俺が中から取り出したもの。それは一枚の紙だった。
このオルゴールの箱、どうやら二重箱になっていたらしい。その下にこの紙を隠していたというわけだ。
開いて何が書かれているのか読んでみる。そこにはレシピらしきものが書かれていた。
「なになに…卵一個と小麦粉……料理のレシピ?」
「そう見せかけてるだけだ。……これは暗号だ」
見たことがある。魔法の薬などは悪用を防ぐために専門の人間にしかわからないよう暗号化されていると。その理屈で考えるなら……。
「これは麻薬の作り方だ」
「!!?」
ああ、間違いない。これは安価な薬物で麻薬を作るためのレシピだ。
「これをギルドに持ってくぞ。これは大事件だ。すぐに依頼者を調べなければ。……その前に!」
俺は木陰に向かって魔力弾を発射させる。
弾丸は木を貫き標的に命中するも、ダメージを受けた様子はなかった。
「ほう、さすが殺しの巨悪殺しの異名を持つ魔導士です。まさかここまで離れているわれらのにおいを嗅ぎつけるとは」
「職業ガラお前らの気配には敏感なもんでね」
「……とても表ギルドの言葉とは思えませんね」
失敬な、殺しはするが一応俺は闇ギルドなんかではないぞ。
「このまま帰してくれるとありがたいんだが?」
「そんなことするわけないだろ」
「だよねー」
後ろに10人、前に20人、左右にそれぞれ10人。……完全に囲まれてるな。
「いい機会だ。よく見ておけナツ。……滅竜魔導士の戦い方を見せてやる」
そういうと同時に俺は指を鳴らす。予め仕掛けておいた魔法陣から毒の霧が発生。俺を中心にドーナツ状に煙幕が発生し、敵の視界のみを塞いだ。
その隙に毒竜の咆哮をぶちかます。敵の密集している地点には収束して薙ぎ払い、疎らなとこには拡散して一気に、防御している相手には爆弾のようにして放つ。
「竜の咆哮はただ魔力を飛ばすだけじゃない。圧縮させつことで弾丸に、圧縮することでレーザーに、拡散することで煙幕としても使える」
ブレスを使い分けが出来るだけで戦略は大きく広がる。
例えば収束と拡散が使えるだけでも、拡散でけん制して相手の動きを止め、収束でけりをつけるというやり方が出来る。
そんなことを説明してると、後ろから刀を持った魔導士が切りかかった。
あれは魔力で切れ味と速度を上げたブレードだ。生身なら一たまりもない。もっとも……。
「な…なに!? 魔力を纏って防いだだと!?」
俺は最初から生身じゃねえけどな。
「纏う部分はただ攻撃力をあげるだけじゃない。こうして鎧のように纏うことで防御したり武器にもできる」
滅竜魔法は自身の属性を爪や鱗のように使う魔法だ。
纏う魔力は攻防一体。引っ掻けば鋭利な爪となり、掲げば頑強な鱗となる。
そう、俺らにとって手足同然なのだ。
「俺たちにとって自分の属性魔法は手足と同じだ。こうして自在に動かせる」
故に、自在に動かせる。
纏った毒属性の魔力を触手のように伸ばす。
それらは残った奴らを絡めとり、クラゲのように刺してマヒさせた。
「とまあ、こんな感じだな」
毒の霧が晴れる。そこには既に立っている者は誰もいなかった。
「いやー、やっぱ強ぇわイクマン」
調書が終わったから家に戻る。
というか、取り調べはイクマンが全部代わりにやってくれた、
よく闇ギルドとトラブルになるから慣れてるらしい。しかも、担当している相手もほぼ一緒だから思った以上に早く終わった。
なんか明らかに疑ってる目をしてたけど……。
それにしてもやっぱイクマン強いぜ。とても同じ滅竜魔導士とは思えねえな。
けど、同じ滅竜魔導士なら技をパクれるはずだ。実際アイツもそのつもりで俺に色々教えてくれた。だからアイツの元で勉強すればいいだけど……。
「……俺、イクマン苦手なんだよな~」
イクマンはギルドでもけっこう人気の魔導士だ。
まず、魔法を教えるのが上手だ。相手の魔法がどんな能力でどういった使い方をするのかを、相手以上に理解している。だから魔法の応用の仕方や苦手な部分とその克服法を丁寧に教えてくれる。
その逆も出来る。相手と戦うときはどう来るのか、どこが弱いのかを知ってるから、エルザやミラ、あとラクサスまでも倒せてしまう。
イクマン自身もめっちゃ強い。
他人の魔法を理解しているのだから、自分の魔法はもっと理解している。だから俺らでは考えられないような使い方をするのもしょっちゅうだ。
勝てる要素がどこにもない。
イクマンの使う魔法はかなりえげつないし、魔力も体力も高い。戦いのセンスもあるし頭もいい。
デリオラとかいうトンデモ悪魔をぶっ倒し、巨悪殺しなんて名前も持っているのがその証拠だ。
魔力でも技術でも経験でも勝てない。その上頭がいいときた。
エルザやラクサスには勝負を挑めるけど、イクマンには挑もうとは思えねえな。
まあ、これだけなら滅茶苦茶強いだけのいいヤツなんだけど、俺にはどうもそう思えねえ。
なんていうか……怖いんだよな。
普段は怖くも何ともない。
目は腐ってるけど別にアレくらいじゃ怖くもなんともない。むしろ弱そうだ。
だけど時々見せるあの目。あの独特の雰囲気。……それが途轍もなく怖い。
まるで戦場や修羅場を数十年も潜ってきたような、歴戦の猛者のようなオーラ。
あんなオーラは俺らと同じ年頃の子供が決してするものじゃない。少なくとも二十三十は年いってからするものだ。
そんなモノをあんな子供がすでに持っている。そのアンバランスさが……少し怖い。
あとは何て言えばいいんだろうか。自分でもよくわからない。
分からない。その分からないが怖い。得体のしれない何かがイクマンにはあるのだ。
魔導士として尊敬はする。ギルドメンバーとしても誇りに思う。同じ滅竜魔導士としても親近感を抱いている。
何か惹かれるものがあるのも事実だ。
何というか……イクマンの指示に従うのは心地よいのだ。普段は出来の悪いボートに乗ってるのに、イクマンの元にいると大船に乗ったかのように安心できる。
まあ、俺は船乗ったら酔うけど。
そして、イクマンからはイグニールみたいな雰囲気もする。
なんていうか……前に会ったような気がする。
ずっと昔、赤ちゃんの頃に抱いてもらったような感覚。自分で言って意味が分からないけどそんな感じだ。
出会った時から他人とは思えなかった。……こういうのをなんていうだろう?
だけど、エルザみたいに仲良くすることは一生ない。あの得体の知れない闇がある限り。
というか、なんでアイツ麻薬のレシピだってすぐに気づいたんだ?
「……ま、いっか」
考えても仕方ない。そもそもイクマンって頭いいから何かそういう知識があったかもしれないしな!
魔力を自身の手足のように扱うマン。
これもこのssで出したかった要素です。
フェアリーテイルの魔法ってゲームの技みたいに予め決まっていて自由度がないように感じました。
あと滅竜魔導士って防御技とか絡め技が少ないように感じていたので自由度が高く防御がしっかりした魔法を出してみたいと前々から思ってたんですよね。
だから技を応用し、発展させることで一つの技からいろんな技や策を使うキャラが書きたかったんですよ。
皆さん……納得してもらえたでしょうか?
滅竜魔導士を全員女体化したいんですけどいいですかね~?
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yes
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no
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一部のみOK