女性は水晶―――遠見のラクリマからイクマンが消えたのを確認した後、まるで誰かと密談するかのように自身の陰に話しかけた。
「闇ギルドを利用して彼の実力を見ようと思ったけれど、力の一端すら見れなかったわ」
「弱すぎたのよ。いや、彼が強すぎたのかもしれないけどね。どちらにしろこんな結果になるなんて分かりきったことじゃない」
そう、あの闇ギルドにゼレフの書を渡したのはこの二人の仕業だった。
イクマンがゼレフの悪魔を追っていることは既に知っている。故にゼレフの悪魔の名を出せば食いつくと踏んでいたのだ。
「しかしあれが。いざ目の前にすると凄まじい闇の力だわ。……正直何故フェアリーテイルに所属してるのか理解できないわ」
「……それについては同感。あそこに闇は似合わない。それに最後に放った殺気も身震いがしたわ。巨悪殺しね…言い得て妙じゃない。ピッタリな二つ名」
そこに浮かぶ表情はあの日、最後はイクマンに殺され、恐怖しながらも崇拝していた黒魔導士と似た表情を陰にいる女性は浮かべていた。
打ち震えるほどの歓喜。闇に染まった者の歓喜の表情など禍々しいものだ。
隣にいたウルティアも同様に打ち震え、頬を染めてイクマンが映っていた水晶を見つめていた。
しかしそれは仕方のないことだろう。闇に染まった者、或いは闇に惹かれる者にとって彼は太陽のようなものなのだから。
「ああ、思い出すわ。かつての魔王様の雄姿を」
まだとある闇ギルドに所属していた頃、私は任務でゼレフの悪魔と戦うことになった。
その悪魔は強かった。私と同じように時間を操る時の悪魔、アガレス。しかもアガレスは私と違って生物の時間も操り、世界全ての時を停めるという技までも使ってきた。
規模が違う。レベルが違う。生物としての格そのものが違う。全てが私を遥かに上回っていた。
もう駄目だ、勝てない。諦め絶望していた瞬間、あの方はやってきた。
「おい、暴れすぎだ」
その声は突然聞こえた。
前触れもなく唐突に。さっきまでは毛ほども気配を感じさせなかった。
とても低い声。聞くだけでも心臓を掴まれそうな気分だ。
声の主を確認しようと振り返る。ギギギと、まるで油の切れたブリキ人形のように。
「まったく、デリオラといい貴様といい。何故こうも強い力を持つ奴らは暴れることに固執する?」
プラチナ。それが彼をみた最初の感想だった。
心の中心にしのびこんでくるような氷りつく眼ざし、白金色の頭髪、透き通るような白い肌、男とは思えないような妖しい色気…。
まるで絵本で出てくる正義のヒーロー……とはいえなかった。
「き…キング! 何故ここに!?」
偉丈夫―――キングの姿を見た途端、目の前の悪魔は突然震えだした。
さっきまで私を追い詰めていた悪魔があの男に怯えている。
雷に怯える子供のように縮こまり、目は許しを請おうとしていたのだ。
それだけでその男の恐ろしさは十分すぎるほど計り知れる。
「(な……なに、アレ……)」
そして、怯えているのは私も同じだった。
だってそうでしょ。私よりも強大なものがさっきの私以上に怯えているのよ。怖くないわけないじゃない!
「私は再三忠告したはずだ。だというのに無視するどころか挑発行為をとった。その理由を聞きたい」
しかし私の恐怖心とは対照的に、彼の言葉はとても穏やかなものだった。
とても心地よい声だ。聞くものを安心させるような力強く安心させる音色。
少なくとも私はさっきまでの恐怖心が嘘のように消え去ってしまった。
「お、俺たちはどんな奴らよりも優れた力を持っている! なら好き勝手にやって何が悪い!?」
「別に人間を殺すなとは言わん。どれほど友好的に接しようとも私たちは種族レベルで違う。何時かは衝突し、時に血を流すこともあるだろう」
「そうだろ!だったら……」
キングがアガレスの発言を遮る。
「しかし争いは極力避けるべきだ。だというのに貴様はソレを怠った。そのツケは貴様だけでなく我らにも影響する……故に貴様を処分する」
「し…知らねえよそんなの! キングお前が死ねば俺たちは解放される!」
アガレスがキング目掛けてとびかかる。瞬間、私は反射的に彼を危ないと叫びかけた。
しかし、その言葉は口から出ることはなかった。
何故か私にはアガレスがあの男に勝てるビジョンが思い浮かべなかった。
先ほどまで私はあの悪魔に一方的に追い詰められ、絶対的なまでの力量差に絶望していたはず。だというのに、あの男の方が強いと直感で感じてしまった。
突然、世界の時間がおかしな流れになる。
おそらく奴が時を止めたのだろう。時の魔導士である私にはわかる。
時の前ではいかなる力も無力だ。
時が制止した世界では何者も動くことは出来ない。だというのに奴はその中で動けるのだ。
故に、そこにあるべきなのは一方的に嬲られた彼の姿なのだが……。
「アガレス、貴様の能力はたしかに脅威だ。だが、お前自身はさほど脅威ではない」
「あ……が……ぐぅ…………」
ボロボロになっていたのはアガレスの方だった。
最初、私は自分の目を疑った。
あの悪魔が、私をあんなに追い詰めた悪魔がたった一瞬でぼろ雑巾のように惨めな姿と化してしまった。
おかしい。ありえない。常軌を逸している。
しかしこの人ならば可能だ。そう感じさせる何かがその人にはあった。
「力に胡坐を掻いて鍛錬と進歩を怠ったツケだ。では消え逝け。……行け、ファフニール」
彼は黄金の龍のような魔力波を召喚。龍は大顎を開いてアガレスを飲み込み、何もなかったかのように消え去った。
「まったく、一体どれだけの部下たちが俺の元から消えていくんだ……」
彼は私がいないものであるかのように通り過ぎた。
私は理解した。あの方に遭うために闇へ落ちたのだと。
母が私を捨てたことすら感謝してもいい。あの方の存在を知ることが出来たと思うなら、あの程度の経験など安いものだ。
私は心の底からあの方への謁見を求めた。
ただ恐ろしく強大なだけではない。優しく包み込むかのような闇。
もう一度会いたい。一目だけでもいいからもう一度あの闇に触れたい。
そしてついに私は見つけた。
おそらくあの方と同じ系譜の者、或いはその子孫だろう。
彼はたしかにあの人から感じていた闇の気配がするけど、とても弱い。あの人には到底敵わない。
だから私が育てなくては。あの方にもう一度出会い、叶うのならば仕えるために。
「ああ、キング様……」
彼の闇を思い出しながら、私は静かに興奮した
滅竜魔導士を全員女体化したいんですけどいいですかね~?
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yes
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no
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一部のみOK