牛込さんからメールが送られてきてどうすればいいのかわからない俺達。
たふけて…助けを呼んでるんだよな…?
でもなんで…そしてどこで?
迷子…では無いよな…?
ふと頭に過ぎる言葉
拉致、誘拐
…嫌な予感がする。
俺と戸山さんは急いでコンビニを出る。
「ねぇゆーちゃん、どうしよう…!!」
「どうしようも何も早く探さなきゃ…多分人目のつかない場所…そんなに時間も経ってないからそんなに遠くはないと思う…心当たりある!?」
「わからない…どうしよう…りみりん…」
あまりにも急に訪れた事件。
何が起きたかはわからない。
けど牛込さんが危ないのは確かだろう。
急がなくちゃ…まずい。
「クヨクヨしてる場合じゃないだろ!?早く走ってよ!?」
「そんなこと言ったって…どうしたらいいの…?」
「そんなの俺にもわかんねぇよ!!」
「っ!ごめんなさい…」
俺は焦りからか、ついムキになってしまった。
その俺の怒声に…戸山さんは涙していた…。
「あっ…ごめん…戸山さんだって…今パニックなんだよね…」
「ううん…早くりみりんを見つけなきゃ…!!」
そうして俺と戸山さんはとにかく走った。
商店街、公園、学校。
隅々まで探したが牛込さんは見つからなかった。
何時間探したかわからない…
もう…とっくに月が出ていた…
「ゆーちゃん…りみりんどうなっちゃうの…?」
「…。」
そんなの…わからない…。
牛込さんが何をしたの?
俺はまだ1回しか会ったことない。
でも、その1回でも十分にわかる。
小心者でオドオドしてるけど、とても芯が強くて優しい子なんだって。
そんな子がどうして…?
俺が…ちゃんと見ていたら…
目を離さなかったら…こんなことにはならなかったのかな…?
もう今更無駄なことを考えていると、戸山さんの携帯に着信が入った。
「もしもし有咲…?……うん、わかった」
どうやら姉ちゃんからの電話みたいだ。
「姉ちゃんから?なんだって?」
「とりあえず1回有咲の家に集合してから探す場所を皆で決めようってことになったみたい…」
「そっか…急いで帰ろっか…」
俺はこの重い足を一生懸命動かして家へと向かった。
そして自宅。
練習で使ってる蔵集合のはずなのだが…暗い。
姉ちゃんは家にいるはずなのに…なんでだ?
とりあえず俺は蔵に入ると…
「「ハッピバースデートゥーユー♪」」
と暗闇の中から声が聞こえてくる。
明かりを付けるとそこには、
「え…?」
姉ちゃんと…牛込さんがいた。
「兄ちゃん!誕生日おめでとう!」
「な!?これどういうことだよ!?」
「えっへへぇ…ゆーちゃん驚いた!?」
「戸山さんもそっち側なの!?」
さっきまで一緒にいた戸山さんもこの状況がわかっているらしい。
となると…わかっていないのは俺だけか…
っていうか…牛込さんが無事で良かったよ…
「お、おい兄ちゃん!?別に泣かなくてもいいだろ!?」
「有咲~サプライズ大成功だね!嬉し泣き嬉し泣き♪」
「ううん…違うよ…」
「兄ちゃん…嬉しくなかったか…?迷惑だったか??」
「牛込さんが…無事で良かったんだよぉ!!」
「えぇ!?う、うち!?」
牛込さんが無事ってわかって安心した。
涙が止まらなかった。
どういう事だったのかを聞くと
今日は俺の誕生日(本当の誕生日はわからないので市ヶ谷家に引き取られた日を誕生日としている)だったらしく姉ちゃんが俺を驚かせたいということで計画されたみたいだ。
牛込さんが行方不明になり、俺と戸山さんで探す。
その間に姉ちゃんが部屋の装飾や料理、プレゼントを用意して終わったら戸山さんに連絡してここに集める。
という計画だったらしい。
「戸山さん…演技うますぎない…?」
「いやぁまんまと騙されましたなぁ~。でも、まさかあそこまで本気で怒鳴られると思ってもなかったからちょっとびっくりしちゃったよ…」
「兄ちゃん…香澄に怒鳴ったのか!?」
「そーだよ有咲。ゆーちゃんりみりんのこと心配しすぎて大混乱してたよ!なんだか見てて可哀想になっちゃって…」
「そんなに私のこと…?まだ1回しかお話した事も無いのに…?」
「なんかぁ一目惚れした女を守らない訳にはいかない!!って…」
「ひ、一目惚れ!?////」
あ、牛込さん顔真っ赤にした。
めっちゃ可愛いわ…
「…ってそういう冗談はやめろ?」
「だってー!怖かったんだからね、あの時のゆーちゃん…」
「それは…仕方ないじゃん…」
「ほーら、一目惚れしてるからだ~」
「だから違うっての!!」
「兄ちゃんはりみが好きなのか…??」
俺と戸山さんの言い合いに、姉ちゃんが入ってくる。
牛込さんは相変わらずあたふたしていてとても可愛い。
「い、いや好きじゃないから!?」
「じゃあ嫌いなんだ~可哀想りみりん…」
「嫌いなわけないじゃん!?」
「じゃあやっぱり好きなんだな!?」
「姉ちゃんまで……ほら!まだ1回しか話したことないからね!」
「じゃあ今度2人っきりでデートして!!りみりんもいいよね??」
「えぇ!///ウチなんかと有咲ちゃんのお兄さんが…?///」
「香澄!!勝手なこと言うなよ!!皆困ってるだろ!?」
「いいのいいの!りみりんはオッケー?」
「無理だよ~香澄ちゃん」
「じゃあちょうど1週間後ね!!」
な、なんか強制的に決められてしまったみたいだ…。
周りの人の意見ガン無視…さすがバカすみ…!
何はともあれ、この事件が解決して良かった。
この後、なぜか姉ちゃんは少し不機嫌だったが俺のバースデーパーティは終わった。
そして戸山さんと牛込さんが帰るとき、
「じゃあゆーちゃん。来週はりみりんとのデート頑張ってね!」
「え!?本当にするの!?牛込さんも嫌でしょ…?」
「私は…その…心配してもらったみたいで、すごくすごく嬉しかったし…今日はめっちゃ迷惑かけちゃったからそのお返しがしたいです…///」
「と、いうことでけってー!!じゃあ2人ともまた明日ねぇ!!」
俺の返答を待たずに戸山さんと牛込さんは帰っていった。
俺も自室に戻ろうとすると、姉ちゃんが
「なぁ…本当にりみのこと好きなのか?」
疑問を投げかけてくる。
やめてくれ、そんなこと聞かないでくれ。
俺がこの世で1番好きなのは姉ちゃん…姉ちゃんなんだよ!?
でも、そんなこと言えるはずもない…
こんな気持ち…存在してはいけないから。
もしかしたら…今回の牛込さんの件は、姉ちゃん離れするいい機会なのかもしれない…
俺は
「まだ…わからない」
これ以外に…回答の選択肢がなかった気がするんだ。