やはり俺の北宇治高校吹奏楽部の生活はまちがっている。   作:てにもつ

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「…みどりちゃん。ねむい」

 

「比企谷君と小町ちゃんと張り切って遊んでたから疲れちゃったのかな?」

 

「そろそろ解散にしましょうか。小町達も大分色々回れて疲れちゃったし」

 

本当に疲れた。もうしばらく夏祭りは行かなくて良い。

何と言っても今日のハイライトは、ボールすくいをやってラメの入ったキラキラのボールを取ってあげたときの琥珀ちゃんだろう。名前の通り、キラキラしたものに目を輝かせている様子はやっぱりまだ幼い子ども。子どもと触れ合ったの久しぶりすぎて、当たり前のことに感動してしまった。

琥珀ちゃん、一週間に一回くらい部活遊びに来てくれないかな。そしたら俺今の十倍は頑張れる。

 

「そうですね。みどり、ちょっと気になってることもありますし」

 

「え、何?まだどっか寄ってくの?」

 

「いえ、寄っていくとかではないんですけど。女の子同士のお楽しみというか」

 

「あーなるほどなるほど。何と言っても今日はお祭りですしねー。やっぱりそういうのってあるに決まってますよねー」

 

「全然わかんないんだけど。なんでそんなに主語ないのに話通じてんの?エスパー?」

 

「お兄ちゃんには一生縁がない話だよ」

 

うっ、うるせえよ。こちとら縁がある話より、ない話の方が圧倒的に多いから選択肢多すぎてわかんねえんだけど。

 

「あはは。そういう訳で、みどりたちは帰りますね」

 

「みどりさん、是非また遊んで下さい!琥珀ちゃんもね!」

 

「勿論です。比企谷君はまた明日」

 

「おう。お疲れさん。琥珀ちゃんお休み」

 

「…おやすみ」

 

川島の腕の中で目を擦りながらも、俺たちに頑張って手を振ってくれている琥珀ちゃん。きっと今の俺、めちゃくちゃニヤニヤしてるな。小町もニヤニヤしてるし。

 

「さて。んじゃ大分おそくなったし、俺たちも帰りますか」

 

「そうだね」

 

二人で歩いて帰る帰路。財布は少しだけ軽くなったが、まあ許容範囲内。むしろそれ以上のものを得られた。

 

「いやー。小町すっごいリフレッシュできちゃったよ」

 

「俺もだ」

 

「ね?たまには外に出て遊ぶのも悪くないでしょ?」

 

「ああ。川島姉妹と外で遊ぶのは悪くねえな。今度行くときは、小町も浴衣着れば?」

 

「なんで?みどりさんの浴衣可愛かったから?」

 

「可愛かったなあ。マジエンジェル」

 

「そういうの直接言ってあげれば良いのに。きっと喜ぶよ?」

 

「そうかあ?」

 

「そうだよ。でも小町は嫌だな。何かカップルみたいじゃん」

 

「……それもそうか。おっしゃる通りで」

 

小町と歩いていると、どうも千葉にいた頃のことを思い出してしまう。永遠の故郷、千葉。あの頃は当たり前だった海から来る風はここに吹いてくることはない。京都の暗くて静閑な夜、山々の隙間から見えるこの幾千の星が降るような空は千葉で見れただろうか。まだ千葉から出てきて数ヶ月なのに、あの頃の記憶は思っているよりも遠くに置いてしまった。

それはきっと、やっぱり今の部活の影響が大きいのだろう。毎日が忙しく、何かに追われるように練習をする日々は間違いなく千葉にいた頃よりも早く流れている。

 

「みどりさんと琥珀ちゃん見てたらさ、やっぱりなんかお兄ちゃんと千葉にいた頃に行ったお祭りのこと思い出しちゃったんだよね。さっきちょっと話したやつのこと」

 

「なんで?」

 

「んー。何となくだけど」

 

「言っとくけどお前。あの時全然俺と手繋いだりとかしてなかったぞ。すぐ友達のとこ行くし、迷子にならないか心配だった」

 

「そりゃそうだよ。恥ずいし。……でも、そう考えると今日はちょっと寂しいこともあったかも」

 

「…さっき会った、お前の中学の友達と一緒に祭り回らなかったこととか?別に良かったぞ。あの頃とは違って、もう子どもじゃないんだから。そしたら俺だって一人で帰ったし」

 

「違うよー。そうじゃなくって」

 

「じゃあ何よ」

 

小町はそこで少し間を置いた。俺たちが歩く音だけが響いている。

視界の先には帰り道に通る公園があって、なんとなく今日は寄っていきたい気分になった。

 

「京都に来て初めて二人で出かけたけど、お兄ちゃんの知り合いが一杯いてさ」

 

「いや、話したの川島くらいだったろ?すれ違って挨拶するくらいで、世間話の一つもしてねえぞ」

 

「でも千葉にいた頃とは大違いだよ。知り合い見つけたら、わざと顔逸らしてたじゃん」

 

「今もそうしてる。余計なコミュニケーションは取らない」

 

「なのに挨拶とかだけでも話しかけてもらえるようになったのは、偉大な一歩だと小町は思います。…まあでも名前覚えられてなかったのはお兄ちゃんらしいけどね」

 

「……あいつらなー。まあ吹奏楽部あるあるだろ。俺もあいつら知らねえし」

 

多分、ホルンパートの奴らだったんだと思うんだけど曖昧。わかんねえんだったら無理に挨拶しなくて良いのに。

そう言えば、その後に低音のチューバの二年生の二人はきちんと挨拶してくれたけど、もしかして付き合ってるんだろうか。仲良さげだったし、結構お似合いな気がする。いつもならリア充許せんと思うが、今日に限っては名前覚えていてくれたから許しちゃう。

 

「なんかお兄ちゃんが離れて行っちゃうみたいで、ちょーっと寂しいけど、小町的にはすっごいポイント高いよ。最近のお兄ちゃん」

 

「…いや離れてくつもりとかないから。むしろ一生ついて回るから」

 

「うへー。それはなんか気持ち悪くて嫌だなー」

 

小町の先にはいつもの公園。月明かりの先にあるいつものベンチを視界が捉える。

 

「…あ」

 

「ん?どしたん?」

 

ベンチに座っている人影には覚えがある。というかあんなにわかりやすい人はいない。ポケモンだーれだのシルエットだけでポケモン当てるやつでも、あの人ならばわかるだろう。

その特徴的なリボンは今日も健在だった。

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