我、魔法科高校ニテ教鞭ヲ執ル   作:HBata

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今までのを消して、こちらにしました。

変更点は年齢くらいです。



原初の運命

 運命。

 

 

 それは避けられない宿命であり決まり切った既定事項。

 

 訪れた者の人生を左右する重要なファクター。

 

 オルタナティブ・ゼロといった替えの効かない事態。

 

 そんな風に超自然的な存在によって降りかかる災害の様なモノ。災害ゆえに避けられず、またその被害は致命的だ。

 

 2089年の夏、沖縄。ここに一人の少女の運命が決められようとしていた。

 

 幼くも愛らしく美しい少女に降りかかった災害と言う名の運命、それは”死”だ。万物生きとし生けるものにとって絶対に避けられない死と言う名の運命が、構えられた銃口という形を持って少女に向けられた。

 

 幼い少女は死を悟った。生きることを諦めた。運命を、受け入れた。

 

 諦観の瞳は銃口と同じように深く、暗く、黒く。

 

 駆けつける彼女の兄では間に合わない。彼女の兄は事態に気付いたばかりで、焦燥感を胸に最愛の妹の居場所まで駆けていた。

 

 引き金が、引かれた。

 

 銃弾が、死が、運命が穿たれた。

 

 

 そして少女の運命はここで——救われた。

 

 

 音の速さで放たれた銃弾と少女の間に割り込んだ朱い槍。高速回転する朱い槍が、マシンガンから放たれた幾多の銃弾を弾き飛ばし少女を守る鉄壁となる。

 

 

「な、何だ!?」

 

「魔法師だ! アンティ・ナイトを使え!」

 

「もう使ってる! 何で倒れないんだッ!?」

 

 

 悲鳴のような喚き声が屈強な男たちの口から発せられる。男たちは軍人だ。取り残された血統(レフト・ブラッド)と言われ、かつて沖縄に駐留していたが国に引き上げた外国人部隊の者の子供達。その取り残された血統(レフト・ブラッド)の子供達が、所属する軍に、国に、民に銃を向ける非常事態。

 

 マガジンが使い切られるまで銃口から撃たれた銃弾。薬莢が地面に落ちて乾いた音を鳴らす。火薬の匂いが少女の鼻についた。

 

 助かった。

 

 そう思う以上に、少女の意識は朱い槍を持つ男の背中に向けられていた。

 

 細いが逞しい。ひ弱さなど感じさせない鋼の肉体。そして、安否を確認するように肩越しに振り返った顔から覗く瞳に、少女は穿たれた。

 

 

「ッ、今だ! 制圧しろ!」

 

 

 反旗を翻した取り残された血統(レフト・ブラッド)たちを、沖縄駐留軍の軍人が制圧する。マガジンを切り変えようとしていた一瞬の隙をついた制圧は、瞬く間に男たちを取り押さえ拘束した。

 

 尚も暴れ、足掻く反逆者だが取り抑える軍人たちもまた屈強な兵士。拘束の訓練など毎日のように、繰り返し叩き込まれている。

 

 

「深雪!」

 

「お兄様……!」

 

 

 駆けつける兄と名を呼ぶ妹。運命が正しいままなら、少女はここで倒れ兄は間に合わなかった。だが兄が持つ奇跡によって少女は息を吹き返しただろう。

 

 しかし運命は変わってしまった。

 

 兄は最愛の妹の無事を確認し、安堵もつかの間その側に控える黒装束の朱い槍を持つ男に鋭い視線を向けた。

 

 銃の形をとった右腕が突き出されるが、瞳にあるのは敵意と迷い。

 

 

「お前は……どっちだ……」

 

 

 敵か、それ以外か。

 

 

「どちらでも無いさ少年。私は師に言われて、この少女に訪れる運命を覆しに来ただけだ」

 

『!?』

 

 

 兄妹の驚愕を他所に、男は背を向ける。沖縄駐留軍の軍人から警戒と銃口を向けられてもなんのその。柳に風のどこ吹く風だ。

 

 

「あぁ、少年。オレと同じで一人しか愛せない君に助言だ」

 

「何……?」

 

「守るというなら、心は常に守るべきモノのそばに置いて行け。己の中にいつもそれを思い浮かべ、そして戦え。たとえ血を浴びたとしても、そうすれば胸を張って帰れる」

 

「ま、待てっ!!」

 

 

 兄は呼びかけるが既に男は居らず。だが遠く無いうちにまた再会する。

 

 

 兄、司波達也は破壊と再生を持って摩醯首羅と呼ばれるようになり、この沖縄海戦における功労者となる。

 

 そして黒装束の男、求道一途(きゅうどういちず)はこの沖縄を駆け抜けて多くの敵兵を突き穿ち、影の功労者となって歴史に刻まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう。どうやら降りかかった死は振り払ったようだな」

 

「全く……他人の運命を覆せなんて無茶難題言わないでくださいよ。しかもまだ十やそこらの女の子なんですよ? あと一歩遅かったら死んでましたよホント」

 

「今のお前なら間違いなくこなせると踏んだまで。そら——敵の兵が上陸したぞ」

 

「あぁ……休む時間は無しですかそうですか」

 

 

 海岸から揚陸艇をもって沖縄に上陸した謎の軍隊。所属を示す目星はない。

 

 海岸から50メートル離れた地点から黒衣の戦装束に身を包んだ女と男が会話をしていた。これから血と硝煙の臭いが撒き散らされ、戦火が一般市民のいる街にも及ぶというのに二人は呑気なもので、だからこそ異常であった。

 

 

「一途よ、あれらを押し留めよ。お前の全力を、このスカサハに示してみよ」

 

「分かりました師匠。じゃあ早速……求道一途・克己賛歌(ヴォルスングサガ)

 

 

 それが、彼自身が編み出した宝具。神秘が失われ、魔法が当たり前となった現代に復活させた彼自身のファンタズマ。

 

 それは、彼が願うほどに彼自身を新生し続ける求道一途を対象にした対人宝具。

 

 師、スカサハから授かった呪いの朱槍を片手に彼は戦場へと駆ける。

 

 

「じゃあ……派手にいくか。なぁオイ!!」

 

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