我、魔法科高校ニテ教鞭ヲ執ル   作:HBata

4 / 13
第三話

 

「心の置き場を、しっかりと自覚できているようだな。結構」

 

「えぇ。それより、座られてはどうですか?」

 

「あぁ……そうさせてもらおうか」

 

 

 司波みゆきと複数の二科生が座っていた場所の空いている席に、求道一途が座る。教員も利用することの多い食堂とはいえど滅多なことで生徒と同席することは無い。

 

 客観的に見て彼と話す二科生の少年と一途の様子からは知り合いという関係性が窺える。それを興味津々に見る者たちと、不倶戴天の敵を見るように睨む一年生の男子たち。

 

 

「どうやら友人にも恵まれているようだな。コミュニュケーションは苦手な部類だと思っていたが?」

 

「それはもう苦手な部類ですよ。ただ、そこは友人に恵まれたとしか言えないですね」

 

「そうか。オレも見習いたいものだ。これもひとえに少年の人徳の高さだろうな」

 

「その言い方はどうにかならないんですか? 少年って言われるほど子供じゃ無いつもりですよ」

 

「失礼、だが俺から見たらまだまだ甘ちゃんだよ少年は」

 

「それは……言い返せませんね」

 

「とは言っても、オレなんぞ師匠に比べたらペーペーのヒヨッコでしかないがな」

 

 

 そう言って区切り、一途は包みに包まれた弁当箱を取り出した。成人男性が食べるには少し物足りないような大きさだが一途は特に何かを言うことなく、手を合わせて食前の挨拶を口にして弁当箱を開く。

 

 その中身に、二科生の男女がアッと驚いていた中、司波深雪の兄である司波達也はからかう材料を手に入れた為か、意地の悪い笑みを浮かべて揶揄するように一途に声をかける。

 

 

「恋人ですか?」

 

「年上をからかうのも偶には良いが相手は選べよ少年。藪から呪いの朱槍はもらいたくないだろう?」

 

「肝に命じておきます」

 

 

 弁当に手をつける前の一途から鋭い眼差しを受けた達也は降参というかのように肩を落とし、一度同じ二科生の顔をぐるりと回りを見て、

 

 

「みんな知ってると思うが求道先生だ。俺と深雪は昔世話になってな。まぁ……知り合い、だろうな」

 

「お、おう。いや何となく知り合いだってのは分かったけどさ……達也が少年って変な感じだな」

 

「そうね。達也くん落ち着いてるし、少年っていうか青年?」

 

「で、ですけど司波さんはまだまだ若いですよっ」

 

「美月、フォローしたいのは分かるけどなんか違うからそれ……」

 

 

 達也と同じクラスである西城レオンハルト、千葉エリカ、柴田美月は各々の感想を口にするが、やはりまだ距離を測りかねていた。

 

 つい先日知り合ったばかりの知り合いの知古。しかも大人で教員となればどうにも距離を測り損ねるのは当然と言えよう。

 

 故に、ここは年長である一途から歩み寄るのが大人な対応と言える。

 

 

「それで、君らはこの後どこを見学するのか決まっているのかい?」

 

「あ、えっと……さっき工房は見てきたんで、えっとどうするよ達也? 柴田?」

 

「ちょっと! なんであたしは無視してんのよ!」

 

「うるせー! お前みたいな奴に聞いても意味ねぇって分かってんだよこちとら!」

 

 

 一途の問いかけを発端として出来上がった竜虎の図。ただ今回の場合はエリカの方に軍配が上がっている。

 

 

「あぁ、分かった。食事中くらいは落ち着こうか二人とも。私見だが、十師族の七草のご令嬢が遠隔魔法の披露をするそうだ。遠隔魔法実習室で行われるそうだから後学のために見ておくと良い」

 

「十師族……七草さんは生徒会長の方ですね。あともう一人いたと思うですがその方は?」

 

「あぁ、十文字部活連会頭だね。彼はまた別のクラスのようだ。だから今回の授業見学で彼の魔法を見ることは出来ないだろうが日本の頂点に立つ魔法師の腕前を見ておくのは君ら魔法師の卵には良い刺激になるだろうね。自分も学ぶべきところがあると思っているよ」

 

「求道先生も、ですか? 失礼ですが求道先生には既に十分な実力が備わっていると思いますが……?」

 

 

 深雪の問いかけに一途はお茶を濁すように苦笑いを浮かべる。各々が箸を進めながら一途の言葉を待っていたため、彼は仕方ないというかのように頬を指でかくと口を開いた。

 

 

「自分が現代魔法について本格的に学び始めたのはごく最近だからね。ここの教員として入る事が出来たのも後押しが強かったからだよ。まぁ悪い言い方をするならコネだよ」

 

「へぇ? コネで採用するなんてここの学長も随分と偉いもんね。で、先生、その後押ししたのって誰なんですか?」

 

「十師族だよ。これ以上は色々と事情が絡んでくるから君たちのためにも言えない。すまないね」

 

「え〜、残念」

 

 

 コネという言葉にエリカは何かしら思うところがあったようだが、二科生は教員からの直接の指導を受けないためあまり関係ないとしてそれ以上踏み込むことはしなかった。彼女自身興味はあったが”何故か踏み込もうという意識が逸れて”しまっていた。

 

 

「あぁ、もうそろそろ時間だ。授業見学の打ち合わせがあるからこれで失礼するよ。君らも少年と彼女と仲良くしてやってくれ。一科と二科というしがらみ関係なく。君たちは魔法師である前に同じ人なのだからね」

 

 

 

 

 

 

「ふ〜ん。一科と二科というしがらみ関係無く……ね」

 

 

 エリカは一途が口にした言葉を繰り返す。その言葉に込められた意味を考えて、そして自身の八枚花弁の無い胸元と深雪の八枚花弁が咲き誇る胸元を見比べた。

 

 

「案外食わせ者なのかもねあの先生?」

 

「だろうな。俺もよく分からないというのが本音だよ千葉さん」

 

「? どう言うことエリカちゃん」

 

「ん〜……美月もすぐに分かると思うよ? それよりも次いこ次! 求道先生が言うには十師族が魔法を披露するって言うじゃん? きっとすごいのが見れるよ!」

 

「ふふふ、はしゃぎすぎよエリカ。でも七草会長は遠隔魔法の天才と言われているし確かに楽しみね」

 

「うるせーなぁ。んなはしゃがなくても良いだろうが」

 

「アンタには言ってないわよ! ほらみんな行こっ!」

 

 

 食事も終わり彼らも動き出す。この第一高校に希望と向上心を胸に入学した彼・彼女らだが、魔法主義社会の縮図といっても良い第一高校の洗礼に早速巻き込まれるのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。