FAIRY TAIL 毒龍の滅竜魔導士   作:大枝豆もやし

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第20話

「出でよ、我が最大魔法! 毒龍王・獄悩顎牙(フヴェルゲルミル・ニーズヘッグ)ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!』

 

 地獄の門が叩き壊された。

 中から現れたのは毒々しい紫色の龍王。

 それはギョロリと、懸命に生きるものを嘲笑するかのような双眸を獲物に向ける。

 

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEA!!!」

 

 世界に己の誕生を知らしめるかのように産声をあげる。―――いや、それは産声なんて可愛げのあるものなんて断じてなかった。

 それは呪詛だ。生きとし生けるもの全てを侮蔑するかのような聞くに堪えない唸り声。眼前にあるのもは全て貪るという宣言。

 彼はその毒牙で命を蹂躙する瞬間を今か今かと待ち焦がれているかのように牙を鳴らした。

 

 龍王はデリオラの半身以上はある巨体をうねらせながら目の前の獲物へとその牙を剥いた。

 顎門からむき出しにされる禍々しい毒牙。それをデリオラに振り下ろす。

 さあ、いい顔で死んでくれ。死に際にみっともない悲鳴を上げて俺を楽しませてくれ。そうでも言いたげに目をニイッと歪ませながら、彼はデリオラに向かった。

 

「……■■、■■■■!!?……■!! ■■■、■■■■■■■■■■■■!!!!!」

 

 デリオラは背中から竜のような翼を生やして逃げた。

 

 一体どういうことだ。

 あの災厄の権化が、幾千幾万の魔導士たちを返り討ちにしたあの悪魔が。町を徹底的に破壊しつくした絶対的な暴力が。無様に背中を敵に晒して逃げているではないか。

 

 その気になれば力づくで引きちぎれるであろう。何せ巨大とはいえ彼の半身ほどの大きさなのだ。

 如何に強力な毒を含もうとも、呪詛を吐こうとも。この世界では質量が、力が物を言うのだ。どれほど小細工を並べようが圧倒的な力では無意味。そして、彼はその力を有している。

 

 だが、逃げずにはいられなかった。

 アレはまずい。一度食らえばたちまち骨の髄まで―――いや、魂まで毒に穢され、しゃぶりつくされてしまう。

 何故だかは彼自身理解出来ない。質量もパワーも彼が上回っているのに。だが、そう思わずにはいられなかった。

 

 背を向けて空へと逃走する。翼を動かす度に暴風が生まれる。力で無理やり生み出された推進力は大気を揺るがし、一刻も早くデリオラを龍王から逃がそうと奮起した。

 

 だが、その逃走劇を邪魔するものがいた。

 

「アイスメイクプリズン!」

「■■■■■■■■■■■■■■!」

 

 氷の森林が突如生まれた。それはデリオラの足に枷を嵌めて地面に縫い合わせる。

 人にとっては牢獄のような檻。一つの生物を閉じ込めるにはあまりにも過剰なもの。だが、その悪魔は例外だった。

 

 あっさりと打ち砕かれる氷の檻。

 デリオラの身体から発せられる熱気が、巨体から生み出される常軌を逸したパワーが。ウルが最後の力を振り絞って作った傑作を粉々に砕いた。

 

 人間ごときが如何に努力しようとも災害には届かない。人の力では覆せないから災厄と呼ばれるのだ。つまり、彼女の努力は無駄となったのだ。……そう、普通なら。

 

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!』

「いっけえ毒龍王・獄悩顎牙(フヴェルゲルミル・ニーズヘッグ)!!!」

 

 龍王がついにデリオラへと到達した。

 猛毒地獄に続く門をこれでもかと盛大に開門させ、彼を飲み込まんとする。

 

「■■■、■■■■■■……………■■■■■■■■■■■■■■!」

 

 覚悟を決めたデリオラはせめての抗戦を開始する。

 両腕を伸ばして顎門を受け止め、龍王の牙を力任せに潰そうと筋肉を滾らせる。

 熱気と瘴気が空間を支配する。デリオラの身体から蒸気をあげるかのように熱気が上昇し、龍王の身体からは、瘴気がデリオラを飲み込まんと溢れ出した。

 

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!』

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 やはり力負けしたのは体積も出力も劣る龍王だった。

 

「が……ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううぅぅぅぅ!!!!!

 

 龍王が押されたと同時、イクマンも苦しみの声を出す。

 毒龍王・獄悩顎牙(フヴェルゲルミル・ニーズヘッグとイクマンは繋がっている。

 当然のことだ、何故ならあれは契約精霊などの別個体ではなく、イクマンの魔法なのだから。

 例えるなら術者の分身。敵を貪り殺すという意思が龍の形を取ったのがあの龍王の正体。言い換えればあれもイクマンの一部なのだ。

 

「■■■■■■■■■■■■■……」

 

 くいッと、口の端を吊り上げる悪魔。

 なんだ、思った以上に脆いではないか。俺はいったい何を恐れていたんだ。馬鹿らしい。

 自分を少し馬鹿にするかのように、相手を見下しあざ笑うかのように。デリオラは憤怒の形相の中に笑みを混ぜた。

 龍王の首を抑え、地面に叩きつけようとする。

 勝った! コイツはルインじゃない! 俺たちが恐れるあの魔王じゃない!

 ならもう恐れる必要はない。さっき俺を馬鹿にしてくれた礼だ。たっぷり遊んでやる! ここから始まるのは蹂躙劇だ!

 

 途端、デリオラの手が龍によって飲み込まれた。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

 

 襲い掛かる激痛。全身の神経に、ドロドロに溶けた銅をぶっかけられたかのような痛みと熱。

 それは先ほどぶつけられた忌々しい毒の粘液と同じ痛み。一体なぜこの痛みが……!!?

 

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!』

 

 デリオラの右手を飲み込んだと同時、龍王はほんの僅かに大きくなった。

 手から腕、腕から肩と、目の前の獲物の肉体を飲み込む度に、獲物が肉体を失って弱体化する度に。龍王は更なる成長を遂げた。

 最後にデリオラの背中へとかみついた瞬間、その体積はデリオラと同格にまで到達。まるで蛇のように獲物の身体へと巻き付き、逃がさんと言わんばかりに締め上げた。

 

「飲み込め、毒龍王・獄悩顎牙(フヴェルゲルミル・ニーズヘッグ)!!!ゥゥゥゥ!!!」

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!』

 

 イクマンの魂の叫びに応えるかのように、最後の力を振り絞る毒の龍王。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

 

 膿が出る。骨が解ける。神経が蝕まられる。あらゆる毒がデリオラの肉体を貪らんとする。

 

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!』

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

 

 龍王がとどめだと言わんばかりに吠える。その刹那、デリオラの肉体が急膨張した。

 ボコボコボコッと。全身から瘤のような水ぶくれが発生。それは春に芽吹く植物たちのように―――いや、湿地で急成長し繁殖し続けるカビのように数を増やした。

 二倍三倍四倍五倍。やがて十倍となってもう膨れ上がれない限界点まで達した途端。派手に弾け飛んだ。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」」

 

 もはや痛みも感じる神経も真面に機能しない。自身の身体がどうなっているのかさえ理解出来ない。

 しかし己が最後を理解したのか。まるで悲鳴を上げるかのように叫んだ。

 

『SHINEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!』

 

 スウゥゥっと消えていく毒の龍王。彼は地獄へと帰還する間際、まるで自身の勝利を祝うかのように、獲物を貪る幸福を表現するかのように吠えた。

 

「か……勝った……」

 

 敵が爆散して数秒ほど佇む。色々なダメージのせいで体も脳も心も活動を停止していた。

 頭が再起動を始める。歯車が少しずつ回るかのようにギシギシと体が動く。心の奥底から色々な感情が浮かび上がり、衝突して不協和音を起こした。

 

「やった……のか?」

 

 ポツリと声が漏れた。

 

 やった、やったぞ! 勝ったんだ、勝ったんだ俺たちは!

 その場で小躍りしたくなるが、肉体がボロボロのせいでうまく動けない。おそらく傍から見れば今の俺は下手なロボットダンスしているかのような動きになっているであろう。

 

「へ……へへっ。やったぜ……ついにやったぜ……」

 

 そう、俺は勝ったのだ。あの忌々しい巨大ごみを遂に掃除してやったのだ。

 正直、勝てる自信はなかった。地力は相手が格段に上。龍脈も反動がキツいので一度ペースを奪われたら巻き戻しは不可能に近い。正直な話ギャンブル要素が強いのだ。

 そんな中で俺は勝ったのだ。……うん、反動?

 

「―――ガハッ!」

 

 地面に鮮血色の花が咲いた。座布団一枚分―――いや、畳一畳分はある大きさだ。

 

 やはり龍化した上での毒龍王・獄悩顎牙(フヴェルゲルミル・ニーズヘッグ)はかなりキツイ。もう全身がボロボロだ。

 現実に戻った途端、今までのダメージが思い出したかのように襲い掛かってきた。

 眩暈がする。全身がだるい。意識が闇に沈む……。

 

 全身の力が一気に抜け、糸が切れた人形のように倒れこむ。そのまま地面に激突するかと覚悟した途端……。

 

「……よくがんばった」

 

 とても柔らかい極上の天然クッションが俺を受け止めてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくやったよお前は……」

 

 私は胸の中で眠る少年に呟いた。

 名も知らない少年の魔導士。たった一人でデリオラに挑み、ボロボロになりながらも戦った。戦うだけで精一杯なのに私たちも守ろうとした。

 なんて無茶をする子なんだ。一人でデリオラと戦うだけで無謀だというのに、更に無理を重ねようとする。一体何が君をそこまで突き進ませる?

 

「……なるほど、さっきの吐血はダメージがじゃなくてこれのせいか」

 

 そっと額に手を当ててみる。すると異常な部分がいくつも見つかった。

 肉体の魔力の流れが無茶苦茶だ。おそらく何らかの手段で自身の魔力を強化した反動なんだろう。

 まったく、まだ若いのにこんな無茶をしたら成長できなくなるじゃないか。まだ君は伸びるんだから。

 

 その場に座って膝に彼の頭を乗せる。

 なんて無垢な寝顔だ。さっきまで勇猛果敢に戦っていた魔導士の顔とは思えないほどだ。

 

 愛らしい寝顔だ。

 さっきまでは状況が状況だからよく見れなかったがなるほど。こうしてみればなかなか整った顔つきだ。

 

「……ありがとう。君のおかげで弟子の無念を晴らすことが出来たよ」

 

 彼は弟子の過去の憎しみを消し去ってくれた。私一人では勝てない悪魔を、彼は代わりに倒してしまった。

 ならばこの恩は何が何でも返さなくてはならない。でなくては師匠の面子が丸つぶれだ。

 

 だが同時に思った。彼をしっかり見張っていなければと。

 彼は無茶をする男だ。こんな禁術染みた魔法を使ったのに彼には動揺がなかった。むしろ使い慣れている素振りすらある。

 彼は何度もこの危険な魔法を使っている。自身の肉体がボロボロになるのを考慮せず、乱用しているのだ。

 

 見過ごせない。私と弟子を救った恩人が、こんな素晴らしい魔導士が、早死にするなんて許されない。第一私が許さない。

 ならば私が見張ろう。この子が魔導士として大成するように。この子にはその力があるのだから。

滅竜魔導士を全員女体化したいんですけどいいですかね~?

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