太陽の備忘録【完結】   作:8.8

20 / 20
作者のzeonneralです。
遅れて申し訳ありませんが、最終話になります。



エピローグ
まだ見ぬ未来へ


 拝啓 少し未来の自分へ

 

 これを読んでいる今の君は、きっと自分の事が何も分からなくて困惑しているんじゃないかな。見たことのない部屋に目覚めて、自分の事を思い出せなくて。それで何か探してみようと周囲を見渡して、机の上に手がかりになりそうな手紙を見つけた。そんなところでしょ。

 これを書いたのは、紛れもない君自身。正確には、数時間前の君だ。陰山隼人、〇〇高校の一年生で部活には入ってない。好きな食べ物はコロッケとパンで、運動と音楽はやや苦手。君のプロフィールをざっくり書くなら、こんな感じだよ。

 ……あぁ。こんな事をわざわざ書くためじゃない。君には、二つ絶対に伝えたいことがあったんだ。まず一つは、記憶がない原因について。薄々気付いているとは思うけど、君は脳に厄介な病気を持っている。一ヶ月周期で、記憶が抜けちゃうんだ。だから、君が今まさに手紙を読んでいる十二月一日が、記憶リセットの始まりの日ってわけ。

 次に二つ目。こっちの方が大事。きっと君は、これからすっごく変な人に出会うと思う。金髪のロングで、笑顔が素敵な同年代の女の子。彼女の事は、どうか嫌いにならないでおいて。意味分からない事を言うし、無鉄砲で色々巻き込まれるだろうけど。彼女は君の最大の理解者であり、大切な人だから。

 詳しい事は、この手紙と一緒に置いてある日記を読んでみて。先月、君がどう過ごしてきたか分かるよ。最後の方ちょっと破けちゃってるけど……まぁ、気にしなくていいから。

 きっとこれから先も辛いことはあると思う。この手紙すらも信じられないと思う。でも、君は独りじゃないから。太陽を、決して忘れないで。

 あぁそうだ、最後に一つだけ。今から半月後くらいかな、君にあるプレゼントが届くように手配したから。それをちゃんと読んで、色々と想い起こしてほしい。それが、この手紙以外に俺が遺したものだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆★☆★☆

 

 

「ふぅ」

 

 手に持っている本を閉じ、俺は一息ついた。結構な文量を一気に読んだからか、少し目と肩が疲れたかな。やっぱり、本を一気読みなんてするもんじゃない。それでも、病室にいる退屈な時間を潰すにはちょうど良かった。

 前向性健忘を患っている俺は、病院にほぼ毎日通っている。平日、土曜、日曜お構い無しだ。学校にはちゃんと行っているが、放課後はすぐに親の車で直接病院へ。そこから検査を受け、家に帰る頃にはもう夜である。

 十二月二十日の今日は土曜日。朝から病院に来て、治療を定期的に受けている。もちろん、この病気を治すための。俺自身は治す意味があるのかと思うけど、どうやらひと月前の俺の希望だったようだ。どうも難航しているらしいけれど。脳の損傷の原因が突き止められていないとか何とか。

 

「しっかしまぁ……よく書いたよねこんなもの」

 

 そんな、なんでもないような待ち時間。俺に妙ちきりんな本を持ってきた女性に、聞きたいことは山のようにあった。

 

「私は持ってきただけで、書いてないってば。まぁ、書いた人も陰山さんが残したメモを元に、読みやすくなるように改良しただけらしいけど。もちろん、全てノンフィクション」

「アハハ、俺がこんな風にねぇ……。つい半月前とは思えないよ」

「で、どうだったの?」

 

 奥沢さん、と名乗った少女は段階を踏むことなくストレートに尋ねてきた。どうだった、というのは本の感想を聞いているんだろう。俺が読み終わるまで、ずっと病室に居座ってたし。

 

「どうって……何とも言えないかな。俺自身に何か変化は感じないし、いきなりこんな事を知らされて結構困惑してるよ。何のためにこんな物を遺したんだろうって」

「……そっか」

 

 まるで『期待外れ』みたいな声色だった。なんて言えば正解だったんだろう。過去の自分の思惑なんて、想像しても分かるわけがない。

 確かに前向きな話だったし、今の自分とはだいぶかけ離れた日々を送っていたのも分かる。だが、それまでだ。共感こそ出来ても、これを自分の事だと置き換えて考えるのには時間がかかる。第一、内容を見るにこれはプレゼントのはずだろう。なんで俺本人にまで送ってきたんだ。

 

「それで? その弦巻さんは一緒じゃないの?」

「今日は用事があるってさ。会いたがってたけど、ここには来れないみたい」

「……そっかぁ」

 

 同じく『コレ』を読んだはずの彼女は、ここには来ていなかった。過去俺と親しくしていた弦巻こころだが、最近は会っていない。通話はよくするので近況は知っているが、バンド活動やイベントやらで忙しいようだ。季節柄仕方ないし、だからといって憤っている訳ではない。だが、どこか寂しい気はする。俺とあの子の関わりなんて、大してないのに。

 

「じゃ、私は帰るよ。こころの事だけどさ、用事があるのは夕方までみたいだよ。暇なら探してみたら?」

「え? ちょっ、でも結局場所が分からな……」

「じゃあね」

 

 奥沢さんは俺を促すような言葉だけを残すと、静かに病室を出ていった。探すにしても、場所の手がかりが全くないじゃないか。ろくに外にも出てないのに、どこを探せというのだ。

『太陽の備忘録』……か。本の裏表紙には、俺と弦巻さんが映っている写真がプリントされていた。どちらもいい笑顔だ。とても自分の顔とは思えない。少し前の自分がこんな明るいなんて、到底想像出来なかった。

 

「……俺も外に出るかな」

 

 暇だったし、謎を残されたままなのはどこか癪に障る。俺は手頃な服を着込んで外に出ることにした。病室待機の時間はまだあったはずだし、昼下がりだから少しは暖かいだろう。学校以外で自発的に外に出ようとしたのは、今月初めての事だった。

 

 

 

 

 

 

 ★☆★☆★☆

 

 外に出て数分。早速行く場所の検討を失いかけていた俺は、商店街をブラブラと歩くことにした。ここは登校の途中で通るから知っている。弦巻さんが通う学校からも近いから、もしかしたらいるかもしれない。

 クリスマスが近いこともあって、イルミネーションが鮮やかに街を彩っていた。土曜日という事もあり、人通りもいつもより多い。自分には少し窮屈なぐらいだ。

 

「いらっしゃーい!! 夕食にコロッケ、クリスマスにコロッケはいかがですかー!!」

 

 あまりにもアンバランスな掛け声に、俺は思わず足を止める。精肉店の売り子が、寒い中元気よく店番をしていた。この季節なら鶏肉辺りを売り出すのが普通なのに、何故かコロッケを前面に押し出す妙な精肉店。俺は、ふと立ち寄った。

 

「あっ、いらっしゃい!! こころんのお友達だったよね!?」

「えっと……まぁ、うん。北沢さん、コロッケ一つ貰えるかな」

「毎度ありー!!」

 

 熱々のコロッケをお供に、ここをもう少し見て回ろう。今のところ、弦巻さんがいそうな気配はない。もしかしたら、商店街の中ではないのかな。そうなると選択肢がかなり広がってしまい、探すのにも苦労する。

 弦巻さんが立ち寄ってそうな、色々な店を見て回った。羽沢珈琲店もダメ、今しがた行った北沢精肉店もダメと全滅。まだ心当たりがあるにはあったのだが、その当のお店───山吹ベーカリーはというと……

 

「きゃ~!! 薫様ー!!」

「ふっ、そう騒がないでくれ子猫ちゃん達。私のカラダは一つしかないのだから」

 

 アイドルでもいるのかってぐらい、店先の人だかりが凄かったので止めておこう。誰だよ薫って、傍迷惑な人だなぁ。いや、この人に悪気はないんだろうけど。

 あの取り巻きの中に弦巻さんがいるとも考えにくいし、あそこに突っ込むほどのリスクを犯したくもない。パン屋の看板娘もこれには困惑であろう。

 そんなどこぞの薫さんがいることもあって、山吹ベーカリーは諦める。商店街はダメだったので、大人しく他の場所を探すしかない。

 ここから近いのはどこだろうと考えてみるけど、よくよく考えたら地理なんて分かるはずもない。こうなったら、手探りで探すしか無さそうだ。

 

「んもぅ、なんだってこんな事……」

 

 この寒い中外を歩き回っている現状に、どうも納得がいかない。電話を掛けることも考えたけど、用事がある以上いきなり電話が鳴って迷惑だったら困るし。仮に繋がったとしても、彼女に迎えに来させるのはやや気が引けた。

 それに……何故か帰ろうとは思えなかった。明確な理由もないが、何故か諦めることを拒否している。それが余計にもどかしくて、俺の不満は募るばかり。

 弦巻さんの用事の内容も知らなければ、場所もわからない。分かるのは時間だけ。トークアプリがあれば連絡を残すことも出来たのに、奥沢さんのはあるくせに何故か彼女とは交換してないし。

 当てもなく、気の向くままブラブラ。どんどん山奥に進んでしまっている気がするが、一度引き返した方がいいだろうか。

 

「あれ、行き止まりだ」

 

 辿り着いたのは、展望台らしきところ。今日は天気も良いから、街全体を見渡せる。この街にこんな穴場があったなんて知らなかった。思わぬ発見をしたが、当然ここにも弦巻さんはいない。

 その代わりといってはなんだが、気弱そうな女の子がそこにいた。景色を見るでもなく何をするでもなく、ただ立ち尽くしているだけ。しきりにスマホで何かを確認しているようだ。声を掛けた方がいいのかな。

 

「あの……」

「ふぇっ!? え、あ、隼人くん……。どうしたの? こんなところで」

「いや、こっちのセリフですけど」

 

 その子は、俺の事を知っていた。学校では見た事ないから、きっとクラスメイト以外での知り合いだろう。名前、なんだったかな。戸山さんだったっけ。いや、なんか違う気がするな……。誰だっけ。

 

「ここね、こころちゃんがオススメだって言うから来てみたくて。バイト帰りによってみたの」

「確かに、景色はスゴくいいですね」

「でね、そしたら帰り道分からなくなっちゃって……」

「あぁ、なるほど……」

 

 スマホで調べていたのは、地図を見ていたんだろう。確かに来るまでに色々入り組んでいたから、慣れてない人からすると迷いやすいのかもしれない。

 

「俺もうここ出るんで、案内しますよ。商店街くらいまでなら」

「ホント? 良かったぁ、知ってる人に会えて……あ、覚えてないんだよね……。私は松原花音っていいます」

 

 結局得たものは、この街の穴場を知れた事と方向音痴の先輩に出会えた事くらい。どちらも、さして大発見とは言い難い。あぁ、あとお礼にとハンバーガーショップのクーポン券貰ったっけ。……前にも貰ってるからか、既に財布の中にいっぱいあるんだけどね。

 

 結局松原さんを送り届けるために、商店街に戻ってきてしまった。戻ってきたついでに山吹ベーカリーを覗いてみたが、やはりというか弦巻さんはいなかった。やっぱり、ここは全滅だ。

 かれこれ家を出てから数時間経つ。諦めて帰ろうとも思ったが、どうも足が病院に向かなかった。弦巻さん、どこにいるんだろう。

 近隣は探し尽くした。それでも諦められない。奥沢さんに(そそのか)されたからだとか、そんなチンケな理由ではない。本を読んで感動したからとか、そんな事でもない。本に関しては、未だに信じられてないぐらいだ。

 深層心理だろうか。理由も分からないのに彼女に会わなきゃいけない、そんな気がしていた。自分の力で見つけ出そうと、謎の決心を胸にして。

 

「CiRCLE……」

 

 辿り着いたのは、小さなライブハウスだった。ここに来たことは、恐らくない。恐らく、といったのはもう自信がないからだった。見逃してもおかしくない建物に、ふと足を止めた事。そして───探し求めていた彼女がそこにいた事。全ての偶然が繋がりすぎて、混乱していたから。

 

「隼人……?」

「弦巻さん……。やっと、会えた」

 

 俺を待っていたかのように、彼女はそこにいた。でも驚いているみたいだから、これもきっと偶然。俺がここに辿り着いたのも、もちろん偶然。偶然が幾重にも重なり合った結果のはずなのに、何故かそんな気がしなかった。

 今までの出来事全てを含めて、誰かに仕組まれていたような気さえする。でも、もちろんそんな事は有り得ない。そんな事が出来るのなんて、神様くらいのものだ。それを月並みで短絡的に言うならば、運命というやつなんだろう。

 

「どうしたの? 疲れた顔をしているわ」

「ハハ……。体力がない癖に、何時間も歩いたもんだからさ」

「あら、運動かしら!? 苦手を克服するのは素晴らしい事だわ!!」

「フフっ、もうそういう事でいいよ。あ~、いい運動した」

 

 俺は思わず、クスリと笑ってしまった。こっちの気も知らないで、まぁ呑気なものだ。そんな彼女を見て、不思議と力が抜ける。安心感かな。久しぶりにあったはずなのに、なんだか懐かしい気がしないんだよね。

 歩き疲れたので外のベンチに腰掛けると、弦巻さんもその隣に座る。会ってどうするかなんて考えてなかったから、言葉が続かない。今日はライブそのものがないのだろうか、周りは恐ろしく静かだ。

 

「そうだわ、隼人。あなたにどうしても言いたい事があったの!! 本、とっても素敵だったわ!!」

「……本? あぁ、アレか」

 

 切り出したのは、弦巻さんだった。本というのは、先ほど俺も読んだ『アレ』のことで間違いないだろう。もとより、アレは弦巻さんに渡すために書かれたものだ。

 

「一ヶ月前の事を思い出せて、すっごく笑顔になれたわ!! 思い出がいつでも読み返せるなんて嬉しいもの!!」

「……それは良かった」

 

 自分とは直接的に関係ないけれど、なんか嬉しかった。何も覚えてない俺にはただの稚拙な本でも、弦巻さんにとっては思い出に浸れる一冊なんだ。彼女が喜んでいる姿を見ると、心が暖かくなる。

 

「隼人も読んだのよね? どうだった?」

 

 だから、俺にはあまり効力を為さなかった。先にも述べたが、俺からしたらただのアマチュアの三流小説に過ぎなかったのだ。いわゆる、思い出補正なんてものは働かないから。

 最初は困惑してばかりだったけど、いま落ち着いた頭で少し思い起こす。今の自分と、本の中の自分。十二月と、十一月の違い。送ってきた生活なんかを比較してみて、とある感情が沸き起こった。

 

「羨ましい……かな。同じ自分のはずなのに、過ごしてきた日々がまるで違うんだ。覚えてないのが、悔しいぐらい」

 

 それは羨望。今の病院通いの生活に比べて、あの物語での自分はどれだけ生き生きしていたことか。日々新たなものに出会い、知っていくことで成長していた。毎日を楽しんでいた。それが、なんだか羨ましい。

 本の中の自分と今の自分では、別人もいいところだ。あんなに明るく、活動的な自分を俺は知らない。

 

「そうなの。なら、今からでも遅くないわ。前みたいに楽しく過ごせばいいのよ!!」

「そ、そんな簡単に言われても……。ほら、今の俺と昔の俺だと全然違うだろうし」

「そんな事ないわ、隼人は隼人だもの。今目の前にいるあなたは、アタシの大好きな陰山隼人よ」

 

 確かに、弦巻さんにとってはそうかもしれない。でも、やっぱり俺はそう簡単に割り切る事が出来ない。彼女の言うひと月前を共有する事も出来なければ、自分自身の事だとも思えない。

『でも……』と俺がさらに否定を重ねようとすると、弦巻さんはさらに言葉を続けた。

 

「本来場所を知らないはずのここに来ているし、前と違って楽しく過ごしたいって思ってる。明らかに、今までの隼人とは違うわ」

「それは……」

 

 CiRCLEだけではない。あの展望台にだって俺は立ち寄った事がない。商店街も、通ることはあれど内部を詳しく歩いた事もなかった。何も考えずに歩いた結果にしては、確かに偶然が過ぎている。

 だが、それにしてもまだ結論づけられない。俺の記憶は戻らないままだし、病院の検査でも結果は出ていないのだ。それでも、弦巻さんは言葉を続ける。

 

「それにね、隼人は笑ってた」

「わら……う?」

「そうよ。今日の隼人、アタシと話して笑顔を見せていたわ。これが一番の根拠よ!!」

 

 俺は、思わず自分の顔に触れた。笑う……確かに意識してこなかった。以前までは結構苦労していたみたいだったのに、今の俺はなんとも思っていない。それに対する抵抗もなければ、不自然さもない。

 

「確かに偶然かもしれないし、アタシの考えすぎかもしれないわ。でもね、もしどこかで一ヶ月前の事を────笑顔の作り方を覚えていたとしたら、それってとても素敵な事じゃないかしら!!」

 

 きっとそれは、俺がどこかで変わり始めているということ。亀のような歩みでゆっくりと、しかし確実に。自分では気付いていなかっただけで、それを教えてくれた。本を持ってきた奥沢さんにそんな意図は無かったろうが、これもまた偶然。

 最近会っていなかった弦巻さんとこうして顔を合わせた事。昔の自分について少し触れた事。自分が進歩していると気付けた事。これらも、きっと偶然に偶然が重なった結果だ。

 数えきれない偶然が重なって、今がある。そんな偶然を、俺は逃さないようにしたい。この出会いが、いつしか『運命』だと言えるように。

 

「そう、かもしれないね。偶然って凄いね」

「だから、もっともーっと思い出を増やしていきましょ!! もしかしたら、来月もまた何か覚えているかもしれないわ!!」

「だと嬉しいな。あと十日だけど……いや、十日もあるもんね」

 

 未来に繋げるという希望が見えてきたら、少しだけ病気が怖くなくなった。後日検査したら、何か変わっていたりするだろうか。ある日目覚めたら、記憶が全て戻ってました……なんてね。

 俺がもし本当にひと月前の記憶を微かに残していたのなら、きっとそれは偶然じゃないと思う。忘れたくなくて、どうにかして遺しておきたくてカラダが覚えていたんじゃないかなって思うんだ。むしろ必然だったんだって。

 この事に気付けただけでも、今までよりかなりの進歩だ。あとは、来月の自分に繋げないと……ね。俺の記憶が戻るまで。

 

「そうよ。二学期も終わるし、アタシもしっかり時間を取れる」

「そっか。じゃあ、また毎日会えるのかな」

「もちろんよ!! 一緒に楽しい事いっぱい探しましょ!!」

 

 楽しい事探しは、弦巻さんに任せておけばいい。きっと彼女といれば、新鮮な発見が出来るはずだ。何となく、そんな気がする。

 

「そうだわ、ここでクリスマスライブをする事を決めたの!! 隼人にもぜひ出てほしいわ!!」

「はぁっ!? え、出るの!? 第一、まだバンドのメンバーには……」

「伝えてないわ。だから、それを今から伝えに行くの。さぁっ、行くわよ!!」

「ちょっ、俺疲れてるんだけど!?」

 

 ……やっぱり、任せっきりにしない方がいいかもしれない。分かってはいたけど、やっぱり無茶苦茶だなぁこの人!!!! 今日の用事ってもしかしてソレだったの!?

 弦巻さんは、俺の手を掴むと唐突に走り出した。もちろん、繋がっている俺も一緒に走る。この感覚もなんだか初めてのような気がしなくて、『コレ』も遺してくれた部分なんだなと密かに感じた。

 前を走る彼女の顔が眩しくて、本当に楽しそうで俺もつられて嬉しくなる。きっと彼女とは長い付き合いになるんだろう。病気が治るまで、そして治ってからも。

 ずっと先の未来の話なのに、何故かそう感じた。根拠なんてものはなかったけど、そう確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 ★☆★☆★☆

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 




この物語の後語りについては後ほど活動報告に纏めようかと考えています。
ここまでのご愛読ありがとうございました。







ところでこのお話にとある仕掛けをしたのですが、皆さんは見つけられましたか?
もし見つけたなら、もう少しこのお話の見方が変わってくるかもしれません。答えは、活動報告の方に載せておきます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。