のほほんとした話が好きな方は、読まない方がいいかもしれません。
いまさらですけど、原作の千雪さんの弟像とこのSSの弟って一致してる所が何一つない件。
本来の弟ってどんだけ純粋なんだろうと思うくらいに描写されてましたからね。
姉がアイドルにならなかった
――――ある日の休日。
今日は俺も姉さんも予定が入ってなかったので、久しぶりに姉弟水入らずで買い物に来ていた。
姉さんは最近、新しく駅前にオープンしたという雑貨屋を俺と二人で回りたかったらしく、今日のお出かけを前々から楽しみにしていたようだった。
持参していた買い物バックいっぱいになるまで買っていたくらいだし、楽しんでくれたみたいでなによりだ。
かくいう俺も良いもんを買えたので、テンションが高めである。
BOOK−ONで前々から探していたラノベが全巻セットで売っていたのだ。ネット通販で探していても、見つからなかったってのにな。
これは今日徹夜で読み明かすしかあるまい。
……そういやあそこって、いつの間にか立ち読みできなくなってんだよな。立ち読みOKだった頃と比べて、客数が……いやよそう。ていうか、中古本だからつっても立ち読みできるのがおかしかった気がしなくもないが。
「ねーさんはどこかなっと」
お花つみも終わった事だし、姉さんは何処で待ってくれてんだろ。
……あ、姉さんからline来てるじゃん。
姉さんのアイコンは三年前誕生日に俺が上げたマグカップの画像を選択している。普段からも家でコーヒーとか飲むときに使ってくれてるし、贈った側としてはプレゼント冥利に尽きますがね。
俺のアイコン?ダー○ベイダーですが何か?
とりま、指定された待ち合わせ場所に向かうとしますかぁ。
「あ、あの今のお仕事は辞めなくとも、お話だけでも!」
うーん……困ったわね。随分と押しが強い方みたいなのだけれど。
春君がお手洗いに行った数分後、私より少し年上そうなスーツ姿の男性が声をかけてきた。
春君とおでかけの最中だったから、足早に立ち去ろうとしたのだけれども、何度も話しかけてきたから、弟が戻って来るまでの間だけ話を伺うことに。
どうやら、アイドル事務所のプロデューサーみたいで私がアイドルになってみないかと、熱心にスカウトしてきたのだった。
一応受け取った名刺には283プロダクションと書かれていた。
……聞いたことがない。765や346、961と言った芸能事務所の名前はアイドルに疎い私でも聞いた事はある。
新設の事務所……かしら?それとも偽りの事務所なのかしら。
私と春君がこっちに上京したての頃、春君から
『偽のアイドル事務所を語る。詐欺行為に気をつける事。特に姉さんみたいなウルトラQクラスの美人ならなおさらね。奴らはあの手この手を使って、無知な女性を付け狙って騙そうとするから。例えば、撮影予定のモデルが来れなくなったーとか貴方でなければ、私の作品は完成しないんだとか、トチ狂った事をのたまうなんてのは、もう真っ黒だから。何も知らずにホイホイ付いてったらもう最後。「これは撮影ですよ?……AVと言う名のですが」なーんて、言われてあーんなことやあは~んな事されて、快楽落ちしてAVデビューなんてのは薄い本だけでなく、現実世界でも起こりうるから、詐欺には警戒。初対面の人は特に疑ってと言うことを言いたくて――――姉さん?顔を真っ赤にしてどうしたの?え?何処でそんなハレンチな事を知ったって……そりゃ――――』
詐欺にご用心してねって事を言われたっけ。
それにしても春君ったら、いくら男の子だからってあんな卑猥な女の子の画像を持っているなんて……春君にはまだ早いです!
だからって開き直って、見せてくるとは思わなかったけれど。気になるなら見てみるー?なんて……好奇心に負けて、頷く私もどうかしている。
……やけに姉物や年上の女の人が登場してたよね……うぅ、ちょっと嬉しかった気持ちがあるのが複雑……
普通の姉弟ならば、嫌悪感が湧いてくるのかもだけど。
……春君のお顔がみたいなぁ。
「貴方ならきっと大勢の人を笑顔に出来ると思うんです!」
やだ、いけない。現実逃避してる場合じゃない。
興味がないとはいえ、一生懸命私に説明をしている。
言葉の節々から、この人が誠実で真っ直ぐな人なのがなんとなくわかる。
ふりふりな可愛い衣装に見を包み、たくさんの人が見ている中でステージ上がり歌って踊る。そんな光景が目に浮かんだが、その後に浮かんだのは、大切な弟の顔。
「ごめんなさい。お気持ちは嬉しいのですが、今のお仕事が好きでやっていますので」
アイドル。人々を笑顔に出来る素晴らしい仕事なのかもしれない。
……それでも私は弟の方が大事だ。アイドルになれば、一緒にいる時間も減るだろうし、生半可な気持ちでアイドルをやっても真剣にアイドルを取り組んでる人に失礼に値する。
言葉には出来ない分、誠心誠意の気持ちを込めて頭を下げる。
「そ、そんな頭を上げてください!…………もし、もしも気が変わったり、アイドルに少しでも興味を持ったら、電話をいただければ……と。私はいつでも貴方を待っていますかr――――」
よかった……私の気持ちが伝わったみたい。
完全には諦めてくれてはいないみたいだけれども、一旦引いてくれるようだ。
私は下げていた頭を上げ、この辺で失礼させてもらおうと――――
「わきゃぁ!!」
――――顔を上げて真っ先に視界に入ったのは、弟が宙返りをし、着地後にポーズを取っている光景だった。
成☆敗!
悪が栄えた試しなし!悪役が輝くシーンはあっても、だいたい最後には正義の味方とか、自分より強い存在にいいとこ取りされて、退場していくものなのだよ!
でも俺はヴィランも少し好き!
遠目から見ていたが、このご時世で休日の真っ昼間から、スーツ姿で、姉さんを異性特有のエロい目で見ていやがったのを、俺は見逃さなかった。
本が山程入ったビニール袋を両手に持ったまま、両手を目の前でクロス構え、次にその腕を腰に構える。
Target……黒服の怪しい男。
Targetとの距離……射程内に位置。
警護対象者に巻き込む恐れは……なし!
All Range、All Clear!
ヒャッハーもう我慢できねぇ行くぜぇ!!
ジャス、ティス、ダイナマイツ!
そんなこんなで、渾身のドロップキック(1D6くらいの。着地失敗時は自分にダメージ1)をお見舞いしてやった。
あ、ジャスティスなんて言ってるけど、原作の技とは関係ありません。俺のオリジナル技ですから、はい。
「またつまらぬものを蹴ってしまった……」
華麗に着地し、不審者へ向けて片足を上げて、決めポーズを取る。
必殺技とか締めのポーズって重要だよね。
技名を叫ぶことによって、自身の厨二心と身体能力に火がつくって誰かが言っていた。
「ごめん姉さん、待たせちゃったかな」
「……ふぇっ?ううん、そんなことはないけど」
「そろそろ良い時間だし、飯にしよっか。ファミレスにする?カフェにする?それとも、ぎゅ・う・丼?」
「まって!春君、お願いだから落ち着いて!」
一連の流れにツッコまさせまいとゴリ押しでいこうとしたのだが、待ったをかけられる。
チッ、そう上手くは事が運ばねぇか。
「大丈夫俺は落ち着いてるって、冷静だから。とりあえずはあの変質者を警察に突き出す所からでしょ?」
「そうじゃなくて!春君誤解してると思う。あの人、悪い人じゃないみたいだから」
なん…だと…。こんな短時間で姉さんを洗脳するだと……。
これはもう生かしてはおけませんね。
まずは油性マジックで額に「男性専用ハッテン器」って書いて、下半身を露出させた後、公衆トイレに放り込んでおこう。
もちろん、アヘ顔Wピースの写真撮影も忘れずに。
スレも立てて置くか。場所を特定されると俺も危ないだろうし、色々とボカシておいておくか―――――
「お願いだから私の話をきーいーてー!!」
「聖人君子みたいなお方に有無を言わさず、襲いかかって(物理的に)しまったんだが、何か質問ある?……と」
ターンとENTERキーを弾いて、一息付く。
そのままイスの背もたれに体を預け、天井を見上げる。
思い返すのは今日の一連の出来事。
「やっまったなぁ」
思わず片手で顔を覆ってしまう。
あの後、姉さんの必死な説得にて、奴を社会的に殺するのは踏みとどまった。
俺がぶっ飛ばした如何にも真面目そうな男性は、痛そうに腰を押さえながらも立ち上がり、こちらへと向かってきた。
一瞬、報復されるのかと身構えた俺だったのだが、彼の顔を見たら、それが杞憂だったことがすぐにわかった。
「めちゃくちゃええ人やったやん」
痛みを堪えながらも、笑顔を崩さずに俺と姉さんをカフェで話さないかとお誘いを受けた。
罵倒の一つや二つ言ってもバチは当たらないだろうと言うのに、俺に向けて何一つ怒りを向けてこなかったしな。
それどころか――――
『お姉さんを心配しての事なんですし、貴方は何も悪くありませんよ』
こっちに頭を下げる始末だ。
うん、初対面の人には9割疑う俺ですら、問答無用で蹴っ飛ばした事に罪悪感を覚えたね。
怪しいスカウトマンかと勘違いしていたとはいえ、蹴っ飛ばした事に謝罪をし、店の割引クーポンを握らせ――――もとい渡した。
姉さんの安全第一とはいえ、申し訳なさそうに眉を下げ、テーブルに額を押し付けてまで頭を下げられたら、俺だって自責の念に押しつぶされそうにもなりますよ!
そんなわけで、普段より空気が違った中で姉さんと夕食を取った後、俺は自室でPC前にいるわけですが。
2 :以下、774にかわりましてVIPがお送りします。
通報しますた。
3 :以下、774にかわりましてVIPがお送りします。
もう通報されてるんじゃ?
4 :以下、774にかわりましてVIPがお送りします。
今の心境をどうぞ。
5 :以下、774にかわりましてVIPがお送りします。
ndk?ndk?
次々とレスが返ってくる。こんなスレ立てする俺も俺だが、矢継ぎ早に書き込んでくるコイツラも相当だな……。
詳細はよと燃料を囃し立ててくる住民達に、やや真実を捻じ曲げながら書き込んでいく。
バカ正直に書いて、特定されたら色々面倒だし。日付とかも先週の出来事にしておくか。
「……アイドルのプロデューサーねぇ」
俺にも手渡された名刺を眺める。
当事者ではないとはいえ、身内が非日常の世界に片足を入れるとは思わなんだ。
サテンことカフェにて、プロデューサーからアイドルについて色々聞いたのだが、俺自身も少し気になったので帰宅してから、ネットでちょいと調べてみた。
「真っ先にヒットした765プロに961プロ。初代ポケ○ンよりも所属の多い346プロに……新設の283プロか」
姉さんがスカウトされた所は最後の283プロダクションと言う所だ。
765プロと言えば、アイドルに興味皆無な俺ですら知っているし、『お料理☆さしすせそ』に出演する高槻やよいが所属しているしな。この番組はたま見てるし。
961はなんか、すっごいイケメンアイドルが所属してるとこらしい。野郎のことは別にいいや。
最初346の公式HPを見に、所属アイドルの項目を開いて見た時はそっとバツ閉じした。だって、あんなにわんさかいるとは思わなかったんだもの。クラス分けだって余裕で出来る人数じゃん。
まぁ、閉じたあとはざっと各アイドルのプロフィールなんかを見て回ったけど。
で、本命の283プロと言うと……
「COMING SOONとな」
公式サイトはあるものの、アイドル一覧表みたいな物はリンクがあっても、COMING SOONと大きなフォントが表示されているだけだ。
プロデューサー曰く、何人かいるにはいるがまだ公にはしないとのことだ。
それって社外秘か機密情報じゃないのかと思った。しかも、姉さんがアイドルになったわけでもないんだし。そうホイホイと漏らしても良かったのだろうか?
新設プロダクションに新人のプロデューサー。怪しい要素はあるが、ちゃんとした公式サイトもあるし、ツイスタやネットでも少しは話題になってるみたいだしなぁ。
「……姉さんはどうするんだろう」
ふと思っていたことが口に出る。
昼間の一件から、はっきりと断っていたけれど、
『私は貴方がアイドルになるのを何時でも待っていますよ』とか、相当お気に召したんだろうな。
弟目線から見ても、姉さんは見た目も中身もエクセレントな女性だ。
そんなパーフェクツッでマーベラァス!な姉さんが、露出が多くフリッフリなステージ衣装を見に纏って、大勢の飢えた野郎どもの視線に晒すなんて……
「…………!!」←ベッドにダイブし、のたうち回る
ぬわぁーー!!そんなん絶対に夜のおかず(意味深)にされるじゃないか!!
くうぅっ、彼氏やら将来の伴侶とか姉さんが心に決めた人ならまだいい。顔合わせした瞬間相手の顔にビッグバンインパクトをぶちこむだろうが、まだ許せる。
だが俺の目がまだ黒く鈍く輝いてるうちはダメだ。素性の知れない有象無象に過ぎない男が相手だなんて……全身全霊で獣王激烈掌をくらわせたくなるじゃねーかああああああ!!
『春君……?今部屋に入ってもいいかな?』
何度も壁に激突しつつ、脳内お姉ちゃんそこどいて!そいつ○せない!をシュミレートしていたら、控えめなノックと共にやや遠慮気味に声をかけられる。
拒否る理由もないので、枕に顔を埋めたまま返事をする。
「次の方、どうぞー」
「失礼いたします。桑山千雪と申します。本日はどうぞよろしくお願いします」
「ふむ、随分とお若くていらっしゃる。失礼ですが歳とスリーサイズをお聞きしても?」
「23歳です。スリーサイズは上からはちじゅは――――って、もう!どさくさに紛れてなんてことを言わすのっ」
面接官を真似て促してみたら、ノッて来てくれたので、実際にやったら一発で訴えられ兼ねないセクハラ発言をしてみた。
額を小突いてきたけれど、結構ノリノリで答えようとしてませんでした?
言い切ってはないけれども、一桁ではの後ろに付く数字なんて8しかないからな。
つかそんなにあるのか。前々からめちゃくちゃスタイル良いとは思っていたけど……我が姉ながら規格外にも程があるのではなかろうか。
寝っ転がったまま顔を姉さんの方に向けるとベッドに腰をおろし、優しい表情でこちらを見つめていた。
しばらく見つめ合っていたのだが、俺はうつ伏せになり顔を隠す。特に意味はない。
ないのだが、なんか無意味にこういったことってしたくなるじゃん?
……すると、頭に手を置かれよしよしと赤ちゃんをあやすかのように撫でられ始めた。
お互い無言だが、ゆったりとした時間が流れる。
さっきまでは眠気とは無縁だったが、今は心地よい睡魔が襲って来ている。
昔から、姉さんとこうやって何もせずのんびりと過ごす事は俺にとって特別な時間だった。
俺がそのまま一人で眠ってしまっても、姉さんは離れずに傍にいてくれた。
世間一般では姉弟がこういったスキンシップを取るのはかなり珍しいんだろう。俺はもう高校生であり、その一方で姉さんは社会人だ。
ま、周りにどう思われてもんなことは気にしないし、されて嫌だってわけじゃないしな。姉さんは姉さんで嬉しそうだし。
そのまましばらく、姉さんのしたいようにさせた。
頭から、顔に手を下げそのまま眉をなぞられたり、頬を擦られたり、手を握られたり……etc。
物理的なスキンシップを受けていたが、一通り姉さんが満足した所を見計らい、切り出すことにした。
「昼の事、悩んでる?」
「……うん。ちょっとだけ」
よっこいせと起き上がり、姉さんに向き直る。
あの場では断ったとはいえ、お前がほしい!と言わんばかりの熱さで迫られたわけだしなぁ。
一度落ち着いてから思い返していたら、やっぱ思うとこはあったんかな。
「今のお仕事に不満なんてあるわけじゃないの。毎日色んな雑貨に囲まれて過ごせているし、お店に足を運んでくれるお客さんの笑顔だって見れる」
「店長もお仕事の仲間もバイトの子達も良い人たちだし、春君だっている。現状に満足しているのに……なのに、どうして『大勢の人を笑顔に出来る』この言葉が頭から離れられられないのかな……」
姉さんの独白に口を挟まず聞いていたけども……俺が思ったよりも悩みの種は大きかったみたいだ。
普段人と会話する時、相手の目をしっかりと見る姉さんなのだが、今の姉さんは視線があっちこっちに右往左往しているし、何処か俺に遠慮をしている節がある。
心当たりがないわけじゃないんだけども……それが当たっていたとしても、姉さんの将来なんだから自分の思う通りにしていいんだけどな。
「人の欲は底がないって言うじゃん?たとえ現状に満足していても、いずれは次の欲求が湧いてくる。『今よりももっと環境の良い場所がいい』『今よりもより給料が高い仕事良い』『今よりも楽な仕事をしたい』とかね。どんなに恵まれていようがいなかろうか、それは普通のことじゃないかな」
誰にだってあるさ、俺にだってあるしねと付け足して、大の字になって倒れ込む。
姉さんが考えてる事は人として当然の事だ。優しく情に厚い姉さんだし、そう安安と転職したくもないんだろうなぁ。
今のご時世って一つの巣に長く滞在するより、多くの巣に転々と移り住む方が当たり前って聞いた事があるしな。
「……春君は私にアイドルになってほしい?」
「姉さんがアイドルになってもならなくても、俺は姉さんがどんな選択をしようと「春君の本音をしりたいの」……」
姉さんの味方だよと続ける前に、ぴしゃりと言われた。
割と良い事を言おうとした所を遮られると虚無感がすごいよね。今はそんなもんを感じる暇もないけど。
真面目な雰囲気を感じとったので、背筋を伸ばして正座をし、姉さんと向き直る。
ジッと真剣な顔でこちらの目を見据えてきて、嘘や誤魔化しはしないでと瞳の奥から語りかけているのがわかる。
むーん……本音とな。姉さんが幸せになれれば、どんな道に進んでもいいんだけどな。
そりゃまぁ?道徳に反したり、自身を売るような事だったら反対するけど。
でも、姉さんが言ってるのはそういう事じゃなくて、俺がどうすれば嬉しい……そういう事なんだろう。
改めて考える。
姉さんアイドルになる→私、仕事やめる!=一緒にいられる時間が減る。
レッスンやら営業やらで今以上に忙しくなる→人気が出ればライブやらテレビ出演とかも多くなる=一緒にいられる時間がますます減る!
うん、嫌ですね(断定)自分の姉が有名になるのは良い事だろう。
だが!それで姉さんとの時間が短くなるのはひっっっっっっじょーに不愉快だ!不愉快すぎて、視界に入るもの全ての髪を根こそぎ剃りたくなってしまうぐらいに!
……しょーもない独占欲だよなぁ。
家族とはいえ、相手の行動を制限したいなんて。
恋人同士ならば、そういうのも一つの愛情表現だとは思うけどさ。ヤンデレヒロインとか割と好きよ?それほどまでに愛を向けてくれるんだから。
……NiceBootとか悲しみの向こうはノーサンキューですけど。
野郎の嫉妬程醜いもんはないと、散々アニメや漫画のキャラを見てきて思ってたけど……はぁ、一度考え始めるとドツボにハマってくな。
自分の底の浅さに嫌気がさす。
あんなにこっちに越してくる前、新生活は大変だろうから手伝うとか、姉さんの役に立つとか豪語しておいて、このザマか。
「春君。遠慮しないで……我慢しないで。私にどうしてほしいか、お姉ちゃんに教えて」
「私だけには……春君のすべてをさらけ出して欲しいの」
「だって、私はあの日から……春君のお姉ちゃんになったんだから」
ふんわりと、壊れ物を扱うように優しく抱きしめられる。耳元でゆっくりと言い聞かせるように紡がれていく言葉は甘い毒みたく、染み渡っていく。
「春君がどんな選択をしても、私は受け入れてあげるから」
「……姉さん」
俺は―――――
「これにて、今日の業務は終わりかね」
ピッカピカになったカウンター席を見て、一息付く。
以前よりも客数が減り、ここを営業している意味がないんじゃないかとますます思ってきたのだが、仕事は仕事。やるべき事はしっかりとやりますよ。
姉さんに自分の本心を伝えてから数ヵ月。
あの後の姉さんの行動は早く、翌日にプロデューサーへ連絡し、はっきりとアイドルにはならないと伝えた。
それだけで俺の苦悩はあっさりと解決してしまったのだから、拍子抜けしたというか、なんというか……それで安心する俺もどうかと思うが。
「あっ、はーる君。おつかれさまー」
下で仕事をしていた姉さんがこっちへとやってきた。
休憩バッチを身に着けているし、休憩をもらったみたいだった。
「お疲れ。下忙しかったでしょ?」
「うん。今日はお客様がいつもより多くて。嬉しい事だけど、ちょっと疲れちゃったかな」
「手が足りなかったのなら内線で呼んでくれりゃいいのに。どうせこっちは何もないんだし。……そういや、疲労回復に良いっていうハーブティーがあるって、エリーちゃんが言ってたな」
「下の人たちで対応できるくらいだったから。……あら?それって、エリー店長秘蔵のハーブティーじゃなかったかしら……」
「そうだよ?こんだけあるから一つくらい大丈夫だって。お、フロランタンもあるじゃん。ラッキー」
「こーら、だめでしょう。勝手に人の物を食べたりなんてしちゃ」
「後でエリーちゃんに食べた事を言うし、へーきへーき」
「ダーメ。それより……ほら、こっちに来て」
ちょっとしたお茶会でもしようと準備しようとしたが、姉さんがカウンター席からこっちに回り込み、手を引かれる―――前に、思い出したかのようにポケットから、同じ休憩バッチを取り出し、俺の胸元に付けてきた。
店長から言われたのか、それとも姉さんから打診したのか……最近の事を考えたら後者なんだろうな。
引かれた先は向こう側、パーテーションで区切られた従業員用休憩スペース……にあるソファーの上。
一つだけ、鍵付きのパーテーションがあるので従業員は契約と同時に鍵を渡されるので、それで休憩時間とか入るのである。
紛失したらエリーちゃんにめちゃくちゃ怒られる(噂だが、対象が良い男だった場合はその後に素敵な事があるだとかないとか……試したくもないが)
「はい、それじゃぁ頭をこっちに向けて、力を抜いてー」
自分の意識化なのか、それとも無意識なのか、言われるがままにし、あっという間に姉さんの膝on俺の頭部。
膝枕の体勢が出来上がっていた。
「はーるくーん。ふふっ、よしよーし♪」
すんごい良い笑顔で頭を撫でられる。
これほどリラックスしきっている状態の笑顔は俺が知る限り、他の人には見せたことがないはず。俺だけに見せてくれている姉さんの姿だと思うと、湧き上がる優越感がすごい(小並感)
頭だけでなく、顔やら首元とか撫でられちょいとくすぐったくなってきたので、起き上がろうとしてみる。
「くすぐったい?」
「ちょっとだけ。姉さんって、昔から動物とか撫でるの上手かったよね。撫でてた犬とかお腹向けてたし」
「そうかな?……ひょっとして、こーんなにおっきくてかわいいワンちゃんを撫でてたせいかしら」
俺のことらしい。
からかうように言ってきたので、お返しと言わんばかりに目の前にあるお腹に触れてみる。
「ひゃんっ!も、もー春君から触るのは禁止っ」
「ペットの戯れくらいいいじゃないい」
「ひょっとしたら、誰かが見てるかもしれないし。いけません。めっ」
自分だけ、犬相手みたく撫でまくってくるのに。
俺からはダメとな。
これが性別逆転とか貞操概念が逆転してたら、俺が触りまくれると言うのに……!なんでシャニマスの貞操概念逆転SSとかないんだ!?デレマスやら本家アイマスには山ほどあるのに……こんなの普通じゃ考えられない……っ。
「よる、いえにかえったら……いーっぱいさわらせて、あげるから」
こんなの……普通じゃ考えられないっ(歓喜の叫び)
そう、これが俺と姉さんの日常。
あれから、姉さんから触れ合ってきたり、甘えたがったり頻度増えてきた。
以前は職場だと肉体的接触はあんましてこなかったけど、俺の本心を聞いて、何か心境の変化でもあったのだろうか。
少し恥ずかしさはあるが、嫌だとかしてほしくないわけでもなく、昔みたいに戻ったみたいで俺としては全然OKである。
そもそも、これは俺が望んだ事。
姉さんとずっといたい……心の奥底に閉じ込めていた想いが開放されたその結末。
……今まで繋がりのあった女子達とは最近何かで忙しいのか、全く会えてなかったりするが、そんなことはいい。重要じゃない。
重要なのはどんな形であれ、姉さんが幸せそうにしてくれていること……それだけが今も昔も変わらず俺の願いだ。
「んー……休憩中にもこうやって、春君と一緒にいられるなんて、幸せだなぁ」
変わらなくても幸せなことだってある。
……今はまだ。
【NormalEnd】
Ending1 変わらない日常
条件 ①姉からの高感度が非常に高い
②他ヒロインとの高感度が一定値に満たない
③欲望に素直になる
これら全て満たすこと。でEnding確定。
くぅ〜疲れましたw
これにて【姉がアイドルになるらしい】は終了になります!
短い間でしたが、ご愛読いただきありがとうございました!
ちょっと早い4月1日ネタでした。
スーパータイトル詐欺回。
まぁ、このSS書こうとする前に思いついていた構成でした。
極度のブラコン千雪さんなら、こうなってほしいなー(こうなってたかも?)という二次創作にありがちな妄想です。
私の力量が不足してるせいで、上手くまとめきれてない感がパないですが、書けて良かったとは思ってます。
まだまだこのssは続くんぢゃっ!多分