というか初っ端の過去話的なアレがすぐにバレそうだ…
婚約者
私にとって…あの人は憧れで命の恩人で姉同然の人だった…
だから…あの人が消えた時はショックだった。
私はあの人の次に皆を纏めなければいけなかったのに…
ダメだった……
体から力が抜けて平衡感覚すら無くなった。
目から涙が溢れてきて止まらなかった。
喉から声が出てきて止まらなかった。
体中の水分が出尽くしたかと思った…
喉が枯れて声が出なくなっても叫び続けた…
私を置いていかないでよ!!
ずっと一緒にいるって言ったじゃない!!
もう…一人は嫌なのよ!!
そう心の中で叫んでいた。
もしかしたら、声に出して叫んでいたのかもしれない…
気づいたときには…
自分の部屋で引き篭っていた。
あの子のこと言えないわね…
それから…なんとか折り合いを付けるのに随分と時間がかかった。
明確に復活できたと自覚できたのは…
あの人の領地を守ると決めたあの時だった…
使い魔の森から帰ってきてから既に2週間…
アーシアは蒼雷龍に"ラッセーくん"という名前をつけて可愛がっているようだ。
あれから変わったことは特にないが、強いて言えばリアス嬢と兵藤が早朝に鍛錬と称した子供騙しの肉体作りに精を出しているぐらいだ。
護衛として俺も付き合っている。
さりげにアーシアも加わっているが、アーシアの体力が全くと言っていいほどなかったので、
基礎の基礎の基礎である筋トレするための体力を作る体力作りという意味のわからないトレーニングをさせることになった。
リアス嬢は最近上の空で、時折空を見上げてため息をついている。
今更深窓の令嬢ぶってもリアス嬢が凶暴なのは隠せんぞ?と言ったら、
何故か怒られた。
『当たり前でしょう…』
俺にはわからん。
サーゼクスにも聞いてみたところ、近々リアス嬢が婚約するそうだがそれを拒絶しているからだそうだ。
まあ、仕事に関係ないから別にいいか…
ただ、サーゼクスがその後奇妙なことを言っていたな…
確か……
「少し一悶着ありそうだから、色々と頑張ってくれたまえ。…もう本当に色々と頑張ってくれ」
なんか必死だったのを覚えている。
何なんだ?
因みに今日はリアス嬢と兵藤の二人はおらず、俺とアーシアとティアの三人だけだ。
『あら、私も数えてくれるの?』
は?当たり前だろ?
『なんでこの子はこんなにいい子なのかしら…』
あ、ティアのスイッチ入った。
仕方ないからティアは放置してアーシアのトレーニングに意識を戻す。
未だにアーシアの体力は底辺のままだ。
「はぁ…はぁ…んぅ……はぁ…」
御陰で未だに1kmも走れない。
無理に走ろうとしてもその前に体力が尽きるという、ダメっぷりだ。
「大丈夫か…?」
「は…はいぃ……大…丈夫…です……よ……」
全然大丈夫じゃないな…
「今日はもう終わりだ」
「私は…まだ…いけ…ますよ…」
「時間だ」
「はぁ…はぁ…わ…わかりましたぁ…」
体力の無さに全俺が泣いた…
取り敢えず運動部のマネージャーのようにアーシアにタオルとスポーツ飲料を渡す。
アーシアは地面に座り込んでいて息を整えるのに必死になっている。
仕方がないので温めにしたスポーツ飲料をストローでゆっくりと飲ませてやる。
汗まみれの体を拭くわけにもいかないので、髪の汗をタオルで拭いてやる。
「ありがとうございます、夕牙さん」
ようやく息が整ったようなのでアーシアを兵藤の家に送ってやる。
最初よりは体力が付いたがもう少し付いて欲しかったな…
本格的に体力付けさせるとなると…半年ぐらいかけて一日に5、6回は血反吐吐くくらいやらないとダメかもしれないな…
「にしてもあの二人はどうしたんだ?」
「部長さんは昨日の夜から朱乃さんと一緒にどこかに行っているそうです」
ふーん…
昨日の夜にグレイフィアが来たのと関係ありそうだな…
「じゃあ、兵藤は?」
「イッセーさんはわかりません…お部屋でいろいろとやっていましたけど…」
「ふ~ん」
いろいろ……ねぇ…
そういえば、昨日の夜に兵藤からメールが来てたな…
確か内容は……
『部長の処女をもらってやれなかった。どうすればいい?』
だったな……は?
遂に妄想と現実の区別もつかなくなったか…
取り敢えずこのメールは見なかったことにしよう…
そんなこんなで兵藤の家に着いた。
アーシアとはここで別れて自分の家に向かう。
一悶着ある……ねぇ…
なんかめんどくさくなりそうだな…
護衛の増援としてラビでも呼ぶか?
あ、ダメだ。
アイツ護衛に一番向いてないわ…性格的に
「ただいまー」
「夕牙、おかえり」
玄関の扉を開けると、リビングの方からオーフィスが黒い兎のヌイグルミを抱っこした状態で出迎えてくれた。
今日のオーフィスはワンピースを着ていた。
流石は俺の妹。
可愛い。素直にそう思える。
「夕牙、お腹が減った」
「へいへい。少し待ってろ」
最近はオーフィスがこうして朝食を急かしてくる。
御陰でレパートリー考えるのも大変だ。
取り敢えず最終手段はお茶漬けだな。
「我、お茶漬けでもいい」
「心を読むな!!
座って待ってろ!!」
オーフィスはトテトテとリビングのテーブルに行き、
言われた通りに椅子に座る。
座ると床に足が届かないので足をブラブラさせている。
『なんか無性にオーフィスを抱きしめたくなってきたわ…
体が恋しいわ…』
おい、オーフィスが震えてるぞ?
『なんでかしらね?』
まあいいや。
「出来たぞー」
そんなことより朝食だ。
時は飛んで放課後。
オーフィスは例によって留守番だ。
最近は特にはぐれ悪魔とか来ないから気が楽だが、護衛の特性上気を抜くわけにもいかない。
今は旧校舎に木場と兵藤とアーシアと一緒に向かっている途中だ。
2時間目の途中にグレイフィアが旧校舎に来てたからなんかありそうだ。
めんどくさいのは勘弁だ。
因みに今日の授業前に兵藤はメガネとハゲにダブルラリアットを喰らっていた。
辛うじて聞き取れた言葉は「ミルたん」という言葉だった。
なんのことだろうな?
そして、部室前…
「…僕がここまで来て初めて気がつくなんて…」
扉を開けようとした木場が悔しそうな声で呟く。
なんだ、気づいてなかったのか?
「入るぞー」
木場の代わりに俺が開ける。
因みに兵藤とアーシアは毛ほども気づいておらず、首を傾げているだけだった。
部室にいたのは、いつものメンツに加え銀髪の人妻メイド…
グレイフィアだ。
「全員揃ったわね。部活を始める前に少し話があるの」
機嫌の悪そうなリアス嬢が話を始めようとする。
グレイフィアが代わりに話そうとするも、リアス嬢がそれをいらないと、手で遮る。
「実は━━」
リアス嬢の言葉は続かなかった。
部室の床に描かれた魔法陣がその紋様を変える。
俺の記憶が正しければあの紋様は…フェニックスだ。
「――フェニックス」
木場がそう呟いたのを聞いて確信が持てた。
魔法陣から炎が溢れる。
危ないので旧校舎入口付近にある消化器の中身を魔法陣の真上に転移させる。
俺の転移魔法と魔法陣から人影から現れるのはほぼ同時だった。
「ふぅ、人g…」
魔法陣から現れたホスト崩れの悪魔が真っ白になった。
「「……………………」」
この場にいる全員が何も言えずに黙ったままだった。
「消化完了」
取り敢えずリアス嬢に親指を立てて報告しておく。
リアス嬢はさっきまでの不機嫌な雰囲気ではなく顔を引きつらせていた。
「貴様アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
うるせええな白貴族…
「世界は広いな…全身真っ白な悪魔は初めて見たわ…」
俺の呟きが聞こえたのか、白貴族が全身をワナワナと震わせている。
「貴様アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
白貴族の怒声と共に再び炎が舞うが、消火器の中身はまだ半分ほど残っているのでもう一回ぶちまけてやろうと思ったが、
「双方ともお収めください」
グレイフィアに止められた。
白貴族も悔しそうな表情で炎を消す。
白貴族はそのままリアス嬢の傍まで行き、
「愛しのリアス。会いに来たぜ」
気障ったらしくリアス嬢に言い寄るが…
「ライザー御免なさい。今の貴方冗談抜きで臭うから近寄らないでくれるかしら…」
リアス嬢はドン引きだった。
「ブッ…」
誰かが吹き出した。
因みに吹き出したのは兵藤だ。
またしても白貴族がワナワナと震えだす。
「ライザー様」
白貴族がまたもや叫ぼうとしたがグレイフィアに諭される。
埒があかないようなのでグレイフィアが説明し出す。
「知らない方もいますのでご説明させて戴きます。
こちらはライザー・フェニックス様…
リアスお嬢様のご婚約者になります」
グレイフィアの言葉に兵藤の動きが止まる。
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!?」
兵藤の叫び声が部室内をピンボールのように跳ね回る。
てか、うるせえよ…
取り敢えず俺から焼き鳥に一言…
ざまあ