わせる事は十分可能だ。
「それじゃあ、今日の勉強は此処まで!お疲れ様、かごめちゃん」
「うーーーーん!自宅で勉強するよりも捗るなんて、家庭教師が二人だからかな?」
かごめは身体を伸ばしつつ、勉強で凝り固まった身体をほぐし始める。教えていた二人も同じで身体を伸ばしている。
「そんな事ないよ。明日は暗記物の方をやるからね?」
「はーい」
そんなこんなで、かごめの勉強時間は終わった。あまりやりすぎても身につかない。程良く息抜きも大切なのだ。
勉強を終わらせた後、彩水は珊瑚の所へと向かっていた。一人で訓練しているというので丁度いいと考えた。
「珊瑚・・ちゃん!」
「ん?ああ・・・彩水ちゃんか。どうしたのさ?」
「あのね。私を鍛えて欲しいの」
「え?鍛えるって・・・戦えるように?」
彩水は頷くと珊瑚に自分を鍛えて欲しい理由を話し始める。
「うん、このままだと何も出来ないままだから。それに、ね。もし、帰れた時に初代様と一緒に戦えたなんて伝えられるじゃない!」
「変だね、アンタは・・。それじゃ、私の故郷で鍛えてあげるよ。その前にみんなへ報告しないとね」
そう言うと戦闘服のまま珊瑚は彩水を伴って、村へと戻り始めた。
◇
「なにぃ?鍛えるだぁ?それでわざわざ珊瑚の故郷に行くのかよ?」
珊瑚からの報告を聞いて、反論したのが犬夜叉だった。戦力が減ってしまう事を考えての反論なのだろう。
「確かに、ただ鍛えるだけならば我々だけでも事足りると思うのだが?」
「私が直々に鍛えたいんだ。それに・・・」
「なんじゃ?」
「私の生まれ変わり、子孫だってことを詳しく聞きたいというのもある」
珊瑚はどうやら現代での自分はどう伝えられているのか気になる様子だ。かごめと同じ境遇となったことで好奇心が強く出たのだろう。
「良いんじゃないかしら?しばらくは大丈夫みたいだし」
「かごめ、簡単に言うがよ」
「真嗣くんもフォローしてくれるって言うし、ね?」
「犬夜叉、此処は二人だけの場を作ってあげようよ」
二人に説得され、犬夜叉がとうとう折れた様子でぶっきらぼうに答える。
「わーったよ。その代わり、しっかり鍛えてこいよ?」
「ありがとう、二月で仕上げてくるから行くよ雲母、彩水ちゃん」
「あ、待って!珊瑚ちゃん!」
変化した雲母に乗り、二人は妖怪退治屋の里へと向かっていった。それを見送った後に、かごめが思い出したように手を叩く。
「あ、そうだ!真嗣くんに渡すものがあったのよ!」
「え?俺に?」
かごめは頷くと大切にしている事が伺えるのが理解できる程、布に包まれた刀を見せた。
それは防衛の際、手に入れた五色五行刃であった。修復はされていないが、意志はまだ生きていることが分かる。
「これは・・・」
それを見て真嗣は刀をずっと見続けていたのだった。
◇
その頃、珊瑚と彩水は雲母を連れて、妖怪退治屋の里を訪れていた。珊瑚は真っ先に自分の父が眠っている墓へと向かった。
「みんな、此処に私の生まれ変わりが来てくれたよ」
退治屋の里は妖怪に襲われ、相打ちになって全滅してしまっており、武具や鎧、住居などは壊れかけているが、そのままの形で残っている。
墓はそのまま土葬した形になっており、道中で摘んだ花が添えられた。
「・・・・」
黙祷を終えると珊瑚は彩水に向き直り、自宅であった建物へと向かう。
「それじゃ、先ずは私の家で採寸を調べないとね」
「え?特訓するんじゃ?」
「その前に鎧が必要になるからね。ほら」
「え、あ・・ちょっと!?」
腕を引っ張られ、彩水は珊瑚の自宅で珊瑚に身体の隅から隅まで調べられ、珊瑚が着る戦闘服を合わせられた。
「私と変わらないね。それならこれが良いかも」
同じ戦闘服に着替えさせられ鎧も身に付けたが、細部や配色などが違っており、膝当てなどが濃い青色になっている。
「これが、戦国時代の戦闘服・・・思っている以上に軽い」
「それはアンタが鍛えてきたからだよ。かごめちゃんと同じ国の出身だけど、剣や槍をやっていたと言ってたじゃないか」
「あ・・・そうだった」
「さ、今日からすぐに始めるよ?基礎を固めたら武器を選ぶからね」
「よろしくね、珊瑚ちゃん!」
「わかったよ。でも、加減はしないからね!」
こうして、前世と生まれ変わりの存在という二人の特訓が始まった。
この後に、武器が手に入ります。
真嗣は試練を受ける事になります。
五色五行刃を鍛え直すために大気の精霊の力と勾玉の樹実が必要だと知った。犬夜叉達。
だが、その試練は刀を得ようとする式神使いにとって最大の試練であった。
次回!戦国お伽草子、犬夜叉
「復活、五色五行刃」
お楽しみに!