~12月下旬~
俺と吉田さんソファに対面に座り、打ち合わせ中である。
「打ち切り作品は、
「そうですか」
疑探偵TRAPが休載している期間に、少年ウィークで“紫今日市の推理漫画”が連載され、ジャックでは“怪盗チータ”の連載が始まったので、疑探偵TRAPは危ういだろう。と思っていた。
そして
「……まあ、この世界じゃ実力が全てですから」
吉田さんも「そうだな」と頷いた。
漫画の世界は実力主義。弱い者が食われ、強い者が生き残る。端的な考えだが、理に適っているだろう。でも俺は、この世界で歩き続けると決めている。――そう、夢の為に。
俺は、「話は変わりますが」と前置きをし、
「今週の、ダブルダンクの順位は何位でしょうか」
「そういえば、報告するのを後回しにしてしまったな。――今週のダブルダンクは、1位だ」
今週も合わせれば、3週連続か。
――だが、
「――吉田さん。CROWは何位ですか?」
俺は食い気味に問う。
吉田さんは気圧されたように、
「あ、ああ。2位だ。――1位とは10票差だな」
吉田さんの話によると、1位と2位は“CROW”と“ダブルダンク”の独占状態らしい。
「――先週から、差を縮めてきましたね」
「そうだな。新妻君は、完全に柏木君を意識してると思う。――編集部では、柏木君の手汗握る物語と、新妻君の斬新な絵。今週どっちが勝つのか、って話題で持ち切りだよ」
「そうですか。でも、簡単に1位の座を渡しませんけど」
「……前から思っていたが、君がそこまで順位に執着するなんて珍しいな。いつもは、軽く流すだけだったのに」
「改めて誓いを立てたって事にしといて下さい。これ以上は話せませんが」
吉田さんは「なるほどな」と納得していた。俺の今の言葉だけで、大体は察したのだろう。
吉田さんは、「断ってくれても構わないそうだが」と言って、隣に置いた鞄ケースの中から数枚のA4紙を取り出す。
「柏木君に脚本を書いて欲しいってオファーがある」
話によると、数人の監督が『――絆、永遠と共に』を書いた者に脚本を頼みたい。という事らしい。
「実績が買われた。って事なんですかね?」
「ああ。おそらく、柏木君が手掛けた脚本が大作になったからだろうな。もちろん、役者や監督の力もあるが」
確かに、全国公演も展開され、客足も良いそうだ。『絆』は大作になったと言っても過言ではないだろう。
「それに、柏木君の知名度で客引きにもなる。脚本を手掛けたとなれば、尚更だろう」
「……なるほど、パンダの役割もあるんですね」
「悪い見方をするらな、そうだろうな」
そう言って、吉田さんは息を吐いたのだった。……面倒事を持ってきてすいません、吉田さん。脚本は漫画と関係無いですからね。
「もし、俺が脚本を書いたとしても、友情系しか書けませんよ?」
「ああ。先方も承知しているらしい」
「そうですか。てか、俺を止めなくていいんですか?」
「柏木君は、漫画と脚本を両立させる事を証明済みだ。人気が出るなら、止めはしないよ」
俺は数秒考え、
「1本だけ受けます」
「そうか。それじゃあ、脚本を送る監督を選別しなければならないんだが――」
俺は吉田さんの言葉を遮るように、
「吉田さんが持っているA4紙の、3枚目の監督に脚本を書くって事にします」
吉田さんは目を丸くする。
「そ、そんな選別の仕方でいいのか?」
「はい。監督を選別するとなっても俺には解りませんから」
吉田さんは「全く」という表情だ。
吉田さんは苦笑し、
「実に君らしい選別の仕方だよ」
「見る人から見たら、適当な決め方ですから。脚本を書きあげたら、吉田さんに渡したらいいんでしょうか?」
「ああ、それで構わない」
「そうですか」
吉田さんは、テーブルの上に置いてある原稿を茶封筒に入れ、数枚のA4紙を鞄ケース仕舞った。
そして、茶封筒と鞄ケースを持った吉田さんが、
「じゃあ、原稿はもらっていくよ」
「はい、よろしくお願いします」
吉田さんは仕事場を後にした。こうして、俺は吉田さんとの打ち合わせが終わったのだった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
俺は仕事終わらせ帰る支度をしていると、ポケットに入れたスマホが鳴った。俺はスマホを取り出し、通話ボタンをタップし右耳に当てる。
「もしもし、加奈。どうかしたか?」
『大阪と、広島の公演が終わったから連絡かな』
今日は、加奈は泊まり込みで公演だったのだ。1日で、県を2つ跨いだ。という事である。
「お疲れ。俺も、さっき打ち合わせが終わった所だよ」
『そっか。……あ、そういえば、今日の夜ご飯は冷蔵庫に冷やしてあるから、温めて食べてね』
「了解。明日の朝は、途中のコンビニで弁当を買うから心配するな」
『むぅ。コンビニのお弁当は食生活が偏るのに』
加奈は、膨くれたように声を出す。
ちなみに、加奈は明日の東京公演で舞台が終わるらしい。なので、一緒に居れる時間が増えるという事。
「え、えっと。昼食と夜食は、加奈さんの手料理を食べさせて下さい」
『……う、うーん。ん、それで手を打ってあげる』
それから、俺と加奈は他愛もない話で通話をしたのだった。
遂に、翔太君に脚本のオファーが来ましたね。……てか、どこに向かっているのでしょう、この2人。何か、夢から遠ざかってるような、近づいてるような。って感じですね(笑)
つか、話がごっちゃになってきたよぉ(-_-;)