プロローグ
彼の名前は、
そして彼は、マンションの一室で、作業机を前にして椅子に座り漫画を書いていた。
「お疲れ様です。コーヒーを淹れましたのでどうぞ」
そう言ったのは、ボブカットで高校の制服を来た、
「と言う事なので、休憩にしましょう」
加奈はアシスタントの机脇にコーヒーカップを配り、作業をしていたアシスタントは作業を止めてから「はい」と返事をし、加奈が配ったカップを受け取り口に含む。
「先生は、彼女さんが居て羨ましいですね」
「ですね。僕も彼女が欲しいです」
「いや、腐れ縁の幼馴染ですよ。てか、漫画家になったのも、彼女の一言ですし。な、加奈さんや」
そう、翔太が漫画家を目指したのは、翔太が気まぐれでノートに漫画を書いていたら、加奈の「今の作品を原稿にしてジャックに応募したら面白そうだね」の一言なのだ。
「連載できるとは予想外だったけどね」
「だよな。ジャックから声をかけられたのは予想外すぎた。てか、連載会議に回るとか驚いたし」
翔太の予想では、ジャックは自分をキープする為と思っている。まあ、自惚れも入っているが。
「ジャックで友情物語は斜め上だし、一応、確保したかった所もあるでしょうけど」
アシスタントたちは頷き、
「先生の作品は、今のジャックでは新しいですから」
「それに、高校生で連載なんて憧れますね」
「連載会議では揉めたらしいですけどね」
担当の吉田さんが言ってました。と、翔太は付け足した。
「まあ、学校でネーム書いてるので、勉学が疎かになってるのは否めませんが」
「その為の私でしょ。時間ある時に勉強勉強」
加奈は翔太の為にノートの内容を纏めて、翔太に勉強を教えているのだ。確かに、高校を卒業しておくのは、後々重要になってくるかも知れない。
「わぁてるよ。勉強も頑張ります。加奈先生」
「宜しい」
暖かい視線を感じた翔太は咳払いをし、
「それじぁ、休憩終わりで。作業に戻りましょう。というか、今日の作業で連載終了なんですけど」
翔太の連載は今日で終了なのだ。打ち切では無く、本当の最終回と言う意味での終了である。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦
作業が完了し、俺と担当の吉田さんは、マンションに備え付けられているソファで対面に座っていた。
吉田さんは、一枚一枚見終わった原稿を前にあるテーブルで整える。
「原稿OK。納得の最終回だよ。しかし君は、よく友情や根性を題材にした話を書けるよな」
「それしか書けないって所なんですけどね。俺に、王道バトル漫画と無理ですし」
「そうだろうな。柏木君の持ち味は人の心情を原稿にする事だ。だが、王道バトル漫画でも無くても、ジャックでのトップは不可能な題材じゃない。それに知ってるかい、新妻エイジ」
――新妻エイジ。彼は、10年に一度の天才漫画家と言われている少年だ。
そして俺は、ピクっと眉を寄せる。
「……ああ。CROWの事ですよね。あれを書けるとか天才ですよ。負けませんけど」
「(柏木君はかなりの負けず嫌いだな。今までは、普通の作家と肩を並べるだけだったからな。巧く行けば、彼を焚きつけられるかも)」
吉田さんは口角を上げたが、俺が気づく事はなかった。
「それでどうだ。新妻君のアシスタントに空きがあるんだ。試しにやってみないか?……柏木君、明日から夏休みだしね」
……なるほど。新妻エイジをぶつけて、俺を焚きつける気か、吉田さん。ある意味策士だな。
「……いいですよ。新妻エイジのアシスタント、引き受けました」
こうして俺は、新妻エイジのアシスタントを引き受けた。
そしてこれが、運命の出会いになるとは、俺はまだこの時は思いもしなかった。
アニメ版も含んでいるので、少し違いが出てくるかもです。そしてペンネームは、波木歩夢。本名は、柏木翔太ですね。
まあ、スラムダンク等は無い設定ですね。