我、魔法科高校ニテ教鞭ヲ執ル   作:HBata

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第六話

 

 

「昼食を食べながらお話しましょう。ランチは自動配膳機(ランチサーバー)がありますので好きなメニューを選んでね」

 

 

 生徒会室に集まっていた四人の少女達。個性的な彼女達を見て、唯一の男子役員である服部副会長に一途は同情の念を禁じ得なかったが所詮は他人事だと判断を下し、優雅な一礼を披露し終わった深雪の後に続いて一途も入室する。

 

 ニコニコと笑顔な七草生徒会長に、不敵な笑みを浮かべる渡辺風紀委員長。そして涼やかな表情の大人びた少女と小柄で愛玩動物のような愛らしさの少女が席に座っていた。

 

 大人びた少女の名前は市原鈴音(いちはらすずね)、生徒会会計。小柄な少女の名前は中条(なかじょう)あずさ、生徒会書記。

 

 

「あら? 求道先生はお弁当ですか? 摩利と一緒ね」

 

「ほほう? 求道先生、その弁当は誰が作った物なのか大変興味がありますね」

 

「人がゴシップ好きなのはいつの世も変わりませんが、大人をからかうものではありませんよ。渡辺風紀委員長。七草生徒会長も人を唆さないように」

 

「だそうだぞ、真由美」

 

「質問したのは摩利じゃない。あ、深雪さんも達也くんも遠慮しないで座ってね。求道先生もどうぞ席について下さい」

 

 

 上手側から深雪、達也と座り一つ離れた席に一途は座った。達也と深雪は複数あるメニューの中から精進料理を選ぶ。それを聞き届けて真由美はあずさにお願いして、そのお願いに従ってあずさはちょこちょこと愛らしく動きながら自動配膳機(ランチサーバー)から配膳されたメニューを配っていく。

 

 この中で弁当であるのは風紀委員長の摩利と一途のみ。摩利が弁当であるのには見慣れているようだが、一途が弁当持参であることには真由美を筆頭にして興味深げな視線が向けられたままだ。

 

 

「では改めて生徒会側の紹介を。私は生徒会長の七草真由美。そして手前から会計の市原鈴音、通称リンちゃん」

 

「私をそう呼ぶのは会長だけです」

 

「もう、リンちゃんは恥ずかしがりさんね〜。続いて風紀委員長の渡辺摩利。深雪さんと達也くんは昨日以来ね」

 

「ま、私は生徒会じゃ無いんだがそこは割愛しておくとしよう」

 

「最後に中条あずさ、通称あーちゃんね! 引っ込み思案だけど彼女も深雪さんと同じ去年の新入生総代なのよ」

 

「会長! 下級生と先生の手前であーちゃんはやめて下さい!」

 

「さて、後は副会長のはんぞーくんを入れた四人で私たちは活動しています。そんなわけでここからが本題です——今年の新入生総代である司波深雪さん、生徒会に入っていただけないでしょうか?」

 

 

 そこから真由美を中心にした生徒会役員の概要について深雪に話される。

 

 ここまでは司波兄妹も、一途も予想していた。

 

 第一高校では生徒会役員の新規役員に必ず新入生総代を役員入りさせている。これは第一高校の内情を少しでも知っているものなら容易に知れることだ。

 

 深雪のことであるため達也は一字一句聞き漏らさないように耳を澄ますが、一途にとっては全く関係無いことであるため食事を進めていた。

 

 そして話が進み、深雪が頷くだけで良いとなった時彼女は兄である達也の生徒会加入を進言する。それを滅多に見せない驚きを顔に浮かべた達也を尻目に彼女はさらに続けていく。

 

 曰く、自分より兄の成績の方が優秀だ。

 

 曰く、生徒会役員なら深い知識と優れた判断力が必要だ。

 

 曰く、デスクワークなら兄の方が自分よりも何倍も優れている、と。

 

 だが、鈴音の鶴の一声によって深雪の訴えは遮られてしまう。これは一科生である鈴音が二科生である達也の生徒会加入をただ嫌だからと断ったものではなく、第一高校ですでに決められた規則があるため不可能だと。

 

 しょんぼりした深雪は何かわだかまりを抱えながらも真由美の提案にイエスと頷いたが、達也は気まずそうに深雪を観察するように視線を向け、そして安堵を覚えていた。

 

 達也の考えはこうだ。過剰な身内びいきは不快感を呼ぶ。それが数人ならまだ抑えられようものだがここには何百人と一科生がいる。

 

 そしてなぜ自分では無いのだと反感と不満を覚える二科生が出てもおかしくは無い。それらの反感が達也自身に向けばまだ対処のしようもあるのだが、妹に向けられることだけは達也としては何としても防ぎたかったのである。

 

 妹に関してだけは達也としても加減などできそうもないからだ。

 

 

「そうだ! 求道先生はこの生徒会の現状に——」

 

「私は教員です。生徒間の自治行動に関して何ら言うことはありません」

 

 

 ピシャリと一途は真由美の言葉を遮って箸を進めていく。前髪と眼鏡によって視線の先がどこに向いているのかひどくわかりづらい。

 

 付け入る隙無しと、誰もが思ったが真由美は食い下がる。彼女はニコニコと笑顔のままで彼に問いかけるのだった。

 

 

「その物言いでしたら何かあると言っているようですが……それについてはどうでしょうか?」

 

「それについてもノーコメントです。そもそも私はここに居る意味がない。幸い次の授業は一コマ空いていますが暇ではありませんので」

 

「まぁ、そう仰らずに。生徒会としても新しい風を取り入れるのは重要なことですから」

 

「であるならば、司波深雪さんだけで事足りるでしょう。他にも必要であるならば新一年生の中から見繕えばいいでしょう」

 

「むむむ……」

 

 

 いち早く食べ終えた一途は、むくれ顔の真由美を置いてけぼりにして空の弁当箱を包みに包んでいく。

 

 

「……求道先生も、兄の生徒会入りについてはどう思いますか?」

 

「能力的に見て、十分に活躍できるでしょう」

 

「で、では! 先生が教員の方々に働きかけて規約を——」

 

「無理です。正規ではない新人教員に何かできると変に期待しないように。それに彼は百人の一科生の成績に劣る二科生です。成績が全てではありませんがそれも人を測るモノ。新入生総代という誰でもわかるモノと比べて、諸人から見てただの二科生でしかない司波達也では不満や反感が出ます」

 

 

 一途の反論に深雪はまたもやしょぼんとしてしまう。達也としては、自由気ままな立場こそが望むもの。そうでないと余計なしがらみに縛られていざという時に深雪を守れないし側にいられない。

 

 だが、求道一途と言う人間を愛している妹の立場を考えれば素知らぬ顔の一途に何か言いたいことがないわけでもなかった。

 

 達也の生徒会入りについて、落ち着きかけたがここで摩利が待ったをかけた。

 

 曰く、二科生の風紀委員入りについては規定違反にならず問題ないと。

 

 

 あっと驚く真由美に、ピクリと眉を動かす鈴音に目をまん丸にしたあずさ。深雪は期待の視線を達也に向け、我関せずと黙っていた達也は体を緊張によって強張らせた。

 

 ここで相変わらずなのは一途だけと言っていい。

 

 ワナワナと震える真由美はガバッと机から身を乗り出した。

 

 

「ナイスアイディアよ摩利! 確か、生徒会選任枠が空いてたわよね!?」

 

「その通りだよワトソンくん」

 

 

 ヒゲをさするような仕草の摩利を見て、真由美はおかしそうに吹き出すと改まって達也をビシッと指差し大きく宣言した。

 

 

「生徒会は、司波達也くんを風紀委員に選任します!」

 

 

 物議をかもす生徒会長の選択。正しいか間違いか、それ以前に本人の賛同がない。達也の反論から始まり、休憩時間の終わりをカードに切って話を放課後に持っていった摩利と真由美の二人。

 

 撤退せざるを得なかった達也だが、反面深雪は兄の風紀位委員加入の可能性に喜びを隠せなかった。

 

 彼女としては兄の評価が上昇し、正しく改まることに喜びを感じていたのだ。

 

 

「求道先生」

 

「なんでしょうか七草生徒会長」

 

 

 皆が生徒会室から退散しようとした時、真由美は一途に声をかけた。

 

 

「例えばですが……二科生と一科生の垣根がなくなったら——その為に私が尽力するのなら求道先生は賛成してくれますか?」

 

 

 どこか期待のこもった真由美の声色。身長差によって上目遣いとなった関係上、断るのには大きな意志力が必要だ。

 

 この時ばかりは真由美も普段の計算高さを最大限に発揮しながらもどこかで本心で、彼の答えに期待していた。

 

 

「くだらん」

 

 

 だが現実は非情なり。

 

 

「お前のその偽善(施し)が、この第一高校の中で最もくだらないぞ七草真由美」

 

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