自分は一次小説と二次小説を30000文字ずつ代わり替わりに書いてるんだけれど、このヴァルハザク編に関してはその30000文字の内の5000文字を毎回これに費やす形になるかと。
まあ、要するに。
2ヶ月に1話くらいのかなりのスローペースになります。
他に色々書きたいものもあるので(その例がこの前書いた、ネルギガンテを有性生殖させてしまった反省から書いたネルギガンテTFものだったり)。
瘴気の谷。
陸珊瑚の台地の生命達が時に終わりを迎える地。それはこの地に住まう生物達の主な栄養源として消費され、またそれを前提としてここの生態系は成り立っている。
最近の異変でか、外部から来たであろう竜も幾つか見受けられたが、その中でもこの地に留まり続けた竜は一匹だけだった。
きっと世界中でも特異な部類に入るこの環境を好めるのは、竜種の中でも少ないのだろう。
しかしそんな、いつ来ても鼻が曲がる程の腐臭に覆われ、またヴァルハザクと共生する瘴気が常に霧のように漂っているこの地には今、異変が起きていた。
*****
子分を数多に連れて、半ば我が物顔で瘴気の谷を歩いていたドスギルオスは子分諸共ディノバルド亜種に一刀両断された。
狩人や研究者達にこやし弾をぶつけられまくっていたオドガロンは、陸珊瑚の台地で発見されたオドガロン亜種に屠られ、生まれ育った地に堕とされた。
好き勝手に瘴気の谷中をごろごろ転がっていたラドバルギンはティガレックスとかち合い、首を噛み千切られた後に不味かったのか吐き捨てられた。
そんな事でここ最近はとても静かになった瘴気の谷を、カシワは歩いていた。何重にも布を重ねられたマスクを着けて、落ち着いた足取りでゆっくりと。
ヴァルハザクは相変わらず姿を見せない。ティガレックスは瘴気の谷を気に入らなかったようで去っていき、今は時折ディノバルドの亜種が自分を鍛えている、鋭い金属音が聞こえる程度だ。
その尻尾に纏われた硫晶を以て敵の鱗や防具を腐食させた後に自らその硫晶を研ぎ払い、通常種よりも数段鋭い鏡面のように輝く刃で命を断つ。
今でも陸珊瑚の台地に残るオドガロン亜種と瘴気の谷に残るディノバルド亜種に対しては、初めて確認された竜種である事から討伐よりも観察に重きを置かれていた。
強烈な龍属性を操るオドガロン亜種はきっと、イビルジョーやジンオウガ亜種のように雷属性を苦手とするように思える。現に雲が厚く、雷の音がゴロゴロと鳴る日には姿を見せていなかった。姿を現した理由としてはここ最近起きている異変も原因だろうが、その雷を自由自在に操るキリンが居なくなった事もその一つかもしれない、と考察されている。
そしてディノバルド亜種は原種よりも鋭い刃を持つその代償として耐久性を落としているように見えた。丹念な手入れを欠かさない刃を覆うように生える硫晶は、鞘の役割も満たしているのかもしれない、と暫くの間観察し続けているカシワは想像していた。
瘴気の谷の中で狩人や研究者達が行動出来る地は、その全てと言う訳ではない。ダラ・アマデュラと思わしき巨大な古龍の骨を支えとする安定した場所だけだ。酸の地下水脈のその先も、竜達がきっとより数多に暮らしているであろう死肉の山の先も、人が足を踏み入れるには厳し過ぎる環境だ。
だから、このディノバルド亜種しか居ない今のこの地の現状も長くは続かないだろうとカシワは踏んでいた。
地下へと歩いていくと、そのディノバルド亜種の鍛錬の後が様々な場所に見受けられる。叩き付けられ、死肉が弾け飛んだ痕跡。噛み研いで削ぎ落された硫晶の破片。一つを手に取ってサンプルに持ち帰る事にした。そして、壁や地面に刻まれた幾つかの尾の痕跡。
硫晶を纏った状態は大剣であり、それを削ぎ落せば太刀になる。原種が刃を赤熱化させる事でより攻撃を苛烈にするのに対して、亜種はまるっきり攻撃のスタイルが変わる形だ。大剣のような豪快な叩き伏せ、薙ぎ払いから、太刀のような鋭い突き、切り上げ、大回転斬りと。そしてそれらを理解し、十全に使いこなしている。
加えて自身の現状に己惚れる事もなく鍛錬は毎日欠かしていないのもあって、他の竜種が来たとしてもそう簡単には今の玉座を譲る事はないだろう。
ただ、その強さへの渇望がどこから来るのか、カシワには分からなかった。
それが竜種と言うものなのかとも思いながらも痕跡を手でなぞると、まだ真新しい。
警戒を深めて辺りを見回したカシワは、そこで気付いた。
辺りを見回し、マスクを外す。
相変わらず鼻が曲がるような腐臭だ。顔を顰めるが、それだけだった。
「……ニャァ?」
瘴気がいつもと比べてとても薄い。酸の雨が降っている訳でもないのに。
この瘴気の谷の主、瘴気を操る能力を持つ古龍であるヴァルハザクはここから去っても、瘴気はそのままあり続けた。
じゃあ何で今、瘴気は薄くなっている? ヴァルハザクがここに戻って来なかったから? そうだとしても急過ぎる。昨日までは何の変化も無かった。
風が吹き乱れた訳でもない。居るだけで多大な影響を及ぼすような別の古龍が来た訳でもない。
……ヴァルハザクが更に遠くどこかへと去って行った?
そんな予想が立ち、カシワはどこか嫌な予感がした。
調査を切り上げ、すぐに引き返した。
*****
古代樹の森の頂上。
見晴らしも良く、眩しく温かい太陽の光も、優しい月の明かりも存分に浴びられる。
狩人の拠点が近くにあるのと、そこに圧倒的過ぎる力を持つ古龍が時々やって来る事はあってもそれぞれはこちらから手を出さない限り無害な存在だ。他に脅威となる竜種は何も居ない。
子育てには、ディアブロスが居る大蟻塚の荒地よりは遥かに理想的な環境だった。
ネルギガンテから逃げ、キリンからも逃げて大蟻塚の荒地にやって来たリオレウス亜種の番はしかし、すぐ近くにあるその場所に原種が縄張りを張っているのに手を出せなかった。
リオレイアは大した個体ではないが、問題はリオレウスだ。
個体の強さ自体はそう亜種のリオレウスと変わらないだろう。しかし、いつ様子を見に行ってもそれに気付かれていた。
また、狩りは常に一撃で終わらせていた。獲物に気付かれる事など一度たりとも無い。アプノトスが背中から圧し潰され首を折られるまでの手際は淀みなく、巣に持ち帰るまでに血の一滴も垂れない。
そんな様子に、亜種の番が原種の番に手を出さない事を決めるのには、時間が必要な事ではなかった。
より良い環境の為という目的に対してはリスクが強過ぎる。確かに番としての合計の戦闘力はこちらの方が上だとしても、最終的に勝利するのはこちらだとしても、一生治らない痛手を負わせられる、どちらかは確実に仕留められてしまうだろうと言うような予想が湧いて消せない相手だった。
そして、原種のリオレウスもそんな目で見られていた事は勿論分かっており。
互いに直接手を出し合う事は無くとも、それぞれがそれぞれを監視し続ける、予断は許されない関係となっていた。
その父親であるリオレウス達は今、連日苦い顔を隠していなかった。
無事に子供達を巣立たせたのは良いものの、その殆どがあろう事か一足先に巣立って行った希少種と同様に向かいの子供達と番っていったのだ。
原種、亜種、希少種と合計三組が出来上がった。
希少種の番はもう遥か遠くに自分達の縄張りを持ったようで、けれど時折色んな場所に顔を見せている。
そして、原種と亜種の番はまだそんな遠くに行きはせず、見晴らしの良い岬で甘い夜を過ごす事もあれば、大蟻塚の荒地の高台で仲睦まじくアプケロスを食べる事もあった。
そんな様子に対して、特に父親達は殺気を込めて睨みつける事もあったが、親と同等の肉体を持つに至ったとは言え、まだそんな強くもない子供達はそれに対して厄介者を見るかのような目をしてから逃げるだけだった。
父親達は納得出来ない表情を浮かべながら、しかしどこにも鬱憤晴らしをする相手は居ない。
古代樹の森、丁度良いようなアンジャナフはイヴェルカーナに氷漬けにされて死んだ。現れたナルガクルガは巣立つ直前の子供に襲い掛かった後にリオレウスの逆鱗に触れて殺され、巣立ち前の馳走と成り果てた。
大蟻塚の荒地、現れたディノバルドは荒地で喧しい音を立てながら縄張りを主張していれば、ディアブロスの番の怒りに触れて過去のボルボロス以上に無残な最期を遂げた。
それぞれの地で他の弱い竜種はもう姿を現さない。ストレスは溜まっていく一方だ。
かと言って虎視眈々と縄張りを狙っていた、狙われていた相手と友好を結ぶなど以ての外だ。
結局、父親達はアプノトスやアプケロスに八つ当たりをする程度しか出来る事もなかった。
そんな様子は竜であれども親がどうこうしたところで、子の恋情までをも曲げる事など出来やしないのだろうという事を教えられているようで、傍から見れば多少なりとも笑いが出て来る。
当のリオレウス達にしては溜まったものではないだろうが。
また、子育てを終えるまでの観察、調査は編纂書として纏められ、既に現大陸に送ってある。イヴェルカーナという新種の古龍の襲来、それを含めて新大陸の各地で起こる異変などの不測の事態はあったものの、龍脈溢れる新大陸の影響を現大陸と比較するものとしてはこれに勝るものは無いだろうと思えていた。
その各地で暴れていたイヴェルカーナを脱皮の付き添いという目的の為に大人しくさせたクシャルダオラは、その脱皮を終えてからは随分と機嫌が良さそうに各地を飛び回っていた。
そのクシャルダオラの機嫌取りの為にセリエナへは行かずアステラに留まっているヒノキは、その日も訪れたクシャルダオラの前で絵を描いていた。
この頃は、描くものはそのクシャルダオラではない事の方が多い。各地の様子を見聞きした事やら、時にアステラの日常を描く事も多かった。
今日は、いがみ合っている父親のリオレウス達を傍に、巣立たせた子供達が番っていく様子を描いていた。
描き終えてクシャルダオラにそれを渡すと、読み終えた後でどうしてかそのリオレウス達に向かって羨ましそうな目を向けていた。
……もしかすると、生涯独身……いや、更にもしかすると童貞だったりするんだろうか。
そんな不遜極まりない想像は顔に出ない内に頭から消しておくとして。
その古代樹の森の方を眺めていたクシャルダオラが、ふと何かに気付いたかのように動きを止めて、目を細めた。
最近見つかった渡りの凍て地を含めて、この地で誰よりも強いクシャルダオラが気にする事柄という時点で不安になる。
ここに居れば自分は安心な事は間違いないが、と思いながらも、そんなクシャルダオラが気にするような事柄にヒノキは思い当たる事はない。
ネルギガンテの子はある程度成長した後に忽然と姿を消してしまったが、まだ流石に成体にはなっていないだろう。
ナナ・テスカトリは龍結晶の地の奥地に引き籠って未だに一度たりとも姿を見せていない。
イヴェルカーナも、クシャルダオラに大人しくさせられてからは活動は自粛している。更に強くなりつつあるマハワには敵わない事を理解してしまった事もあるだろうが。
そうとなると、新しい竜か古龍でも古代樹の森に現れたか? クシャルダオラが気にする程となると、古龍だろう。
新しくネルギガンテでも来た? 新しくイヴェルカーナでも来た? それともまだ見ぬ新しい古龍?
何にせよ大変な事になりそうだと思いながらも、それ以上の規格外が目の前に居るからか、ヒノキ自身が驚く程に余り緊張は抱く事はなかった。
するとクシャルダオラが軽く風を操り、宙を舞っていた何か白いものをヒノキの目の前まで運んだ。
手に取ると、それはある種の草木が風に乗せて種を遠くに飛ばすものだった。
「……綿毛?」
それだけならば、大して気にする事ではない。ただ、それは薄汚れているかのような茶色さを纏っており。
突いて見れば、それが埃のように散った。
クシャルダオラ程の古龍が気にする物である、という前提からしてその正体は一つしか思い浮かばなかった。
これは、瘴気だ。そしてそれを操る存在と言えば。
「…………ヴァルハザク?」
何故、ここに?
ヒノキがクシャルダオラの方に顔を戻せば、自身を見ている。
アステラに報告に行く素振りをしても特に何もしないのを見て、ヒノキはアステラへと走った。
一度振り返れば、古代樹の森の中から小鳥等が慌ただしく飛び去って行くのが見えた。
あんまり描写されてない竜達:
アンジャナフ:
イヴェルカーナに理不尽に殺害される。
ナルガクルガ:
リオレウスの子供に手を出した事によってリオレウスに殺害される。
死体は子供達の巣立ち前のご馳走に。
他リオレウス除く古代樹の森の竜達:
子育て中のリオ夫婦が居る場所なんか居られるか!
ディノバルド:
ディアブロスの番に殺害される。
上で粋がっていたら、雄に地下へと落とされて待機していた雌の角にそのまま貫かれて致命傷。
そこからは息の根が止まっても暫くボコボコにされていた程。
死体は食べないので廃棄、調査団が回収。
ディアブロス:
もうそろそろ子育て完了。場所が場所なので調査はあんまり出来てない。
オドガロン:
原作ムービー通り。
レイギエナ:
多分渡りの凍て地でリア獣してる。
ドスギルオス:
原作ムービー通りに死亡。
ラドバルギン:
大体原作ムービー通りに死亡。
ただ、痕跡がタールのような、とか形容されてるし、絶対ラドバルギンって不味いと思う。加えて言うと、寒冷地にポポを求めて遠出までして来るティガレックスがそんな不味い肉や腐ってるような死肉を食って満足するようには思えない。
ティガレックス:
最終的に渡りの凍て地にポポを求めて上陸する。
古龍達:
ネルギガンテの子:
導きの地で修行中。
ナナ・テスカトリ:
龍結晶の地の奥地でずっと喪に服している。
イヴェルカーナ:
原作から結構ずれて生存。大人しくなってる。
クシャルダオラ:
元気。因みに童貞。
加えられた設定って訳じゃなくて、元から。
やけに気性が穏やかな理由が、自分がやって来た事が何かを壊していただけで作る事を何もして来なかったから、という事に気付いたからという裏設定。
今更子作りするのも遅すぎるし、けれどこれからはこれ以上何かを出来るだけ壊さないようにしよう、って感じの意志が最初から。
BGMの打楽器
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イヴェルカーナの乗り状態の鐘
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ジンオウガの乗り状態のドラム
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アルバトリオンのティンパニ
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テオ・テスカトルの最初
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ナルガクルガの乗り状態のテンテケテケテケ