チーム分けから数十分が経った。この間に両チーム共ポジションと作戦を練っている。今回キャプテンに任命した日向と氷川は、どちらも的確な指示と状況判断のできる司令塔タイプだ。入ったばかりの新入部員をどう使うか、見ものだな。
「よし!じゃあそろそろ始めるぞ〜。両チーム整列してくれ〜」
俺の掛け声で両チームがセンターラインに集まってくる。
「これからルールを説明する。試合時間は半分の45分、必殺技有り、今回は紅チームにキーパーがいない為フリーやコーナーでゴールを直接狙うのは禁止とする。これは両チーム共通だ。ルールは以上、何か質問は?」
「「「「・・・・・」」」」
俺の質問に誰も手をあげる様子は無い。大丈夫そうだな、、、よし。
「じゃあ、試合を開始する。キャプテンは前に出て来てくれ。ボールを持つ方を決める。」
そういうと、日向と氷川が前に出る。
「コインで決めるぞ。数字が表、マークが裏だ。好きな方を選んでくれ。」
「どうぞ先輩、お先に選んでください。」
「そうか?では、私は表だ」
「じゃあ俺は裏で」
お互い裏か表か決めたところで、俺はコインを高く弾いた。キィン!っと一瞬音を立ててコインが空中に放り出される。そのままコインは何回も回転し、俺の手の甲に落ちる。俺はコインにコインが乗ってない方の手を被せる。一呼吸置いたのち、手を退ける。
コインは数字、表だ。
「表。じゃあボールは紅チームからだな。」
そう言って俺は日向にボールを渡す。
「じゃあ始めるぞ。お互いポジションについてくれ。」
その一言で、全員が自分のポジションに移動する。
数秒後、俺は全員がポジションに着いたのを確認してからホイッスルを鳴らす。
ピーーーッ!!
というホイッスルの音で、試合が開始される。
茜から片桐へボールが渡され、それを片桐が彩瀬に回す。すると同時に、茜と片桐が猛スピードで敵陣に切り込んでいく。いやッ、2人ともまじで速いな。
「いっくよ〜!!」
「行くぜーー!!」
2人はあっという間にゴール前に到達、彩瀬はドリブルで持ち込み、2人に向けてパスを出す。
「任せるよ〜、華蓮ちゃん!」
「おう!!」
彩瀬からのパスを受け取ったのは片桐、ゴール前まで一気に駆け上がり、そして、、
「いっくぜぇ〜!ライトニングジャベリンッ!!」
踏んで浮かせたボールを蹴ることでボールが雷の槍となってゴールに向かう。
「よっしゃ〜!これで決まりだ〜!」
すでにゴールを確信した片桐だったが、その確信も一瞬にして砕かれることになった。
「甘いッ!グレートバリアリーフ!」
岩隈が横に手を振ると周りが一瞬にして美しい海の中へと変化し、水の抵抗で威力が弱まったボールが岩隈の手に吸い込まれ、軽々とキャッチされる。
「嘘ッ!オレのシュートが、、、」
「スピードは大したもんだが、パワーが足りねぇぞ!」
そう言って、岩隈は大きくボールを蹴り、そのボールを氷川がトラップし、そのままドリブルで上がっていく。
「行かせないよ〜!蒼夜!」
「っ!七美!」
攻める氷川の前に彩瀬が立ち塞がる。氷川がドリブルで抜こうとするが、彩瀬はまるで氷川の動きが分かっているかの様な動きで、全くスキが無い。
「くそッ!流石七美だな、俺の動きがこうも読まれるなんて。」
「んふふ〜、伊達に幼馴染やってないからね〜!蒼夜のことならなんでも分かるよ〜。」
「あ〜、そうかい! だったら、、、」
そう言うと、氷川は前を向いたままヒールキックで後ろにパスを出す。
すると、そこには氷川の陰で隠れて見えなかった水瀬が居た。
「ナイスパスです!氷川先輩!」
「えっ⁉︎ いつの間に⁉︎」
氷川からパスを受け取った水瀬が、そのまま上がっていく。
「…行かせん」
すぐさま紅城が水瀬を止めにかかる。が、、、
「立ち塞がるものは、全員抜きます!」
自己紹介の時からは考えられない強気な雰囲気を出す水瀬。アイツ...あんな感じだったか?
「泡沫の...舞ッ!!」
突如、水瀬の周りに大量の泡が現れ、水瀬はその上を跳ねるように移動して紅城を抜き去った。
「佐々木先輩!」
「あいよっと」
水瀬はそのまま佐々木にパスを出す。紅チームにはキーパーがいない為ゴールはガラ空きだ。
「まずは先制点だな」
佐々木はシュートの体勢に入る。
「猫神!右サイドを塞げ! 河野!正面に回り込め!」
日向の指示がコートに響きわたり、すぐさま2人が日向の指示通りに動き出す。
猫神は右サイドに入り、その反対の左サイドには日向が入る。なるほど、キーパーがいない分コースを制限するための動きか...流石だな。
「っ⁉︎ ヒートブラスターー!!」
佐々木は一瞬戸惑いを見せるもそのままシュートを放つ。高速回転によって燃えたボールを打ち出し、地面を削りながらゴールに向かう。
「河野ッ!」
「分かっている」
コースを制限したため、佐々木が放ったシュートは河野の正面に来る。
「スプラッシュ..カット!」
河野の足から青い衝撃波の様なものが放たれ、衝撃波が地面に当たると、当たった箇所から凄まじい勢いで水しぶきが上がり、佐々木の必殺シュートを止める。
「ふぅー。」
「クソッ」
流石に正面だと、河野のディフェンスを破るのは難しかった様だな。紅チームにはキーパーがいないが、その代わり、普段からディフェンスの指示を任せている日向とチーム1のディフェンス能力を持つ河野、他にもDFを多めに入れてあるからな、、、さぁ、こっからが面白くなってくるぞ。
「流石だ!河野」
「あれだけコースを限定してもらったからな。あれで止められなければ、お前たちに顔向け出来ん。」
「猫神も良くやったな。」
「えっへへ〜」
「これからどうする?日向」
「あぁ、私と茜で攻めようと思う。」
「先輩と妹ちゃんでですか?」
猫神は少し不思議そうな表情で聞く。
「任せてくれ、必ず一点もぎ取ってこよう。」
「分かった、任せる。守備は私たちに任せてくれ。」
「あぁ、頼んだ!」
そう言うと、日向はドリブルで攻め上がり、センターラインに達した辺りで彩瀬のパスを出す。
「彩瀬!ゴールは私が決める。それまで頼めるか?」
「もちろん!この私に任せてよ、灯里先輩!」
彩瀬は最初と同様に華麗なドリブルで攻め上がり、2人抜いたところで日向にボールを戻す。
「凄まじいな、彩瀬。」
「これくらいお安い御用ですよ〜。先輩こそ、面白いもの見せてくださいね?」
「あぁ、勿論だ! 茜ッ!!」
日向は茜に声をかけ、茜は日向に近づいていく。
「どうしたの? お姉ちゃん」
「茜、あれをやるぞ。」
日向がそう言うと、茜の瞳が一気に輝き出す。
「えっ!ホント⁉︎ あれやるの! やった〜!」
「行くぞ、茜!」
「うん!ボクに任せてよ!お姉ちゃん!」
2人はどうやら何かを狙っている様だな、、、
それに気づいた氷川がDFに指示を出す。
「何か来る!2人を止めろ!」
氷川の指示に白チームのディフェンスが動くも一歩遅く、2人はすでにゴール前まで上がってきていた。
「行くぞ!」
「うん!」
ピィッ!!と、日向が口笛を吹くと、地面からペンギンが生える。日向がボールを蹴り上げると、それを追う様にペンギンたちが空を飛ぶ。蹴り上げたボールに合わせる様に茜が足に炎を纏わせながら、回転し、そのままボールと同じ高さになったところで、シュートを放つ。
「「皇帝ペンギン...Fッ!!」」
打ち出されたボールは、炎を纏ったペンギンとともに白チームのゴールに向かう。
「決めさせるか!グレートバリアリーフ!」
岩隈が始めと同様に辺りを海に変え、ボールを止めようとするも、シュートの威力は弱まることなく、岩隈の技を破りゴールに突き刺さる。
ピーーー!!!
紅 1-0 白
「やった〜!やったよ〜!お姉ちゃん!」
「あぁ、流石は茜だな。」
「えへへ〜〜///」
そう言って日向は茜の頭をヨシヨシと撫でる。
「すまん、氷川。決められた…」
「いや、俺も指示を出すのが遅れた。悪い。」
「それにしてもスゲェ必殺技だったな。」
「水嶋先輩…すみません」
「気にすんな」
氷川と岩隈、水嶋を中心に白チームが集まって作戦を話し合う。
「ど、どうするの…?お兄ちゃん‥‥」
「う〜ん、向こうは攻撃に参加できる人数が多いからな、出来るだけマークをつけてシュートを打つ奴を限定したいな。」
「そうだな、あれだけスピードのあるFWが2人もいるんだ、好きに動き回られたら対処しづらいな、、、」
岩隈の話を聞いて、氷川が対策を考える。
「やっぱりFW2人にマークをつけるべきだろう。岩隈、黒騎できるか?」
氷川はDFの2人に片桐と茜のマークにつくよう指示を出す。
「は、はい‥! が、頑張ります!」
岩隈がすぐに返事をする。が、、、
「なんで俺様がそんなまどろっこしいことしなきゃならねぇんだ」
黒騎は自分の役割に納得出来ないのか、反発的な態度を取る。
「おい!今の状況を理解してるのか!FW2人を止めなきゃこっちも攻めるに攻められないんだぞ!」
「・・・・」
「このッ!!」
氷川が怒りを露わにしながらも、黒騎は何処吹く風。
「氷川、今は喧嘩してる場合じゃない。」
水嶋が氷川を落ち着かせようとする。
「とりあえず、マークは岩隈妹と水瀬の2人に任せよう。黒騎は自分で判断して動いてくれ、好きにしていいがミスは自分の責任だと理解しろよ」
水嶋が1年3人にそう指示を出す。
「「は、はい!!」」
「ああ…」
「次に攻撃だが・・・・」
氷川は下を向いたまま苦虫を噛み潰した様な表情をしている。どうやらまだ完全には落ち着けていない様だ。すると、突然誰かに肩を叩かれる。顔を上げ横を見ると、そこには佐々木が居た。
「佐々木……」
「まぁ、あれだ。あんまり気にすんな。お前は真面目だからな、ああいうタイプが気に入らないのは分かる。が、それでわざわざお前が崩れてやる必要は無い。お前はお前のプレーをしろ。」
佐々木のアドバイスで、氷川は少し楽になったのか、肩に入っていた力が抜けた様だ。
「すまない、佐々木。ありがとう」
「別に…あの人ならそう言うと思っただけだ…。」
そう言って佐々木は、咲真の方を見る。
「ああ、そうだな」
フッと微笑みながら氷川は佐々木にそう返す。どうやら完全にいつもの氷川に戻った様だった。
「よし!まずは一点取り返す。手を貸してくれ佐々木。」
「めんどくさいが、まぁ手伝ってやるよ」
そう言って2人は軽くこぶしを合わせる。
「(どうやら大丈夫そうだな。こっからが楽しみだ)」
咲真は2人を見てそう思うのだった。
「うーん、やっぱり厄介なのは河野だよなー。」
「水嶋さん!」
「ん?」
攻め方を考える水嶋に氷川が声をかける。
「攻撃の指示、俺に任せてくれませんか?」
いつもの表情に戻った氷川を見て、水嶋は安心した顔を見せる。
「分かった。このチームのキャプテンはお前だ、好きにしろ。俺たちはお前の指示通りに動く。」
「ありがとうございます!」
そう言って氷川は紅チームの方を向く。
「さぁ、反撃開始しましょう。」
本日はここまでです。読んでいただきありがとうございます!
初の試合シーンで詰め込みすぎた様な気がしますが、自分の書きたいことをしっかり書きました。今後、読みやすい様に少しずつ改善していこうと思います。