長くなりそうだったので分割しました。
春爛漫……はもう過ぎ去りつつある今日この頃。満開だった桜も散り始め、季節は4月から5月へと移り始めているということだろう。
今年はお花見に行けなかったからなぁ。姉さんと家で桜餅食ったり、クラスの野郎共と独り身の男性教諭を巻き込んで、お祭り騒ぎはしたが。
それも花見じゃないのかって?確かに桜も満開だったし、俺個人としては桜の観賞が出来たから、まぁ満足はしてるのだが……他の方々は桜なんて気にもせず、花見と言う名のお祭り騒ぎ、宴会、魑魅魍魎、とにかく騒いで風情なんてあったもんじゃない。
楽しかったかと聞かれたら、なんだかんだで楽しめたけどさ。
一部の酔っ払った先生が「桜は散りゆく様の方が絵になるんじゃ!春風に乗って、桜吹雪と化す光景はもう格別!季節に春は訪れるってのに、なんで我輩に春は45年間一度も訪れまいんじゃぁ!!」と言い出して、モテない野郎どもと一緒に桜の木に乗り出した時はヤバかった。
俺や明久に鉄人といった、比較的まともなメンツで止めにかかったから良いものの……酒の力ってヤバイな。将来気をつけよう。
取りあえず、桜内先生(45歳独身)はその一人称を辞めることから始めましょう。
そんな嫌な事件はさておき、来年は姉さんと一緒にのんびりと桜を見れる時間が作れるといいんだが。
今からやれなくもないにせよ、桜もほとんど散ってるからなぁ。寒い地域ならまだ咲いているだろうが、そもそも多忙で見れなかったのに遠くに行く意味がわからんし、クッソ寒い中桜なんて見れないしなぁ。
現地で寒さに耐性があるならまだしも、俺らはそんなに強いわけじゃないしな。
うん。長々と語っちまったがまだまだ季節は春だということだ。
「甘い物が苦手なあなたにちょっぴりビターなチョコはいかがですかっ?」
「…………」
……さて、今日も客は来ないわけだが、何時来てもいいようにはしておくか。
「そ、その後はあまーいチョコアイドルなんかもいっしょに、ど、どうですかー?」
「……まだ春だもんなぁ」
「ちょっとちょっと!それはどういう意味なのかなっ?!私は普通だから!春の陽気に当てられてるわけじゃないからっ!」
さっきから妙なポーズを取ってアピールして来ていたのはチョコだった。
以前本人から聞いた話だと、チョコの通っている高校はこの店からそれなりに時間のかかる場所だったはず。
それなのに、貴重な学生の放課後を犠牲にしてまでよくもまぁ、飽きずにこんな廃れた店(喫茶店)に足を運んでくるな。
「テレるくらいなら、やらなきゃいいのに」
「うっ……だ、だってアイドルなんだし、これくらいはできないと」
腰に手を当て、後ろに尻を突き出してこちらを恥ずかしげに見上げてくる様は中々に扇情的だった。格好も制服姿であり、膝だけが結構短めのスカートを履いているのだ。階段登る時?軽く下から見上げただけで、中が見られてしまうんじゃ?
……ポーズよりもそっちを気にしないのか?
「それで?アイドルになった園田さんは何の用件で?用がなけりゃ、1000円以上の品を注文してからお帰りくださいませ」
「なんか私の対応が雑すぎない!?お客さんだよっ、一応!」
渋々とカウンターに座り、メニューを眺め始める。
チョコが注文するもんって、9割型チョコを使ったメニューを頼むんだよな。
作り手としては先を読めれて、楽になるからいいんだが。
「もうっ、せっかくアイドルになったって教えれたのに、もうちょっと反応してもいいんじゃないかなっ」
「唐突にやって来たと思ったら、謎ポーズ取り始めたんだもんなぁ。祝福よりも、ついに頭をやったのかと心配するわ」
「え、アレで心配してたの!?」
チョコがアイドルになったのを知ったのは昨日の夜。
私、アイドル始めました!とメッセが飛んできて、283プロの公式ホームページへのリンクが貼っつけられてきた。
おめでとうとなんの捻りもない月並みの返信をし、ホームページのアイドルリストを見たのだが……なんか見覚えのある顔が結構いたりした。
なんだろう。最近俺の周りにいた女性陣が次々とアイドルになってるんですが……それも同じプロダクションで。同時期に。どんな確率だよ。
「こうさ、アイドルになる前と今の私。ちょこっと変わったとことかないかな?チョコだけに!」
「自虐ネタに磨きがかかったんじゃないか?磨きすぎて、チョコが溶けるくらいに」
「自虐じゃないよ!?チョコアイドルとしての持ち味だよっ!チョコを全面的に勧めていくアイドルとして、色々とチョコを絡めた話に持っていきたいなーと思ってさ……じゃなくて!他にあるでしょ?見るからに変化してるとこがっ」
俺の回答では満足できないようで、チラッチラッとこっちに視線を向けつつ、横髪を弄る。
……何を言わせたいのかイマイチピンと来ないんだが。
見るからに変わったとこ……ねぇ。
注文を受けたチョコ餡蜜の作業をしつつ、チョコを見つめてみる。
パッチリとした目に身長と共にやや小さめの小顔。頭部に2つのお団子を結ったお団子ヘアーは彼女のチャームポイントと言うべきか、かなり似合っている。髪のセットだけでも女の子って時間取られるよな。姉さんもそうだし、忙しい朝なんて大変だよな。
頬周りはモチっとしてそうで、柔らかそうだ。たまに思ってたいたんだが、チョコ頬をつんつんと触って見たかったり。
女性の頬ってなんか柔らかそうじゃん?チョコはよく食べるとこを見るからなのか、他の人よりも触り心地が良さそうなんだよな。
スタイルは言わずもがな、背は同年代より低めなのだろうが、胸はパッと見かなりありそう。
顔の造形といい、スタイルといい、チョコの奴もかなりかわいい部類に入るんだろうな。
甘奈や甜花のかわいさとはまた別のかわいさがあるというか。
「そんなに見られると……さすがに照れちゃうなぁ」
俺の視線が気になり始めたのか、頬をかいてそわそわと居心地が悪そうにする。
……チョコがアイドルになれる程のルックスがあるのは認める。しかしだ、それで何か大きく変わったものがあるかと聞かれたら……
「ふむ……以前よりも…………肉付きが良くなりました?」
額に弾丸のような速度でチ○ルチョコが飛んできました。
「しんっじられない!女の子に向かってふ、ふと、太ったなんて!」
「太ったとは言ってない。肥えましたか?と聞いただけ」
「さっきと言ってる事違うしそっちの方がひどい!!」
さっき飛んできたチ○ルチョコは痛みと引き換えに美味しくいただきました。
怒りのチ○ルチョコを投擲したチョコ氏は腹の虫が治まらないご様子。本当の事とは言え、言っちゃいけなかったかねぇ。
女性に体重と年齢の話題はNGとはよく言うが……
まぁ、チョコ餡蜜食ってることだしそのうち落ち着くとは思うが。
「ま、そうカッカしなさんな。その餡蜜は俺からのお祝いってことで、支払いは俺持ちにするからさ」
「ホントっ?…………コホンッ。そんなことで、私のご機嫌を取れるとは思わないことです」
「なんならもう一品――――や、二品頼んでもいいぞ?」
「…………………数を増やそうとしても、その手には乗らないんだからっ」
今ちょっと揺れただろ。
しかし、普段ならばあっさりと陥落していたはずが、今回に限って通用しないと来た。
余程腹に据えかねているっぽい。気にはしてるってことか。
「なにさ、なにさ。ちょっとはかわいくなったーとか、アイドルっぽくなったねーとか言ってもいいじゃん……」
…………あ~。
なるほど。そういうことか。俺が材料を元場所に戻す為に、この場から少し離れたのを見計らい、チョコは俺に聞こえないようにボヤいたのだろうが、残念ながら聞こえてしまった。
難聴スキル持ちの主人公とは違うのだよ。ハーレム主人公とは。
……聞き取れたのはいいんだけど、どう反応すればいいんだ?
難聴持ち主人公ならば、ん?なんだって?と返せば→ヒロイン「な、なんでもないわよっ!」と言ってうやむやな感じで終わり、次のシーンに切り替わる。
ここだけ切り取ったら、めちゃくちゃ都合が良いよな。
……さて、背を向けているからチョコの表情は窺えないが、さぞ不機嫌そうにしているのだろう。
ここは包み隠さず素直に思った事を言ってみるか。
「チョコはかわいいぞ?」
「……うぇ?」
「ルックスだけのかわいさだけじゃなくて、女の子としての魅力か?美味しそうに食べてるとことか、見てるこっちまで嬉しくなるし、チョコの困り顔とか弄った時の反応の良さも見ていてなごむっつーか。チョコと話してるとこっちの警戒心が薄くなるし、コロコロと表情変わるし見てて飽きないなーとか」
「待って待って!き、聞いてるこっちが恥ずかしくなるから!」
思っていた事をそのまま矢継ぎ早に伝えていたら、顔を真っ赤にし両手をぶんぶんと振り、後ろを向かれてしまった。
そんなに羞恥心を煽るような事は言ってないはずなんだけど……
「不意打ちすぎぃ!あんな真っ直ぐな目であんな事言われたら、顔見れなくなっちゃうって。ピシッとした制服と相まって、破壊力がやばかったし……!チョコアイドルとあろうものがドロッドロに溶けちゃう……!」
だ、大丈夫か?頬に手を当て頭を降ったり、頭を抱えていたと思ったら、顔を上げてボーっとしだすし……後ろ姿だとはいえ、かなりシュールな光景だ。
正面からなんて、とてもじゃないがアイドルがしてはならない顔になってるんじゃなかろうか。
一通りトリップして、正気に戻ったとのか、こちらに向き直りコホンと片目を瞑って咳払いし、何処ぞのツンデレヒロインを彷彿とさせるようなポーズで
「よく聞こえなかったからもう一回言ってもらっていい?」
お前が難聴持ちかい。
「ん?なんだって?俺なんか言ったか?」
「言ったよ!すっごい嬉しい事言ってくれた…………気がする!確かめたいからもう一回お願い!」
「お客様。当店ではそういったサービスは提供しておりませんので……」
「さきっちょだけ!最初のとこだけでもいいから!」
「お帰りくだだいませ」
「戻りすぎ!?もっと先の方だよっ」
「大変お太りになられました?」
「さっきよりも表現が直球すぎてないかな!?」
ギャーギャーと身を乗り出して、もう一度言わせようとしてくるチョコ。
かわいいなんて、アイドルをやってりゃ言われ慣れるだろう
に。……これも口説いたことになるのだろうか?
や、そんなことはないよな。これはからかい半分なんだし。
なんてことを考えていたからなのか――――
「春くーん。お姉ちゃん休憩もらったから、一緒にお茶しな――――あら?ひょっとして、智代子ちゃん?」
「え、え?!千雪さん!?なんでこんなとこに?」
「あ、姉さん」
「え、うえええええぇぇぇぇ!?お姉さん!?春彦君のお姉さん?!オネエサンナンデ!?」
そういや二人ユニットは違えど、同じプロダクションなんだよな。顔見知りでもおかしくはないか。
俺と姉さんが姉弟だからって、チョコは驚きすぎ。
どっからそんな声出してんだ。
「なんでって言われてもなぁ。姉さんここで働いてる。俺、姉さんの弟。アーユーオーケー?」
「はーい。ご紹介に預かりましたー。桑山春彦君の姉の桑山千雪です♪」
「待って、ホント待って。色々とありすぎて頭がパンクしちゃいそうなんだけど」
ニコニコとノリノリな姉さんとは対象的に、俺と姉さんを交互に見たりして現実を受け入れられていない様子の智代子。
まぁ、俺と姉さんを知る人で、姉弟だって事を伝えるとだいたいこんな反応するから慣れてるっちゃ慣れてるけど。
……ん?なんて事言ってたら、こっちに登ってくる足音がまた……二人分っぽいし、今度は客か?
「ハル先輩こんにちはー!今日はホウコクしたいことがあってきましたっ!…………あれっ?ちょこ先輩に千雪さん?」
「へー、ここが果穂が言ってたとこか。結構イイカンジの雰囲気なんだな」
「果穂に樹里ちゃんまで!?ど、どうなっているの!?」
「果穂ちゃん、樹里ちゃんいらっしゃい。来てくれて嬉しいわ」
……先客の姿に首を傾げる果穂に、店内を見渡す見覚えはあるが接触したことのないアイドルに、完全にキャパオーバーと化し目を回しているチョコ。
姉さんは動じずに店員モードへと切り替わり、新たに来た二人を席に案内してるし。
……最近、アイドルの客しか来てない気がする。
桜内先生 体育教師。年齢=DT。筋肉モリモリゴツイお方。
最近は近辺の見回りよりも、婚活サイトの徘徊が多いらしい。
チョコ先輩 ホワイトデーのお返しは迷わず渡しました。
アイドルになってからは前よりもお腹周りを気にしている。
以前弟から、忍殺語を語られチョコも興味があれば是非読むといいと宣伝されて以来、ちょこちょことスレイヤー世界を覗いているらしい。
チ○ルチョコ きなこ餅味だった。
千雪さん 出てくる度に休憩と重なるだけで、サボっているわけではない。
春くん 自分は休憩中じゃなくても、姉に誘われたらホイホイと応じる。
喫茶店時の制服(バーテンダーっぽいアレ)は割と似合っているらしい。
果穂 天使。頑張って放クラをまとめようとしてるとことかマジ天使。千雪さんと弟が姉弟だって事を実は誰よりも先に知っていたりする。
最近は嬉しかった事を弟に話す事が楽しいらしい。
樹里ちゃん SS初登場。vocalの申し子。
まだちょっとツンツンしてる時期。ツッコミ常識人ポジションではない頃。果穂がちょっと気になる感じ。