古龍を描く狩人   作:ムラムリ

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キリン 1

 そこは新しいたいりく

 さまざまなかんきょうの中 たくさんの命があふれる いるだけで元気になってくるような そんなばしょ

 

 その新しいたいりくには 世にもめずらしい ちじょうへとサンゴが生えてくる そんなばしょがありました

 おかサンゴのだいち そうよばれるそのばしょには パオウルムーという 泣き虫な竜がいました

 

 パオウルムーは 飛竜です 

 この飛竜のいちばんのとくちょうは 首にありました

 ほかの飛竜とはちがい 首に空気をためられるようになっているのです

 それを利用して まるでふうせんのように ふわふわと空をとぶことができる竜なのです

 また 空気をためたじょうたいのパオウルムーはとてもきけんです

 おおきくなった そのパオウルムーの首はいがいとかたく たたきつけられると ただではすみません

 さらに そのためた空気を一気にはきだすことで かりうどをはじきとばすほどの きょうれつなくうきのブレスをはなつこともあります

 

 しかしながらパオウルムーは このおかサンゴのだいちでは ざんねんながら どうどうと空をとべることはありませんでした

 そんなパオウルムーをつよいひかりでおとしてしまう ツィツィヤックとよばれる 鳥竜が

 そんなパオウルムーにとびかかってかみつき ぶんぶんとふりまわしてなげとばしてしまう オドガロンとよばれる 牙竜が

 そんなパオウルムーよりもすばやく大きく さらにあらゆるものを氷づけにしてしまう レイギエナとよばれる飛竜が

 おかサンゴのだいちにはいました

 かたく大きい空気のふくろをたたきつけようとしても きょうれつなかぜをはなとうとも それらはみがるなかれらにはかんたんにかわされてしまい いつもかえりうちにされてしまいます

 よくはれた 春のあたたかいひざしがさしこむ アイルーであるぼくなんかは 気をぬけば 体を丸めてねむってしまいそうなそんなひも パオウルムーは ふと出会ったオドガロンに いいようにふりまわされて あそばれたあげくに ないていました

 ひかげでびくびくとしながら いっぴきで ないていました

 

 ヒノキはそこまで読んで、言った。

 カシワが絵本を完成させたと言って戻って来たと思えばこれだ。幼児向けの可愛い絵柄なのに中身はこれだ。

 残酷な、言ってしまえば現実に即したであろう生態系がそこに描かれている。

「……あのさ、ひどくね?」

「だって事実だものニャ」

「……」

「けどニャ、このパオウルムーはまだ幸せものニャ」

「まあ、そうだろうな」

 陸珊瑚の台地がどうなっているか、ヒノキが知らないはずも無い。そのパオウルムーの事はカシワが幸せ者だと言った理由まで知っていたし、実際そのパオウルムーは狩人の間でも狩らないようにお触れが出ていた。

 

 そんなパオウルムーは いつしか泣きつかれて ねむってしまいました

 けれど そんなパオウルムーをよく見ると そのからだにはきずは一つもありません

 オドガロンのきばは にくをたやすくひきちぎるほどに するどいのにもかかわらずです

 ぼくは このパオウルムーを 長いあいだ かんさつしてきました

 その長いあいだ このパオウルムーはなんどもいじめられてきましたが しかし きずがつくことは いちどもありませんでした

 

 泣き疲れた顔のパオウルムー。その隅に描かれている細い足は淡い水色をしていた。

 ヒノキは次のぺージを見た。

 

 パオウルムーは目をさますと じぶんにもたれかかって 体を丸めているそのそんざいに きづきました

 パオウルムーの首の 空気のふくろは ふくらんでいないときはとてもふわふわです

 それはききゅうにも使われるほどにがんじょうでもあればまた マフラーやぼうしにすれば とてもここちの良い いっきゅうひんになることまちがいなしの とてもすばらしいものでした

 そしてそれは 古龍をも時にすきになってしまうものだったのです

 

 そこには絵本に書かれた文章の通りに、パオウルムーに凭れ掛かって寝るキリンの姿があった。

 パオウルムーは心なしか緊張した顔をしていた。

 

*****

 

 今、陸珊瑚に居るパオウルムーは、どうしてか時々来るキリンに気に入られていた。

 単純にその首の空気袋が好きなのか、パオウルムーそのものを気に入っているのか、そこまではまだ不明だが、それを知っているモンスター達はそう強くパオウルムーに攻撃を仕掛ける事は無い。

 また、厄介な事にそのキリンは歴戦王と名付けられたクシャルダオラとまではいかなくとも、普通の古龍と比べれば強い力を持っていた。

 その身から発せられる雷は生える草木を黒焦げどころか粉々にする威力であり、雷耐性が如何についた装備であろうとも、それをまともに身に受けたら体がイカレてしまうと思えた。

 加えて陸珊瑚の台地と研究基地は繋がっており、飛竜などと比べれば人間と背丈がそこまで変わらないキリンならば研究基地に入れてしまう。

 柵などで封鎖しようともそのキリンの前では無力であろう事、そしてキリンが人間に対して怒ったら最期、研究基地は人的被害と共にもう再起不能なまでに破壊され尽くしてしまうというのは想像に難くなかった。

 パオウルムーを狩る事はそのキリンを怒らせ、最悪研究基地が破壊される事と同義だった。

 

 幸いなのは、パオウルムーもキリンも、進んで狩人や他の人間達に対してちょっかいを出してくる性質では無かった事だった。

 もしパオウルムーが攻撃的であっても、キリンに気に入られている以上迂闊に手は出せないし、またキリンがそのように危険だったならば、犠牲を覚悟してでも討伐に臨まなければいけなかった。

 

*****

 

 パオウルムーは きょうもきょうとてがんばります

 キリンという雷をあやつる ものすごい古龍に気に入られていても パオウルムーはじぶんがよわいことが いやでいやで たまりませんでした

 たてに よこに 前に 後ろに たくさんうごきまわりながら ねらったもくひょうにむけて せいかくにブレスをはきます

 ごうぅっ! とはかれたくうきは しかしながら すこしずれて なにもないばしょのすなを まきあげるだけでした

 しかし あきらめずにもういちど パオウルムーはいきを大きくすって 空へととびあがりました

 そんなすがたを キリンは まるでおやのように 見ていました




カシワの絵柄に関してはある絵師の作風をそのまんま想像してます。
パオウルムーとキリンに関してはこれもモデルが居ます。
そんなこんなな1.5章、多分クシャルダオラ編に比べれば短めですが、よろしくお願いします。

パオウルムー:
下位個体
キリン:
歴戦個体

気に入った部分

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  • 展開
  • 雰囲気
  • 設定

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