犬夜叉 時を繋ぐもの   作:アマゾンズ

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珊瑚と彩水の会話

鳳凰山の試練


復活の五色五行刃

楓の村を離れて、三日。私は今、珊瑚ちゃんが生まれ育ったっていう集落にいる。だけど正直怖い。

 

楓の村の時は慣れて来たのもあるけど、此処は廃墟も同然に近い。珊瑚ちゃんの生まれ故郷を乏したくはないけど、本音はやっぱり怖い。

 

「ごめんね、いきなり連れてきちゃって」

 

「え?あ・・・ううん。謝るのは私の方だよ。この世界に来てから助けてくれた真嗣くんにも謝ってないし、怖くなってるんだもの」

 

「そうだよね。私の生まれ里だけど・・・こんな事になってたら」

 

「ごめんなさい・・・」

 

「謝る事はないよ、キチンと説明していなかった私が悪いんだ」

 

珊瑚は彩水の心境を見抜いていたのだろう。どんなに明るく振舞っていても内心は恐怖や不安は消えていなかったのだ。

 

だからこそ特訓して欲しいと言ってきたり、かごめに勉強を教える事で現代を忘れまいと必死だった。

 

だが、一日一日が過ぎて朝を迎える度に現代ではない事を自覚させられ、それに押しつぶされかかっていたのだろう。

 

その証拠が彩水の手にあった、その手は血豆だらけで、潰れた跡がある。剣術の訓練を倒れる寸前まで続けていたのだ。

 

二日目の夜に珊瑚がそれを発見し、手当して休ませた。本人は訓練しないと、などを口癖のように言い続けて何も耳に入らなかったが、疲れから眠ってしまった。

 

そして今日の朝を迎えたのだった。

 

「彩水ちゃん」

 

珊瑚は近くにあった簡素な木刀を投げ渡した。退治屋の里の訓練の為の物だ。それを受け取ると彩水は不思議そうな顔をしている。

 

「その不安、あたしにぶつけて来なよ。受け止めてあげる」

 

「な・・何を言ってるの?私は・・・!」

 

「隠せて無いからさ。その手の血豆がいい証拠だよ?」

 

「っ・・・!何が・・・」

 

「っ!?」

 

「珊瑚ちゃんに、私の・・・一体何が解るって言うんだああああ!!」

 

木刀同士がぶつかり合い、二人のぶつかり合いが始まった。彩水の感情に任せた連撃を受け返していく。

 

「わからないさ!でも、その気持ちを受け止める事は出来るんだよ!」

 

「上から目線で物事を言わないでよ!いきなり訳も分からず別世界に飛ばされて、友達も家族も何もかも一瞬で無くなったのに!!」

 

「うっ!」

 

「このおお!」

 

彩水は連続攻撃を仕掛けながら、一切反撃を許さない。力で押し込んでいく型を身につけた剣術の最大限と言えるだろう。

 

最大限に感情が込められた彩水の連撃に、珊瑚は手が痺れる感覚を味わった。これ程までに彩水は自分の中に感情を押し込めていたのかと、だが。

 

「うわああああ!」

 

泣きながら向かってきた彩水を、その勢いに乗せて珊瑚は彼女を投げ返し、地面に叩きつけた後、抱きしめた。

 

「あぐっ!?な・・・・あ・・・?」

 

「家族に関しては解るよ。あたしも一瞬で失ったからね」

 

「え・・・・?」

 

「あたしも初めは騙されて犬夜叉達と戦った・・・弟の為に犠牲にしようともした。けど・・こうして、みんなが受け止めてくれたんだ。自分の事しか考えてなかったあたしをね」

 

「珊・・・瑚・・・ちゃ・・・ん・・・私」

 

「我慢しないで良いよ、此処にはあたし達しか居ない。思い切り泣いて良いんだよ?」

 

「わああああああん!ああああああ!!!」

 

彩水は珊瑚に縋り付いて大声で泣いた。珊瑚はそれを微笑みながら受け止め続けている、それはかつて自分がかごめにしてもらった時と同じように。

 

自分も里や家族を失った時こんな風に泣いたのだろう。生まれも時代も違うのに、もう一人の自分とも言える存在が、自分の腕の中で泣いている。珊瑚は不思議な感覚を覚えながらも、彩水が泣き止むのを待った。

 

「落ち着いた?」

 

「うん。ごめん・・・着物を汚しちゃって」

 

「洗濯すれば大丈夫さ。村に戻ったら真嗣にもちゃんと謝っておきなよ?」

 

「わ、解ってるってば!」

 

慌てた様子を見せたという事はかなり落ち着いたと言えるだろう。泣いて目を真っ赤にしている。

 

「それじゃ、朝餉にしようか?」

 

「うん、手伝うね」

 

二人で準備した朝餉を取りつつ、珊瑚は彩水に聞きたかった事を尋ねる。

 

「ねえ、彩水ちゃんが私の生まれ変わりだって事は分かったけど・・・子孫ならどうなるんだい?」

 

「それが、現代で家系図を見た事はあったんだけど、珊瑚ちゃんの名前は出てこないの。繋がりがあるというだけで」

 

「(もしかして?私じゃなく・・・家系は琥珀の方なのか?)」

 

「珊瑚ちゃん?」

 

「え?ああ、ごめんね?」

 

「ううん、私こそごめんね?珊瑚ちゃんが生まれ育った場所を怖いなんて」

 

「それは気にしないでいいよ。誰だってこんなのを見ればそうなるよ。それより今日から訓練は厳しくいくよ?」

 

「望むところだよ!でも、その前に・・・」

 

「何?」

 

「里の人達に改めてご挨拶したいけど・・・良いかな?」

 

「!ああ、大丈夫だよ・・!」

 

彩水は里の人間が丁重に葬られている場所へ向かう前に、少しだけ外に出て花を摘むと改めて、葬られている場所へ趣き、一つ一つ丁寧に花を手向け、手を合わせた。

 

しばらくして黙祷と手合わせを解くと彩水は謝罪の言葉を述べ始めた。

 

「ごめんなさい・・・怖いなんて言って」

 

二人は改めて特訓を始めた。鎖分銅の扱いから始めていき、戦闘服にある仕込み刀による近接戦闘などを一から鍛えた。

 

まだ心に引っ掛かりはあるが、二人の絆は確かに強くなっていった。

 

 

 

 

一方で真嗣は、かごめから五色五行刃を受け取っていた。柄を握ると僅かに脈動し、新しい所有者を待ちわびていたのかのようだ。

 

「刀・・・みたいだけど、鋒が折れてる」

 

「刀々斉の話じゃ、繋ぎになるもんが必要らしいぜ?」

 

「ただ、これだけ神聖であると相当な物が必要でしょうな」

 

「そうね。普通の刀なら、何とかなるかもしれないけど」

 

多少悩むと犬夜叉は真嗣の腕を掴み立ち上がらせた。それを受けて真嗣は驚きを隠せない。

 

「え?何?犬夜叉!?」

 

「決まってんだろ?刀を直しに行く。刀々斉の所にまで連れて行ってやるよ」

 

「え、あ・・ちょっと!?」

 

犬夜叉に引っ張られるまま、真嗣は刀々斉の済む火山の近くへと連れて行かれてしまった。取り残された三人は呆然としてしまっている。

 

「かごめ様?」

 

「あーもう!犬夜叉ってば、いっつも勝手なんだから!」

 

「あの・・・」

 

「弥勒、いかんぞ。この時のかごめは恐ろしいんじゃ」

 

「確かにそうですね・・・」

 

かごめを刺激しないよう、二人は二人だけで何とかする事にした。珊瑚も彩水み居ない今、かごめを鎮められる者は誰一人としていないからだ。

 

しばらくして火山に到着すると、二人は刀々斉が住んでいる巨大な妖魚の骨で出来た住処へと入っていった。

 

「居るんだろ?刀々斉!」

 

「おう?なんだ犬夜叉じゃねえか。何か用か?」

 

「今日は俺じゃねえ、用があるのはコイツの方だ。真嗣、こっちに来いよ」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「ん?今度はおめえさんが新しい五色五行刃の持ち主か。どれ見せてみな?」

 

「はい」

 

五色五行刃を手渡すと、刀々斉は真剣な面立ちで真嗣を見始めた。

 

「ふむ、今のコイツには属性が一つ欠けてやがるな」

 

「え?」

 

「真嗣っていったな?おめえさんには話してねえが、五色五行刃は五つの属性を持ってんだよ。式神に対応させるためにな。五色のうちの地水火風空、風の属性が今の五色五行刃に入ってねえんだよ」

 

話を聞いて、刀自体の力が弱いことを知り、驚くと同時に納得もできた。鋒だけが折れているなら修復すればいい。だが、属性そのものを失っているのなら話は別だ。

 

「なんとか出来ないですか?」

 

「出来ねえ事はねえが・・・」

 

「んだよ、とっと言えってんだ!」

 

「問題は真嗣、おめえさんが試練を受けるかって事だぜ?」

 

刀々斉は作業を一旦中断し、真っ直ぐに真嗣を見ている。まるで覚悟を試すかのように。

 

「試練?」

 

「鳳凰山にいる大気の精霊の力を貰えなきゃ、五色五行刃は完全に打ち直せねえ。繋ぎとなる勾玉の樹実も必要になる」

 

「なんでえ、そんなもん。すぐに取ってこれるじゃねえか」

 

「そうだなと言いてえが、犬夜叉。おめえ達が手伝えるのは道中までだぜ?大気の精霊と出会うのはこの坊主一人だけだ」

 

「え?」

 

「試練ってのは式神使いが、欠けた属性を手に入れる事なんだよ。歴代の所有者達の中にはその試練を乗り越えられずに命を散らした事もあった。最も力だけを追い求めた結果だがな?」

 

「っ・・・」

 

命を落とすかもしれない試練、そう聞いて真嗣は息を呑む。だが、五色五行刃は自分を選んでくれたのだ、だからこそ、その意思に応えたい。

 

「刀々斉さん・・・俺、その試練に挑むよ」

 

「ばっかやろう!命を落とすかもしれねえんだぞ!?怖くねえのかよ!?」

 

「怖いさ!でも・・・この試練から逃げたら俺はずっと逃げ続けなくちゃならない気がするんだよ!それに、怖いって証明は俺の足にあるよ」

 

「足?な・・・!」

 

真嗣の足は笑い続けていた。それこそ、その場から動きたくないとも言える程の震え方だ。今までは犬夜叉を始めとする仲間がいてくれた。しかし、この試練は一人であの大気の精霊の元へ行かなければならない。

 

それどころか、力をも手に入れなければならない。命を落とす危険もあると告げられれば、現代の出身である真嗣は恐怖して当たり前なのだ。

 

「おめえ・・・」

 

「それでも、行くよ・・・途中までみんなで行ってそこからは俺が行くから」

 

「しょうがねえな、一旦戻るぞ?」

 

「ああ、待ちな。こいつらを持っていけ」

 

刀々斉から渡されたのは五色五行刃と一本の刀だった。刀の方は飾りも何もなく、刀の機能性だけを追求したような感じだ。

 

「あの?これは?」

 

「影打ちだ。今のオメエさんには十分すぎるやつよ。そいつは守り刀としての力が多少ある。折れた時、また、ここに来たら俺に渡しな。五色五行刃を生まれ変わらせてやる」

 

「ありがとう、刀々斉さん」

 

犬夜叉に連れられ、楓の村に戻り試練の話を聞いた、かごめ、七宝、弥勒は大声を上げて反対した。

 

「何を言ってるのよ!?真嗣くん!そんな試練、危険すぎるじゃない!」

 

「そうじゃ!わざわざ五色五行刃を直すためとはいえ、命を粗末にするでない!」

 

「私も賛成しかねますな、別の方法を考えたほうがいい・・・!」

 

「みんなが心配してくれる気持ちは嬉しいよ。でも・・・この刀を直さないと」

 

真嗣の言葉に説得力は無く、逆に火へ油を注いでいるようなものだ。

 

「あの山の山頂の高さは知ってるでしょ!?どうしてそこまでするの!?」

 

「守りたいからだよ・・・」

 

「む?」

 

「守られるだけでいるのは確かにいいのかもしれない・・・でも、それじゃみんなに頼りすぎて、いざ自分でやるべき時に行動できなくなっちゃうのは嫌なんだ!それに、独りで身を守らなきゃいけない時も出てくるはずだよ」

 

「真嗣、お前・・・」

 

意地でも何でもない。自力で動けるようになっておきたい、それが真嗣の目的だった。その第一歩こそが五色五行刃の修復なのだ。力が欲しい訳ではない、己で己を守れるようになっておきたい、この試練はそれを身に付ける最大のチャンスなのだ。

 

「仕方ないわね・・・途中までは私たちが一緒に行くからね?」

 

「うん、ありがとう」

 

雲母が居ない為、二日かけて鳳凰山へたどり着き、山頂を目指す。七宝の術などを頼りに山頂付近まで近づくと風が強く吹き始めた。

 

「きゃあ、風が!」

 

「う・・!呼んでる、大気の精霊が」

 

「くうう!真嗣、必ず無事に戻ってきなさい!」

 

「弥勒の言う通りだ!必ず勝ってきやがれ!」

 

声援を背中に受け、勾玉の樹がある場所へと足を踏み入れる。そこには大気の精霊が人型となって待っていた。

 

『五色五行刃・・・この大気の精霊の力が欲しいのか?』

 

五色五行刃が僅かに脈動し意思を伝えるが、真嗣がすぐに割り込む。

 

「違う。五色五行刃に眠る風の力を起こして欲しいだけだ!」

 

『その願いは我の力を欲する事と変わらぬ。我の力を欲するのならば、我に力を示せ!式神使いよ!』

 

そう言って風の精霊は強風を真嗣に叩きつける。だが、全身が何か鋭いカミソリのようなもので切られる感触が現れ始めた。

 

それは真空の刃、俗称カマイタチと呼ばれる現象を大気の精霊が使っているのだ。風は精霊にとって見えない刃となり、盾にもなる。

 

「ここで、膝を折っている訳にはいかない。勝負だ!大気の精霊!」

 

『来るがよい、そして我の力を得てみよ!』

 

刀々斉から預かった刀を鞘から抜いて構えを取る。今の自分が頼れる武器はこれだけ。だが、精霊との戦いでは刀など、ただの鋼も同義だ。

 

「俺は必ず五色五行刃を復活させてみせる!!」

 

真嗣の刀と大気の精霊が作り出した刃がぶつかり合い、二人の戦いが今まさに始まったのであった。




復活と書きましたが完全復活はまだです。

この話の後に珊瑚達が合流します。



大気の精霊へ果敢に挑んでいく真嗣。だが、何度やっても勝てる気配はない。そんな時、五色五行刃の一部である玉から四神の咆哮が上がる。

次回!戦国お伽草子、犬夜叉。

「四神の一太刀、炸裂!朱雀の息吹!」

お楽しみに!!
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