〈凍結〉イナイレ×バンドリ 笑顔を護る英雄   作:夜十喰

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お待たせしました。2週間以上空いてしまい申し訳ないです!

今回と合わせて光ヶ丘戦、残り2話となります。本当は4話くらいで終わりたかったのですが、ペンというか指がノってしまったので、決着は次回となります!

それではどうぞお楽しみ下さい。


チャレンジャーズ

後半も残り時間の半分を切った。2点をリードされている光ヶ丘は、ここで追加点を取られると勝利が絶望的になる。

 

「みんな!ここが正念場だ!まずは1点、死ぬ気で取りに行くぞ!」

 

「「「「「おう!!」」」」」

 

一層気合の入った声が響き渡る。今の光ヶ丘には誰一人下を向いている者などいなかった。皆が目の前の勝利に向かってただ真っ直ぐに前だけを見ていた。

 

 

花咲川のゴールキックから試合が再開される。岩隈はボールを力いっぱいに蹴り出す。放たれたボールは大きく弧を描きながらセンターラインの近くへ落ちていく。

 

「ほいっと」

 

岩隈からのボールを受け取ったのは彩瀬。彩瀬はボールを持つとすぐに前方を走っていた咲真にパスを出す。

 

「咲真さ〜ん!」

 

「ナイス彩瀬」

 

ボールを持った咲真は、一直線にゴールへ向かって行く。しかし、すぐに光ヶ丘の選手たちがその前方を塞ぎ、ボールを奪いにかかる。

 

「行かせませんよ」

 

咲真の前に立ち塞がった桔梗は、他のディフェンス陣と連携し、咲真の前方を塞ぎつつ、わざと隙を見せパスコースを誘導する動きを見せる。もちろん誘導するという事はその先にはもちろん味方が控えているという事、そう言った連携も完璧にとれているようだった。

 

「動きがより一段と良くなってるな……連携も見事にとれている」

 

咲真は自分たちとの試合で急激な成長を見せる光ヶ丘に、感嘆の声を漏らしつつ、ボールを奪われないよう一旦距離を取った。

 

咲真が少し下がったことに、桔梗は一切表情を変えなかった。その目はボールをただ一点に見つめている。

 

「ならこっちもそれ以上で迎え撃たせてもらおうか」

 

咲真が開けた距離を一気に詰めにかかる。すぐに桔梗も反応し、咲真の動きに合わせて味方と連携を取りながら数人でボールを奪いに行く。

 

「クハハ、いいぜかかってこい!」

 

咲真はまず向かってきた1人目を左右に振り、それによって空いた足の間にボールを通し抜き去る。

 

「1人」

 

すかさず2人目が咲真が抜いた隙を突いてボールを奪おうとスライディングで迫る。

それを()()()()咲真はすぐさまボールより一歩前に出て、流れるようにかかとを使ってボールを上げるテクニック、ヒールリフトを使って2人目も難なく抜いた。

 

「2人」

 

「やっぱり貴方は凄い!でも、ここで止める!」

 

最後に咲真に立ち塞がった3人目、桔梗は周り一帯に濃い霧を発生させる。

 

「ディープミスト!!」

 

これは桔梗が先ほど蒼夜のシュートを止めた時に使用したディフェンス技。霧によって咲真の視界が奪われている隙に桔梗はボールを奪おうと咲真の足元へ足を伸ばす。

 

「もらった─────って...うそ⁉︎なんで...」

 

ボールを奪おうとしていた桔梗の顔が驚きに満ちる。桔梗が伸ばした足の先には、既にボールが無かったのだ。確かに自分が技を発動させた時はボールは咲真が持っていた。しかし、なぜか今は咲真の足元にボールは無い。ならパスを出したのでは無いか、いや、それは無かった。なぜなら桔梗が技を発動した時も、その後も、咲真はパスを出す様子を見せなかったからだ。

 

「一体、ボールはどこへ行ったんだ……」

 

桔梗が無くなったボールを探している間に、あたり一帯を覆っていた濃い霧が徐々に晴れて行く。

 

「えっ⁉︎」

 

そして、両者の視界が完全に晴れた時、ボールの在り処を見た桔梗は再び驚愕した。

なんとボールは、咲真の頭上付近で、フワフワと重力を無視して浮いていたのだ。

 

「これで3人だ」パチンッ

 

咲真がパチンッと指を鳴らすと、浮いていたボールが突然動き出し、凄いスピードで桔梗の周りを飛び回り始めた。

 

「バンブルボール」

 

「えッ?えッ?」

 

自身の周りを高速で飛び回るボールを、桔梗は捕捉することが出来ずボールは桔梗の背後へと飛んで行った。ボールが飛んで行った先には、既に咲真が回り込んでおり、飛び回っていたボールがストンと落ち、咲真の足に収まった。

 

「悪いがそう簡単に奪われてやるわけには行かないからな。さぁ、追加点を貰おうか。頼むぞ佐々木!」

 

ボールを持った咲真は、すぐに前線へパスを出した。ボールは前線へ走る佐々木の元へ一直線に向かっていく……と思われたが、ボールは佐々木の頭上を越え、佐々木の2メートルほど先へ飛んで行く。パスミスだ。

 

「っ!ミスキックだ!取れ!」

 

突然訪れたチャンスに、光ヶ丘が食らいつく。ボールが勢いで転がると判断した光ヶ丘のDFが、佐々木の前方でボールが転がってくるの待ち構える。

 

「(おかしい...あの人がこんなミスするなんて....)」

 

しかし、ここで桔梗はふと得体の知れない違和感を覚えた。さっきまで洗練されたテクニックで自分たちを苦しめていた咲真がパスミスなんてするのか。疑念が桔梗の頭をよぎる。

 

疑念を抱く桔梗を尻目に、ボールはそのまま佐々木の前へ落ちた。そしてその瞬間、桔梗の疑念が正しかった事が証明された。

 

佐々木の2メートルほど先へ落ちたボールは、強力なバック回転により、光ヶ丘DFが待ち構えていた前方へ転がる事なく、自らボールを追う佐々木の足元へドンピシャで吸い込まれていった。

 

「うへ〜、やっぱあの人のパス気持ちわり〜」

 

佐々木はバック回転で自分の足元へ収まったパスを受け、口から素直な感想が出た。初めからパスが来ると分かってた佐々木ですら、目の前に突然飛んで来て、自分の足に自ら収まったボールを見て、対戦相手に同情するのだった。

 

「ほんとあの人が味方で良かったって思うわ……」

 

後ろからのパスを振り向く事なく受け取った佐々木は、スピードを全く落とす事なくドリブルを始めることが出来た。それにより、前方に待ち構えていたDFをいとも簡単に突破した。

 

「嘘だろ⁉︎」

 

「マジかよ⁉︎ありえねえだろ⁉︎」

 

目の前で起こった事に驚きを隠せない光ヶ丘メンバー。そして理解する。咲真がこれを狙ってわざと前方へパスを出した事、佐々木もそれを分かっていた上で完全にパスが来ると信じていた事、技術だけじゃない、メンバー同士の信頼関係も自分たちよりも遥か先へ進んでいると。

 

「凄え……!!これが前回王者……花咲川」

 

桔梗は自分の体が震えているのを自覚した。しかしそれは決して恐怖や怯えなどではなく、自身のすぐ目の前にある強者の存在に心身ともに奮い立っていたのだ。

 

その間にも、佐々木はすでにゴール前まで迫っていた。すでにゴール前にはキーパーの工藤以外誰もいない。完全にフリーだった。

 

「ここで終わりにさせてもらう」

 

佐々木はそう一言言うと、右足でボールに強力な回転をかける。すると突然ボールから炎が上がり、メラメラと燃え始める。

 

「ヒートブラスター」

 

佐々木は燃えるボールを右足でボレーでシュートすると、炎が地面を抉りながらゴールへ襲いかかる。

 

「絶対に決めさせてたまるか!」

 

気合の入った声と同時に、工藤の拳が焔に包まれる。

 

「今度こそ...俺が止めてやる!マッハ...デストロイッ!!」

 

飛んで来たボールに向かって、工藤は渾身の連続パンチを叩き込む。

 

炎と焔のぶつかり合い。佐々木の静かに燃える炎と工藤の熱く激しく燃える焔がせめぎ合う。

 

「オオォォォ─────ッ⁉︎クソッ!!」

 

「「「「「ッ!!」」」」」

 

2つの炎のぶつかり合いは、工藤の焔を佐々木の炎が簡単に飲み込んだことで決着した。工藤の必殺技が破られ、桔梗たちもその表情を焦りと驚愕の表情へ変えた。

 

「(また止められないのかよ....俺は...何のためにここにいるんだよ...)」

 

工藤の拳を弾いたボールが、そのままゴールラインを割る………

 

「させないよォォ〜〜!!」

 

かに思われた。しかし、ボールがゴールラインを割る寸前で、FWの位置からいつのまにかここまで下がって来ていた光ヶ丘のエース、城戸がボールに食らいつくようにジャンピングヘッドで飛び込み、ボールを外へ弾き飛ばした。

 

「ッ!城戸!」

 

溢れボールをすかさず桔梗がキープする。

 

「凄えよ城戸!ナイスガッツ!ナイスクリア!」

 

「っへへ〜!」

 

城戸の気迫の入ったプレーで、光ヶ丘の闘志に更に燃料が加えられた。下がっていた選手たちが一気に上がって行く。

 

「……悪い城戸、助かった」

 

「どういたしました〜〜」

 

他の選手たちが攻め上がっている間に、工藤は地面に座り込んでいる城戸に手を伸ばし、城戸を引っ張り起こす。

 

「……悪い。俺のせいで、俺が何にも出来ないせいで....俺は一体何しに来たんだ....」

 

工藤は今の自分の無力さを自身で痛感し、闘志もすでに風前の灯火となっている。その顔は不安と後悔で染まっている。

 

「えいや〜!」ドスッ

 

「ゴフゥッ!!」

 

突然、城戸は工藤の腹に向かって思いっきりパンチを叩き込んだ。

 

「ぉ...お前...ぃきなりなにすんだよ...」

 

工藤は全く予想だにしていなかったため、完全に無防備になっていた腹にパンチを叩き込まれ、腹を抑えたまま膝をついて震えている。

 

「それはこっちのセリフ〜。もぉ〜、な〜に言ってるの!らしくないよ〜!」

 

城戸はしゃがみ込み、いつもの調子で工藤に声をかける。

 

「誰のせいだ〜とか、誰かが弱いから〜とか、僕たちにはそんなの関係ないでしょ?四十住がよく言ってるけど、僕たちは一連托生〜!1人のミスは全員のミス。誰かが決めた1点はみんなの1点だよ」

 

「……でも、それでも俺がしっかりしないと。ちゃんとしないとゴールを守れない。みんな凄え頑張ってんのに、俺はあいつらの足を引っ張るだけでほんとなにも出来てない.....」

 

工藤の口から溢れて止まらない弱音。それを聞いた城戸はケロッとした様子で工藤に尋ねる。

 

「どうして工藤は人の頑張りだけを評価するの?」

 

「え…?」

 

城戸の質問に言葉を詰まらせる工藤。そんな工藤を見て、城戸はニパっと口角を上げて続ける。

 

「僕から見たら皆んな同じくらい頑張ってるよ〜、工藤だって手を抜いてシュートを止めようとなんてしてないでしょ?」

 

「そうだが「それに……」」

 

「誰も工藤が足手まといなんてこれっぽっちも思ってないよ〜?逆に感謝してるくらいさ〜」

 

「感謝?」

 

「そうだよ〜。2点目を決められて戦意が無くなった時、お客さんの野次で心が折れそうになった時、支えてくれたのは四十住と……工藤でしょ?」

 

「…………」

 

「あれ、凄く心強かったんだよ〜?まだ頑張れるって思ったんだ〜。だからね、僕は...ううん、僕たちは、工藤に凄く感謝してるんだよ。工藤がこのチームに居てくれて良かった〜ってさ」

 

「ッ!!」

 

()()()()()()()()()()()()()」その言葉が、今の工藤にとってなによりも嬉しかった。チームの足を引っ張って、助けられてばかりの自分が、大切なこのチームに必要とされている事を彼は今、ようやく実感したのだった。

 

「それにね、キーパーだからって無理に1人でなんとかしようとしなくていいんだよ〜。僕たちは1人1人の力はまだまだ弱っちいけど、集まればどんな壁も敵もぶっ倒せるよ」

 

「集まればどんな壁も敵も……」

 

「そうだよ〜。1人で出来ないことは、皆んなで束になってやるんだよ。そうすれば、1人でやるときよりも断然、力も成功率も上がるよ〜!」

 

そう言うと城戸は、今まさに前線で必死に戦っているチームメイトたちに視線を送る。続いて工藤も、そんな彼らの方へ視線を向けた。その視線の先には、プレーも気迫も、今までと比べのものにならない程研ぎ澄まされ、頼もしくなった仲間の背中があった。

 

「まぁ見てなよ。これから皆んながそれを証明してくれるからさ」

 

 

 

 

 

 

「行くぞォ!」

 

「「おお(はい)!!」」

 

城戸のガッツを見せたプレーを見て、更に奮い立った桔梗たち。アドレナリンがドバドバ出ている体は、彼らの疲れを忘れさせ、より一層磨きのかかったプレーを体現させている。

 

「行かせないよ〜!」

 

すぐさま彩瀬が桔梗の前を塞ぎ、ボールを奪おうと足を伸ばす。

 

「四十住!」

 

桔梗はドリブルスピードを落とさずに、自分の横を走っていた四十住にパスを出す。しかし、勢いの乗った体勢から放たれたパスは、今までのとは全く異なるスピードで飛んでいき、四十住の前方を通過するかに思えた。しかし………

 

「ああ!」

 

四十住は桔梗から出された無茶振りとも思えるパスを、いとも簡単に受けてみせた。

 

「行くぞ、氷河!」

 

今度は四十住が、すぐさまゴール前まで走り込んでいた氷河にパスを出す。

 

「はい!」

 

パスを受け取った氷河は、すぐに振り向き先ほど同様にシュートの体勢に入る。

 

「ハアァァーー!!」

 

氷河の雄叫びと共に、再び背後に炎に包まれた巨大な黒い熊が現れる。

 

「またさっきのか?そんな不安定なシュート、簡単に止めてやるぞ!」

 

岩隈は先ほど氷河が必殺シュートを失敗したのを見て、今度も失敗する。もし成功しても止められると思っていた。実際、氷河が放とうとしているシュートは1人では制御が仕切れない。そう、1()()()()………

 

「いいや、同じじゃねえよ。さっきよりも更に強い!」

 

「なんだと⁉︎」

 

突如聞こえた声と共に、氷河の隣に並び立つ人物が現れた。四十住だ。

 

「何をする気だ⁉︎」

 

現れた四十住に驚きを隠せない岩隈。そんな彼を尻目に、氷河の隣に並び立った四十住は、彼女を真似る様に大きく雄叫びをあげる。

 

「こうするんだ!ハアァァーー!!」

 

四十住が雄叫びをあげると、その背後に先ほど氷河の背後に現れた氷に包まれた巨大な白熊が現れた。

 

2人はボールを高く上げ、回転しながら跳躍する。すると2人の背後にいた2匹の熊がボールに吸い込まれる様に入っていき、ボールを中心に炎と氷がまとわりつく様に回転し始めた。

 

「俺たちは一連托生。1人で無理な事は……」

 

「2人でなら...出来るッ!!」

 

そして2人は回転の勢いを利用し、同時にボールを蹴る。ボールは炎と氷を纏いながら、今まで放ったシュートを遥かに凌駕する威力でゴールへ襲いかかる。

 

「「ツインズベアトルネードッ!!!」」

 

彼らはこの絶体絶命な土壇場で、氷河が編み出した未完成な必殺技を見事に完成させてみせた。

 

「止めてやるよ!ハイビーストファング!!」

 

氷河と四十住が放ったシュートを、岩隈は両手で挟み込む様にして止める。しかし、シュートの威力が強く、ボールは手の中で大きく暴れ出す。

 

「グッ、グラァァーー!─────ッ⁉︎なんて威力だ!クソッ!」

 

そして、岩隈の両手を弾き飛ばし、2人の放ったシュートは花咲川ゴールに深々と突き刺さった。

 

 

 

ピーーーーーーッ!!

 

 

花咲川 2ー1 光ヶ丘

 

 

「………………」

 

試合終了が迫る中、遂に光ヶ丘が1点を決め、ルーキーが前回王者に一矢報いた。

 

「……ッシャァァーー!!」

「やったァァーー!」

 

「「「「「うおぉぉーー!!」」」」」

 

光ヶ丘サイドに歓喜の声が響き渡る。まだ1点を返しただけで、以前自分たちが負けていることに変わりはない。しかし、今の彼らにとってこの1点は、何物にも変えられないほど貴重で、重い1点となった。点を決めた氷河と四十住に、メンバーたちが飛びかかり喜びを分かち合う。

 

「ほらね、やってくれたでしょ〜?」

 

そんな彼らを遠目に見ていた城戸が、ゴール前で立ち尽くしている工藤にそう声をかけた。

 

工藤は、スタジアムにある電光掲示板に映っている『1』という数字をただ見つめていた。

 

「「「工藤(さん)!!」」」

 

そんな彼に、桔梗、四十住、氷河の3人が声をかけた。工藤は自分の呼んだ3人の方をゆっくりと向くと、そこには、グッ!という効果音が似合いすぎるほどに大きくサムズアップする3人がいた。

 

「─────!!」

 

それを見た瞬間、工藤の顔つきがこれまでと比べものにならない程力強くなったのが、近くにいた城戸にはわかった。

 

 

 

 

喜ぶ彼らの様子を遠目から見ていた花咲川メンバーは、彼らの成長を見て感嘆の声を漏らした。

 

「まじか…まさかここまでなんてな」

 

「奥沢、貴様...全くもって面倒ごとばかり増やしおって....」

 

彼らのこの試合で確実に、そして格段に成長を見せている。今の彼らのポテンシャルは、試合開始前とは比べものにならない程レベルアップしている。

そんな彼らの成長を1番感じているのは、彼ら自身では無く、そんな彼らと今まさに対峙している、花咲川メンバーだった。

 

「で、どうするつもりだ?まさかこのままやられっぱなしという訳では無いだろ?」

 

「ああ、もちろん。そう簡単にやられてやんねえよ。おーい、河野ー」

 

そう言うと、咲真はディフェンスラインにいた河野に声をかける。咲真の声に気がついた河野が、駆け足で2人の元へ走ってきた。

 

「なんだ奥沢」

 

「さっきのシュート、止められそうか?」

 

「そうだな...私1人では難しいかもしれん」

 

「なら、お前たちが隠れて練習してたあの技ならどうだ?」

 

咲真はニヤッとした笑みを浮かべながら河野に尋ねた。

 

「っ!気づいていたのか?」

 

「まあな」

 

「おい、なんの話をしているんだ?」

 

「……あの技なら問題なく止められると思う。しかし、まだ安定性に欠けているのだが」

 

「なあに、それならこの試合で完璧にすれば良い。あいつらみたいにな」

 

そう言うと咲真はおもむろに光ヶ丘の選手たちの方を向いた。

 

「そうだな...分かったやってみよう」

 

「よし、そうと決まれば...」

 

咲真はベンチの方を向くと、ベンチにいる監督とマネージャーの和泉に向かって選手交代のジャスチャーをした。それを見ていた和泉は、すぐに咲真の糸に気づき、ベンチで座っていたシャロンに声をかけ交代の準備をさせる。

 

それを見ていた咲真は茜を呼んだ。

 

「おーい、茜ー」

 

「はーい!なんですか?」

 

「交代だ」

 

「ええーーーッ⁉︎そんなぁ〜〜」

 

交代を宣言された茜は、ガクッと肩を落とした。

 

「まぁそう落ち込むなって」

 

「ああ、素晴らしい活躍だったぞ」

 

落ち込む茜に、咲真と日向が声をかける。

 

「キャプテン...お姉ちゃん...」

 

「なあに、これで終わりでは無い。必ず勝って2回戦に進む。私たちを信じろ」

 

日向は茜の頭を撫で、信じろとそう伝える。日向を言葉を聞いた茜は、パアッと笑顔になり大きく頷いた。

 

「うん!ボク信じるよ!」

 

 

ピーーッ!!

 

茜 OUT ⇔ IN シャロン

 

花咲川の選手交代、FWの茜に変わりDFのシャロンが入る。それにより、FWの枚数が2枚になり、DFが5枚になった。

 

「が、頑張りますッ!!」

 

「おう、頼むぞ」

 

咲真はシャロンの肩にポンと手を置いてそう言うと、光ヶ丘の選手たちの方へ振り向いた。

 

「よし、じゃあ決着をつけるとしますか」


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