破滅を宿した寂しがり屋   作:紫蒼慧悟

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ここ一年程執筆時間が取れない状況でしたが、これからは何とかなりそうです。
待っている人がいるのかもわかりませんが、お待たせしました。


説教

『はい……、一体何の用かしら草履虫?』

「ごめんなさい……」

『それは何に対しての謝罪なのかしら?定時連絡が遅れたこと?あなたの存在に対して?一体何に対して謝っているのか私に分かるように説明してくれないかしら?』

やばい。かなりキレてる。

「定時連絡が遅れたことです」

『ああ、そんなこと?とりあえず迎えを送るから大人しくしていなさい、草履虫』

「はい」

携帯を耳から離し、ベッド上に倒れる。

やばい。これはやばい。

『ボキャブラリーが貧困よ?』

わかってるよ。くっそー、わざとじゃないのにぼろっくそに言ってくれやがって……

というか、なんでリザじゃなかったんだよ。レアさんは苦手なのに……

『私に言われても困るわ。私が決めてるわけじゃないんだから……』

わかってるよ。ただの愚痴だよ……

『まあ、お仕置きは確定ね』

ですよねー。内容がわからないのが一番精神にくるから嫌なんだよなー

「はぁー、死にたい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日というか、日付が変わった瞬間に迎えが来た。こっちの都合も考えてほしい。

来たのは二人。幸の薄そうな神父と足のスリットにしか視線がいかない系シスターだ。

夜も遅いので扉を閉めて鍵をかけてチェーンロックもかけて自室に戻る。

リビングに二人がいるのは、まあ。驚かない。今更だしな。

「時間考えて」

「それについてはすみません。ですが連絡しなかった貴方が悪いんですよ?」

ぐうの音も出ない。

「貴方にも貴方なりの理由があるんだろうけど、それとこれとは別よ?」

反論の余地もない。というか出来ない。

これは徹夜説教フルコースになると覚悟した時、2階からオーフィスが降りてきた。

「「なっ!?」」

あ、そういやオーフィスのこと話してなかった気がする。

『また怒られるわよ?』

ははっ、知ってる。

「……誰?」

トコトコと擬音が付きそうな歩き方で俺のそばに来て目をショボショボとさせている。

ふと、嫌な予感がしたのでシスターの方を見ると、笑っていなかった。

「正座」

一言。その一言に俺は逆らわなかった。だって怖いんだもん。最大の要因は敵じゃないことだが……

神父は「わかりますよ、怖いですよね」みたいな顔で頷いている。

「何してるのヴァレリア、貴方もよ」

「アッハイ」

哀れ神父。俺の隣に正座をして覚悟完了した顔でいる。

そして、徹夜説教フルコースが始まった。

オーフィス?正座した俺の膝の上で寝てたよ。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、学校は休んだ。

説教が終わってなかったからな。仕方ないな。

俺は定時報告をしなかったこととオーフィスの未報告の件、神父は今までの生活態度やらなんやら。

昨日の深夜から始まったフルコースは日が昇っても治まらなかった。昼前に一時休憩になった。終わってないみたいだ。

お昼はシスターが作った。

『料理が出来るようになったのね』

確かに前に見たときは卵焼きを作ろうとしてレンガが出てきたな。

『どうやったら、食べ物が鈍器になるのかしら?』

さあ、錬金術じゃね?

出てきた料理はさすがに予想外だった。

きちんとした料理だったからだ。見た目だけは。

「え、普通に食べれそう」

「味は最悪ですよ?」

「レンガよりはましだろ?」

「そりゃまあ……」

神父と俺は未だに手を付けてない。だって絶対まずいんだもん。オーフィスは朝から外に出かけている。逃げやがったな。

シスターは俺たちの対面でニコニコと笑っている。目以外が。

『ほら、さっさと食わんのか?』

視線でそう言ってるが俺たちは未だに手を付けられずにいる。

神父と顔を見合わせ、覚悟を決める。

「「ジークハイル(いただきます)」」

「なんでそんな覚悟が必要なの?」

口に含んだ瞬間、俺と神父が椅子から転げ落ちた。

「「まっず!!!」」

ひどい味だ、何このひどい味。口の中が阿鼻叫喚というか……

「「口の中がかなり酷いこと(アクタ・エスト・ファーブラ)になってる」」

「酷い!!」

シスターが立ち上がって抗議するが、それどころではない。立ち上がることすらできない。

神父は既に意識を手放した後だ。こいつも逃げやがった。

シスターの視線は必然的に俺に向けられることになる。俺もさっきので気絶しとけばよかった。

視線が言っている。『お前は全部食べるよな?』と。

さて、食べますか(死にますか)……

全力の死に物狂いで完食したが、本気で死にかけた。

 

 

 

 

神父も強制的にたたき起こされて、胃袋に(強制的に)食事を詰め込まれたところで説教が再開された。

食事のインパクトのせいで忘れていたが、説教されていたんだ。

神父は既にグロッキーというか死にそうな感じ。顔色も土気色だし、途中でリバースしそうな感じ。

距離を取っておく。

「夕牙、ヴァレリアの隣に座りなさい」

「アッハイ」

大人しく神父の隣に座りなおすと、神父が最悪のコンディションで俺を見ていた。

視線が語っている。『もう無理です』と。

俺は一瞬の判断で後方へバックステップをした。次の瞬間神父がシスターに向けてリバースした。

こうなるとは思っていたけど最悪の形で説教が止まった。

シスターを風呂場に放り込んで、神父をトイレに投げ込み、俺は後始末。

結果的に説教は終わった。

『本当に酷い終わり方ね』

全くだ。いったいどうしてこうなったんだ?

『貴方が報告を怠ったのがそもそもの原因よ』

俺のせいじゃない。絶対にだ!!

どう考えても間が悪かったということにしたい。


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