〈凍結〉イナイレ×バンドリ 笑顔を護る英雄   作:夜十喰

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気づけばこんな時間になってしまいましたー。
遅くなりましたが、楽しんでいただければ嬉しいです。


ライバル

試合終了の笛がコートに響く。最終スコア3ー2、勝利を手にしたのは花咲川高校。

 

練習試合とは思えないほどの激しい試合に、選手達は皆疲労している。特に全員がフルで出場していた羽丘のメンバーたちは、疲労と敗北が混ざり合いそのほとんどが地面に座り込んでしまっていた。

 

咲真たち花咲川のメンバーもそのほとんどが肩で息をし、膝に手をついている。

 

 

その中で一切体を崩す事なくその場に立ち、互いを見つめ合う人物がいた。

 

それは....奥沢咲真と桐ヶ谷悠哉の2人だった。

 

片やキャプテンとして、片やチームのエースとして、チームを支えた2人が近づき言葉を交わす。

 

「負けた…やはり強いな、お前は」

 

「強いのは俺じゃ無い、本当に強いのはこのチームだよ」

 

「ハハッ、そうだな…お前が日本一にするチームだからな」

 

互いに軽く笑いながら話す両者、その姿はさっきまでとまるで違う普通の友達のようだった。

 

すると桐ヶ谷は突然話を変える。

 

「あの時…」

 

桐ヶ谷の言うあの時とはいつを指すのか、咲真はすぐに理解した。

 

「お前と戦った数分間がそれまでのサッカー人生の中で一番楽しかった。たった数分が何時間にも感じて、周りのことは何も覚えてない。覚えているのは、ボールの動きと俺の前に立つお前の事だけ。お前に負けた後、気づけば風呂の中にいた。ただ何も考えずに天井を見ていて、その時初めてお前との勝負が終わったと理解した」

 

桐ヶ谷は悔しそうにそしてどこか懐かしそうに呟く。

 

「今日、あの時と同じくらいの勝負が出来ると思っていた。だが、どうやら決定的な差が出来てしまったようだな」

 

咲真に負けた事、そして自分があの時と変わっていなかった事に、桐ヶ谷は咲真との差を改めて実感していた。

 

そんな桐ヶ谷に今度は咲真があの時の話をする。

 

「俺もさ、お前と同じだった。お前とボール以外を見ずに、お前とボールだけを追っていた。でも、聞こえたんだ...仲間の声が、応援してくれている家族の声が、ハッキリと」

 

桐ヶ谷と自分の違いをそう説明する咲真、更に言葉を続ける。

 

「多分、あの時も今も、俺とお前に差なんてほとんどなかったんだ。ただ、そこから背中を押してくれる人たちがお前より多かったんだと思う」

 

咲真の言葉に桐ヶ谷はそうかも知れないと、思った。自分はあの時、自分と咲真だけの世界にいた。他の誰も入れない2人だけの空間、それを自分で作っていたと理解する桐ヶ谷。だが咲真は、その世界を仲間も家族も全員入れていたのだと、その差があの時の勝敗を分けたのかも知れないと思った。

 

「それなら、俺は一生お前に勝てないな...」

 

自分を笑うように微笑みながらそう呟いた桐ヶ谷。自分がもっと人と理解し合えれいたのなら、自分を心の底から応援してくれる誰かの存在があったなら...と。

 

そんな桐ヶ谷を見て、咲真は……

 

「アホか」

 

一言、たった一言、しかもなんともシンプルな罵倒なことか、流石の桐ヶ谷も目を見開いている。

 

「一生勝てないなんて、あるわけ無いだろ。今までなかったんなら、こっから作ればいいんだよ。今日お前はそれが出来てたじゃねえか」

 

「っ!」

 

咲真の放った言葉が、桐ヶ谷の心にストンッと落ちた。

 

「お前を信じた仲間をお前も信じた。それがお前自身進んでる証拠じゃねえか」

 

その言葉を聞いた桐ヶ谷は、先ほどまでやっていた試合の光景を思い出した。

 

そこには、何度も仲間と協力し最後に全てを託される自分がいた。

 

それに気づいた桐ヶ谷は突然……

 

「ハハハハハッ!」

 

笑い出した。

 

「ほんと…俺は何にも見えてなかったんだな」

 

そう言って桐ヶ谷は咲真に近づき、拳を前に突き出した。

 

「大会で勝つ。お前に...お前たちに...このチームで」

 

咲真はふっと笑うと、同じように拳を前に出す。

 

「返り討ちにしてやるよ」

 

コツンッと拳の合わさる音が小さく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咲真と桐ヶ谷が話し合っている中、ベンチの近くでは、両チームの交流が行われていた。

 

 

 

「警告....次は勝つから...」

 

「負けるつもりなど毛頭無い」

 

美鷹と日向がお互い睨み合いながら言葉を交わす。

 

「もう〜!ウララン顔が怖いよ〜、そんなんじゃ友達になってもらえないよ!」

 

2人の重い空気に耐えかねたエルスターが間に割って入る。

 

「ローズ....別に友達なって欲しい訳じゃないから....」

 

エルスターの発言に呆れるように返す美鷹。

 

「そうだな」

 

日向は美鷹に同意するように呟き、美鷹を見て言う。

 

「私は彼女に負けたくない、彼女も私に負けたくない。これは友達と言う関係では無い」

 

そう言って日向は、美鷹の前に手を出す。

 

「ライバル...と言うものだな」

 

日向の言葉に美鷹は微笑み、ガシッと握手を交わした。

 

 

 

 

「「…………」」

 

花咲川の1年FW...片桐、茜の2人が見つめる先には……

 

「スー……スー……スー……」

 

試合が終わってすぐ、ベンチに横になって眠る夢原が居た。

 

試合には勝ったが、夢原を一度も正面から抜くことが出来なかったFWの2人は夢原と話をしようと思ったのだが、肝心の夢原はあいも変わらず眠っている。

 

「これは寝てるのを起こすわけにも行かねえし...」

 

片桐が諦めるかと考えていると……

 

「ボク、聞いてくる」

 

茜が果敢にも夢原を起こそうとする。

 

「ちょっと茜⁉︎」

 

「だって悔しいんだもん!ボクだってもっと強くなりたい!」

 

茜は何も出来なかった事がよっぽど悔しかったのか、自然に声が大きくなっている。すると……

 

「うんうん…貪欲なのは…いい事だよ〜」

 

「「うわッ⁉︎」」

 

先ほどまでベンチで寝ていたはずの夢原が、唐突に目の前に現れた。

 

「欲は出して行かないとね〜……私も…睡眠…よくは…だい…じ…に………スピー……」

 

「「寝るな!!」」

 

マイペースに何度も起きて寝てを繰り返す夢原に、2人はたまらずツッコミを入れる。

 

「……ハッ!! これは失礼〜……」

 

2人のツッコミで夢原が目を覚ました。

 

「それで…私に何か…用……?」

 

夢原はツッコミに疲れている2人に聞く。

 

「あ、あの! 夢原さんは…」

 

「現でいいよ〜……」

 

「えッ⁉︎ じ、じゃあ...現さんは、どうしてあれだけ凄い実力があるのに、いつも寝てばっかりなんですか?」

 

「おい!失礼だろ茜!」

 

何のひねりも無くストレートに聞く茜に、片桐は注意する。

だが、夢原はそんな事気にせず説明し始める。

 

「寝てるのは…欲に忠実なだけだよ〜……私は何よりも〜…寝る事が好きだからね〜」

 

そんな事で...と思う2人に夢原は続けて言う。

 

「そんな事でも〜……人って…自分が一番好きな事をしている時が……一番力が出せると思わない……?」

 

「「!!」」

 

夢原の言葉に、2人は目からウロコが落ちる。それだけ夢原の言葉は2人の心を突き動かした。

 

「2人の…好きな事って…………何?」

 

「ボクの…」

 

「オレの…」

 

2人は考える。自分が一番好きな事、自分が一番力が出せるもの。

 

2人はすぐに答えを出した。

 

「「決まってる(よ)!!」」

 

2人は同時に顔を上げ、口を揃えて言う。

 

「「サッカーだ(よ)!!」」

 

「うんうん……」

 

2人の表情は夢原に話しかける前よりも明るくなっていた。

 

「現さん!ありがとう!ボクなんかやる気が湧いてきたよ!」

 

「オレもオレも!ありがとな、現さん!」

 

「・・・・」

 

「現さん?」

 

「……スピー」

 

「「また寝てる⁉︎」」

 

どこまでもマイペースな夢原に終始振り回される2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

1人隅っこで立っている黒騎、そんな黒騎に話しかける男が居た。羽丘のキャプテン、暁だ。

 

「隣いいか?」

 

暁が聞くが黒騎は何も答えない。それを許可したと解釈した暁は黒騎の隣に行くと、黒騎に話しかける。

 

「先ほど君に言った事だが…少し訂正しよう。君は本来チームプレーに向いている。だからこそ、自分勝手なあのプレーはやめた方が良い」

 

「うるせえんだよ、わざわざまた説教しにきたのか。随分とお優しいんだな、負けたチームの主将さんは」

 

イラつく黒騎はわざと暁を怒らせるような事を言う。だが、暁は黒騎の煽りに顔色を変える事なく続ける。

 

「お前がそこまでチームプレーを頑なに否定するのは過去に何かあったからか?」

 

「ッ!」

 

図星を突かれた黒騎は、暁の胸ぐらを掴む。

 

「図星のようだな」

 

胸ぐらを掴まれながらも暁の声色は変わらない。

 

「その闘争心を他にぶつかるべきだ。君には十分な実力と技術もある。それに、君を理解しようとしてくれる強い味方もいる」

 

そう言って暁は、咲真たちに目を向ける。

 

「知るかよ」

 

黒騎はそう吐き捨て、暁から手を離す。そのままその場を離れていった。

 

「あいつはもっと強くなる、こんな所で埋もれるのは惜しいくらいに」

 

暁は黒騎のシュートを止めた時のことを思い出し、掌を見る。それは衝撃を思い出したかのように震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜羽丘高校校門前〜

 

 

花咲高校の校門前で、両校の選手たちが向かい合っていた。

 

「今日はいい練習試合ができた。ありがとう、暁」

 

「こっちこそ、この試合で俺たちもかなり成長できた」

 

そう言って2人は握手を交わす。

 

ニッと2人は同時に笑うと……

 

「「次は、県予選で」」

 

その言葉を最後にお互いに背を向け、帰路につく両校、県予選での負けたら終わりの真剣勝負を約束するのだった。




読んでいただきありがとうございました。
次回からまた日常回が続きます。主にバンドリキャラ達との関わりやイベントストーリーに沿った話が書ければいいなと思います。


評価、感想、アドバイスよろしくお願いします。
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