バクマン。~未来へ向かって~   作:舞翼

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このような更新を続けられたらいいなぁ(願望)
では、どうぞ。


赤マルと動物園

 ~柏木家、リビング~

 

 俺と加奈は、リビングに備え付けられたソファに座り、手に取った見本誌の赤マルのページを眺めていた。

 

「……亜城木、ギャグで連載を狙う気なのか?」

 

 でも、赤マルで読み切りとなると、“走れ大発(だいはつ)タント”の連載ネームを練っているのだろう。……亜城木君、器用貧乏にならなければいいんだが。

 

「翔太君翔太君っ。私、“True human(トゥルーヒューマン)”っていう漫画好きかも」

 

 加奈は、俺を見て笑みを浮かべる。

 加奈の言ったTrue human(トゥルーヒューマン)は、斜本(シャポン)を書いた静河流(しずか りゅう)作の漫画だ。斜本(シャポン)の時より、残酷な描写が緩和されている為、少年誌に載せても問題ない作品になっている。だが、かなりエグい内容だ。

 

「意外だな。加奈が、エグいのが好みだったとは」

 

「全部が全部って訳じゃないけどね。でも、この作品は続きが気になるし、私的には面白いよ」

 

 なるほどなぁ。エグい作品は、読者の好みを選ぶって事か。

 

「もう一つ気になってるのは、蒼樹さん作の“青葉の頃”かなぁ、女性なら憧れる純愛だよ」

 

 蒼樹さんが掲載した“青葉の頃”は、惹かれ合った高校生が、結婚を目標に夢を叶えて行く物語である。その過程に、夢が叶うまで会わずにメールで励まし合う。という設定も込みであるが。

 

「確かに女性なら憧れる純愛かも知れんけど、俺は会わずに励まし合うとか無理だな」

 

 もし、俺を漫画の男性に置き換えるとしたら《友達になりませんか?お願いします!》で済ませると思う。あれだ、俺の場合夢を打ち壊しである。

 

「てか、会わずにいたら気持ちが大爆発しそうで、ある意味怖い……」

 

「ふふ、そっか。私も、翔太君と同じ気持ちだよ」

 

 そう言ってから、加奈は俺の方に体を預けるようにし、俺の肩に頭を傾ける。

 そして加奈は「そういえば」と話を切り返る。

 

「翔太君。週末の土曜日って、午前中でお仕事は上がりだよね?」

 

「ん、ああそうだな。それまでには、脚本とペン入れは終わってる計算だしな」

 

 加奈は「そっか」と頷いた。

 

「週末の土曜、私も午後からオフなんだ。久しぶりにデートしたいな」

 

 うーむ。久しぶりにデートかぁ。さて、何処にするか――あ、小学生ぶりにあそこにしよう!

 

「了解だ。場所は、動物園でどうだ?」

 

「うん、いいね動物園♪小学校以来だよ」

 

 ともあれ、今後の予定が決まった俺たちであった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 ~デート当日、動物園入場ゲート付近~

 

「お待たせ」

 

 加奈は、長袖のカットソーにモコモコのニットカーディガン、スカートにブーツを着こなし、手を振って俺の元まで歩み寄る。ちなみに俺は、ジャケットにVネックTシャツ、デニムにスニーカーである。

 

「いや、あんまり待ってないから大丈夫だ」

 

 いやまあ、加奈から「そこは、待ってないだよっ」と指摘を受けてしまったが。

 ともあれ、受付で入場チケットを購入し、動物園内部に入る俺たち。

 

「凄い凄い。象さんだよっ!」

 

「まあうん、鼻が長いな」

 

 ……夢が無い感想である。もっと気の利いた感想を言おうぜ、俺。

 ちなみに、園内に入った時から、俺たちの手は繋がれている。そして嫌な気は全くなくて、寧ろ加奈のペースに飲まれてるが楽しく感じる。

 ともあれ、猿の場所付近で俺は目を細めた。

 

「……蒼樹さんと、高木君?」

 

 あれ、高木君って見吉さんの付き合ってるって言ってなかったけ?てか、完全に浮気現場でしょ。

 

「うーん。何かの対談的な感じじゃないのかなぁ?」

 

 加奈さん。俺の心を読んじゃった感じ?

 まあ、俺って加奈には読まれやすいしなぁ。大体の俺の考えは、加奈にいつも読まれてしまってるし。てか、抱きついてるんですけど、蒼樹さん。

 

「うわっ。修羅場だよ。これ」

 

 ……確かに、修羅場かも知れん。高木君の彼女さんは、今の現場をしっかりと見ていた。てか、加奈さん。何か楽しそうにしてるのは気のせいか?……まあ、昼ドラ展開だしなぁ。加奈、昼ドラ大好きだし。

 と、その時、

 

『見吉ッ!オレと結婚してくれッ!オレは、お前の事が好きだッ!』

 

 見吉さんに倒された高木君が、声を張ってそう言った。なんつーか、俺には無理な告白である。

 

「翔太君は、私に好きって言ってくれないの?」

 

「……いや、そこは便乗する所か」

 

 「ダメ、かな」と加奈の上目遣い。

 俺は溜息を吐き、

 

「――好きだよ、誰よりもな」

 

 加奈は頬を赤く染めながら「そ、そっか」と頷いて、

 

「――う、うん。私も大好きだよ」

 

 ……何これ、初々しいカップルなやり取り。俺たち、結婚3年目の夫婦なんだが。

 

「んで、どうする?現場を見たちゃたんだし、話掛けるか?」

 

「そうしよっか。このまま帰ったら、モヤモヤが残っちゃうだろうし」

 

 そう言ってから、俺たちは高木君たちの元まで歩み寄り、

 

「こ、こんにちは。奇遇ですね」

 

 ……加奈さん(舞台女優)、誤魔化し方下手すぎでしょ。

 だが、それを見ていた見吉さんが、

 

「え、凄!高木って、南波加奈さんと知り合いなの!?」

 

「知り合い?なのか。てか、柏木さんの奥さんだから浮気とか考えるなよ」

 

「あ、そっか。“柏木翔太さん”と“南波加奈さん”って、ネットで有名になったもんね」

 

「まあうん。その辺は俺たちの黒歴史なので、あんまり触れないでくれると助かります」

 

 ともあれ、野次馬が集まる前に、俺たちや高木君たちは近場のテーブル席に腰を下ろした。んで、そこで色々と説得をして、この場は収拾を終えた。

 

「で、真城君と亜豆さんは、仲違いをしてると」

 

 高木君たち話によると、2人ともかなりの頑固者らしい。まあ、俺も人の事を言えないんだけど。

 

「でも、美保ちゃんなら話せばわかってくれると思うよ」

 

「ですよね。近場のファミレスで美保を呼んで、事の顛末を話せば大丈夫ですよね」

 

「なんかごめんなさい。私のせいで……」

 

「い、いえいえ。元はと言えばオレが悪いんですし」

 

 高木君は女性陣の話を聞いてから、頭を掻いた。てか、中井さん。蒼樹さんと組む為の条件が『付き合ってくれたら』ってダメでしょ。

 そういう事なので、全員は動物園を出た所で、近場のファミレスに寄る事になり、見吉さんが呼んできた亜豆さんと食事を摂ったり、加奈が亜豆さんと親友だった事が明らかになったり、高木君と俺は好きな漫画の議論をしたりと、楽しい1日になったのだった。




加奈ちゃんと、翔太君の初々しさも書いて見ました。
ちなみに、加奈ちゃんの『星の鼓動』(翔太君脚本)の舞台。翔太君は脚本(2本)のオファーは決定してます。てか、2人の本業は『漫画家』と『声優』なんだけどね(笑)

ではでは、次回もよろしくですm(__)m

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