古龍を描く狩人   作:ムラムリ

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Rise発売までに終わりませんね!
いや、これに集中すれば終わるだろうけど、もう一つ並行で投稿してるので……。


死を纏うヴァルハザク 3

 銀火竜と金火竜。古龍に匹敵する力を持つ火竜の希少種の番は、意外にも目立った動き――調査団が討伐を考えるような横暴をする事はしていなかった。

 親と同等の大きさにまで成長しても、また親元から離れて龍結晶の地に縄張りを持っても(ガジャブー達はまた踊り場を奪われて文句タラタラだったが)、その力を無暗矢鱈に誇示するような事はしていなかった。

 強いて、独身の研究者が時々涙目になって帰って来るくらいにイチャついている程度で。

 強大な力を持つ竜や古龍というのは万能感や独占欲に溺れて何かと目に付きやすいものだが、そうならなかった理由として、その二匹が穏やかな気質であったと言う事柄を当て嵌めるには根拠が薄い。

 それよりかは、歴戦王と呼称すべきクシャルダオラとテオ・テスカトルを目にしている、という事柄の方が適していた。

 番として力を合わせても全く歯が立たない存在を知っている。その事実は、自らの行いを諫める理由としては十分だろう。

 そしてその番は時々、新大陸の様々な場所を訪れている。

 自分達の存在を誇示する為と言うよりかは新婚旅行のような気楽さで、そんな様子はやはり見る者からすると心に来るものがあったりもする。

 勿論、傍若無人に振る舞われるよりは遥かにマシなのだが、討伐して欲しいと密に願う人も少なからず居る程でもあった。

 

*****

 

 ヒノキ達は計三体のリオレウス、リオレイアが文字通り無惨な姿となって死んでいるのを発見した。

 瘴気に塗れて灰色に干からびた肉体。原型が殆ど残っているのが逆に惨たらしく、またその肉体は踏みつければボロボロと砕け散りそうな程に何もかもを奪い取られていた。

 他にこの地に住むトビカガチやプケプケ、ドスジャグラス等の死体は見つかっていない。

 彼等は巣立ったばかりのこの火竜達と違って、自らが弱者である事を自覚している。どこか遠くに逃げているのだろう。

 本格的に自分達での討伐をしなければいけないのだろうと覚悟を固めようとした時、リオレウスの咆哮が聞こえた。

 聞こえた方角は、ヴァルハザクが歩いて行った方。

 そしてその咆哮は巣立ちしたばかりの火竜のような、あどけなさの残るものではない。この新大陸で長らく生き延び、子を為してきた、その強者足り得る所以を誇示する咆哮だ。

 続いて返すかのようにヴァルハザクの咆哮が聞こえてくる。

 半ば信じられない事だが、火竜の親は古龍であるヴァルハザクに喧嘩を売ったらしい。

 子を殺されたから? それとも古代樹の森を守る為? 真意として思い浮かぶそれらは、そんな無謀をするにはどれも適していないように思えたが、とにかくその場所へと急ぐ事にした。

 

 走って行けば、もう既に他の狩人達が近くで身を潜めていた。

 ヴァルハザクと戦っているのは火竜と蒼火竜の二匹だった。殺気を向け合う程に仲の悪いはずの二匹が共闘しているのに驚くが、起きた事柄を伝えられてある程度は納得する。

 子が殺された事はともかく、それぞれの番まで瀕死に追いやられたようだった。

 それに……と、ヒノキは口には出さなかったが、実体験からの推測があった。

 古龍の中でもとびきりの強者であるクシャルダオラが良く訪れるせいで、ヴァルハザクという古龍が自分達でも立ち向かえる存在だと思えてしまったのだろう。

 ヒノキの場合、その結果は死にかけた。

 火竜達の場合はどうだろう? 蒼火竜はともかく、火竜の観察眼は平均と比べてもかなり優れている。普通では敵わない相手に策略を立てる頭もある。

 少なくともそう簡単にはやられないと思うが、それでも相手は変異を遂げてより凶悪になった古龍だ。マハワ達が来るまでの時間稼ぎまでは出来ようとも、倒せるとまでは思えなかった。

 実際、火球をまともに受けようとも、幾ら毒の滴る爪で切り裂かれようとも、ヴァルハザクは平然としていた。

 そんな様子にヒノキは、この場から離れる。

「何をするんだ?」

 疑問に思った狩人にヒノキは答えた。

「……遠くから少しでも手助けしようかと思ってな」

 そう言って、しなる枝を選んで切り、その両端に持っていた糸を縛り付けた。簡単な弓だ。それからもう一本、細い枝を適当に削いで矢にする。

 そして大きめな葉に持っていたウチケシの実を包み込み、それを矢の先に取り付けた。

 共闘までをするつもりは無いが、せめてもの支援だ。

 準備が出来た時、ヴァルハザクが咆哮をした。

「ギュアアアアアッ!!」

 それは撒き散らした瘴気を我が身に戻す命令でもあった。火竜と蒼火竜の肉体からも、染み込んでいた瘴気が僅かながらに浮き上がり、戻っていく。

 その分だけ体力が削られたようで、火竜と蒼火竜は苦い顔をした。

 しかし、瘴気を戻したという事はその分だけ体力を削る事が出来たとも取れるのではないだろうか?

 意外と拮抗しているのかもしれない、そう思ったがしかし、ヴァルハザクの全身の胞子嚢が不気味にボコボコと活性化し始めた。

 見るからに危険な行動、狩人の誰もが見た事も聞いた事も無い行動。その異質さは火竜達にとっても同様だったようで、強く距離を取り、すぐにでも飛べるように脚に力を込めた。

 ヴァルハザクはそして翼を広げ、まるで宙に浮くかのような緩やかな動きで跳び上がった。

 次の瞬間、その全身の胞子嚢が弾けて飛んだ。

 それは、テオ・テスカトルのスーパーノヴァとは比べ物にならない程の広範囲。防御、回避に徹しようとしていた火竜達の背後にまでも、また、隠れていた狩人達をも包んでしまう。そして、その瘴気の濃さは濃霧のように目の前さえも霞む程だった。

 火竜も蒼火竜も飛び上がった時にはもう遅く、その濃い瘴気を全身に受けてしまう。また数多に飛び散ったその瘴気の塊を、蒼火竜は腹に、翼に身に受けてしまった。

「ゴホッ、ゲボォッ」

「カヒュッ、コヒュッ……」

 だが、ヴァルハザクは火竜達への追撃よりも、唐突に聞こえて来た周りの狩人達の強い咳に驚いた。すぅ、と呼吸を溜めたその矛先は、瘴気をまともに受けたとは言え、未だ自身から目を離さず戦意を失わない火竜達よりも、行動さえままならなくなった狩人達へと向けられる。

 狩人よりも遥かに巨大なその肉体だ、口からでなくとも全身を侵食していくその瘴気は瞬く間に体力を絞り尽くすだろう。

 パンッ。

 が、何か妙な音が聞こえた。だが、何も起きない。まあ良い、とヴァルハザクはブレスを横薙ぎに放つ。辛うじて木や岩の陰に隠れ、直撃を避けた狩人達はウチケシの実をどうにか口に含んだところだった。

 体内の瘴気を追い払う事は出来ても、この場に留まる瘴気は口を閉じていようともありとあらゆる隙間から体に染み込んでいく。

 秘薬を噛み砕く。その時には再び瘴気が体を蝕んでいる。武器を構える事は愚か、立ち上がって走る事すらままならない。

 ヴァルハザクが悠然とやって来る。

 結局、ヴァルハザクは戯れていただけだったのだ。殺される。火竜達も敵わな……。

 そんな余裕を見せるヴァルハザクの横顔に、蒼火竜の蹴りが飛んできた。

「ギョアッ!?」

 バリュ、ボリュッ。口を動かしている。

 ヒノキが飛ばした数多のウチケシの実を噛み砕きながら、火竜達は反撃に出ていた。蒼火竜はそのまま頭を鷲掴みにして地面へと叩き付ける。振り解かれる前に火竜がその首を踏みつける。火竜二匹で首を捩じ折ろうとするが、古龍の膂力はそんな事を容易には許さない。

 そして、ヴァルハザクは勿論そのままで居る訳でもない。

「ギュアアアッ!!」

 瘴気を戻す命令だ。撒かれた瘴気が一気にヴァルハザクへと戻っていく。それは頭を、首を掴んでいる火竜達を通り過ぎながら、侵食しながらヴァルハザクへと到達する。

 僅かな時間ではあるが火竜は更に濃い瘴気に晒され、口内に含んでいたウチケシの実は瞬く間に無くなる。頭を、首を掴んでいる脚から力が抜け、瞬く間に灰色に染まっていく。

 溜まらず飛び退くが、着地すれば、そのままがくんと膝が折れた。

 奪われた体力はかなりのものだ。目に見える傷は一つも無いと言うのに、体は疲労を、空腹を訴えて始めていた。そして狩人を逃し、挙句の果てに火竜達に一瞬でも命の危機を感じさせられたヴァルハザクは強い怒りと共に再び吼えた。

 瞬く間に再生、活性化した胞子嚢から全身に強く瘴気を纏う。加えて瘴気のブレス、火竜達は避けるが、蒼火竜はそこから攻勢に出る事に躊躇いを見せていた。

 それに火竜も気付いた。

 蒼火竜は口をだらりと開けて、そこから涎が垂れていくのを止められない。ブレスを避けるのだってもうやっとだ。先程の被弾が、火竜よりも強い疲労を覚えさせていた。

 これ以上の体力の消耗は、致命的なヴァルハザクの攻撃を喰らう危険性が遥かに高まる。

 そのヴァルハザクを、猛毒滴る爪で幾ら切り裂いた事だろうか? 火球を何度ぶち当てただろうか? それら全ての外傷は全く見当たらず、今も尚平然とし続けている。

 絶望しそうだった。どのようにしてこんな古龍に勝てば良いのか分からない。そんな後ろ向きな考えが過る。

 だが、それも一瞬。

 火竜に戦力として不安だと見做された目が腹立たしい。それ以上に、あの炎王龍や鋼龍程の絶対的な力を持っていないのにも関わらず、こうも全てを我が物にしようと傲慢に振る舞う古龍が腹立たしい。

「ガアアアッ!!」

 蒼火竜は吼えた。それを見て、火竜も前を向き直した。

 

*****

 

 金火竜と銀火竜は、久々に古代樹の森の方にまでやって来ていた。

 強い理由があった訳ではない。単純に行きたかったからという気分の問題であった。

 そして、追い出した親が何をして来ようとも、もうこの肉体が親よりも優れたものになりつつある事を理解していた。

 ただ生きているだけで、懸命に自分達を育ててくれた親をも追い抜いてしまった事には思うところが無い訳では無かったが、別にそういう風に生まれたのだからと、強く何かを思う事も無かった。

 それに何よりも、番と共に暮らす事は何よりも幸福であった。

 要するに、呑気だった。

 そんな番は、けれど妙な靄に覆われつつある古代樹の森に、警戒を始める。

 何だろうと目を凝らしてみれば、その靄はどこかで見たような気もする。そうだ、あの……普通の草木が全く生えていない、海の中の風景がそのまま地上に出て来たような場所。その近くの谷から噴き出してきていた靄と同じだった。

 あの谷からは濃厚な死の臭いがしていた。

 辺りを窺いながら飛んで行けば、狩人達の拠点はいつもよりせわしなく、またクシャルダオラは森の中をじっと眺めている。

 あのお気に入りの狩人は共には居ないようだが。

 そしてその森はもう、明らかに弱り始めていた。木々は萎れ、生き物の気配は微塵も無い。あの場所で感じたような死の臭いまでは感じられないが、このまま放っていたらきっとあの谷底と同じようになるのだろうと思えた。

 古龍が関わっているのだろうか? どこぞの古龍がこの地を我が物にしようとしている?

 少なくとも、好ましい事じゃない。

 親や兄弟達はどうしているのだろう? 巣立ちした身ではあるが、流石に皆死んでいたなどという事にはなっていて欲しくない。

 そんな時、聞き慣れた咆哮が耳に届いて来た。

 目を向けたその先では、自分達を会わせまいとしていたそれぞれの父親が、見た事も無い古龍に挑んでいた。




書いていたら死を纏うヴァルハザクは原作より強くなってしまいました。
瘴気を散らした時の影響が、
・スリップダメージが甚大で秘薬噛み砕いても攻撃する余裕がない
・スタミナを枯渇させられる
という。

ただ、ヴァルハザクって不利相性多そうなんだよな、とも。
ただの竜でもディアブロス、ディノバルド、ブラキディオス辺りのとりわけ強力な一撃を持つモンスターは普通に勝ちそう。
特に爆ぜり猛るブラキディオスなんて、クシャルダオラやテオ・テスカトルとかでも普通に勝ちそう。

結局、ヴァルハザクの強さはその瘴気の特殊性が大半で、物理的な攻撃力や敏捷性が余り無いからなー。

ジンタマタマタマジンジン

  • ジン♂=>タマ♀
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