〈凍結〉イナイレ×バンドリ 笑顔を護る英雄   作:夜十喰

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どうも夜十です。

私ごとですが先日、本小説のお気に入りが25件となりました!初心者の自分の小説を気に入って下さった皆様。並びに、いつも読んでくださっている皆様。ありがとうございます!これからも皆様に楽しんでいただける小説を書けるよう頑張っていくので、よろしくお願いします!

※タグを追加しました。ヒロインがブレそうですが、頑張ります。

長くなりましたが、本編をお楽しみ下さい。


優しい少女の本音

文化祭の出し物会議から数日が経過した。あれから準備は着々と進み、俺を辱めようと男子たちはやる気になっている。

俺は何とか抵抗しようと、キッチンに回ろうとしたり、和泉に助けを求めたりしたものの、全て結果は同じだった...。和泉に関しては、あれ以来男子たちと同じくらい俺の女装にやる気を出しまくっている。俺用の化粧やウィッグ、衣装などはどうやら和泉が率先して揃えているらしい....。

 

 

「終わった....俺はもう終わりだ....」

 

「しっかりして下さい....咲真先輩」

 

現在俺はバイト中...なのだが、女装をさせられる事、加えてそれを2日間続けなければならない事に、俺はうなだれレジに顔を伏せる。

 

そんな俺を見て、苦笑いを浮かべながら大丈夫ですかと、声をかけてくれる沙綾。ほんと....ええ子や....。

 

 

 

あの約束以来、沙綾はちょっとした事なら俺に相談してくれるようになった。弟がやんちゃすぎて手に負えないだとか、妹と一緒に料理をする時何を作るべきかなど、悩みとまではいかないものの、誰かに聞くという行為を自分からするようになったのは、俺としても嬉しい。

 

ただ、相変わらず相談するのは自分じゃ無い誰かの事で、沙綾自身の事は話してくれない。待つといった以上、待つしか無いのだが、ここ最近沙綾の顔がどこか曇っているように見える。

 

「沙綾のクラスは文化祭、何するんだ?」

 

俺は、会話の中で曇っている原因を探ろうと沙綾に話しかける。

 

「うちも咲真先輩のクラスと同じ喫茶店ですよ。売るのはうちのパンですけど」

 

その手があったか....確かにここのパンならかなりの売り上げが見込めるだろう。それに、文化祭には色んな学校の奴も来るだろうし、店の宣伝が出来て一石二鳥という訳だ。

 

「なるほどな。パンなら提供しやすいし、売り上げが伸びればこの店の宣伝にも繋がるって訳か....意外と策士だな、沙綾って」

 

「あはは...別にそんなんじゃ無いですよ。成り行きというか、香澄に...流されたというか......」

 

戸山の名前を出した途端、さっきよりも沙綾の表情に曇りの色が濃くなった。

 

「(原因は戸山か....)」

 

明らかな変化を見逃す俺ではなく、沙綾の曇りの原因が戸山との関係にあるのだと悟った。以前、戸山と初めてあった時も沙綾は戸山にバンドに誘われて表情を暗くしていたし、おそらくそれが原因だろう。

 

 

聞いたところによると、戸山たち4人は文化祭でライブをやるらしい。学校の至る所に自分たちでポスターを貼っていたのを偶々見かけた時に教えてもらった。

バンド名は「Poppin'Party」通称「ポピパ」、なんとも彼女たちらしいポップで賑やかそうな名前だ。意外にも名前を考えたのは、市ヶ谷らしい。彼女は普段こういう事はしないタイプだと思っていたが、どうやら彼女にとって戸山たちはそれほど大切な友達なのだろう。

これは市ヶ谷から聞いた話なのだが、どうやらこの名前は沙綾が関わっているらしい。市ヶ谷が悩んでいることに気づいた沙綾が自分から声をかけに来てくれたと、市ヶ谷は話してくれた。

 

 

「(自分から関わったんだから、気にくわないって事は無いだろう。それにしても...自分の事そっちのけで悩む市ヶ谷に声をかけたのは、誰かに優しい彼女らしい行動とも言えるな)」

 

俺は表情を曇らせる沙綾の横顔を見ながらそう思う。

 

 

カランカランッ!

 

 

その時、店の扉が開き誰かが入ってきた。いらっしゃいませと、挨拶しながら入ってきたお客さんを見ると、そこにはどこか浮かない顔をした戸山がいた。

 

「香澄.....」

 

「沙綾.....」

 

2人は気まずそうに互いの名前を呼んだ。いつもハイテンションな戸山も、なんだか元気が無いように見える。

 

「「…………」」

 

2人はそれから一言も話さず、動かない。

 

見かねた俺は、2人に提案する。

 

「戸山は話があるみたいだぞ、沙綾。部屋で話してこいよ」

 

「えっ...でも、店番もあるし...」

 

「俺1人で大丈夫だから。それにお前、このままその暗い顔でお客さんの相手するつもりか?」

 

「...っ」

 

俺がそう言うと、少し体をビクッとさせる沙綾。自分が今どんな顔をしているのか、彼女は分かっていなかったようだ。

 

「わかりました...すみません...少しだけお願いします....。じゃあ上がって...香澄」

 

「う、うん」

 

2人はそのまま店の奥へ行き、沙綾の部屋へと向かっていった。

 

 

 

「……」

 

少し心配になった俺は、2人が行った店の奥へ目線を向ける。すると、奥から親父さんが出てきた。

 

「あれ?奥沢君1人かい?」

 

「ああ、沙綾ならちょっと戸山と話をしに行きましたよ。なんか元気なさそうだったので、そっちに行けって言いました。勝手な事してすみません」

 

話を聞いた親父さんは、そうか...と少し肩を落とした。

その様子を見た俺は、ずっと気になっていた事を親父さんに聞いた。

 

「沙綾っていつもあんなに頑張ってるんですか?」

 

俺の質問に、最初は目をパチクリさせた親父さんだったが、すぐにさっきと同じような表情に戻った。

 

「ああ...本当に頑張ってくれてるよ。特にあの時以来...妻が体を崩す事が増えてきていたから、余計にね...。いつも朝から学校に行くまで、学校が終わってからもすぐに帰ってきてずっと手伝ってくれて、助かってはいるんだけど...どこかあの子を苦しめているんじゃ無いかって思うんだ」

 

「あの時って....聞いてもいいですか?」

 

聞くと、親父さんはすぐに答えてくれた。

 

「ああ、君になら知っておいてほしい」

 

 

 

 

 

そう言って、親父さんは昔の話を俺に聞かせてくれた。昔といっても1、2年前の事らしい.....

 

沙綾が中学生だった頃、バンドを組んでドラムをしていた事

友達とよく家で練習していた事

毎日楽しそうに笑っていた事

 

どれもこれも沙綾にとって大切な時間だったと、親父さんは嬉しそうに教えてくれた。

 

ただ....そんな楽しい時間も沙綾を苦しめることになったらしい。

 

初めてのライブの時、沙綾のお袋さんが倒れたらしい....。命に別状は無かったものの、その事が、沙綾の心に深く根付いてしまった。

 

 

自分が楽しく過ごしている間に、お袋さんに無理をさせた。

自分が楽しく過ごしていた所為で、お袋さんが倒れた。

自分が....自分が....

 

 

彼女はそれ以来、バンドを辞めて空いた時間は店の手伝いを以前よりもするようになったらしい。自分が悪いと、自分が楽しまなければと、そう思うようになったらしい。

 

 

俺はその話を聞いて、沙綾を苦しめているものが何かわかったような気がした。

 

彼女は...彼女を苦しめているのは....自分の“本音”なのだ。

 

いつも自分より誰かに優しい彼女は、自分の本音を自分の本音で覆い隠している。自分のための本音(やりたい)より、誰かのための本音(無理をさせたくない)を優先する。

 

それが....山吹沙綾を苦しめる、山吹沙綾の本音なのだ。

 

 

カランカランッ!!!

 

 

俺が親父さんから話を聞いていると、店の扉が開き、花園、市ヶ谷、牛込の3人が入ってきた。

 

「あ、あのッ! 香澄来てませんか⁉︎」

 

少し慌てた様子で尋ねてくる市ヶ谷。

 

「さっき来て、沙綾と部屋に行ったぞ」

 

「やっぱり....」

 

俺が答えると、市ヶ谷たちは予想通りといった反応を見せる。

気になった俺は3人に聞く。

 

「何かあったのか?」

 

「実はさっき、楽器屋で山吹さんとバンドを組んでたって人と会って....」

 

なるほど...それを聞いた戸山が突っ走って沙綾に会いに来たってわけか....

 

「だいたい分かった。とりあえず、2人が降りてくるまで待とう。話はそれからだな」

 

俺がそう言うと、親父さんが俺たちに声をかける。

 

「みんな上がっていきなさい。奥沢君も、今日はもう上がりでいい」

 

親父の言葉に、俺は驚いてどういうことかと質問しようとすると...

 

「沙綾の事、君に任せてもいいかな?」

 

俺の肩に手を置き、真っ直ぐな目で俺に聞いてくる。その目はどこまでも真っ直ぐで、でもどこか寂しそうだった。本当なら自分がどうにかしないといけないのは親父さんが1番分かっている。それでも親父さんは俺を頼りにしてくれている。俺はそれに答えなければならないと思った。

 

「....分かりました。やるだけの事はやります」

 

俺がそう答えると、満足そうな表情で頷く親父さん。そんな親父さんを尻目に俺は3人を連れて店の奥へと入って行った。

 

 

 

 

俺たち4人が沙綾の家のキッチンに入った時、二階から突然大きな怒鳴り声が聞こえてきた。

 

『そんなわけないじゃん!』

 

突然の声に驚く俺たち、今の声は間違いなく沙綾の声だ。

 

『香澄にはわかんないよ!私、みんなに迷惑かけてまでバンドできない!』

 

沙綾の口から初めて聞いた彼女の本音は、上から痛々しく響いてきた。

 

『みんな香澄と同じこと言ってくれたんだよ!私が大変なら、力になるって!手伝うって!私のこと心配して、練習時間減らそうって!』

 

沙綾が秘めていた本音、自分よりも誰かを心配する優しい彼女の本音。

 

『みんな、自分のことより、私のことばっか!それで楽しいの?私だけ楽しんでいいの?いいわけないじゃん!』

 

誰かに優しい彼女は、自分に優しいものを拒む。それが友達でも...自分でも....

 

『私の代わりに誰かが損して……だからやめたのに……今更できるわけないじゃん……』

 

涙交じりの言葉が、弱々しく聞こえてくる。

 

『できるよ……』

 

それを否定する小さな戸山の声が続いて聞こえる。

 

『できない!』

 

『できる!なんでもひとりで決めちゃうのずるい!一緒に考えさせてよ……』

 

優しさを拒む沙綾に戸山は何度もぶつかる。

 

『『…………』』

 

それ以降、2人の声は途切れた。

 

 

 

 

 

それからすぐ、2人は二階から降りてきた。

 

「おつかれ」

 

2人に声をかける市ヶ谷。

 

「えっ、なんでみんないるの?」

 

「こいつら全員、お前を追ってきたんだと。ったく、1人で突っ走るのは控えた方がいいぞ」

 

市ヶ谷たちがいることに驚く戸山。そんな戸山に俺は、説明とちょっとした説教をする。

 

「つーか、下まで聞こえてたぞ」

 

「うん…いきなりでビックリしたよ…」

 

口論を聞かれた2人は、すっかり元気をなくしている。いつもの明るい笑顔は、すでに2人には無かった。

 

「……じゃあ、そろそろ帰るか」

 

「えっ、で、でも……」

 

市ヶ谷は、このままじゃなにも進まないと判断して帰ることをせんたくしたようだ。戸山はまだ煮え切らないようだか.....

 

「こんな状態で話なんてできないでしょ」

 

市ヶ谷の提案はもっともだ。このまま話しても多分解決なんてしない。

俺がそう思っていると、市ヶ谷が続けて話す。

 

「まあ、私はどうでもいいけど……新しいメンバーが入るなら、知らない人より山吹さんのほうが私は楽かな」

 

市ヶ谷の言葉に、沙綾は少し驚いているように見える。すると、続いて.....

 

「私も、沙綾ちゃんとできたら、すっごく嬉しい」

 

「……携帯に曲のデータ送った。聞いてみて」

 

牛込と花園も沙綾に入ってきて欲しいと思っているようだ。だが.....

 

「だから、無理だってば……」

 

それでも沙綾は優しさを拒む。

 

「待ってる。待ってるから」

 

戸山のその言葉を最後に、4人は店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

4人が帰って数分後、店の中には俺と沙綾の2人だけ....

 

重い空気が流れる中、俺は沙綾に何も言葉をかけなかった。沙綾自身が優しさを拒んでる今、どんな言葉も沙綾には優しさとして捉えられるから。

 

すると突然、沙綾のほうから俺に話しかけてきた。

 

「先輩....私...どうしたらいいのかな...?」

 

沙綾の声は、弱々しく今にも涙がこぼれそうだった。俺は優しさを拒む沙綾に、優しく微笑んだ。今は、今だけは、彼女が拒むものが無くなったと、そう思ったから。

 

「沙綾はどうしたいんだ?」

 

そう言って俺は、優しく沙綾を抱きしめた。理由はわからないけど、こうするべきだと思った。

 

「私は...わ..たし..は...」

 

俺の胸の中で沙綾は、遂に今まで溜めていた涙をこぼした。

 

「やりたい...香澄たちと..! 一緒に...バンドやりたい!」

 

「そっか…」

 

初めて直接聞いた沙綾の本音。俺はそのまま腕に力を込めた。

 

「でも...お母さんに無理させたくない...!! また倒れたら...私だけが楽しんで....お母さんが無理して....そんなのもう...嫌!!!」

 

「そっか…」

 

沙綾はそのまま、俺の胸の中で泣き続けた。

 

沙綾にとって、どれもも本音なのだ。

戸山たちとバンドをやりたい、お袋さんを無理させたくない、自分だけが楽しんでいいわけない、そう彼女は自分に言い聞かせてきた。

 

そんな頑張り屋で誰にでも優しい彼女に、俺は精一杯の優しさを込めて、強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい/// 服、濡らしちゃって...///」

 

泣き止んだ沙綾は、抱きしめられたことに顔を赤くし、すぐに離れて謝る。

 

「気にすんな、無理をするなって言ったのは俺の方だしな。それよりも、お前の気持ちが聞けて良かったよ」

 

俺はそう言って沙綾の頭に手を伸ばす。

 

「……///」

 

沙綾は顔を赤らめながら、俺に撫で続けられる。その表情は、恥ずかしそうで、どこか嬉しそうだった。

 

「1つ言っておくぞ」

 

俺はそんな沙綾に向けて言葉をかける。彼女がこの先、どうするかは彼女が決めることで彼女の道を選択する権利なんて俺には無い。でも、少しでも彼女が本当の笑顔を出来るようになればとそう思ったから。

 

「お前のためって言うのは、すげぇ嬉しいことなんだよ。みんな、お前のために何かしたいってのは、お前だから...山吹沙綾だからなんだ。お前がいつも、優しさをくれるからみんなもお前に返したいって思うんだ。誰も無理なんてしてない。お前のために、自分がしたいからやってるんだ」

 

俺の言葉を、沙綾は真っ直ぐな目を向けて聞く。

 

「自分が....したいから....」

 

「そう。結局自分のためなんだよ。自分がお前に...沙綾のためにしたいってそう思うんだよ」

 

沙綾はまだ悩んでいるようだ。無理もないだろう、今までずっと我慢してきたんだ。1人で悩んでたんだ。そう簡単に割り切れるわけがない。

 

「すぐにとは言わないさ。焦らなくていい、今日は一歩踏み出せたんだ。大丈夫、お前なら出来るよ。それまで俺がいてやる。怯んだら背中を押してやる。倒れそうだった支えてやる。だから、ゆっくりでいい。ゆっくり自分のための本音を大きくしていけばいい」

 

沙綾は目から再び涙が溢れる。

 

「いいの....かな? 自分のためでも...」

 

「おう」

 

「いいの....かな? やりたいことをしても...」

 

「おう」

 

沙綾はそう言ってから、何も言わなくなった。

この先は彼女が決めることだ。俺の支えはこれ以上先には行けない。

 

 

でも、大丈夫だろう。沙綾ならきっと、自分で決められる。自分のやりたいことを、自分の本音を.....だから、それまでは、彼女を支えよう。俺は、改めてそう決めた。




読んでいただきありがとうございました!

もう沙綾がヒロインでいい気がしてきました....こころをデレさせるのって難しいんですよね....
でも、ヒロインはこころ!これは揺るがない!きっと!

評価、感想、アドバイス、お待ちしております。
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