2月21日。金曜日。
「亜城木君が1位ですか」
「ああ。“PCP”は422票で、“ダブルダンク”は2位で410票だ」
対面でソファに座り、吉田さんは打ち合わせで今週の順位を告げる。だが、俺の内心では“
「だが、今の“ダブルダンク”は日常編で、票が伸びなかった点もあると僕は思っている」
「そうですね。全国大会編では600票が普通でしたから。まあ、次回からは試合開始でかなり盛り上がると思いますし、これを機に1位を奪還します」
「でも、気は抜けないぞ。読み切りでの、福田君の“ロードレーサGIRI”“。高浜君の“正義の三肩”。連載中の、秋名君の“
吉田さんが言うには、福田さんと高浜さんの作品は、ほぼ連載になると予想してるらしい。まあ確かに、高順位ならば自然に連載の流れになるのは不思議ではない。
「いや、もう抜かせませんよ。確かに、厳しい戦いになると思いますが、俺は負ける訳にはいきませんから」
「……そうか。それを聞けて安心したよ。でだ、来週の号だがセンターカラーが決まった」
お、センターカラーか。
俺は吉田さんに「実は」と前置きをし、カラーの内容を説明する。で、目を丸くする吉田さん。
「……柏木君には驚かされてきたが、その内容は予想してなかったよ」
「前代未聞な試みですから。少し心配なのは、順位が下がるかも知れない。という懸念だけですね」
吉田さんは頷き、
「確かに、“吉”と出るか“凶”と出るかの試みでもあるしな。だが上手くいけば、波木歩夢はこういう事もできるんだ。という評価が付き、幅を広げる事が可能になる。――僕は賛成だ。柏木君の思うように書いてくれ」
「了解です」
ともあれ、このようにして俺と吉田さんは打ち合わせをし、原稿を渡して打ち合わせを終えたのだった。
その間、亜城木君も暗かった絵を明るくし順位を伸ばしていき、“CROW”とはいつものように接戦だ。まあ、今の所俺が1位を保っているが。
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~亜城木夢叶、仕事場~
亜城木夢叶の担当服部は、息を切らして仕事場の扉を開け、立ち上がった真城と高木に見本誌を渡す。
「やられた……。こんなカラーの使い方、描写のしかたは、
真城と高木は、服部の言葉を受け「なにが」と言いたい表情だ。ともあれ、真城と高木は“CROW”と“ダブルダンク”のページを見る、1ページ絵だけの話だ。
「な!?絵だけでストーリーを!?」
高木は声を上げる。
「ああ。新妻君は“PCP”の変化を見て書き直したそうだが、波木君はカラーの話がきた時に、これをやろうと決めていたらしい」
「じゃ、じゃあ、新妻さんと波木さんの描写が重なったって事ですか?」
「そうだ。だが、途中で話を書き直した新妻君は兎も角、カラーの話がきたらこれをやると決断していた波木君は凄まじいよ」
「……カラーでこけたら、かなりの順位低下もあり得るはずですよね。波木さんはよく決断しましたね」
高木の言葉に、いや。と服部は頷く。
「これは、南波君の言葉があったからこその決断だと、僕は思っている」
確かに、翔太1人だったら話は温めはしたが、決断は渋っていたのかも知れない。だが、加奈の言葉は翔太の支えになるのだ。
すると真城が、
「僕もそう思ってる。南波さんは、漫画は素人なのかも知れないけど、柏木さんの作品となれば話は別だ」
真城の言う通り、加奈は編集の卵程度の実力だが、翔太の作品で見れば剛腕の編集者と同等だろう。
そう。“ダブルダンク”の読者の捉え方、作品の方向性等、作品の仕掛け所はお手のものだろう。そこに翔太の意見が重なれば、右に出る者は居ないだろう。
「常にアドバイザーが隣に居るってことか」
「ああ、その考えで間違えないと思う。シュージン、僕たちの相手は、柏木さんと新妻さんだけじゃなく、南波さんもなんだ」
真城は、見本誌を握り締める。
「(クソッ!エイジと波木さんには、完全に絵で負けてる!やっぱり、僕の絵じゃ勝てないのか?)」
真城は、いや、と内心で呟く。
「(なら、もっと絵の研究をして追い越すだけだ!)」
真城たちは、この描写だけでは順位を下げると思っていたのだが、翔太とエイジは票を集めたのだ。ともあれ、順位は変わらず“ダブルダンク”が1位だが。
そして翌週の見本誌では、“
翔太君は1位をずっとキープしてます。まあ、結構ギリギリのラインだったりしちゃうんですけどね(^_^;)
ともあれ、3位から落ちた事は、最初以外ないんですけどね。
ではでは、次回もよろしくですm(__)m