夏休みになった次の日、俺は新妻エイジが漫画を書いているマンションの前にいた。
ちなみに、定規などの道具一式はバックの中に入れておいた。
「(ま、とりあえず入らないと始まらないか)」
そう思いながら、俺はチャイムを鳴らしドアが開く。
「波木君かな?」
「まあそうっす」
「僕は中井、よろしく。騒がしいけど入って」
「了解っす」
俺は玄関で靴を脱ぎ部屋には入る。てか、部屋の中はかなりの騒音である。まあ、大型スピーカーで音楽をガンガン鳴らせば当然といえば当然だが。
ともあれ、新妻エイジは「シュピーン!」とか「ブラック!」とか擬音を言いながら漫画を書いていた。
「先生は、寝る時や食事以外はあんな感じ、寝たら20時間は起きないね」
「……なるほど」
「で、昨日入った福田君。手塚賞に2度入賞している期待の実力者だ」
福田さんは作業しながらネームを書いていた。次の連載会議に回す為のネームだろう。
「中井さん、オレはまだ連載したことがないんだから実力者は言い過ぎでしょ。ともあれ、よろしくな、波木君」
「よろしくお願いします」
と言って、俺はお辞儀をする。
「で、もう1人が、『この世は金と知恵』で赤マルに掲載された亜城木君」
確か15歳の鬼才だっけ?てか、アシスタント3人も必要なの?まあいいけど。ともあれ「よろしくお願いします」とお辞儀をする。
「こちらこそよろしくお願いします。――波木先生が連載していた『――絆、永遠と共に』。最高の最終回だと思います」
「ありがとうございます。俺はあんなに連載できるとか予想外だったんですけどね。打ち切り覚悟で書いてましたし」
「あれが打ち切りとかねぇだろ。あんなに人気漫画だったんだからな。てか、新妻君より先に連載してたとか凄ぇよ。さすが、神童と呼ばれたことはある」
「いや、神童は止めて下さい……。あれは編集部が勝手に言ってただけなんで……」
俺が神童とかあり得ない。てか、俺1人じゃ連載は無理だったし。
「しかし、オレは近い内ジャックの看板作家になってやる。で、お前たちを抜かすのもオレの目標でもある。この中じゃ、オレの方が下だしな。あ、でも、アシスタントだけの中井さんは、オレより下だな。10年位前に手塚賞に1度入選しただけだし。つか、新妻君が「先生」なら、中井さんより上にいるオレたちも「先生」って言って欲しいもんだ」
「いや、まだだ。まだ僕は連載を諦めたわけじゃない……」
「へー、そうなんすか。もう歳も歳だし、プロアシでいくと思いましたよ。雄次郎さんも、アシスタントとしか期待してないでしょうし。オレは絶対に中井さんのようにはならないっす」
うわっ。雰囲気わるっ!……こんな所で作業しないといけないの?もし喧嘩にでもなったら、吉田さん恨みますよ。
そんな時、新妻エイジが振り向き、
「波木先生じゃないですか!シュピーン!」
椅子に立ち上がり、こちらに歩み寄る新妻エイジ。てか、吉田さんから新妻君に、アシスタントの話は伝わっていたらしい。俺と新妻君初対面だしね。
「波木先生の漫画最高でした!次回作はもう考えているんですか!?」
「いや、考えてないですよ。夏休みを満喫したい感じです」
吉田さんが許してくれるか微妙な所だけど。まあでも、アシを辞めてからも、1週間は休みが欲しいなぁ……。高校生だし、良いよね、良いよね?
「さすが、連載作家だっただけある。かなり余裕そうだな。オレは誰にも負けねぇけどな!」
「ぼ、僕も負けません!いや、僕たちはです!」
「シュピーン!僕も負けませーん!」
「…………」
何で俺は宣戦布告的なこと言われてるの?俺は高校生。もち上げすぎです……。
ともあれ、俺は作業机に準備等を完了させ、椅子に座りアシスタントの仕事をするのだった。てか、ベタとホワイト、トーンだけの作業だったら、アシスタントこんなに要らなくね。いや、さっきも言ったけどさ。
ペンネームと本名がごっちゃになる……。
ではでは、また次回(@^^)/~~~