楽しんでいただければ嬉しいです。
あの破茶滅茶な会議から約3週間が経過した。かなり時間はかかったものの、何とかスタジオの予約や各々の予定を合わせる事が出来た。
そして今日は、ハロー、ハッピーワールドの初ライブの日だ。
「美咲ー、準備できたかー?そろそろ行くぞー」
「ちょ、ちょっと待って⁉︎」
初ライブ当日の朝、俺たちは昨日準備しておいたライブに使う用意を持って家を出ようとしていた。といっても、美咲と言うよりミッシェルの準備は全て黒服さんたちに任せてあるので、俺たちが持っていくものといっても、たかが知れているのだが、美咲は朝から忙しない。
「えーっと、あれは準備したし、あれは薫さんに渡してあるし、あっちははぐみが持ってくるって言ってたし....それから〜、えっと〜…」
というのも、美咲はライブでのミッシェルの練習に加え、作曲や作詞、ライブハウスの予約やライブの演出など、かなり動き回っていた。俺も出来るところは手伝っていたのだが、それでも美咲の仕事量は計り知れないものとなっている。それでも美咲は弱音を吐くどころかきっちり最後までやり遂げてみせたのだ。
「そんなに心配しなくても、あれだけやったんだ。大丈夫さ、きっと」
そう言いながら、俺は美咲の頭をポンポンっと叩き落ち着かせる。
「う、うん///」
顔を赤くしながら、美咲は自分で落ち着こうと深呼吸をする。
「スゥー…ハァー…スゥー…ハァー…」
きっちり息を整え、美咲は自分に気合いを入れる。
「よし!じゃあお兄ちゃん、行こっか」
「おう」
そう言って俺たちは玄関のドアを開ける。
「咲真、美咲」
ドアを開けた瞬間、後ろから母さんに声をかけられる。母さんの横には美琴と広樹もいる。
「頑張ってね、後でみんなで見に行くから」
「がんばって!おねえちゃん!」
「にいちゃんも!がんばれ!」
家族からエールを受けた俺たちは、一度お互いに向き合い、すぐに母さんたちの方を向く。そして、同時に………
「「行ってきます!」」
美咲とライブハウスに向かっている途中のことだった。美咲の携帯に着信が入る。美咲はかけてきた相手の名前を見るなり慌てた様子で電話に出る。
「花音さん⁉︎ 一体どうしました⁉︎」
どうやら電話をかけてきたのは松原らしい、どうしたのかと思いながら、電話が終わるのを待つ。まぁそこまで慌てなくても、松原は内気だがしっかりしてるし問題なんて起きないだろ...
「えっ⁉︎ ライブハウスに行く途中に道に迷った⁉︎」
そう思っていた自分を思いっきり殴ってやりたい...どうやらかなり緊急事態のようだ...
「そ、それで今どこに⁉︎ えっ、○○市⁉︎真逆ですよ⁉︎」
どうやら松原はかなりの方向音痴らしいな...どうやったら目的地の真逆に行くんだ...
「どうしよう⁉︎ お兄ちゃん...」
「迎えに行くしかないだろ、美咲は先にライブハウスに行って準備を進めといてくれ、松原を拾って急いで合流する」
「わ、わかった。…花音さん!今そっちに兄が向かいますから!そこを動かn....えっ⁉︎ 大丈夫? 心配いらないってどういうことですか⁉︎」
何やら美咲が戸惑っているようだ。何があったのか...
「はい、わかりました。じゃあライブハウスで待ってます!」
そう言って美咲は通話を切る。
「どうしたんだ?」
「なんか、花音先輩の幼馴染の人が迎えに来て一緒にライブハウスまで来るって」
なるほど、どうやらひとまず安心できそうだ。
「よかった...じゃあ俺たちもライブハウスに向かうか」
「うん、そうだね」
〜ライブハウス〜
俺たちがライブハウスに到着してから1時間近くが経過した。俺と美咲、そして、俺たちよりも先にライブハウスに到着してたこころ、瀬田とはぐみの5人は、ライブの準備を終え、松原の到着を待っていた。
「かのちゃん先輩...大丈夫かな?」
はぐみが心配そうな表情で呟く。
「心配いらないさ。何かあれば花音の方から連絡が来るだろう。私たちは私たちのやるべきことをやろう」
瀬田はそう言ってはぐみに声をかける。瀬田に励まされ、はぐみは「うん!」と、いつもの天真爛漫な笑顔を見せる。
「そうね♪花音なら大丈夫よ♪」
こころもいつもと変わらない笑顔で、大丈夫だと確信しているようだ。
その言葉を聞いて、ハロハピの士気が更に上がる。
「(なんでこうもこいつの言うことは、こんなにも頼もしく感じるのだろう)」
俺はふとそんな事を思った。キャプテンをしているからわかる事なのだが、味方の士気を高めることはそれなりの力が必要だ。それをこころは簡単にやっている。これも、カリスマ性という奴なのか、それは分からないが、確かにこころの言葉には力があるのだ。
「こころの言う通りだな。お前たちはお前たちの出来ることをやる。松原が来たらすぐライブを始められるようにな」
「「「ええ(ああ)(うん)!!」」」
そう言って3人はライブ衣装に着替え室に入る。
「お兄ちゃん...」
後ろから、ミッシェルに着替え、頭だけを出した美咲が俺に声をかける。だが、その声はどこか不安そうだ。
その声を聞いただけで、美咲の心情がすぐ理解出来た。だから……
「大丈夫だ、この俺がついてる。それにお前にはもう同じ夢を持った仲間がいる。それだけで人なんてなんでも出来るんだよ。お前たちなら、世界を笑顔にだって出来るさ」
俺は「どうした?」とは聞かなかった。これまで時間をかけてやってきたこと、それがたった数分で終わってしまう。それはどんなことでも当たり前のことで、呆気なく終わってしまうものだ。それは、俺もよく知っている。
だからこそ、かけた時間はその数分をより輝かせ、自分を強くする事も俺は知っている。だから俺は、美咲が前を向ける言葉をかけた。こんな言葉一つで、美咲の気持ちが変わるのかは分からない。それでも、美咲が、こころが、ハロー、ハッピーワールドがかけた時間は誰かを笑顔にするのだと、そう思って欲しかったのだ。
「お兄ちゃん...」
「さ、あいつらの準備ももうすぐ終わるだろ。あいつらを頼むぞ、ミッシェル」
そう言って俺は美咲にミッシェルの頭を被せた。
「うん、そうだね。私、頑張るから...見ててね!」
顔が見えなくても、美咲がどんな顔をしてるかはすぐに分かった。だから俺も、同じ顔を美咲に向けて
「おう!しっかり見てるからな!」
俺がそう言った後、着替え室のカーテンが開き、まるで鼓笛隊のような衣装を着たこころが咲真に飛びついた。
「咲真〜!! 準備完了よ♪ どうかしら?」
クルっとその場で一回転してこころが聞いてくる。
「おう、前見た時も思ったけど、凄く似合ってると思うぞ」
そう言って俺は、無意識にこころの頭を撫でていた。
「……///」
こころは顔を赤くして一瞬顔を伏せたが、すぐに顔を上げいつもキラキラした笑顔を俺に向けた。
「ありがとう咲真///! ワタシ、頑張るわね♪」
「おう」
そう言って俺もこころに笑いかける。
「ねぇ、さっくん先輩!はぐみははぐみは?似合ってる?」
はぐみがハイテンションで聞いてくる。もうすぐ本番だってのに、はぐみは緊張するどころか、いつもより元気にも見える。
「おう、はぐみも似合ってるぞ」
「えへへ〜//」
「ああ、早く仔猫ちゃんたちにワタシの姿を見せたいものだ」
はぐみに続いて、瀬田もいつもの調子で出てくる。
「そういえば、キグルミの人はどこかしら?さっきまで居たのに」
そう言ってこころは美咲を探し始める。こころに乗っかり、瀬田とはぐみも探し始めた。この3人は未だにミッシェルが着ぐるみで美咲が入っているとは微塵も思っていない。仕方ない………
「あ、あー美咲ならまだ色々と準備してるぞ。出番ギリギリまでかかりそうだから、直接客席に行くってさ」
俺はそう誤魔化した。少し強引だったか…?
「そうなのね♪じゃあキグルミの人の分も頑張らないと!」
「そうだね、こころん!」
「ああ..ギリギリまで私たちのために...儚い....」
どうやら誤魔化せたみたいだな...
「お兄ちゃん、ありがと」
ミッシェルが小声で俺にお礼を言う。
ドンッ!!!
その時突然、控え室の扉が開いた。控え室にいた全員が扉の方を向く。
「ま、間に合った〜……はぁ…はぁ…」
そこには、膝に手をつきながら息を切らしている松原と……
「ったく、飛んだ災難だ……はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
松原と同じように肩で息をする岩隈兄弟がいた。
「岩隈とシャロン?」
「あれ、キャプテン⁉︎どうしてここに⁉︎」
「な、何で……?」
迷子の松原を連れてきたのは部活の後輩の岩隈兄弟だった。(ちなみに、シャロンって言うのは、岩隈沙路の愛称で、岩隈がそう呼んでいるのを聞いてから、サッカー部内でその呼び名が定着した。)
「松原の幼馴染ってお前らのことだったのか...」
俺は1人納得する。
「キャプテン、どうしてここに?」
「説明は後だ、まずは……」
松原の準備だ...と言う前に、ハロハピのみんなが花音の元へ駆け寄る。
「「「「花音(さん)(かのちゃん先輩)!!」」」」
「み、みんな…心配かけてごめんね……」
松原は少し涙目になりながらみんなに謝る。
「大丈夫だよ、かのちゃん先輩!」
「無事で良かったです」
「ああ、花音...本当に良かったよ」
「み、みんな…ありがとう…」
花音はメンバーの優しさについに涙を流した。
「さあ、花音♪ 笑顔よ!私たちはみんなを笑顔にするのだから、あなたが泣いてちゃ笑顔になれないわ♪」
「うん…そうだよね…私、頑張るよ!」
松原の表情が笑顔に変わる。そして、松原は急いで着替えを始めた。
「じゃあ俺たちは、客席に行くから。しっかりな」
俺は5人にエールを送る。
「「「「「ええ(ああ)(うん)(はい)!!」」」」」
5人の表情は、笑顔で満ちていた。
「なるほど、そうだったんですね」
客席に着いた俺は、岩隈とシャロンに事情を説明しながら、ライブのスタートを待っていた。
「まさか、お前たちが松原の幼馴染だったとはな」
「俺たちもびっくりしましたよ。花音がバンドを始めるって言うし、そのバンドにキャプテンの妹さんがいて、キャプテンも手伝ってるって言うし」
「ほ、ほんと...びっくりしました...」
そう言いながら話をしていると、照明が消え、ステージ内が真っ暗になる。
「いよいよだな」
俺たちはステージに目を向ける。
すると、照明が一気に点灯し、ステージを照らす。その照明の光の先には、5人の...いや、4人と1頭の世界を笑顔にする音楽隊がキラキラと輝きながら笑顔で立っていた...
「みんな〜〜!! 初めまして! 私たちは『ハロー、ハッピーワールド!』世界を笑顔にするバンドよ♪」
こころはいつものように満面の笑顔で……
「今日はここにいる仔猫ちゃんたちを笑顔にしよう」
瀬田はキザでかっこよく……
「はぐみたちの演奏、しっかり聞いてね!」
はぐみはいつも以上に元気良く……
「よ、よろしくお願いします……!」
松原はオドオドしながらもしっかりと……
「た、楽しんでいってね〜〜」
「さぁ♪最高のライブを始めましょ♪」
世界を笑顔にするために……
「それじゃあ、まずは一曲目!『えがおのオーケストラ!』」
第一歩を踏み出した。
ーライブ終了後ー
「咲真〜!!」
ライブが終わり、片付けも終えた後の帰り道、こころはいきなり俺に抱きついて来た。
「おわっと...たっく、危ないからやめろって、美咲も居るんだから」
そう、今俺の背中には美咲が眠っている。ライブの後、今までの疲れが出たのか、片付けが終わった後すぐに眠ってしまったのだ。俺は美咲を背負いつつ、こころを送るために弦巻邸に向かっていた。
「咲真はどうだったかしら、私たちのライブ」
突然こころが聞いてくる。
「ああ……」
俺はライブの光景を思い出す。
まるで、時間が止まったようだった。ハロー、ハッピーワールド!の演奏以外の音が、消えたようなそんな感覚になり、俺の目は、ステージに釘付けになった。こころと初めて会った時のように、目に映る光景が一枚の写真のようにくっきりと頭に記憶されるような感覚。
ハロー、ハッピーワールド!の初ライブは、本当に素晴らしいと思った。演奏の技術はまだまだ他と比べると稚拙だし、経験が足りない部分もいくつかあったが、それでも素晴らしいと思えるものだった。
その中でも、こころは一段と輝いていた。どんな時も笑顔で、楽しそうに歌う彼女を見て、俺は、キレイだと思った。
「最高だった」
俺は、口から出そうになる長い言葉を押し込み、簡潔にそう答えた。たくさん言葉を喋るとあの光景を忘れてしまいそうになると思ったから...
「ほんと⁉︎良かったわ♪」
こころはそれはもう嬉しそうに微笑む。
そんなこころの横顔を見て、俺は自分の頬が赤くなるのを自覚した。
「(こころには、そうやってずっと笑っていて欲しいな...)」
無意識にそう思った俺、こころの横顔を見ながら、その言葉が口から出そうになるのを必死に抑えていた。
「なぁ、こころ」
「何かしら?」
「お前の夢ってなんだ?」
俺はこころに聞いた。それが、
こころの夢、そのための第一歩がこのハロハピなのだと
こころの夢が、ハロハピの夢であり、原動力なのだと
こころを笑顔にする、こころの原点だと
俺は知っているから。
彼女たちを支えるために俺が掲げる夢になるもの...それを...
「ワタシの夢は
『世界を笑顔にすること』よ!!」
彼女と変わらないものにするために
いかがだったでしょうか。咲真の気持ちが少しずつ見えてくるように書いたつもりです。
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※活動報告にてキャラ募集中です。中々集まらず、絶賛困っております。どうかお願いします!何卒お願いします!