少女、姫島 朱乃を引き取り、ようやく彼女と仲良くなり始めた頃
一人の訪問者が我が家に訪れた。
「よう!ひさしぶりだな。ギルガメッシュ」
突然嵐のようにやって来た男。
名はアザゼル。
堕ちた天使達の親玉であり、コイツが天使だった頃からの知り合いである。
「一体何のようだ、アザゼル。下らん用件だったら殺すぞ?」
とりあえず家に招き入れて、居間のソファーに座り用件を聞く事にした俺。
「アンタは相変わらず俺にキツイなぁ。」
「当たり前だ。研究のためと言って、俺の財をしつこく貸してくれと言って来るお前が悪い」
そう、目の前の男は俺の財の事を知ると調べさせて欲しいだの宝を貸してくれだの
顔を合わせるたびにしつこく頼んでくるのだ。
初めはそれなりの態度で断っていたが途中からは扱いがぞんざいとなり今となっては
殺すとまで言うほどになってしまった。
これには少し離れた所で俺達を見ているロスヴァイセも意外なと言いたげな表情を見せている。
「いやいや、今日はその件で来たわけじゃねーんだよこれが……」
「ほう……」
この男にしては珍しい真面目な表情だ。
前に見たときは三大勢力による戦争の時だったか?
昔の事を思い出しながら、奴の用件とやらが口に出されるのを待つ。
「気づいてはいると思うが、あんたが保護している子供。
あの子はバラキエルの子供でな……」
「だからどうした?もしかして返せとでも言いに来たのか?」
朱乃が何かと人間のハーフだということは気づいていたが、まさか堕天使だったとは
思わなかった。
しかし、そんなことはたいした問題ではなく、一番気になることは朱乃の正体を
俺に教えた目の前のクソ野郎が何を言い出すのかだ。
「いや、逆だ。朱乃をよろしく頼む」
「はぁ?」
以外だ、アザゼルの奴が面倒ごとを言わない上に頭を下げるなんて……明日は雪でも降るのか?
「おい、何だその顔は……。そんなに俺が真面目だとおかしいか?」
「ああ、おかしいな。」
アザゼルは心外だと、いわんばかりに恨めしそうな視線を俺に向けて
聞いてくるがその視線を一切無視して奴の問いに即答する俺。
正直、真面目なアザゼルなんてアザゼルじゃないね。
「っち。アンタといい北のジジイ共といい、失礼な神ばっかりだぜ……。
まあ、俺がおかしいかおかしくないかの議題は今度にしてだ……今は朱乃についてなんだが、
この件に関しては俺とバラキエルに責任がある。
バラキエルも俺もアンタと居て、幸せそうにしている朱乃を無理に連れて行こうとか考えてはいねぇんだ。」
「責任……か」
「ああ。実は……」
ポツリ、ポツリと朱乃の身に起こった不幸を語り始めるアザゼル。
奴のひざの上に乗っている拳は己の不甲斐なさから来る怒りで強く握られ、爪で掌を切ったのか
掌から血を流して自分のズボンをゆっくりと赤く染めていく。
話の内容は人外と人間のハーフなら何所にでもありそうな不幸話。
突然、幸せな家族に不幸が訪れた……今もどこかで起こっていそうな話。
「くだらんな…」
「くだらないって……あんたな…」
話を最後まで聞いた俺は、素直に感想を口にした。
アザゼルの奴は俺の感想が不服だったのか俺を本気で睨んでいる。
めんどくせぇ。
「だってそうだろう?お前とバラキエルは朱乃の母親を死なせた罪悪感がつらいから逃げただけ
だ。はじめからちゃんと朱乃と向き合ってアイツが望む形で責任をとってやればアイツも家出なんて
せずバラキエルとの関係もここまで崩れなかっただろうよ。
…まあ、今となってはもう遅いがな。」
「……」
耳が痛いのか、黙って俺の話を聞いたアザゼルはまた来ると言った後、冥界へと帰っていった。
ったく、メンドクサイ奴だな……。
しかしバラキエルの娘か……。
昔出会った頃の、武人な堕天使と朱乃の姿を頭に思い浮かべるが容姿からは全く共通点が見つからない
つーか、あの筋肉男からあんな美少女が生まれてくるなんて想像ができねぇ。
朱乃は確実に母親似だな……。
そんなくだらない事を考えながら、今は外に遊びに行っている朱乃にアザゼルが来た事をどう話すか
頭を悩ませる俺だった。