陰陽師になりました。   作:ラリー

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サブタイトル書き忘れた様なので書きました。


9話 下

『ほう……まさか目覚めて始めに見たのが貴様とは…実に忌々しい』

 

「なに?」

 

異形は俺を見て言葉のとおり忌々しそうな表情で俺を見る。

何だ?こいつは俺を知っているのか?

 

『まさか…覚えていないというのか!?

あの小僧と共に我が肉体を滅ぼした事も!!』

 

「…あの小僧?」

 

誰だ?もしかして晴明の事か?

しかし、俺はコイツと会った覚えなんてまるでない。

 

『まあいい。覚えていようがいまいが関係ない。

貴様を殺し!あの小僧の血筋の人間、全てを食らってくれるわぁ!!』

 

「よく分からんが、お前はここで滅ぼす!!」

 

真正面からこちらに向かって来る奴に、右手をかざして炎を浴びせる。

しかし……。

 

『ブラァアアアアアアアアア!!』

 

「なに!?」

 

奴の咆哮と共に俺が奴に浴びせた炎が掻き消える。

 

『貴様の炎など、恐れるに足らぬわ!!』

 

「っち!!お前等、ここは俺が食い止めるからさっさと逃げろ!!」

 

「でも、夏目が……」

 

俺の炎が効かない事が分かり、後ろに居る春虎たちを守れないと思った俺は

囮となって逃がす事にしたが、土御門 夏目が気になるのか誰一人逃げ出そうとはしない。

 

「……一瞬だけ隙を作る。その隙に乗じて逃げるか、土御門 夏目を助けるかはお前達の

自由だ」

 

「……ありがとう」

 

春虎に礼を言われると同時に右手に炎を灯し、異形の真上に飛ぶ。

 

『バカが!ワザワザ我に食われに来たか!!』

 

奴が自分の真上に飛んだ俺を見て、大きく口を開き俺を食らいつこうと

牙をむき出しにして襲ってくる。

俺は奴の口めがけ、さっきと同じように右手をかざす。

しかし、さっきと違い高温の白い炎蛇を奴の顔に叩き込む。

 

「食らえ!!」

 

『グアァアアアアアア!!』

 

蛇の形をした白い炎は奴の顔面に直撃した事で、奴は苦しみの声を上げる。

よし!このまま一気に……。

 

『オノレ、オノレ、オノレ、オノレ、オノレ、オノレ、オノレ、オノレ、

オノレ、オノレェエエエエエエエエイ!!!! 』

 

「何!?」

 

俺が一気に畳みかけようとした瞬間、奴は自身の瘴気を全方位に放出した。

ヤバイ!!これほどの瘴気をあいつ等が受けたら……。

最悪の展開を想像してしまいながらも、春虎たちが恐らく居るであろう、土御門 夏目が

倒れていた場所に目をやる。

 

「「「急急如律令(オーダー)!!!」」」

 

春虎たちを視線で捕らえると、夏目と眼鏡に例の少女の三人が妖気を防ぐために結界を張っていた。

そこそこ強力な結界だが、襲い掛かってくる妖気を防げるかどうかは五分五分だ。

 

 

☆☆☆

 

 

ー異形の物である窮奇が復活する少し前の事ー

 

 

「晴明、更衣室で何をするつもりだ?」

 

「ん?目立ちたくないから変装をしようかと思ってね」

 

変質者な中二病をボコボコにしてやろうと決心した俺は、今後の事を考え

正体がばれないように変装する事にしたので男子更衣室に隅に置かれた着物『式服』を身に纏い

備え付けだと思われる狐の仮面に認識を阻害する術を施した後、顔に付ける。

これで、俺だと認識される事はない……たぶん。

しかし……近くにあった鏡で自分の姿をみる。

うん、何所からどう観察してもりっぱな不審者だ。

 

「さて、準備も出来たから行こうか?」

 

と、意気込んで『兎歩』で呪練場に移動してみたものの……。

 

なんぞこれ?

足で歩いてくのが面倒だからと霊脈を利用して空間移動を行った罰があたったのか?

俺の目の前には巨大な瘴気の波が迫っていた。

って、こんなのが直撃したら体調不良じゃ、済まないぞ!!

 

「オンハンドマダラ、アボキャジャヤニソロソロソワカ!!」

 

一般人なら死んでしまうのではないかと思うほどに濃い瘴気を真言により

発生した結界により防ぐ。

やれやれ、なんとか術が間に合ったか。

しかし、俺のような塾生でも防げたんだ、意外とたいした事は無いみたいだな。

やはり三流で中二な術者……。

 

 

『この霊力……まさか貴様……』

 

 

瘴気が晴れて、視界がよくなった後、目の前には若○ボイスのでっかいタイガーが居た。

って、窮奇やん。メッチャにらんでるやん。

でも、不思議と危機感はない。

見かけだけなのか?

何か言ってるみたいだけど、とりあえず……。

 

「朱雀、太陰、六合、勾陣……やれ」

 

『おう!』

 

☆☆☆

 

 

突然、俺達の目の前に現れた狐の仮面を付けた男。

夏目たちの張った結界よりも強力な結界を張り、俺達を瘴気から守った?のか?

とりあえず味方だと思う男は結界の次に名前を呼ぶと四人の男女が現れ、

巨大な虎のバケモノに向かって行った。

一体どうなってるんだ?

 

「はっ!」

 

「フン!!」

 

「えーい!!」

 

「はぁ!!」

 

掛け声と共に巨大な大剣を持って虎の翼を切りつける赤い髪の男。

さらに、槍?のようなものを虎の右前足に突き立てる長髪の男。

そして、竜巻を発生させて虎の顔面を攻撃するコンと同じくらいの女の子と

長身の女性が短剣二つを両手で構えて虎の胸をX印のように切り裂く。

 

『グォオオオオオオオオ!!』

 

恐ろしいバケモノだと思っていた虎が一方的に四人の男女になぶられていく。

すげぇ……。

目の前の凄まじい光景に俺以外の奴等も驚いた表情を見せる。

 

「天神地祇、辞別けては産土大神、神集獄妖官神々、この霊縛神法を助け給え」

 

『……オノレェ』

 

札を構え術の詠唱を始める男を見て虎のバケモノは男に恨みの言葉を血と共に吐く

 

「困々々、至道神勅、急々如塞、道塞、結塞縛。不通不起、縛々々律令」

 

『オノレェ!!法師ぃぃぃいいいいいいい!!!!!』

 

 

「万魔拱服!!」

 

 

男の足元に五芒星が強烈な光と共に出現し、辺りを浄化し始める。

そして……。

 

『ブラァアアアアアア!!』

 

虎のバケモノは消し飛び、跡形も残らずこの世界から姿を消した。

 

☆☆☆

 

 

「やはりそうであったか……あの残りカスを修復して仮面に押し込んでおいて

正解じゃったな……。晴明よ、夜光が死んで貯まった鬱憤を晴らさせてくれよ?」

 

 

 


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