FAIRY TAIL 毒龍の滅竜魔導士   作:大枝豆もやし

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第16話

「以上で調書を終了します。ありがとうございました」

「……はい」

 

 救助隊や魔導医師たちに仕事をバトンタッチして倒れた後、俺は病室の中で検束たちに調書を受けることになった。

 今回は前回のようなトラブルではない。ただの事情聴取というか、情報提供のようなものだ。

 もちろん内容はあの巨大ごみについて。俺はその場で見たことを龍脈関係を除いて全て話した。

 その後なんか表彰するとか、功績を称えて聖十大魔導士とかに任命するとか言ってたけど、めんどそうなので遠慮した。

 

 

 なんでもあの巨大ごみは魔法史上最強最悪と称される黒魔導士ゼレフが生み出した「ゼレフ書の悪魔」の一匹、デリオラというらしい。

 イスバン地方に突如と現れ、町を徹底的に破壊してはまた消えるという迷惑千万甚だしい奴であり、評議会や魔導士ギルドも対策を講じているらしい。しかし奴は魔力を感知することが出来ず、あの巨体でありながら瞬間移動を使える。なので発見が遅れていつも後手に回るのが現状のようだ。

 

 デリオラの出現を聞いて駆け付けるとそこにあるのは焼け野原のみ。悲しみと悔しさにくれながら救助活動を行うも、生存者は極わずか。しかもその生存者も心身共に大きな傷を残すことになっている。……現場に向かった魔導士たちはどれほど無念であっただろうか。

 現場を体験した魔導士曰く、生き残りがこれほどいたのは奇跡らしい。あの惨状で奇跡だぞ? ならいつもはどれだけ酷いって言うんだ?

 

 俺は悔しかった。もっと早く駆け付けていれば、もっと早く龍脈を使っていれば、もっと俺がちゃんとしていればこんなことにはならなかった。

 今でも彼らの悲鳴が聞こえる。肉の焼けた匂いが甦る。……あの嫌な空気が鮮明に感じられる!

 

「……ッハ! まさか俺にこんな気持ちがあるなんてな」

 

 何善人面してるんだと自嘲する。

 俺は自分のことを善人だなんて思っていない。どちらかというとクズ寄りで自分以外の奴のことなんてどうでもいいとすら思っている。

 他人より楽する事と自分が楽しむことしか頭にない。基本的に他人や世の中のことには無関心で、前世でも誰かが困ってもスルーしていた。

 そんなクズが何を今さら感情的になっている? ……マジ笑えるな。

 

 盛大に舌打ちしながら外に出る。

 無性に外の空気が吸いたい。日の光を浴びて青空を眺めたい。

 外に出てベンチに座る。そういや飯食ってなかったとを思い出して近くの屋台に足を向けた。

 その時だった。ピンク色の何かが俺に当たったのは。

 

「あ」

「きゃっ」

 

 その音源は小さな少女だった。桃色の髪をした美少女。傍らには妹らしい幼女がいる。二人ともエルザ達レベルの美少女だ。

 倒れた彼女に俺はそっと手を差し伸べる。

 

「悪い、よそ見しちまった」

「い、いえ。こちらこそすいません……あ!」

「ん?」

「貴方、デリオラと戦っていた魔導士さんですね!?」

「あ、ああ。そうだが……」

「ああ、やっぱり貴方でしたのね!」

 

 美少女は前のめりになって近づいた。

 

「私はシェリー・ブレンディと申します! そしてこの子が従妹のシェリアです」

「……は、初めまして!あの時は本当にありがとうございました!」

「……あの時?」

「さっきです!デリオラから私たちを守ってくれましたね!」

「ましたね!」

 

 可愛らしく言う二人。そうか、彼女たちはあの時の美少女なのか。声と匂いからして可愛らしい少女と想像していたがその通りだな。いや、想像以上だ。

 いや、そんなことを考えてる場合じゃないな。

 

「……すまなかった。俺は……お前たちの両親を助けられなかった!」

 

 そう、俺は彼女たちの両親を助けられなかった。もっと早く駆けつけていればこんなことにはならなかったのだ。

 

「か、顔を上げてください! 貴方がいなければ私たちも死んでいたんですから! むしろ感謝しています!」

「そうです!町の人を、私たちを助けてくださりありがとうございました!」

 

 ……いい子たちだ。こういう場合、何故自分たちは助けることができたのに両親や大切な人たちは助けられなかったんだって感情をぶつけることが多いのに。

 彼女たちから悲しみの音が聞こえる。見かけは冷静だが心臓は大切な人を亡くした悲しみの音を奏でている。だけど、それを出さまいと必死に押し殺している……俺を悲しませないために。

 本当ならぶつけたいはずだ。感情のままに泣き叫びたいはずだ。だが必死に耐えている。こんな小さなが子供が。・・・だったら俺に出来ることは一つじゃないか?

 

「お前たちに誓う。俺は必ずあの巨大ごみを見つけ出し、その息の根を止めて見せる。……約束だ」

「「!!?」」

 

 だから、今度こそは俺があの巨大ごみを処分してやる。

 

「……貴方、お名前はなんていうんですか?」

「イクマン。イクマン・ヤハタ。フェアリーテイルの魔導士だ」

 

 去り際にそう言い残して俺はある場所に向かった。




今回、イクマンがデリオラに対して抱いた怒りに不自然さを感じる読者がいると思います。だってイクマン自身はデリオラに対して特別な怒りを抱く理由がないもん。
デリオラによって町が破壊される光景に怒りを抱くのはいいけど、それでデリオラを巨大ごみとか罵倒したり、見ず知らずの町に対してここまで思い入れがあるのも妙です。
書いた本人でさえこう言ってるのですから、違和感を抱いた方々がいるのも当然です。

では何故これほどデリオラに対して特別な怒りを向けるのか。……勘の良い方は気づいてるんじゃないでしょうか?

滅竜魔導士を全員女体化したいんですけどいいですかね~?

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