俺はボイコット期間で脚本を書き上げ送付したが、監督からセリフについて話し合いたいと言われたので、舞台稽古の練習場にお邪魔している。さすがと言うべきか、舞台稽古の熱気は凄い。どれだけ真剣に稽古に打ち込んでいるのかが解る。
ともあれ、俺は監督の前で一礼をする。
「始めまして、脚本を手掛けました、柏木翔太です」
俺を見て立ち上がった監督も、一礼する。
「監督を務める、大山です。今日は忙しい所、申し訳ありません」
「いえいえ、今はちょっとした休憩時間なので問題ないです」
俺と監督は隣同士に座り、台本を取って指摘したページを開く。
「ここでの“楓”のセリフなんですが、もう少し感情的にしてもいいと思いまして」
監督は、楓のセリフを指差す。
其処のセリフは、楓が親友の葵を呼び止めるセリフだ。
「確かに、『――葵!』と呼び止めるより『――待って!葵!ちゃんと話し合おう!』の方が、観客の心に響きますね」
「やはり、翔太さんもそう思いますか――後は、ここなんですが」
俺と監督は、修正点であるセリフを見て所々を修正していく。
そして、全部を修正し終わった所で、監督が「全員、脚本を持って集合!」と号令を掛け、舞台役者が脚本を取り集合する。
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「紹介します。『――絆、永遠と共に』の脚本を手掛けた、柏木翔太さん」
俺は前に出て、皆の視線を集める中口を開く。
「皆さん初めまして。『――絆、永遠と共に』の脚本を手掛けた、柏木翔太です。本日は、よろしくお願いします」
一礼すると、皆さんから力強い拍手を貰えた。それから、役を演じる方々が1人1人自己紹介をして、脚本の変更点に移る。
ちなみに、監督との打ち合わせから、今に至るまで『19才の子供が脚本を書いたのは解ったが、修正まで本当に大丈夫なのか?』と思ったが、周りの者たちの不安な感情”が見受けられなかったので安心した。
「――というふうに、楓役の方には、“感情的”に演じて欲しいと思っています。よろしいでしょうか?」
俺はこのように、
「――はい!」
加奈は、張りのある声で返事をする。
そして、次は
「――葵役の方には、“楓とはずっと一緒にいる、どこに行っても親友だから”。と、曖昧な表現で申し訳ないですが、このようにお願いします」
「――わかりました」
葵役は、凛とした表情で答える。
それから俺は、楓たちに関わる関係者の人たちに修正点を伝えていった。
解散し、稽古中の役者たちは俺の要求に答えるように演技をしていた。そして俺は、さすがプロだと感嘆する。
「どうでしょうか?舞台稽古は?」
「……凄いですね。 “真剣さ”って言えばいいんでしょうか、それがひしひしと伝わってきます」
俺は、思った事を監督に伝える。
「皆さん、やる気に満ちてますからね。人気漫画の舞台となれば尚更ですよ」
「そうすっか。『絆』が役に立って良かったです」
ともあれ、稽古が終わり全体の反省会・及びミーティングを済ませる。
「本日の稽古はここまでです。皆さん、次回の稽古もよろしくお願いします」
監督が、集合した役者にそう言い、
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
役者は、大きな声で返事をしたのだった。
始めて稽古場に赴いた俺の感想は、“緊張感と熱気が凄かった”。という感想だ。
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舞台稽古が終わり、俺は加奈と一緒に帰路に着いていた。
「舞台稽古って凄ぇな」
加奈は苦笑し、
「だね。私は最初の頃は、気圧されてたから」
「そっか。でも今は違うんだろ?」
「うん!やっぱり、舞台を経験したからかな。今じゃ、あの環境で役に打ち込めるのが楽しいよ」
このように思える加奈は、『舞台女優』のプロと言っても過言じゃないのかも知れない。てか、俺があの中に入ったら、不安と緊張で押し潰されそうだし。
加奈は「そうだ」と言ってから、
「翔太君、ボイコットはどうなったの?」
「4月まで休載って形だけど、真城君が32号のジャックを見ての反応によるな。――今思えば、俺は中立が良かったかも。って思ってるよ。でも、福田さんの言い分も理解できるし、編集長の
俺も加奈も不条理事を嫌うが、もっと俺は考えてから説得するべきだった。……だからこそ、今の状況を上手く使ってるんだが。
そして今日の舞台稽古を見て、俺はこう思った。
「……手のひら返しの意見だとは思うが、全ては、俺の精神面はまだまだ未熟って事だと思う。――重要な判断事になると、俺は1人じゃ
加奈は俺の右手を、ぎゅ、と握った。
「……うん、支えるよ。――どんな時も支える」
加奈は、笑みを浮かべた。
「だって私たち夫婦でしょ。――離れてても、いつも一緒なんだから」
俺は「ああ」と頷き、
「俺も加奈を支えられるように、精一杯努力する事を誓う。――加奈、愛してる」
「――私も、翔太君を愛してます」
そして俺たちは、握る手を恋人繋ぎにした。――永久を誓うように。
それから数日後、真城君の説得があってボイコットが終了し、描き溜めていた原稿は俺は吉田さんに渡した。
――今度からは自分に芯を持ち、自己を通すと心に誓った俺。――加奈との
今回の話は、賛否が分かれるだろうなぁ。と思っている作者です。……話の方向性的に、翔太君の気持ちの切り替え(ご都合主義)が必要だったので(^_^;)
一番の決め手は、舞台稽古の熱気と真剣さに感化された所でしょうか。
ではでは、次回もよろしくですm(__)m
追記。
舞台のメンバーは、前回と余り変わっていない(特に奏さん)感じです。
ちなみに、役者の方々は、『翔太(君)(さん)』『加奈ちゃん(さん)』と呼んでいます。2人共、『柏木』で紛らわしいですからね。
追々記。
作者は、舞台の事について全くの無知です。ほぼ妄想で書いてるのでご了承を(^_^;)