アイスの溶けない夏   作:佐倉瀬葉

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第2話

 「……な、何が起きたんだ?」

 

 眩い光に包まれたと思うと突然知らない場所に飛んでいた。

 

 「何がどうなってるんだよ……。」

 

 先輩の死を目の当たりにしてからというもの、頭が混乱してまともな思考ができない。そのままぼうっと突っ立っていると、突如持っていたスマホから声が聞こえた。

 

 「アンタ!もっとシャキッとしなさいよ!」

 

 「き、君は一体なんなんだ!?何が起こってるんだ?」

 

 「うるさいわねぇ!今からそれを説明してやるから静かにしなさいよ!あんまりうるさいとその口縫い付けるわよ!?」

 

 部室で光に包まれる前にパソコンから聞こえていた声が今度は自分のスマホからする。傍から見ると電話でもしているように見えるのだろうか……。

 

 「いい?アンタはあの先輩を救うためにタイムトラベルしたのよ!」

 

 「た、タイムトラベル?タイムトラベルっていつに?未来か?それとも……?」

 

 「それともの方に決まってんでしょ?未来に行って何すんのよ!」

 

 「そ、そりゃそうだよな……。でも、どれくらい過去なんだ?今は。」

 

 「そうね。あの子の死亡確定タイミングがだいぶ早かったから、だいたい去年の夏休みくらいよ。」

 

 「去年の夏休み!?なんだってそんなに飛ぶ羽目になってんだよ……。」

 

 「それを今から調べんのよ!アンタそんなこともわかんないの!?つっかえないわね!」

 

 「使えないって……。それにしたってここは?」

 

 いや、俺はこの場所を知っている。俺の家の近所の公園だ。小さい頃からよく遊んでいた場所だから馴染みがある。ようやく少し思考力を取り戻してきた脳で今までの事を整理してみる。

 

 「……つまり、先輩が死んだ原因を探ってそれを食い止めるために俺はタイムスリップしたってことか?」

 

 「まぁ、そうなるわね。」

 

 「じゃあ、1つ聞いていいか?」

 

 「いいわよ?」

 

 そこで俺は前から疑問に思うべきだったことをようやく訊ねる。

 

 「君は、誰だ?なんで初対面の君が先輩を救うために手伝ってくれるんだ?いや、そもそもなんでタイムトラベルなんて出来るんだ?」

 

 「1つじゃないじゃない……。まぁいいわ。いづれは話さなきゃならないことだものね。立ち話もなんだしそこのベンチに座りなさいよ。長くなるから。」

 

 「あぁ。わかった。」

 

 促されるまま近くのベンチに座る。高圧的な態度でありながら俺を心配してくれているのが伝わる。

 

 「じゃあまずはアタシの事からね。私は……そうね。なんて言ったらいいのかしら。アンタとあの子が出会った日、部室から爆発音がしたじゃない?」

 

 「そう言えば……そんなことあったな。何事かと思ったぞ。」

 

 「アレがアタシよ。あの子が買った宇宙交信グッズの中にアタシがプログラムされてたって言ったらわかるかしら?」

 

 「そうだったのか……。でも一体なんで?」

 

 「それはあたしも覚えてないわ。自我を持ったのがあのタイミングでそれより前の記憶はないの……。ごめんなさい。」

 

 「い、いや。謝ることは無いよ。」

 

 「そ、そう?ならありがとう。アタシもアンタのこと言えないわね……ほとんど何も覚えてないんだから。」

 

 「そんなことはない。それがわかっただけでも収穫だ。」

 

 「そうかしら?」

 

 「あぁ。そうだ。」

 

 俺は何もフォローしている訳じゃない。何もわからないという状況がわかっただけでも情報が少ない今は貴重な情報だ。

 

 「しかし、なんで宇宙交信グッズの中に……?」

 

 「ここからはアタシの推測も入るんだけど……聞いてくれるかしら?」

 

 「ん?なんだ?」

 

 「アタシはきっと何らかの組織に情報兵器として作られたのよ……。タイムトラベル機能は作戦失敗の時用の保険ってとこかしらね。」

 

 「情報兵器……。だとしたらなんで自我があるんだよ?」

 

 「それについては簡単よ。自我があれば自衛が出来るでしょ?」

 

 「まぁ、確かに筋の通る話だな。」

 

 自我があれば自分で危機を予測しそれを回避することが出来る。所有者の手の届かない所でも活動ができるなどのメリットはあるな。

 

 「で、アタシは要は出来損ないだったのよきっと。自我が思う方向に動かなくてプログラムをリセットして上書きしたつもりがあの爆発のせいで戻っちゃったってとこかしらね?」

 

 「なるほどな。」

 

 「んで、アタシの自我が目覚めてからというもの、あの子はたくさんアタシと話してくれたわ……。」

 

 「ん?あの子って先輩のことだよな?だとしたらなんで先輩は君の存在を俺に教えてくれなかったんだ?」

 

 「まぁ、忘れてたんじゃないかしら?あの子ってそういうとこあるじゃない?それにアタシもあんたみたいな芋野郎と話す気はさらさらなかったし……。」

 

 「芋野郎って……。まぁ確かに先輩ならありえる話だな……。」

 

 それにしても先輩が俺に隠してたと思うと少し寂しい気もするな……。いや、本人はそんな気無かったんだろうけど。

 

 「ん?てことは……お前、犯人の顔見たんじゃないか?」

 

 「………………。」

 

 何故そこで急に黙り込む。

 

 「ま、まさか……?」

 

 「み、見てないわよ!!!悪い!?」

 

 ひ、開き直りやがった……。

 

 「仕方ないじゃない!その時はたまたまデータの整理をしてたのよ……。カメラだって切ってたし。あの子の悲鳴が聞こえてカメラを強制起動した時にはもう……。」

 

 「わ、悪かった。責めてるわけじゃないんだ……。俺だって先輩を助けれなかったわけだし……。すまん。嫌なことを思い出させたな……。」

 

 「いいのよ。アタシこそごめんなさい。そ、そんなことより!今は傷の舐め合いをしてるんじゃないわよ!」

 

 「そ、そうだったな。で、だ。なんだってタイムトラベル機能なんか着けたんだ?保険って言ったってそんな技術があるならいちいちまどろっこしいことしなくてもいいんじゃないか?」

 

 「それは多分1人限定ってところなんじゃない?いちいちタイムトラベルしてたら世界から消されかねないものね。」

 

 「そうか。大体の事情はわかった。ありがとう。」

 

 「ま、感謝しなさい!それより、さっきから君だのお前だの好き勝手呼んでくれるじゃない!名前くらい付けてくれてもいいのよ……?」

 

 「それもそうだな。じゃあ情報ってことでジョーはどうだ?」

 

 「それだと男みたいじゃない!」

 

 「うーん、そうか。だとするとinformationから取ってインf」

 

 「はぁ!?それだと勃○不全みたいじゃない!却下よ!却下!」

 

 「ったく。注文が多いな。」

 

 「当たり前でしょ!?ネーミングセンス皆無か!」

 

 「って言われてもなぁ……。じゃあ、自立思考情報兵器(Independence Thinking Informationweapons)ってことで頭文字をとってI,T,Iか。そうだ!お市でどうだ?」

 

 それじゃあ戦国武将の嫁みたいじゃない!なんてツッコミが来るだろうと予想しつつも言ってみると……。

 

 「お市……。お市ね……。うん。悪くないわね!」

 

 えぇ……マジかこいつ……。気に入っちゃったよ……。

 

 「いいわね!お市!これからアタシをお市と呼ぶことを許すわ!」

 

 案外に気に入ってる様子。

 

 「ハイハイ。お市様。」

 

 「えぇ!よろしくね?悠希!」

 

 あれ?俺こいつに名前教えてたっけ?

 

 

 

 

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