では、どうぞ。
アシスタントから1週間が経過し、俺はリビングのドアを開けて玄関へ向かう準備をしていた。
「じゃあ、新妻君」
「波木先生ありがとうございました。連載に向けて頑張ってください、です」
椅子から立ち上がり、敬礼する新妻君。
「わかりました。次の連載会議までに良いネームを提出できるように頑張ります」
福田さんからは「連載したら宜しくな」と、中井さんからも「僕も頑張るから、波木君も頑張って」と言っていた。ちなみに、真城君は途中で何かを掴んだらしく、CROWの5話を仕上げてからアシスタントを辞めていった。
ともあれ、マンションを出た俺は、スマホを片手にある番号を打ち込み通話口を右耳に当てる。
『もしもし、翔太君。どうしたの?』
「いや、アシスタントの仕事を終わったから連絡をってな」
『そっか。お仕事お疲れ様』
「で、どっか行かね。久しぶりに気分転換したい。加奈の声優の仕事は?」
『終わったよ。――でね!同期の女の子と仲良くなったの!幼馴染が漫画家なんだよ。って言ったらかなりビックリしてた』
その声優の名前を聞いた所、亜豆美保、というらしい。てか、亜城木の『亜』と関係するとか?……いや、考えすぎだな。
『どこかに行くのは良いけど、吉田さんとの打ち合わせは大丈夫?』
「そこは問題ない。吉田さんに《1週間休みを下さい。》と言ったら休める事になったよ。やっぱ言ってみるものだな」
吉田さんの話だと、《2年間ほぼ休みがなかった事を考えると妥当だな。……よし、柏木君は今から1週間休みだ。羽を伸ばして来なさい》という内容だった。
『じゃあさじゃあさ、私、水族館行きたいな!』
「ああ。谷草北にできたっていうあれか」
『うん。どうかな?』
「いいぞ。駅で待ち合わせでいいか?」
ここから谷草北までは、約30分位だ。てか、俺はVネックにパーカーを羽織り、スキーニパンツっていう服装なのだが、時間が惜しいのでこれで行こう。
ともあれ、駅まで歩いてから改札を潜り、電車に乗り谷草北駅へ向かった。
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谷草北駅の改札を出て、駅の端側でスマホを弄っていたら、「おーい」と言って加奈が到着した。
加奈は、白のワンピースにふわふわしたコートを羽織り、茶色のブーツといった服装である。……てか、何か気合入ってるのは俺の気のせいか?
「お待たせ。待った?」
「うん、待った」
加奈は『待ってない。今来た所だ』って言って欲しかったなぁ。と呟く。いやね、俺にそういうのを期待しないでくれ……。
「で、どうかな?」
加奈はその場で一回転する。
「綺麗綺麗―。世界で一番可愛いよー」
完全に棒読みの俺である。
「……もう、適当すぎだよ。ま、翔太君だし、こうなるのは知ってたけど」
ともあれ、歩道を歩き俺たちは水族館目指す。ちなみに、俺が車道側である。
水族館に到着し、俺たちは大人2人分の入場料を支払ってから、水族館内部に入って行く。入ったすぐには、大水槽があった。そこの水槽では、沢山の魚たちが泳いでいた。
「わあ、凄い綺麗」
「まあそうだな」
ちなみに、水族館での料金は全て俺持ちだ。軍資金も、財布の中には10万円程入っている。てか、通帳には大凡9000万位金が入っている。『漫画家って凄ぇ……』と思ったのが懐かしい。
ともあれ、大水槽を背後にして、スマホで自撮りをする。
「ほら、もっとくっついて」
俺と加奈は、頬と頬が当たりそうな距離だ。
「……いいけど。近くないか?」
諦めた俺は、スマホの画面に入るように加奈と密着する感じになる。
「はいチーズ」
写真を撮り終わりスマホを見て見ると、面倒くさそうにしてる俺と、満面の笑みを浮かべた加奈が映っていた。
「うん、良く撮れてる。あとで待ち受け画像にしよう。翔太君もお揃いにしよう」
「いや、お前だけなら兎も角、俺がこれを待ち受けとか恥ずかしすぎるから。見られたら羞恥に駆られちゃうから。………………はあ、わかった。あとで送っといてくれ」
はい、彼女の『駄目、かな?』の上目遣いには敵いませんでした。まあ、見られなければいい事だし、問題ないか。てか、『やった!』って喜ぶ加奈さん。
写真を撮り終え案内図を見ていたら、『絶景、クラゲトンネル!』という場所を見つけた。で、気になった俺たちはその場所へ向かう。
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トンネル内部に入ると、そこはクラゲに四方を囲まれている感じだ。
「空間全体にクラゲの集団って感じだな」
「何か、刺されちゃいそうで怖いかも」
「それも、このクラゲトンネルの魅力でもあるんじゃないか?クラゲと一緒に泳いでる感じでさ」
「う、うーん。何か違う気もするけど、そうだね!」
「いや、どっちだよ……」
次に向かったのは、海の生き物と自然ゾーンという場所である。
そこの水槽には、緑に囲まれ、海老や熱帯魚が泳いでいた。水草から気泡が浮かび上がってるという事は、光合成で発生した酸素だろう。いや、たぶん、知らんけど。
「いつも思うんだけど、よく小魚たちは食われないよな」
「そうならないように、ちゃんと飼育されてるんだよ……たぶん」
お、おう。たぶんなのね。まあ確かに、断言できるものじゃねぇしなぁ。
とまあ、水族館と言ったら醍醐味であるイルカショーである。俺たちは開演前に入る事で、前列を確保しそこでショーを見る事になった。……てか、始まったはいいが、水飛沫が凄い。
『それでは、観客の皆さまから、この子に餌を上げて欲しいと思います。……それでは、前列のカップルさんお願いします!』
指名されたのは、俺たちであった。てか、傍から見たらカップルに見えるのね。まあ、嫌な気はしないけど。
ともあれ、俺たちは壇上に上がり、係員から魚を貰う。てか、でけぇ魚だ。
『では、お願いします』という言葉を受けて、俺が投げてから加奈が魚を投げた。そしてイルカは大ジャンプ。あれ、前席に居たら完全にずぶ濡れになってたね、うん。
イルカに餌をあげ終わった所で、俺たちは壇上から客席に戻った。とまあ、このようにしてイルカショーを楽しんだ俺たちであった。
水族館の最後は、お土産売り場である。
「翔太君。ペアのキーホルダー買わない?」
「ペアねぇ。ま、いいけど」
加奈が指を差したのは、対になっているイルカとヒトデが象ってあるキーホルダーある。なるほど、あれが気にいったのか。
ともあれ、俺がキーホルダーを取り、家族とお世話になっているジャック編集部に、お土産のクッキーを購入する事にした。んで、会計を済ませた俺たちは、水族館から出たのだった。
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俺は袋の中から、ペアキーホルダーのイルカの方を加奈に渡し、俺はヒトデのキーホルダーを取ってからスマホにつけた。
「大事にするね」
「ああ。期待してる」
……てか、何に期待してるの俺。まあいいか。
ちなみに、外は夕焼けがかかっていて、良い時間の頃合いである。
「んじゃ、帰りますか」
「うん、帰ろっか」
歩道を歩いていたら、加奈が口を開ける。
「今日はありがとう、楽しかったよ」
「いや、俺の方こそ良い息抜きができたよ、サンキュ」
夕焼けの空の下、俺たちは帰路に着いたのだった。
時系列が狂うかも知れませんが、そこはご了承をm(__)m
次回も頑張りますね(^_^)/~