~波木歩夢、仕事場~
俺は仕事場のソファで吉田さんと対面に座り驚愕していた。
「
「ああ。2位との作品に、200票以上の差を見せつけてな」
……他の漫画家さんにも言えるかも知れんが、俺、新妻君に宣戦布告されている気分なんだが。
おそらく、
「僕の予想なんだが、新妻君のこれは、柏木君へのメッセージなんじゃないか?」
吉田さんが、右手を顎に当て唸る。
「でしょうね。きっと新妻君は俺に、『この漫画であなたから1位を奪います』っていうメッセージだと思います」
そしてほぼ確実に、
「あと俺の勘ですが、亜城木君たちが何かを仕掛けてきそうで、ある意味怖いんですよね」
吉田さんは「亜城木君か」と頷く。
「亜城木君たちはこういう状況ほど、力を数段増してくる説もあるからなぁ」
吉田さんの言う通り、亜城木君たちはタントをやめる条件をクリアし、新妻君たちに並んだ
「たぶん、新妻君もそこは意識しているでしょうね」
「そうだろうな。新妻君も、亜城木君たちの今までのことを鑑みて、今後の方針を固めるだろうな」
「ですよね」
吉田さんの言葉に同意する俺。もちろん、福田さんたちのことも意識しておく必要もある。
ともあれ、吉田さんと俺は自身の漫画のことに話を切り替える。
「ところで柏木君、僕が原稿を見た限り1位は継続できそうだが、柏木君的にはどう映る?」
腕を組む俺。
思考錯誤をして原稿を上げたが、物語の失速感は否めないだろう。
「……うーん。○○編が終わるので失速感が否めません。なので、もし新妻君
でもまあ、CROWの記録塗り替えはできたので満足感もあったりする。
「そうか」
きっと吉田さんは、俺の口から今後ダブルダンクがどうなるのかを聞きたかったんのだろう。
ともあれ、吉田さんは俺から受け取った原稿を茶封筒に入れ、「では、失礼する」と言って仕事場を後にし、打ち合わせが終了したのだった。
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私服姿の私は、変装の為帽子被り、伊達眼鏡かけ、亜豆美保ちゃんを待っている。今日は2人で買い物なのだ。
「遅くなりました」
そう言ったのは、待ち合わせ場所へ到着した美保ちゃんである。美保ちゃんの私服姿を一言で言えば、天使のワンピース少女と言った所、かな。
ともあれ私は「全然待ってないよ」と美保ちゃんを見て微笑む。
「じゃあ、行こっか」
「はい!」
美保ちゃんと改札を潜り電車に乗ると、目的の駅である北矢草駅で下車すると、再び駅のホームを通って改札を潜ると数分歩くと、目的地であるデパートへやって来た。
この場所は、前のデートで翔太君と訪れた場所である。
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2階に到着し、目的の場所である文具店に到着する。
この文具店には、私と美保ちゃんが購入したい物があるのだ。
「うん。これにしよっかな」
私が手に取った物は、青を基調とした万年筆だ。
美保ちゃんは少し離れた場所にある、黒色を基調にした万年筆を手に取る。私が選んだのとは違うメーカーだ。
ちなみに美保ちゃんは、頑張っている真城君にサプライズとして物を贈りたいということ。
「私はこれにします。……真城君、喜んでくれるかな?」
美保ちゃんは、不安げに呟く。
ちなみに真城最高君は、美保ちゃんの約束の男の子である。てか真城君は、美保ちゃんからのプレゼントなら小躍りする程喜ぶと思うんだけど。
「大丈夫だと思うよ。てか、男の子は単純だから」
「そ、そうなんでしょうか。でも、喜んでくれると嬉しいです」
そう言った美保ちゃんは、とても幸せそうな表情だ。
「加奈さんも、柏木君にプレゼントなんですよね?」
「そうだよ。でも翔太君、自分の誕生日を忘れてそうなんだよね」
いや、きっと忘れてるよね、翔太君。
ともあれ、私と美保ちゃんは会計をし、プレゼント用に包装して貰ってからお店を出るのであった。
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私と美保ちゃんがデパート内の店舗を見回った所で、丁度いい時間になったので、帰宅することになった。
駅までの道程の途中で、美保ちゃんが口を開く。
「あの。加奈さんと柏木君、プロポーズってどちらからなんですか?」
「
「一応、ですか?」
美保ちゃんはそう言って首を傾げ、私は「そ」と頷く。
だって翔太君、あの時口を滑らせた感じなんだもん。まあでも、かなり嬉しかった私だけど。
「美保ちゃんは、真城君から?」
美保ちゃんは、頬顔を朱色に染める。
「は、はい。――『夢が叶ったら、結婚して下さい』って直接言ってくれました」
私は「そっか」と頷く。
「そこで出来たんだね。美保ちゃんたちの夢が」
「はい。私が声優、真城君たちが漫画家として成功し、真城君たちの漫画がアニメになって、そのヒロインを私が演じ結婚する。という夢です」
それが叶うまで会わずに夢に向かって頑張る。という約束もあるということだ。
「そういえば、亜城木夢叶の『亜』って、亜豆美保の『亜』、かな?」
私は「ずっと気になってて」と、語尾に付け加える。
美保ちゃんは、恥ずかしそうな表情で、
「は、はい。亜城木夢叶の『亜』は、亜豆の『亜』です。それに、私の文字をペンネームに入れてくれて嬉しかったです。ずっと一緒に居られるような気もして」
美保ちゃんも「じゃあ」と言ってから、
「波木歩夢の『波』は、加奈さんの
「うん。『波木歩夢』ってペンネーム、私が考えたんだ」
私は「安直かも知れないけど」と言って、ふふん、と胸を張る。
翔太君がデビューする時、翔太君はペンネームが面倒くさいから本名で記載しようとしたんだけど、私がペンネームの方がいいよ。って言ったんだっけ。
でもその変わり、翔太君は『んじゃ、加奈が付けてくれ』って、私に丸投げでもあったんだけど。
「そうなんですか。でも、加奈さんたちの『名字』に、『歩む夢』。とっても素敵だと思います」
「ありがと。――美保ちゃんたちも『名字』に『夢を叶える』、素敵だと思う」
私と美保ちゃんは、ふふ、と笑う。
やはり、ペンネームの元?が同じだと、笑いが出てしまう。
「あ、美保ちゃん。夕飯、私たちの家でどうかな?谷草北からなら、1駅だし」
美保ちゃんは、ぶんぶん、という勢いで両手を振る。
「わ、悪いですよ。それに、加奈さんたちは結婚しているんですし」
「大丈夫大丈夫。翔太君も、その辺の空気は読むだろうから」
てか、結婚しても何も変わってない私たちでもある。
結婚は、幼馴染の延長線上って感じもするけど。
「じゃ、じゃあ。お邪魔してもいいでしょうか?」
「うんうん。久しぶりのお客様だから、お料理張り切っちゃうぞ!」
美保ちゃんは「大げさですよ」と言ってから、
「私も手伝います。一緒に作りましょう」
それから美保ちゃんと私は電車を乗り、目的の駅で下車して私の自宅に向かうのだった――。
美保ちゃんが欲しかった万年筆は、加奈ちゃんが紹介したデパートにしか売ってない設定です。
美保ちゃんと加奈ちゃんは親友設定ですけど、美保ちゃんが敬語なのは、加奈ちゃんの方が1つ年上だからですね。