古龍を描く狩人   作:ムラムリ

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マム・タロト 1

 マム・タロトが確認された、という話が出たのは平穏な日々が数カ月続き、狩人達が平和ボケしつつある頃だった。

 イビルジョーやバゼルギウスが暴れ回りに来る事もなく、また狩人に敵対するような竜種も居らず。ネルギガンテの番に関しても継続的に観察を続けていたが、古龍達を襲って回った時の暴れようが嘘のように落ち着いていた。精々、近くのガストドンやらを時々狩りに出る程度で。

 大団長が調べていると言っていたのはマム・タロトについてだったのだ。

 前々から予兆はあったと言う。マム・タロトが通った跡がある場所は定期的に観察していたが、その中の一つに変化が見られたのだ。

 まずはカッパーカラッパ――マム・タロトの落とした黄金片を身に纏う性質を持つ蟹が散見され始めた。

 次に、マム・タロトの近くに住む、また同じく黄金を身に纏いたがる派手好きなガジャブー達が現れ始めた。

 そのガジャブー達と友好的になる事はオオバの尽力があっても出来なかったが、マム・タロトの活動場所がその近辺になるという事は、何度も調査に赴いたその一回に実際にマム・タロトが確認された事により確かなものとなった。

 数多の黄金を身に纏い、何者も、狩人の半端な攻撃でさえも意に介せず歩き回るマム・タロトの姿は実に優美でまた、金属を寄せ集めるその能力の謎に研究者達は自衛の力さえ持たないのに我先にと見に行きたがった。

 狩人達も、そんな新大陸でしか観察されず、また目にした者達が口を揃えて美しいと言うその姿を見たがった。

 大団長や総司令はそんな研究者や狩人達の姿を見て、そして思案を重ねた上で三兄弟とそのお付のアイルー、ライチを呼び出した。そして、ヒノキとカシワも。

 そして、総司令は言った。

「イチジク、ニワトコ、サンショウ。

 古龍に相対出来るお前達にマム・タロトの踏み込んだ調査を頼みたい」

「そんな事だろうと思った」

 イチジクが半ば緊張した顔で言った。

 そんなイチジクに、総司令が返す。

「討伐しろと言う訳じゃない。未知に等しい古龍だからな、危険が強いと感じたら戻っても全く構わない」

「それで? 討伐しろと言わないのであれば、最終目標は?」

「マム・タロトの角の部位破壊及びに、それの回収だ。学者を数人連れて行ったところ、あの部位のサンプルがあれば色々と調べられそうという事でな」

「……一度そのマム・タロトとやらを見てから決めても?」

「勿論構わない」

「それなら」

 と話が決まった所で、ヒノキが言った。

「あのー、俺達はどうして呼ばれたんですか?」

 総司令と三兄弟、それからライチが振り向く。

「ああ。用があるのはヒノキよりもカシワなんだ」

「ニャッ?」

「編纂者よりもより近い位置でのマム・タロトの観察とその記録を行って貰いたくてな。

 同じ狩人……ヒノキだと、攻撃しなくとも狙いがそちらに向く事も起きやすいだろうし、三兄弟の慣れた連携の邪魔になる事もあるだろう。

 ただ、アイルー……カシワならばマム・タロトの巨体からすれば目立たない事も可能だろうし、より近い位置での観察と記録が可能だと踏んだ。

 克明な絵というのは、調査にとっても大事なんだ。特に初期段階では誰もが危険な現地に赴かなくともイメージを共有出来るという意味で重要だ。

 肉体はどのように発達しているのか、そしてどのような攻撃を得意とするのか。弱点はどこで、どこを責めるべきか。そんな事は後続の狩人達への鮮明な情報共有にも繋がる。

 だから、出来れば同行を願いたい」

「ニャー……」

 カシワは少し悩んだ。

 それにヒノキは何も言わなかった。基本的に好きにしてきたし、好きにさせてきた。

 行きたいと言えば止めるつもりも無かったし、行きたくないと言えば咎めるつもりも無かった。

 そしてカシワは言った。

「……ボクも、マム・タロトを見てから決めたいと思うニャ」

「分かった」

 

*****

 

 早速翌日。

 地脈の黄金郷と呼ぶ事になったその場所に着くと、そこにはもう既に大砲などが設置されていた。

「弾ももう既に込めてある……」

 サンショウが呟く。

 そんなサンショウにイチジクが言った。

「一期団がマム・タロトの調査をしようとして何も出来なかった話は聞いた事があるか?」

「いや」

「俺も聞いてないな」

「そうか。

 多少狩人が攻撃しようが、全く意に介せず歩みを続けたそうだ。

 その時は装備も充実していなかったらしいからな。その程度の攻撃じゃマム・タロトは目にも掛けてくれないという事だ」

 それを聞いたニワトコが言った。

「俺、ガンランスの方が良いか?」

 背に担がれていたのは、何の機構も入っていない純粋に鋭い槍。

 火力自体はガンランスの方が上だが、その分安定性に欠ける。

「いや、ランスで良い。求められているのは危機の回避とかそんな切羽詰まったものじゃない。何の成果も無くとも、追い返せなくとも何の悪い事も無いんだからな」

「僕は?」

 サンショウが聞いた。背に担がれているのは大剣だ。

「お前もハンマーよりは一応タックルやら防御も出来る大剣の方が良いだろ」

「分かったー。兄ちゃんは片手剣のまま?」

「まあ、そうだな。要するにやるにせよ、使い慣れた武器で行った方が良いに決まってる」

 三兄弟は全員剣士であった。

 ニワトコの使う武器はランスかガンランス。主に注目を引く役目。

 そこにサンショウが大剣かハンマーで重い一撃を叩きこむ。

 イチジクは片手剣で、時にはニワトコと共に敵の注目を引き、時にはサンショウと共に攻め立てる、バランサーを担っていた。

「僕はどうしますニャ?」

 ライチが聞いた。

「うーん……。安全重視で行くならミツムシか楽器だよな」

 傷を癒せる蜜を運ぶミツムシを呼ぶお香か、狩人の肉体を強化してくれる楽器。

「粉塵を俺が沢山持っていれば回復は何とかなるよな……。楽器で頼む」

「分かりましたニャ」

 そんな会話を、カシワと一応付いてきたヒノキは少し離れた場所で聞いていた。

 

「それで、マム・タロトは今は居ないみたいだな……」

 起伏の激しいこの洞窟はけれど、差し込む日光やまたそれが露出した金属に反射する事によって昼間のように明るい。

 その代わりにカラッパが時々とてとてと歩いている。ガジャフーは居らず、マム・タロトの痕跡はあってもとても古いものばかり。

 けれど僅かに居るカラッパの中にはそのマム・タロトの黄金の欠片を持っているカラッパも居て、ニワトコが跳びついた。

「おお、マジか。マジで本物の金だぞこれ! 

 純粋な金じゃないにせよ鉄に比べても十分重いし、これだけでどれだけの額になるよ!」

「え、小兄ちゃん、僕にも見せて!」

「こいつは俺のもんだからな! お前も自分で見つけろ!」

 そんな弟達に呆れながらイチジクが言った。

「……あのな、覚えてるか?

 新大陸の物は基本的に持って帰れないんだぞ?

 それに黄金そのものはこっちではそう役には立たないし、金にも余りならんだろ。ボンボンな貴族なんて居ないんだし」

「えっ、あっ、うー……そうだったな、畜生」

 そう言いながらもイチジクのポケットにこっそりその金塊が入ったのがヒノキから見えた。

 ……まあ、あの位なら黙っても良いだろう。多分。

 そんな時、ギャーギャーと騒ぐガジャブー達の声が聞こえてきた。どこからかやって来たガジャブー達はどたどたと派手で重そうな仮面をつけてどこかへと走って行く。

「マム・タロトか?」

 ニワトコの声に皆も少し警戒を強めるが、多少待っても何も起きる事は無かった。

「……杞憂か」

 片手剣を構えていたイチジクが言った。

 

 その日は、結局マム・タロトには会えないままに終わった。

 ヒノキがイチジクに聞いた。

「暫くはマム・タロトが訪れるまで待つ事になりそうか?」

「そうだな……、そのつもりだ」

「分かった。

 カシワ。今日は俺も付いて行ったが、明日からはお前だけで良いか? 最終的に調査に参加しない俺がずっと付いていても時間泥棒なだけだし、それに戦闘には参加しないと言っても一応チームなんだ、慣れておいた方が良い」

「それで良いニャ」

「オーケー」

 

*****

 

 その数日後、三兄弟とライチ、そしてカシワはいつもより早い時間に戻ってきて、そして調査をする事を決めた。

「凄かったのニャ。ここに来てから古龍はキリンにネルギガンテに、クシャルダオラにナナ・テスカトリに色々見て来たけどニャ、どの古龍とも全く違うのニャ。

 まるで人が着物を羽織るように黄金を身に厚く纏っていてニャ、普通そんな黄金ばっかり身に着けていたら悪趣味に見えると思うけどニャ、全くそんなんじゃないのニャ。

 マム・タロトは黄金を纏ってそこらを歩くだけで、その姿はとても優美だったのニャ。全く全く悪趣味とかそんな感覚が湧かない程にとても華麗だったのニャ。それで力強くて、これから敵対するけどニャ、何か見るだけで勇気が湧いてくると言うのかニャ、それとも心が躍ると言うのかニャ、うん、とてもとても……見た目以上に輝いていたのニャ。それで、それで」

「分かった分かった、落ち着け、ちょっと落ち着け」

 際限なく喋り続けそうなカシワを一旦止めて、ヒノキが聞いた。

「でな、ちょっと本当に行く前に聞いておきたいんだ。

 まず、あのチームとは馴染めたか?」

「あ、そうニャ。

 ライチは三兄弟と小さい頃から一緒だったみたいでニャ、いつもは控えめで三兄弟のお控えみたいな感じだけど、とても頼りにされているみたいニャ。アイルー当たりも悪い訳じゃニャいし、もう仲も良いのニャ。

 サンショウはそこまで狩りの腕前も高くないみたいだけどニャ、ここぞという時には最大の一撃を当てる事を良く出来るみたいニャ。

 ニワトコは狩りの腕前は基本的に普通なんだけどニャ、防御に限っては一級品みたいだニャ。ランスの盾でディアブロスの突進まで防いだ事があるって言ってたニャ。

 イチジクは、狩りの腕前も高いんだけどニャ、それ以上にとても良い人でニャ。周りの気配りがとにかく出来るのニャ。イチジクのおかげでニャ、ボクはとても馴染めたのニャ」

「……そうか。

 それで、マム・タロトに関しては見た目とかそれ以上に、お前が感じたその強さはどの位だったんだ?」

「それがニャ、そこまで強く感じなかったのニャ。

 古龍で強いという事は僕にも分かるんだけどニャ、どう見てもネルギガンテやそれを退けたキリンの強さには及ばないように見えたのニャ」

「……違和感は何も無いか?」

 カシワのその感覚が正確であろうとも、危険な場所に送り込むのに対してそれだけを完全に信じる事は出来ない。

「多分、無いニャ。

 沢山の黄金を身に纏っているのは分かるけどニャ。その分動きは基本的に鈍重だったしニャ。

 ヴァルハザクみたいに特別な能力に特化したような古龍なんじゃニャいかニャあ?」

「うーん……。そんなもんか?」

「勿論、油断はしないニャ。ボクもちゃんと準備整えるしニャ、実際に戦う三兄弟とライチも、イチジクの指示に従って色々と考えているはずニャ」

「それを分かっているなら良い。

 ただ、一つ、肝に銘じておけ。相手は未知の、それも古龍だ」

 ヒノキはカシワと目を合わせて、言葉を染み込ませるようにじっくりと言った。

「狩人の最大の強みである知見は、相手の姿形が分かっているだけでは無いに等しい。

 だから、何時如何なる状況でも油断だけはするな。それは簡単に死に繋がる」

「……分かったニャ」

 カシワは、神妙に頷いた。

「気を付けろよ」

「ニャ」




そう言う訳でマム・タロト編です。
多分5話位で終わると思う。タブンネ。

スマブラにネルギガンテ参戦しねえかなあって思うくらいにはネルギガンテの事この頃よく考える。
実際棘から生まれるなら子育てとかしないのかね。それとも棘を見定めた獲物に刺して突き刺しまくって相手をネルギガンテに変質させていくのかなとかも考えたり。
シャガルマガラが竜をウイルスの苗床にしてゴア・マガラに変質させるんだから、そんな事もあり得るんじゃないかと。
まあ、自分はその棘から生まれるであろう、という裏設定出す前に雄雌出しちゃったからそっちで独自路線突っ走るんだけど。
いやでもね、もしそんな棘を突き刺してネルギガンテに変質するのならばね(仮説が前提になっとる)、要するに誰でもネルギガンテになれるって訳なんですよ。羨ましいなあ!!!!!!!!
もうハーメルンに、シャガルマガラになる女の子の小説あるし、ネルギガンテバージョン書いちゃうか????????
でもやっぱりちるこもまるこも無いかもしれないのはちょっと寂しいなあ。
それにネルギガンテになるよりはやっぱりネルギガンテに寵愛されたい。そっちの方がハードル高いのかもしれない。

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