FAIRY TAIL 毒龍の滅竜魔導士   作:大枝豆もやし

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第17話

 あの巨大ごみを逃して半年ほど経った。頻繁に暴れていたはずのデリオラは活動を停止し、どこかに身を隠しているらしい。おかげで情報が一切出回らない。

 それでも俺は情報を求めてあらゆる伝手を使った。だが無駄だった。手掛かりはこれっぽちも入らず、俺は手をこまねいている。

 これ以上デリオラによって被害が出ないのはいいことだが、だからといって放置する気もない。……いつか必ず見つけて殺してやる。

 幸い金はエルザ達が援助してくれている。おかげで働くことなく調査が出来た。

 

 とまあ、こうしてデリオラの調査をしている間にた新たに仲間になったメンバーがいる。

 

 一人はナツ・ドラグニル。見た目はエルザより少し年下で色の髪とマフラーが特徴的の女子だ。

 聞いた話ではドラゴンに育てられたとか……けどあいつは俺と違って親子同然に育てられたらしい。………めっちゃ羨ましい。

 そして火の滅竜魔法を操る滅竜魔導士でもある。炎を食らい、炎を纏い、炎を吐く。自身の属性と同じものを吸収し操るのは滅竜魔導士共通のようだ。

 彼女は育ての竜とはかなり仲が良好であり、恨むどころか感謝している。時折竜のことを父ちゃんと呼んでおり、種族を超えた親子の想いが感じられる。……クッソ羨ましい。

 同じ滅竜魔導士同士、話が合うことはけっこうあるのだが、俺は竜との仲は壊滅的なのでそこは無理だった。むしろ俺が竜を殺す時の瞬間を喜々として語っている時なんか奈落の溝が感じられたな。ありゃかなり引いてたわ。

 

 あとストラウス姉弟。ミラジェーン、エルフマン、リサーナの三人姉弟だ。ミラジェーンことミラはエルザとよく喧嘩し、エルフマンは気弱で心優しい男の子だ。リサーナはナツと仲が良く、一緒にいる場面をよく見かける。

 みんないい子なのだが問題は長女のミラだ。同じ年頃の女の子だからだろうか、エルザといつも張り合っており実力もエルザと拮抗している。

 変身魔法のテイクオーバーという種類の中でもサタンソウルと呼ばれる悪魔のような姿に変身した時はあのエルザと互角にまで持ち込むほどの戦闘力を発揮する。

 また、ミラは性格が妹達とは対蹠的に荒々しい。口調も言葉も悪く、いつも着る服は髪の色と正反対の黒を基調としたヘビメタ風の恰好だ。

 端的に言う。彼女はいわゆるDQNという奴である。

 

「なーなー!私と勝負しろよ~!」

 

 だからこうして人が優雅なコーヒーブレイクをしてるのに邪魔したりするのだ。

 馴れ馴れしく抱きつくミラを追い払いながら甘いコーヒーを口から喉へと流し込む。

 

「聞いてんのかっ!」

 

 声を荒げ、不満げに俺の顔を覗き込んだ。

 

「あぁ、聞いてる。だからコーヒーを返せ。カフェインが効いて気分が良くなってきたんだ」

「ったく、久々に戻ってきたと思ったらだらけやがって。それにデリオラだっけ?ゼレフの悪魔を倒したらしいな?噂になってるぜ?」

 

 ニヤリと笑うミラは今から戦おうぜとばかりに戦闘のオーラを出している。しかし、いくら戦うことが好きな俺でも年中無休戦いたいわけじゃない。時と場合による。

 最近はデリオラの行方を追うために大分疲れた。故に今日は休みだ。残念ながらやる気があまりない。第一……

 

「止めとけ。お前程度など準備体操にもならん」

「……あ?」

 

 しまった、説得するはずが逆にガソリンを注いでしまった。いつもならば上手くできるのに。どうやら本格的に疲れているようだ。

 この場で臨戦態勢をとろうとしたミラを毒の粉で神経を麻痺させることで動きを止める。

 

「なっ! なんだ、身体が動かない!」

「毒を撒いて動きを制限した。やるなら外でやるぞ。ギルドが壊れる」

 

 俺は解毒薬をかけて術を解く。この程度、雑魚ならまだしもミラのほど実力者なら魔力でレジストとかできただろうに。

 すぐに俺から距離をとったミラは警戒心を隠さず、注意深く今の出来事を思案しているのだろう。

 俺はそのままギルドを出て歩きだす。その後をミラがハッとしたように追いかけて来た。

 

 場所はギルドから少し離れた荒地。地面がむき出しで草が一本も生えていない。

 

「さて、ここなら少し暴れても問題ないだろ」

「……最初から全力で行くよ!」

 

 一瞬にしてミラはサタンソウルにより姿を変え、溢れる闘志を放っている。

 なかなか面白い魔法だ。こうして対面することで初めて彼女の強さを認識出来た。

 なるほど、エルザと拮抗するわけだ。……これは思った以上に面白そうだ。

 

 地面を蹴る音が聞えた瞬間、ミラは俺へと突撃してきた。

 俺の左胸へ右ストレートが繰り出される。その歳にしては、華奢な腕にしては不釣り合いのスピードとパワーだ。

 咄嗟に腹部を捻じって衝撃を受け流す。同時に竜の鱗を生やすことでダメージを軽減させた。

 

「さすがギルド一番の魔導士だ。一瞬で衝撃を受け流すなんて。それに異常に硬かった胸にも何かしたね?」

「よくわかったな。ただ突進するだけしか能のない脳筋ではないようだ」

「……その油断した顔をすぐに歪ませてあげるわ!!」

「油断? これは余裕というものだ。強者のな」

 

 ミラは身体能力にものを言わせて圧倒的なまでの連撃を俺に浴びせてくる。

 思った以上にミラの身体能力が高い。というか、攻撃を流すのがきつくなってきた。おかげで何発か良いのをくらってる。

 

 それに、俺は先輩として強さを示さなければならない。どうやらまだ「あの事」を引きずっているようだ。

 一度ミラから距離を取って向かい合う。そして、俺は強化剤を分泌して身体能力を増加させた。

 

「今度は俺の番だ。加減は苦手だから頑張って耐えてくれ」

「上等よ!」

 

 敢えて相手と同じ土俵に立つ。

 本来なら俺は殴り合いなど性に合わないがこれも「嫌な音」を払拭するためだ。頑張ってやり遂げるか。

 

 スッと、俺は音もなく動き出した。

 無駄を排除し、一瞬で加速可能の動作。俺はこれを縮地法と呼んでいる。

 あまりの速さに俺を見失ったのか、ミラは周囲を忙しなく見渡すが目視できないようだ。

 

「ど、どこに消えた!?」

「後ろだ」

 

 敢えて気づかせるために合図を出し防御するよう声を発した。条件反射のようにミラは背後に振り向き、俺の回し蹴りに対して両腕を上げて防御しようとするが……。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

 蹴りは防御を突破してミラを野外まで蹴り飛ばす。地面に跡を刻みながら転がり、そこから数十メートルしたところでやっと収まった。

 その間に俺はミラに接近。つま先を首元に突きつけた。

 

「これで詰みだ。弱くはなかったが相手が悪かった」

「……ちくしょう。まだ鍛えたり無いっていうのかよ」

 

 ミラが悔しそうに下唇をかみ締めていた。何故彼女はこんなにも力を欲するのか。……やはりあのことを気にしてるんだな。

 彼女を起こしながらケガの治療をする。幸い蹴った場所は折れておらず、軽くはないが打ち身程度で済んだ。転がりまわった際に偶然受け身の体勢になってたようだ。まあそれを狙ってやったんだけどね。……これ言うとそこかで加減したのかて怒られそうだから黙っておこう。

 

 

 ミラは悪魔、エルフマンは魔獣、リサーナは動物といった具合に、ストラウス三姉妹の使う魔法であるテイクオーバーは生物の力を取り込んで使う魔法だ。

 ただ取り込んで使うだけなら問題ないのだが、力を使う際は自身の体の一部或いは全身をその力を持つ生物に変化し、更にその性質に引っ張られることが多々ある。例えばミラは悪魔の悪意に飲まれ、エルフマンは魔獣の破壊衝動に飲まれるなどだ。

 そのせいで彼らは故郷から追放された。彼らの力を住民が恐れたのだ。

 

 身体を怪物に変える魔導士は異端視されやすい。俺も一度ドラゴンフォースを使って半分竜になっていまい、それで助けたはずの人たちに恐れられてしまった。

 俺の場合はまだいい。俺のほうが住民たちよりも強い上に、俺自身が力を完全に制御出来るのだ。おかげで人々は怪物というより神のように接した。……それでも俺に対して過剰な恐怖を抱いていたが。ぶつかっただけで土下座しながら全財産出して命乞いするぐらいだし。

 とまあ、魔導士はいつも尊敬されるだけじゃない。こんな風に過度に恐れられたり、ひどいときにはミラたちのように迫害されるのだ。魔導士ギルドはそういった魔導士を守るための集まりでもある。

 

「お前は強くなった。少なくともエルフマンとリサーナだけなら守れるはずだ」

「……っへ、お師匠さまに言われるなんて心強いな」

 

 彼女は悔しそうに言った。

 

 彼女たちに魔法の制御方法を教えたのは俺なのだ。

 滅竜魔法を応用して教えてやった。共通点といえば身体に影響するぐらしかないが、以外とうまくいったのだ。

 あと彼女たちをフェアリーテイルにスカウトしたのも俺。デリオラに逃げられて探していた次の日、悪魔が生息していると聞いた村に駆け付けたら迫害されてるストラウス姉妹を発見。すぐさま保護してフェアリーテイルに迎え入れた。

 

 

「お前を迎え入れたのは俺だ。だから困ったら俺を頼ってくれ。色々と心配だったり不安なことはあると思うが、一緒に立ち向かうことくらいはさせてくれ。マスターにも拾ってきた責任は果たせっていわれてるしな」

「け、けどこれ以上迷惑かけられねえし……」

「気にすんな。ギルドの仲間は家族だ。思う存分迷惑をかけてみろ」

 

 俺のところへ一歩づつ歩いてくるミラ。俺もミラのいる場所へと歩み寄っていく。

 そう、俺たちは家族だ。今はまだ信用できずとも、お互い歩みあって月日を重ねてより絆を深めて家族になれば良い。

 

「………言っちゃなんだが俺のほうが迷惑かけそうだ。……眠い。運んで」

「うぇ!?」

 

 俺は眠気に任せてミラに倒れこんだ。

 彼女の肌は触り心地が良いのだが……お胸はぺったんこだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、ここで倒れるか普通?」

 

 とりあえず風通しの良い所まで運んだ。そこは周りの木々よりも一回り大きい大木の下。その大木のおかげで木陰になっており、気持ちよさそうに寝ているイクマンの頭を持ち上げ膝枕をしてあげる。

 ……エルザもイクマンに膝枕なんてしたことがあるのだろうか。というよりエルザとイクマンの関係性も少し気になる。

 

 こいつには大分世話になった。あの地獄から救い出してもらい、居場所も提供してもらい、力の制御も教えてもらった。

 本当に世話になってばかりだ。本人はなんでもなさそうに言ってるけど、自分の仕事ややりたいことを放り出して私たちの面倒を見ているのは知っていた。

 

 私は知ってる。デリオラって悪魔を追うために色々と動いていることを。そのために睡眠時間を削っていることを。けど私たちの指導は決して手を抜かなかったと。

 私は知っている。エルザにお金をもらって生活していることを。最近じゃエルザと一緒に住んでいること。……エルザの家で新婚みたいな生活していること。

 

「……ムカつく」

 

 イクマンの頬を抓る。なにかうにゃうにゃいって魘されるけど知ったこっちゃない。私を不快にさせた罰だ。

 エルザとのケンカの理由もイクマン関係だ。この間も同棲してるって自慢してケンカになった。全部コイツが悪いんだ!

 

「……」

 

 イクマンの髪を撫でる。意外とサラサラで触り心地がいい。

 櫛のように髪を撫でる度にもぞもぞと動き、良い位置を見つけたのかそこで安定した。

 ショートパンツだから少しくすぐったい。寝顔は意外にも可愛く、戦闘の時に見る顔とはまったく違う。本当に同一人物なのかと疑ってしまうほどだ。

 指で頬を突くとうなされている。少し面白い。こうして見てみると結構顔立ちは整っている。たぶん、第一印象はこの腐った目が印象的でここまで見れていないのかもしれない。損をしているなと思いつつも、その事実を独占している感じがたまらない。

 

 心地よい風が私の髪を撫でる。なんで穏やかな時間だ。

 たまにはこんな時間があってもいいよな。それにもし何かあっても一緒に助けてくれるんだろ?

 私は少し微笑みながらイクマンの髪を撫で続けた。




やっぱエルフマンは原作通りにしました。

滅竜魔導士を全員女体化したいんですけどいいですかね~?

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