―ひどく身体が痛い―
―ひどく身体が冷たい―
目を覚ました俺が一番最初に感じた感覚はその二つだった。
そんなことを感じたその刹那、俺の身体全身が海の中へと引きずり込まれていった。何事かと思い海の中を見渡すが太陽の明かりに照らされた海中に見えるのは、小魚やゴミ,見下ろしても底知れない深い海と俺の全身を引きずるような存在は見当たらなかった。ふと、上を見上げると2㍍程の長さの流木が海面を漂っていた。俺は無意識のうちにしがみついていた流木を目を覚ました時に離してしまったらしい。俺は激しい痛みと冷たさと水を吸って重みを増した服で思うように動かない身体を動かし海面に身体を出そうとするが、衰弱しきった身体ではもがくこともままならず、俺の身体は海の中へと引きずり込まれていった。
―天を仰ぎ身体が沈んでいく―
―薄れゆく意識の中-
―俺は思った―
―俺は何者だ―
―おれはいったいだれだ―
―なぜこのうみをただよっているんだ―
―なにもおもいだせない―
「そうか俺は自分が誰かもわからずにこんなところで海の藻屑と化すのか・・・」
そう心の中で俺は呟いた。
一体沈み始めてからどれくらい時間が経ったのか?まだ苦しくないのだからそれほど時間は経ってないのだろう。溺死はとても苦しみながら死ぬという。これから想像を絶する苦しみが待ち受けているのだろうかと考えていたとき背中に大きな衝撃を受け、俺の身体は海中から空へ投げ出された。
3㍍程の高さに投げ出され海面に目を向けると落下地点には運よく先ほどの流木があり、俺は持てる力を引き出しそれをなんとか掴むことができた。
今の衝撃はなんだったのかと思い海の中を覗くと、そこには先ほどまで太陽の明かりに照らされてコバルトブルーの輝きを放っていた海が真っ黒に染まっていた。しかし、顔を上げ遠く彼方に見える水平線はコバルトブルーの輝きを放っている。
「俺の足元の海だけが黒く染まっている?」
そんな疑問はすぐに解決した。俺の目の前に突如大きな生物が顔を出した。
クジラと同じかそれ以上の大きさを持つその生物は、緑色の大きな眼をこちらに向け、歯軋りを立てながら、今にも襲い掛かってきそうな様相をしている。
俺は突如現れたこの化け物に最初は恐怖こそ覚えたが次第に
「このまま海を漂っていても多分助けが来る可能性なんてゼロに等しい、ならいっそこの化け物に食べられたら俺は楽に死ねる・・・」
この化け物にあったからなのか、この先自分が生きる未来が見えないからなのかはわからないが、俺はその化け物の前にただただ呆然と目の前を浮かんでいた。
そして、化け物が大きな口を開けこちらを襲おうとしたその瞬間
―ドォーン、ドォーン―
後ろから、とてつもなく大きな音が鳴り響き、目の前の化け物の体を何かが掠めた。音のする方向に目を向けると
そこには、戦艦が搭載しているような主砲を小さくした物を右手に持ち、両足のふとももには魚雷、腰に浮輪、背中には艦橋を模したような物を背負った、セーラー服姿の女の子がこちらに向かってきている。
「当たってぇー!!」
その大きな掛け声とともに
―ドォーン、ドォーン―
先ほどの轟音がまた鳴り響いた。彼女の放った二つの弾はその化け物を挟むようにして化け物の横に着水した。
その衝撃で大きな水柱が二つ立ち、大量の水しぶきが掛かり、そして大きな波がこちらに押し寄せてきた。
俺は為す術もなくその波にのまれ身動きが取れなくなった。
―やっぱり死ぬのか―
そんな言葉が脳裏をよぎった瞬間
「つかまってください!!」
こちらに向かってきていた彼女が俺の近くまで来て、波にのまれた俺めがけて、紐の付いた浮輪を投げた。その浮輪は俺を通り越したが、浮輪についている紐が俺の近くに落ちた。
―生きたい、俺はこんなところでは死にたくない―
俺の生への執着が持てる力全てを引き出し近くに落ちた紐を掴んだ。そして紐を手繰り浮輪に身体を入れ、俺がその紐を引いて彼女に浮輪に掴まった事を伝えると、彼女は声を張り上げ
「吹雪、現海域より離脱します!!」
自分のことを吹雪と言った彼女は、俺の状態を確認しつつ徐々にスピードを上げ、化け物との距離を取っていった。
しかし、水柱の消えた海面には化け物が、けたたましい鳴き声を上げこちらに大きな口を開けた。その口の中には吹雪の持っている主砲とは比較にならない程大きさを持つ主砲がこちらを覗いていた。彼女は化け物のその姿を見て、身体を180度回転させ化け物の方を向き、呟いた。
「私がこの魚雷で深海棲艦を倒します」
彼女はふとももに装備している魚雷を化け物の方に向け
「お願い!当たってください!!」
彼女はそう叫び魚雷を放った。だが、彼女が放ったと同時に化け物から主砲が放たれた。
「きゃあ!」
と言う悲鳴が聞こえた。俺は弾が飛んでくる恐怖で目を閉じてしまい何が起こったかをその声でしか今は理解することができなかった。何が起きたのか確認しようと恐る恐る閉じた目を開けると、そこには俺を庇って被弾した吹雪の姿があった。
目と目が合い吹雪は俺に対して
「どこか怪我はしてないですか?」
そう訊かれた俺は
「大丈夫だ。君が庇ってくれたから無傷だよ」
と彼女に対してとても申し訳ない気持ちと、助かった安堵からかとても弱弱しい声で彼女の問いにそう答えた。
そして、俺が彼女に対して怪我の具合を訊くと、吹雪は元気なふりをしながら
「私は大丈夫です。大した怪我じゃありません。背中の艤装に少しヒビが入ったぐらいです。だからそんな悲しい顔をしないでください。それに、ほら」
吹雪が庇っていた身体を反転させ指を差すと、そこには吹雪の放った魚雷が命中し炎に包まれた化け物の姿があった。化け物は微かな叫び声上げていたが次第に力尽きコバルトブルーの海へと沈んでいった。
「これから安全なところまであなたを連れていきます。だから安心してくださいね!」
化け物の最後を見届けた彼女は、優しい声でそう俺に囁いてくれて、広い海原を駆けていった。しばらくすると
「あっ見えてきました。あれが私達の所属している鎮守府です」
そう言った彼女の目線の先を見ると、大きな施設が見えてきた。
俺は本当に助かった喜びからか今まで張っていた緊張の糸のようなものが切れた感覚を感じ、急に力尽きてしまった・・・
完
じぃぃかいよこくぅぅぅ
突如海にほっぽり出されて彷徨っていた男を助けたくぅぅぅちく艦吹雪ィィィィ
彼女は鎮守府まで助けた男を連れて行ったが鎮守府の目と鼻の距離で助けた男が息絶えてしまった・・
そんな彼女は、その男を助けようと明石さんにSOSを求めたァァァァ
明石は言った「彼は今非常に危険な状態にあるわ。処置を間違えたら間違いなく死んでしまぁぁぁう。私が処置をしたら彼は生き返るから、彼を手術室に運んで」
男を手術室に運んだ吹雪
手術室に明石からは「絶対に手術室を覗いちゃだめよ♥」
と念を押された吹雪、しかし「覗くなって言われるとついつい気になっちゃう(>_<)」
おそるおそる手術室の扉をあけるとそこには!!!!!!!!!
次回 ある提督の日常≪サイボーグ提督登場!!≫ ご期待ください!!!
あとがき
作者の本しめじです。今回は「ある提督の日常≪ぷろろーぐ≫」を最後までお読みいただきありがとうございます。
艦これの楽しい楽しい日常物を書こうと思い筆を握り、鎮守府に着任したところからスタートする物語を考えてましたが、なかなか導入部分が浮かばず、不意に思いついたアイディアからプロローグを作ったわけですが
なんかシリアスな話になっちゃいましたね(笑)
シリアスになるならこれいらねんじゃね?
ってこれを書きながら自分でもずっと思ってましたが、結局これに変わる導入部分が浮かばないので、これで始めました。
記憶喪失とか伏線みたいなものを張っているように思えますが、そんな伏線は回収しません。主人公提督は記憶喪失ですが記憶を取り戻す物語路線には、絶対入りませんのでそういった方向を期待されている方はご退場お願いします。
あと、次回予告は完全にノリだけで書いてます。ここはキャラ崩壊しかしないのであしからず