俺と後輩と酒と文学少女と 作:JOS
アイツは俺の事を常に先輩と呼んでいた。慕っているかは分からん。ただ日頃のアイツの傍若無人ぶりを見るに恐らく俺の事は尊敬すべき、先輩ではなく都合のいい近所の兄貴的なポジションだと思っていそうだ。まぁ、変に気を使われるとこちらとしてもむず痒い物があるので、俺としてもこのままの態度の方が助かるは事実だ。序に言えば異性としても思っていない。風呂上りに下着姿のままウロウロしたり、酔った勢いで服を脱ぎ始めるのがコイツだ。俺のことをいったい何と思っているのか非常に気になるとことだ。
「――――美味しいですね、先輩」
目の間にはいつも通りニコニコと笑顔のアイツがいた。何がそんなに楽しいのかさっぱりと分からないのだが、美人は仏頂面よりも笑顔が似合う。そう、つけあがるため本人には死んでも言ってやらないが、俺の後輩は美人である。それもただの美人でない。特Aクラスの美人だ。
陶器のような透明感のある白い肌。メリハリがはっきりした顔。元々カリスマモデルをしていたためスタイルについても殆どいうことはない。あるとすれば胸がないくらいだ。まぁ、この話をするといつぞやの如くロング缶を投げられること間違いないので黙っておこう。
「そうだな、やっぱり冬はこれだよな」
そう言って目の前に置かれていた湯呑を啜る。中身は熱々の緑茶だ。目の前に座る小生意気な後輩がいつの間にか持ってきたものだった。お茶っぱには全く詳しくないのだが、いいものだろう。俺が飲んでも美味いと思う緑茶だ。
新年に入ってもう既に一か月と少しが過ぎた。冬将軍はますます勢力を強めて全盛期。外はチラチラと雪が降っていた。そんな真冬の午後三時。俺と小生意気な後輩は炬燵に向かい合って緑茶を啜っていた。
「そうですよ、やはり冬は炬燵にこれですね」
場所は例にも漏れず俺の住んでいるボロアパートの一室。昨日の夜から何故かいる後輩はいつも通り勝手に泊まっていき、今に至るというわけだった。結構な頻度で泊りにくるため俺の部屋にはこの馬鹿の荷物が非常に多い。もともと物欲というものがほとんどないため実家にいた時から本と寝具と最低限度の服くらいしか部屋にはなかった。そんな俺の部屋が色々なものに溢れかえっているのは単にこの後輩が勝手に色々と持ってくるからだと言っていい。ちなみに俺たちが今いる居間の中で言うならば、TV、ソファー、クローゼットなどなどが彼女の私物だったりする。服に限って言えば間違いなく俺の服よりも倍以上が置いてる有様だ。勝手知ったる他人の家を素でいっている人間が俺の後輩だったりする。
「それよりも、先輩、昨日はお疲れのようで」
お茶の入った湯呑を置いて彼女は言った。
「あぁ、少しばかり立て込んだ仕事があってな、ここ数日まともに家に帰ってなかったんだよ」
思い返してみると酷い一週間だった。家に帰れたのが一日だけ、それも終電を逃してタクシーで帰り、そのまま仮眠をとって始発で出社。それ以外は会社のデスクで眠る日々。おかげ様で好きな酒は一滴も飲めず、ストレスと疲労ばかりが溜まる一週間だった。あのまま行けば俺はきっとストレスで死んでいたに違いない。いや間違いない。後一週間もすれば死んでいた。
「それはお疲れ様でした。先輩」
彼女は薄く微笑むと、炬燵の中心に置かれた柿色の急須を手に取り俺の湯呑に中身を注ぐ。そんな後輩にありがとう、と礼を言うと、気にしないで下さいと返ってきた。
「しかし、悪かったな昨日は付き合えなくて」
地獄の一週間と引き換えに三日の休日を手に入れた俺は遊びに来ていた彼女と数日振りの晩酌としゃれこもうとしたのだが、やはり睡眠不足と疲労には勝つことが出来ず、ビール一本で炬燵で寝てしまった。朝起きると寝室の布団の中で寝ていたため彼女が運んでくれてたのだろう。布団からほのかに何時もと違う匂いがした。昼過ぎに起きて礼を言うと、「いえいえ、私も久し振りに先輩といssy―――いや、何でもありません。お気になさらず」と何とも怪しげな返事が返ってきたが、深く考えるのは辞めておくことにした。触らぬ神に祟りなしとはよく言ったものだ。藪から出てくるのが棒ならいいが、蛇やら鬼やら出て来た時にはしゃれにならん。
「しょうがないですよ。お疲れだったんですもの」
「いや、お前の方が多忙だろ」
こうやって普通に話していると忘れそうだが、彼女はその実滅茶苦茶多忙な人間だ。日本でもトップレベルに入ると言っても過言ではない。何といっても去年のクリスマスにアイドル界のトップ、シンデレラガールに輝いたのだ。今では日本中探してもコイツの知らない奴の方が圧倒的に少ないだろう。テレビをつければ見ない日はなく。街に出ればどこかでコイツの持ち歌が流れる。コンビニに行けば表紙を飾った雑誌が積んである。そんな存在が目の前の彼女である。俺なんかとは文字通り比べ物にならない。
――本当に何でここにいるんだろうな。
「うーん、まぁ、忙しいと言えば忙しいですけど……最近は落ち着いてきましたし」
「これで落ち着いてきたのか……」
「はい、シンデレラガールになって前よりもすこーしだけ忙しくなりましたけど、それくらいです」
そう言われてみればコイツは昔から多忙だったことを思い出す。大学時代にはモデルと学業の二足わらじを履いていたし、アイドルになってからは直ぐにトップアイドルになり国民的アイドルになった。そんな彼女からすればシンデレラガールになって仕事が増えたとしてもその差異は微々たるもかもしれない。
――まぁ、コイツだもんな。
昔から何でも卒なく要領よくこなしてきたのは知っている。きっと俺なんかが血反吐を吐く思いでやっていることも彼女にして見れば何でもないのかもしれない。いや実質なんでもないのだろう。彼女にはそれだけの才能がある。
――高垣楓だから。
今までの人生で幾重にも思った諦めに似た感情を心の中で吐露する。そう、彼女ならこの程度のこと出来て当たり前だ。それが彼女だ。
「それに、休みの日はこうして先輩のところでリフレッシュ出来てますし、今のところこの暮らしに満足してます」
「そうか、まぁこんな部屋で良ければ勝手にくつろいでくれ。俺は飲みにしか付き合えんが」
カリスマモデル、トップアイドル、そしてシンデレラガール。彼女が歩んできた輝かしい道の裏側でどれほどの苦労やストレスがあったのか俺には分からない、想像も出来ない。今は昔夏目漱石はこう書いた。
『明暗は表裏のごとく、日の当たる所にはきっと影がさす。――喜びの深きとき憂いいよいよ深く、楽しみの大いなるほど苦しみも大きい』
彼女は確かに輝かしい道を歩んでいる。人よりも多くの栄冠をつかんだ。でも、きっとその分彼女は多くの影を背負っている、多くの憂いを帯びている。
俺は彼女と違ってただの一般市民だ。お金も持っていなければ、勉強が出来る訳でもない。凄い人脈もがあるある訳でも無論ない。どちらかと言わずとも、貧乏な方だし、勉強では彼女に遠くも及ばない、凄い人脈どころか、友好関係だって狭い方だ。容姿、金銭、学問、人脈、その全てにおいて俺は彼女に劣っている。序に述べれば性格と運動神経だって劣っている。太陽が東から昇るように、水が高い所から低い所へ流れるように、断然たる事実として俺は彼女に何一つ勝っている点がない。
――でも、そんな俺に出来ることがあるなら、彼女の影を憂いを少しでも無くせるのなら……。
別に俺とコイツは付き合っている訳でも何でもない。ただ付き合いの長い腐れ縁だ。良く言えば幼馴染なだけだ。俺はコイツの事を妹みたいな存在と思っているし、彼女もきっと俺のことを兄の様な存在だと思っているだろう。
それでも伊達に付き合いは長くない。俺に出来る範囲であれば彼女のことを応援してもいいくらいには彼女のことを思っているつもりだ。彼女は俺と飲むことがリフレッシュになると言った。それで彼女の気が晴れるのであればいくらだって付き合う。美人と飲めるなんて俺も嬉しい。
「うふふふふふふ、やっぱり先輩は優しいですね」
彼女はそう言って琳瑯璆鏘として鳴るような声で笑う。本当によく笑う奴だ。よくテレビとかを見ていると彼女はクールな大人のアイドルして映っているし、そういうキャラで売っている。実際に多くのファンもそう思っているだろう。でも俺からすれば彼女は昔からよく笑う奴だった。いつも飄々とした笑みを浮かべ猫の様に目を細める。高垣楓のイメージは昔からそれだった。きっとそのイメージが変わることはこれから先もないだろう。
彼女の笑みは昔から変わらず。
――俺はその笑みを見るたびに……。
「まぁ、あれだな。人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人には親切がしてみたものだ」
「先輩、本当に漱石が好きですね」
「そういうお前もただの一文で漱石と分かるんだから相当なもんだろ」
「それはそうですよ。先輩の本棚にあった本は全部読みましたから、私も漱石は好きですよ」
まぁ、先輩の漱石好きには負けますけど、そう付け加えて彼女は微笑む。
「いや、別に俺は漱石が好きな訳じゃないぞ」
確かに漱石の作品は比較的読んだが、その全てが面白かったかと問われれば首を傾げざるを得ない。勿論好きな作品もあるが、漱石の作品が全部好きかと言われれば答えはノーだ。正確にいうならある一作品だけ異様に好きな作品があると言った方が正しい。
「それも分かってます。あの本だけが異様に好きなんですよね」
「まぁ、そうだな……」
楽し気にうんうんと頷いてる彼女に緑茶を啜りながら適当に応える。
そんな時だった。ソイツが「あっ」と思いついたように声を出した。
「ん? どうしたんだ?」
「先輩、実は明日の午前中の仕事がキャンセルになりまして、明日は午後からなんですよね」
「へぇ、珍しいことも在るもんだな」
「えぇ、だから、緑茶も良いですけど……どうですこれ?」
そう言って彼女はくいっと御猪口を飲む真似をする。
「お前今何時から知ってるのか?」
時計を見る。ボロ時計は三時と四時の丁度中間を差していた。つまりバリバリの昼間である。
「三時半です」
だから? と言った顔で後輩は応えた。
「昨日は飲めなかったんですし、今日はゆっくり飲みましょうよ! いい日本酒も買って来てますし」
そう言って彼女は目を細めて猫の鳴く様な声で笑う。特徴的な泣きぼくろが彼女の魅力をさらに上げていた。
「そういう事は早く言え。まぁ、たまには昼から飲んでも罰は当たらんか」
「えぇ、今日は昨日分も含めてゆっくり飲みましょう」
こうして雪がちらつくある冬の昼間の飲み会は始まった。
注意 これから下は完全におふざけです。茶番100パーセントです。それでもよろしければご覧ください。本編には一ミリたりとも関係ありません。
――はい、皆さんこんばんは! 346プロダクション、ナイトラジオのお時間です! このラジオはお酒を飲みながら本やお酒の話をするゆるーいラジオです。リスナーの皆さんも何も考えずにゆるーく、聞いてください! このラジオの司会を務めるのは、私、高垣楓と先輩でーす!!
おい、一体どうなっているんだ?
――どうなっているとは?
いや、飲みに行こうと誘われて付いてきたらこの346プロダクションの放送室だったわけなんだが、どういうことだ?
――どうもこうも、今言った通りですよ、先輩!
いや、だから今言ったことの意味が分からないんだが…… ラジオ? 346プロ? 何言ってんだお前は?
――ん? 何か問題でも?
いや、問題しかないだろ。ラジオでいきなり高垣楓の先輩とか出てきたらリスナーさんもビックリするだろ。ってか色々と勘違いしたファンに刺されそうなんだが。
――そのあたりは大丈夫ですよ。このラジオは社内でしか流れないので
社内でしか?
――そうです。所謂、校内放送の本格番みたいなやつです。イメージ的に言うなら、大学のキャンパスラジオみたいなノリですね! トーク力なんていりません。先輩はいつもどおり話してくださればOKです!
なるほど、でもそれって需要あるのか?
――さぁ、どうですかね? まぁ、需要があろうがなかろうがやってマイナスにはならないので大丈夫です。要は完全に趣味です。
趣味って……趣味でこんな立派な放送室使っていいのか?
――いいんです。許可は下りてますから!
は、はぁ……。いやでも、やる気が出ないんだが。
――まぁ、趣味レベルの社内ラジオなので報酬は出ませんが、報酬がわりにこの放送ではお酒が飲めます!
酒飲みながら喋るんだっけ?
――はい! ちなみに今日は山崎を持ってきました!
よし、今すぐ始めよう。ハリーアップ!
――流石先輩、見事な変わり身ですね!
こんな高級な一本が、ただ駄弁るだけで飲めるならいくらでも出てやるよ。ただ、本当にトークには期待するなよ。
――大丈夫です。いつも通りに話してくれればいいので!
OKOKじゃあ、始めようか。
――その前に……先輩飲み方はどうされますか? いつも通り、ニートとチェイサーで炭酸水でいいですか?
あぁ、それで頼む。
――分かりました! 張り切って作りますよ!
いや、作るも何もないだろ。それに……
――あると、思えばあるんです!
やけにテンション高いな今日。
――はい! 先輩出来ましたよ。
あぁ、ありがとう。お前はハイボールか。
――えぇ、楓さんはハイボールです!
で、ラジオはいつから始まるんだ? 一応心構えをしておきたい。
――もう、とっくの昔に始まってます。
は? 今なんて?
――だから、とっくの昔に始まっていますよ、先輩。具体的には先輩がこの放送室に入ってきた時からです。
は? じゃあこれまでの会話全部流れてたのか?
――イエス!
イエスじゃねーよ。どうするだよこれ、放送事故じゃないか!
――大丈夫です。社内ラジオですので放送事故なんてありません!
いや、ドヤ顔してるけど、本当に大丈夫なんだろうな?
――はい! 本当にまずい場合は誰か飛んでくるでしょうし、今のところは大丈夫です。
はぁ、なんか疲れたわ。
――では、早速乾杯といきたいんですが……先に本日のゲストを招きたいと思います!
ゲスト?
――はい、ゲストです。このラジオでは基本的に私と先輩とゲストの方でだるーくお送りしていくラジオですので。では、本日映えある第一回のゲストはこの方です!
『はい、皆さんこんばんは! 七尾百合子です!』
ゆ、百合子!?
『はい、 オジさんの百合子です』
来てそうそう何言ってんだよ、お前……。ってかお前完全に部外者だけどいいのかそれ?
――はい、こんばんは百合子ちゃん。今日は宜しくお願いしますね。
『楓さん、よろしくお願いします』
おい、俺の話しは無視かよ……。
――大丈夫です、先輩。このラジオは無法空間ですので、まだ本編に出ていない百合子ちゃんがゲストで出ようと何も問題ありません。
『その通りですよ、オジさん。私は本編にそのうち出てくるんです! だからこのラジオは七尾百合子の先行登場と言えるんです!』
お前ら本編とかそんなこと言っていいのか?
――いいんです。何故ならここは本編から隔離されたメタ空間なので! ネタバレ、メタコメなんでもありです! あ、百合子ちゃんはお酒は飲めませんのでオレンジジュースで我慢してくださいね。
お、おう……。
『ありがとうございます』
――それではまずは乾杯しましょう!
「「「乾杯」」」
――では、早速始めましょう。本日のテーマはこれ!「印象に残るタイトルの本」です!
『なるほど、これは興味深いテーマですね!』
何で百合子はいきなり来てここまで対応出来てるんだ……。
――まぁ、先輩。細かいことは置いておいて、早速考えて下さいよ。
ん……まぁ、飲んだドリンク分くらいは頑張るよ。
――はい、お願いしますね。それと思いついたら目の前のボードに記入してくださいね。
あぁ、このボードそう言う意味だったのな。
『うーん、色々悩みますけどやっぱりこれかな……』
何だ百合子、もう書いたのか?
『はい、少し悩んだんですけど、やっぱりこれかぁと思って』
――へぇ、百合子ちゃん早いですね。あ、それと先輩は漱石の本を上げるのはなしです。
はぁ、なんでだよ?
――だって先輩何から何まで漱石の本をあげそうですので。
『確かにオジさんはそうですよね』
――よって、漱石はなしです。いいですね。
はいはい、分りましたよ。
――皆さん書けましたか? あ、先輩お代わりどうぞ
あぁ、ありがとう。書けたぞ。
『はい、私もばっちりです』
――では、発表をお願いします。まず、百合子ちゃんから!
『はい、私はこれです――アルジャーノンに花束を、です』
あぁ、また古典をもってきたな。
――これは分りますね。誰かが選ぶと思ってました。
『はい、色々と悩みましたけど、この本にしました。やっぱり何と言っても物語を読むと分かる題名の意味です! 内容も面白いし、興味深い話です』
確かにこれは読んだ人と呼んでない人でタイトルに対する考えが変わるだろうな。
――SFの中でも有名どころの中の有名どころですもんね。読んだ人も多いと思います。
『有名なだけじゃなくて色々と考えさせれる話ですよね。教養とは人間関係に楔を打ち込む……。知識を得ることが幸せなのかどうか……幸せとは何か本当に考えさせられるお話ですね』
――確かこの名言をもじったやつが本編の隠れテーマになっているんですよね。『彼女の才能は、俺と彼女の間に楔を打ち込む』もしくは、『俺の醜い嫉妬心は俺と彼女の間に楔を打ち込む』。
『へぇ、そんな裏話があったんですね』
――まぁこの話は置いておきましょう。アルジャーノンに花束をといえば、やっぱり終わり方ですよね。特に最後のつい……おっとこれ以上は読んだことのない人もいらっしゃると思いますのでやめておきましょう。でも、しかしSF小説は面白いタイトルの本が多いですよね。
あぁ、確かにSFの本は面白い題名の本が多いな。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか? たった一つの冴えたやり方 世界の中心で愛を叫んだけもの……有名どころだけでもこれだけありますね』
――そう言えば先輩が一度タイトル買いしたらSF本ばかりなったこともありましたね。
あー、そんなこともあったな。それだけタイトルが興味深い本が多いんだろうなぁ……。
――では次は私の発表と行きますね! 私はこれです――不思議の国のアリス。
また、超有名どころ持って来たな。聖書とシェイクスピアに次ぐ有名どころじゃねぇか。
『これは題名内容含めて知らない人の方が少ない本ですよね。アニメにも漫画にもなっていますし』
――もう内容について語ることはいいでしょう。この本のタイトルの良い所は非常に分かりやすいところですね。不思議の国のアリス。この題名だけでこの本がどんな内容かが分かります。スマートな本ですね。
確かにそう言う意味ではこれ以上に分かりやすい本はないな。タイトルもスマートだし心に残りやすい。
『内容も言葉遊びや当時の教訓が色々と書かれてあって面白いですし、勉強にもなりますよね』
――はい、アンジャーノンに花束をが読んで意味が分かるタイトルなら、不思議の国のアリスは読まなくても意味が分かるタイトルと言えますね。
雪国やら人間失格、彼岸過ぎまでなんて言うのもそういう分かりやすいタイトルだとは思うけど不思議の国のアリスに比べると少し毛色が違うな、やっぱり。どれも素晴らしい題名だけど。
――続編の鏡の国のアリスもそのままの題名ですし。そう言う意味ではおススメですね。それに本編でもこの小説でも初めに引用してましたし、結構関わり深い作品ですね。では、最後に先輩の答えを聞きましょう。
あぁ、俺か。俺はこれだ――ロリータ。
――…………。
『…………』
おい、黙るなよ! それこそ放送事故だろ!
――い、いや予想外だったので少し固まってました。先輩の事ですので夜は短し歩けよ乙女、とか永遠も半ばを過ぎて、辺りをチョイスすると思ってました。
『それか存在と時間とか、純粋理性批判とか哲学書でせめてくるかと……』
いや、そこらの本も浮かんできたんだけどな。一番初めに浮かんできたのがこれだった。
――ロリータですか。まぁ、確かに特徴的な題名ですね。
『ロリータコンプレックスとかロリータファッションの言葉のもとになった本ですよね』
そうだな、内容には賛否両論あるとは思うけど俺は好きだよ。あの物語。
――まぁ内容に関していうのならロリータよりもドロドロとした話はいっぱいありますしね。シェイクスピアとか中々酷いお話が多いです。
『人は小説を読むことが出来ない。ただ再読しているだけだ、でしたっけナボコフさんが言った言葉』
流石、百合子よく知ってるな。そうそうロリータと言う本は読み返す度に新しい発見のある本なんだよなぁ。まぁ、これは題名関係ない話だけど。
――でも。ロリータですか……。一体何人の方が読まれたことがあるんでしょうか?
『有名なだけで読んでいる人は少ないと思います。本屋にも売ってないですし』
そうだよなぁ、内容も語ろと思ったらマニアックになってしまうしなぁ。まぁ、面白いから読んでくれとしかいえないなぁ。
――私たちは皆読んだことありますけど、確かに内容を話し合うと……。まぁ、私も面白いので見てくださいとしか言えないですね。
――あっと、初めの方に色々と時間を取り過ぎてしまったので、本日はここまでです! 最後に視聴者クイズを出して終わりましょう。インターネットとかで調べたらいけませんよ!
クイズ? そんなのあるのか?
――景品は出ませんが。ちなみに事前に百合子ちゃんには解いてもらいました。
『はい、一応全部書いたんですが、あってるかどうかは……。難しかったです』
――大丈夫よ。百合子ちゃん。満点でした!
『や、やりました! オジさん!』
へぇ、やるじゃないか百合子。
『えへへへへ』
――ちなみに私も満点でしたよ、先輩!
いやお前は当たり前だろ。何中学生に張り合ってんだよ。
――ぶーぶー、差別だ差別!
はいはい。後で構ってやるから先進めろよ。
――あ、そうでした。では問題を出しますね。それと、次回のゲストは引き続き、百合子ちゃんでお送りします。テーマは「心に残る小説の冒頭です」では、皆さんまた次回!
『今日はありがとうございました』
ありがとうございました。って本当にこれ流れてるのか……?
問題1 不思議の国のアリスの著者は?
問題2 不思議の国のアリス。アリスのモデルとされている少女の名前は?
問題3 アルジャーノンに花束を。アルジャーノンとは何?
問題4 ロリータ。ロリータと呼ばれる少女のフルネームは?
問題5 ロリータ。主人公の名前は?
本編と茶番の文字数が同じって……。