とあるゲームと作品に多大な影響を受けています。
1発ネタのため続くかどうかは未定。
「なあ、一緒に冒険に来てくれないか?」
ギルドで依頼を選んでいると声をかけらた。
男の首にかけられている認識票を見るに、どうやら僕と同じ駆け出しらしい。
「分かった、参加させてもらうよ」
「良かった!急ぎの依頼があるんだけど、人手が足りなくてさ」
「急ぎの依頼?」
「ゴブリン退治さ!奴ら、村を襲って女の子まで攫ったみたいでさ。早く助けてあげないとだろう?ほら、こっちに来て!仲間を紹介するよ」
そうして彼ーー剣士から紹介されたのは武術家、魔術師の2人。
武術家は武術を教えてくれたお父さんを尊敬していて、魔術師は学院で学んだ魔術を誇りに思っているらしい。
彼女たちも駆け出しのようで、なるほど、ゴブリン退治というのも僕たちの身の丈にあった依頼だろう。
「戦士です。同じく駆け出しだけどよろしく」
「よし!これでやっと冒険に出られるな!」
「ちょっと、あまりはしゃがないでよ」
「まあまあ、いざとなったら私がなんとかするから」
どうやら、剣士たちはとても仲がいいみたいだ。
今はちょっと輪の中に入りづらいけど、僕も彼らと親しくなれたらなと思った。
「こんなんだけど、よろしくね」
「ーーえ、あ。よ、よろしく」
にっこりと微笑んだ武術家に、何故か僕はどぎまぎとして、おかしな返事をしてしまった。
「戦士やめとけ、こいつはこう見えて力くそ強いゴrーー」
「ん?」
「なんでもありません」
挨拶もほどほどに、僕たちはゴブリンの根城と思われる洞窟に来ていた。
女の子が拐われているというのもあって、スピードを第一に考えて準備も最低限だ。
でも相手は最弱で有名なゴブリン。きっと大丈夫だろう。
洞窟を進む。
剣士を先頭に、僕は最後尾だ。
洞窟内は陽の光が届かないので、僕が常備しているそう大きくはない松明1本では心もとない明るさだ。
「う……ちょっと怖いな」
「はあ?ここまで来て怖気付いたの?」
「お、怖気付いてはいないよ!」
「はは、大丈夫だよ。ゴブリンなら村で追い払ったことがあるしさ!」
頼りない炎の灯りの心細さから僕が弱音を吐くと、魔術師が煽るように挑発して来た。
でもそのおかげでさっきまでの心細さはどこかに行っていた。
実際にゴブリンとの交戦経験がある剣士が居てくれるのも心強い。
それからは会話らしい会話もなく着々と進んでいく。
「待て!」
剣士が声をあげ発見した何かに駆け寄る。
松明を近づけると、そこには骨で出来た案山子のようなものがあった。
「なんだろうこれ……」
「分からない……けど、そろそろゴブリンに遭遇してもおかしくない。気をつけて進もう」
「そうだね、分かった」
何か意味のあるものにも思えなかったので、剣士の言う通り先に進むことにした。
「……ん?」
「どうしたの?」
「いや、なんか物音が……」
僕の前を歩く魔術師に怪訝な顔をされるけど、たしかに音が聞こえて気がする。
「なんの音だろう……?」
立ち止まって一瞬考え込んでーー
【GOOO‼︎!】
ーーーーー
「なあ、一緒に冒険に来てくれないか?」
ギルドで依頼を選んでいると声をかけられた。
剣士の首の認識票を見るに、僕と同じ駆け出しらしい。
「ーーいつっ」
「どうした?」
「あ、いや、なんでもない」
剣士の顔を見た瞬間頭に痛みが走る。
ぶんぶんと頭を軽く振ってから気を取り直して、彼のパーティーに加わることにした。
剣士たち4人のパーティーは初めて会う僕でも分かるぐらいに仲が良く、いい人達であるのが伝わって来た。
どうやらゴブリン退治に向かうらしい。
女の子が拐われている事もあって、準備も最低限のものを迅速に用意してすぐに出発するらしい。
自己紹介もそこそこに、僕たちはゴブリンの根城である洞窟に来ていた。
松明の灯りだけでは心もとないほど洞窟内は暗く、気をつけていないと躓いてしまいそうだ。
「ちょっと、どうしたの?さっきから後ろばっか見て。まさか怖気付いて帰りたいとか言わないわよね?」
「いや……なんでもないよ」
洞窟に入ってから頻繁に後ろを確認する僕を不思議に思ったのか、魔術師が呆れたように嘆息する。
自分でも理由はわからないが、何故か無性に後ろが気になって仕方がない。
暗いところが苦手なわけでもないのにな……と首をひねりながら進んでいると、先頭を歩いていた剣士が骨で出来た案山子のようなものを見つけた。
「ーーッ!」
物珍しげに案山子の近くによって眺めている剣士たちを見ながら、僕は訳の分からない悪寒に襲われた。
そう、まるで僕の命を脅かすナニかがすぐそこまで迫っていると本能が警告するかのように。
「はは、まさかね……」
半ば無意識に後ろ振り向くとーー
【GOOOO!!!】
「うわあ!?」
突然目の前に現れたゴブリンの僕の頭を狙った攻撃を避ける。
反射で身体が咄嗟に動いたが、運が良かった。
「ゴブリン!!?」
「え!?どこから!!?」
突然現れたゴブリンに驚きながらも、剣士たちも獲物を抜きはなち、構え、戦闘態勢をとる。
僕も転がってゴブリンから離脱し、剣士たちの近くへ行く。
1匹だけかと思ったが、わらわらとその数は増え、見える範囲だけですでに5匹以上のゴブリンが確認できた。
「魔術師は詠唱をして待機、武術家は魔術師を守って!俺と戦士で数を減らす!」
「了解!」
「分かった!」
剣士の指示を聞き、剣士とともにゴブリンに攻撃を仕掛ける。
僕の武器は剣士と似たようななんの変哲も無いただの剣だが、それでもゴブリンは苦もなく切ることができた。
「せあ!」
剣士もゴブリンを切り裂いているようだ。
やはり、最弱の怪物と言われるだけあり弱い。
その身体は切りやすいし、人間のような戦闘技術も持ち合わせていないため苦戦する事もない。
「くっ!邪魔だ!」
脚に組み付かれて少し焦ったが力も弱く、これならば直ぐにでも切り抜けられそうだ。
「きゃあああああ!!!」
魔術師の悲鳴が洞窟に反響する。
どうして……ゴブリンの相手は僕と剣士が、撃ち漏らしたのは武術家が相手をしているはずなのに。
思わず後ろを見ると魔術師は他のゴブリンよりも数倍大きいゴブリンに頭を鷲掴みにされていた。
「魔術師!!……ガッ!!」
相手をしていたゴブリンを蹴り飛ばした武術家が魔術師を助けにホブゴブリンに近づくが、腕の一振りで壁に叩きつけられてしまう。
「魔術師!武術家!ちっくしょおおおお!!!」
それを見ていた剣士が怒りの形相を浮かべ斬りかかるが、
「ぐっ、なっ!!」
大上段に剣を振り上げたことにより洞窟の天井に剣があたり硬直してしまう。
「剣士!後ろ!!!」
「え、うわああああ!!」
僕はゴブリンを切り飛ばしながら必死に叫ぶが、反動で動けない剣士は背後から迫る凶刃に反応することが出来ず、そのまま地面に叩きつけられてしまう。
【GOOO‼︎】
「やめろおおお!!!」
剣士にまたがり獲物を執拗に叩きつけるゴブリンを水平に斬りはらう。
それでゴブリンは息絶えたが、それまで一方的にその凶刃を浴びせられた剣士は見るも無残な姿へと変わり果てていた。
「剣士!剣士ッ!!くそぉ……!!」
息はまだあるが、もう助からないということは素人の僕にでも分かってしまった。
せめて剣士の大切な仲間である武術家と魔術師だけでも絶対に助けてみせる。
そう覚悟を決めてみれば、
片足を捕まれ無造作に壁に叩きつけられる武術家。
服を剥がれお腹から血を流しゴブリンに群がられる魔術師。
「なにやってんだああああああ!!!!!!!」
その光景に怒りで視界が赤く染まった僕は雄叫びをあげて突進するが、
「ぐっ!!」
ゴブリンを殺すため大きくなぎ払った剣が洞窟の側壁にぶつかり、反動で動きを止めてしまう。
一瞬の硬直。
しかし、ここでは命を別つ一瞬だった。
「うっ!ぐ!が…!!」
動けない僕にゴブリンが襲いかかる。
為すすべもなくその凶刃を喰らい、倒れこむ僕にゴブリンどもが寄ってたかって獲物を振り下ろす。
最後に僕が見たのは武術家が裸に剥かれ洞窟の奥へ引き摺られていく姿だった。
ーーーーー
「なあ、一緒に冒険に来てくれないか?」
依頼を見ていると声をかけられた。
見たところ彼も駆け出しらしいし、パーティーメンバーを探しているのだろう。
「分かっーーーッ!!?」
了承しようとして、ゾクリ、と背筋を伝った悪寒に言葉が詰まる。
剣士の顔を見ていると心臓の鼓動が早まり、何故か脚が竦んだ。
「で、どう?俺たちと一緒に来ない?」
「ーーいや、ありがたい申し出だけど遠慮しておくよ」
「そっか、残念。機会があればよろしくな!」
剣士と別れ、ギルドを出る。
ちらりとみた剣士のパーティーは側から見てもお互いがお互いを信頼しているいいパーティーだった。
そこには朗らかな笑顔があって、きっといい人達なのだろう。
「なんでか知らないけど体調悪いみたいだし、今日はお休みにしようかな」
まだ冒険者になってからそんなに日が経ってはいないが、無理をすることもない。
今日は休みと決めた僕は宿に帰ることにした。
帰り道、駆け出しのような装備なのに銀色の認識票の変な人を見かけたが、宿に着く頃にはそんな事もすぐに忘れて、僕は休日を満喫した。
「ーーえ?」
翌日、ギルドに行く途中で荷馬車に乗った武術家を見かけた。
しかし、昨日の溌剌とした笑顔が嘘のように無表情で、その瞳には何の感情も映していないように見えた。
なにより、そこに剣士たちの姿はなかった。
「ま、待ってください!」
荷を引かせる馬にのる人に詰め寄る。
一瞬驚いた顔をしたが、僕の様子から只事じゃないと思ったのが、すぐに馬を止めてくれた。
ーーその話は、とてもじゃないが僕は受け止めきることが出来なかった。
剣士たちのパーティーはゴブリン退治に行って、武術家を残して全滅したらしい。
唯一生き残った武術家も、助け出された時にはゴブリンに陵辱され、心身ともに一生消えない傷を負ってしまった。
「少し、彼女と話をしてもいいですか……」
「お前さん、あの子の知り合いか。……そんなに時間があるわけじゃないから、手短にな。……辛いだろうけど、受け入れるしかないさ」
許可をもらって武術家の近くに座る。
周りには、彼女と同じように空虚を瞳に映した無言の少女たちがただ座り込んでいた。
「…………」
「…………」
話、と言ったけど、僕はどう声をかけたらいいのか分からなかった。
彼女たちが全滅したのは僕のせい……ではないだろう。
僕は駆け出しだし、僕がパーティーに加わったからといって劇的な変化が起こるわけじゃない。
僕はそこまで傲慢じゃない。でも無関係だと胸を張れるほど強くもなかった。
ただ、彼女とこのまま別れてはいけないという思いだけがあった。
彼女はよく笑い[お父さんから教わった武術を誇りに思っていて]ーーッ、ちらっと横目で見ただけだが彼らはとてもいいパーティーで[暖かい人たちだ]ッ!!
さっきから頭が痛い。思考が乱される。
「ーーぁ」
突然の頭痛に額を抑えていると、武術家が小さく声を出した。
その声は掠れていて弱弱しかったが、昨日遠巻きに聞いた武術家の声だと分かった僕は武術家の顔を見る。
「ーーぁ、ぁ」
無色だった瞳に次第に感情の色がつき始め、かた、かたと身体が僅かに震える。
流石に様子がおかしいと思った僕は、大丈夫かと声をかけようとしたが、
「ーーあんたが断ってなければ」
ーーその声は、武術家の声にかき消された。
叫んだわけじゃない。ただ、その声には彼女の絶望が詰まっていた。理不尽に対する嘆きがこめられていた。
彼女の瞳には大粒の涙とーー怒りが彩っていた。
「あんたが、来ていれば、剣士は死ななかったかもしれない。魔術師は、女として殺されて、命を散らせなかったかもしれない!私たちは、今日も冒険をしていたかもしれない!!」
「ーー」
「みんなで……!今も笑いあってたかもしれないのに!!!」
次第に強くなる声。震える声音に、僕は何も言えなかった。
具体的に、彼女が言っていることが分かるわけじゃない。ただ、筆舌にし難い絶望がそこにあったということだけは理解できた。
「……ごめん」
僕はその一言しか言えなかった。
心の片隅は僕のせいじゃないと叫んでいる。
でも、もしかしたら。あのとき僕がパーティーに参加していればこうはならなかったのかもしれないのだ。
そう思うと、僕自身負い目を感じないわけではなかった。
心の寄る辺、仲間を失った彼女が、僕を責めることでしか心を保てなくなっているということを理性が理解していた。
「ーーもう、行くよ。本当に……ごめん」
そういって彼女に背を向ける。
彼女の顔を見続けることができなかった。
そうして、立ち上がろうとしたとき、
「ーーひゅ」
ざく、と。
耳障りな音がしたと思えば、僕の喉から銀色の刃物が生えていた。
「ーーーー」
ーーなぜ、と、発声しようとするが声を出すことができず、それでも声を出そうとしてこぽっと口から血が垂れる。
後ろを振り向くことも叶わず、どさっとその場に倒れる。
「お前も死んで、剣士たちに謝れ!!ハハ、ハハハ!!アハハハハハハハハ!!!!」
朦朧とする視界の中で、狂ったように笑う武術家の声が聞こえた。
彼女の頬を伝う涙が僕の顔に落ちるのをはっきりと感じた。
ーー君には笑顔が似合うのに。
そんな場違いなことを考えながら、僕の意識は暗転した。
ーーーーー
「なあ、一緒に冒険に来てくれないか?」
「ッ!!」
「あ!おいッ!ちょっと!!」
「あはは、剣士ってば勧誘しにいったのに逃げられてるじゃん」
「俺なにかしたかな……?」
その顔を見て。その声を聞いて。その瞬間僕は走り出していた。
ギルドを飛び出る直前、笑う武術家を見て、
ーーやっぱり笑顔の方がいい。
なんでそんなことを思ったのかは分からない。
意味のわからない衝動に突き動かされている。
走る、走る、走る。
本能が訴えかける警鐘を無視して僕は一心不乱に走り続けた。
分からない。何もわからない。だけど。だけど!!!
走れと。悲劇を見過ごしてはいけないと。僕がやらなければならないと心が強く叫んでいた。
来たこともないはずの洞窟に飛び込み、常備している松明に火をつけて走り続ける。
そして趣味の悪い骨の案山子の横を通り過ぎーー僕は確信を持って背後から襲いかかるゴブリンを抜刀した剣で串刺しにした。
【GOOOO‼︎?】
ゴブリンが絶叫する。
完全に奇襲をしたと思ったところに、逆に奇襲を仕掛けられたのだ。
その顔には戸惑いと忿怒が浮かんでいる。
ゴブリンが集まって来る。どうやら骨の案山子の近くに横穴がありそこからやって来ているみたいだ。
恐怖はある。後悔もある。だが、それを上回る怒りと憎悪が心に吹き荒れている。
ゴブリンを殺せーーー!!!
松明を地面に置いた僕は剣を構え、威嚇するゴブリンに負けじと叫ぶ。
「1匹残らず殺してやる!!」
剣を構えて突っ込む。勢いのまま薙ぎ払いまずは1匹。
横から飛びかかって来るゴブリンを蹴り飛ばしとどめを刺そうとしたところで後ろから脚を刺され倒されーー
ーー背後から脚を狙って放たれた凶刃を跳躍して避ける。そしてそのままゴブリンの腕を踏みつけるように着地し、蹴り飛ばしたゴブリンにとどめを刺すために走り出すが、瞬間、左右から襲い来るゴブリンに気がつかずーー
ーーゴブリンの腕に着地し、剣を槍のように投げ蹴り飛ばしたゴブリンにとどめを刺す。踏みつけたことにより武器を取り落としたゴブリンから武器を奪い、左右から奇襲を仕掛けるゴブリンの片方を惨殺する。
「ぐっ!」
もう片方の攻撃は咄嗟にぬきはなった鞘で防ぎ、そのまま鞘で側頭部を渾身の力で打ち据える。
ふらついたゴブリンを斬り裂き完全に息の根を止めーー頭から叩きつけられた圧倒質量に僕の体はひしゃげーー
ーーゴブリンを斬り裂いた直後、極大の悪寒に着地を考えず横っ飛びに飛び込む。
瞬間、ドゴォン!と洞窟内を揺らす重音が響き、僕がいた場所には巨大な棍が叩きつけられていた。
【GOOOO…】
「ーーッ」
対面する圧倒的存在感。
普通のゴブリンの数倍の大きさを誇るそいつは、僕が入ってきた方とは逆側から数匹のゴブリンを連れて現れた。
数秒の対峙。先に動いたのは僕だった。
「ーーせあっ!!」
低い姿勢で彼我の距離を走り抜け、そのままアッパーのように武器を振り抜くが、それは簡単に棍に阻まれーー
ーー武器を振り抜くと見せかけ、側面に回り込む。
近くにいたゴブリンをついでに殴りつけ[狭い洞窟内を想定しているのかゴブリンの武器は短く、取り回しやすい]ホブゴブリンの脚を狙って武器を振るう。
斬れるか少し不安だったが、刃は問題なく通り狙い通り脚に突き刺さった。
しかし、それで怒り狂ったデタラメな動きに対応しきれずーー
ーー脚に武器を刺した直後、すぐさま飛び退く。しかし怒り狂ったホブゴブリンのデタラメな一撃を胴体に一撃貰ってしまい、飛び退いたことにより威力は殺したがそれでも骨が何本か折れた。お供のゴブリンも巻き添えで潰されて、動くものは僕とホブゴブリンのみになる。
飛ばされて、近くにあった自分の剣をゴブリンから抜き取り、構える。
血走った目でこちらを睨むホブゴブリンと視線がかち合う。
ーーこいつの存在が許せない。
ゴブリンの気持ちなんて分かるわけがないが、この一瞬僕とこいつの意思は皮肉にも共通していた。
「ああああああああ!!!!」
【GOOOO!!!!!】
突進。
下から掬い上げる僕の剣と上から叩きつけるホブゴブリンの棍が激突ーー
【GOO!!?】
する直前、ホブゴブリンの根は洞窟の天井にぶち当たりその軌道を止める。
硬直。一瞬の隙。
「らああああああッ!!!!」
僕はそのまま剣を振り抜き、腹から肩までを切り裂く。
ホブゴブリンは断末魔の絶叫を上げ、しかし、それでも最後まで僕を殺すと睨んでいたが、すぐに後ろに倒れる。
「はは……いってえ……」
ホブゴブリンが倒れたのを見て、思わず座り込んでしまう。
身体中が痛く、全力を超えてなお振り絞ったせいか、ちっとも力が入らない。
だから、僕は後ろで死んだふりをしていたゴブリンが静かに、憤怒を携えて起き上がろうとしていたことに気がつかずーー
「ーーしっ!」
【Gーー】
「大丈夫ですか!すごい怪我です……。待っててください、今治癒を」
「……ぁ」
僕を奇襲しようとしたゴブリンは、何者かによって蹴り飛ばされた。
もともと瀕死だったゴブリンはそれで力尽き、全体的に白い服を着た神官が僕に近づいてくる。
「うわ!ゴブリンの死体がいっぱい!でかいのもある!?」
「おかしいわね、私たち以外に依頼を受けている人は……」
「ーー」
松明を持ち近づいてくる2人をみて。
「キミ、すごいね」
そういってにっと笑う彼女をみて。
「ーーははは、来るのが遅いんだよ……」
護りたいものを護れた。そう、根拠のない、しかし万感の想いが胸中を満たして。
「……?ゴブリンはどこだ」
最後に、そんな声を聞いて僕は意識を手放した。
☆
「さて、今日はどうしようかな」
あれから数日後。
神官の癒しの奇跡のおかげか、不便なく動くことのできるようになった僕はギルドに来ていた。
依頼を受けずに勝手に洞窟に行ったことはめちゃくちゃ怒られはしたけど、取り敢えずなんやかんや冒険者は続けられるそうだ。
結局、あの洞窟にはまだゴブリンがいたそうだが、ゴブリンスレイヤーなる人が中心に根絶やしにしたそうだ。
聞けばその人は銀の冒険者だそうで、僕が洞窟に先乗りしたことは意味がなかったということらしい。
「でもまあ、いっか」
たとえ意味がないと言われようと、僕には何モノにも変えがたい意味があった。
今でもよくわからないけれど、僕は僕が成さねばならないことを成し遂げたのだと胸を張って言うことができる。
今日の空のように清々しい気持ちで、張り出されている依頼を物色していると、
「なあ、一緒に冒険に来てくれないか?」
声をかけられた。
男の首にかけられている認識票を見るに、どうやら自分と同じ駆け出しらしい。
「 ひとりで洞窟のゴブリン相手に大立ち回り!戦力十分!……というか、なんでかな。なんかあんたがパーティーにいた方がしっくり来る気がするんだよなあ」
うんうんとひとりで納得している剣士の後ろには、やれやれと肩をすくめる魔術師と、呆れたような武術家がいた。
「ん?」
僕が見ていることに気がついたのか、武術家は[いつかみせた]にっこりとした微笑みを浮かべた。
初めて見たはずなのに何故か懐かしくも感じるその笑みにどきどきしながら、僕は理由は分からないけど緩む頰をそのままに言った。
「分かった、参加させてもらうよ」