陰陽師になりました。   作:ラリー

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17話

ー武視点ー

 

卒業試験が終わったら、京子とデートの約束をしたり、

ついでに春虎がBL、ロリコンとさまざまな称号を得るさわがしい日々が過ぎていく中。

 

予知夢と思われる夢を見た。

予知夢とは高い霊能力と技を持つ陰陽師でも、見ようとして見ることはできない

とても稀な現象である。

内容は主に、自分の身に起こる不幸…もしくは自分に近しい人間の不幸の二つに分けられる。

 

さて、ここからが問題だ。

なんと俺はこの予知夢を見てしまったのだ。

内容は断片的な物だったが、起これば大変な事態になる。

 

始めは、霊災を修祓する学生達に学生を見守る先生達。

おそらく、実技の進級試験。

生徒達の中には春虎や冬児と見知った人間が居た。

 

次に四足歩行のバケモノ。

プロの講師達が居たので信じたくはないが……修祓に失敗したのだろう。

 

そして、バケモノの次はグラサン装備のヤンキー。

額にバッテンの刺青をしていたので、かなりヤバイ奴だと思う。

霊災を暴走させた犯人だろうか?

 

そして最後に……瓦礫に潰されたメガネ君と京子ちゃん……霊災の影響で

暴走する冬児。

まさに地獄絵図だ。

悪夢にも程がある。

しかしだ、もしこれが本当に起こったとしたら?

考えたくもないね!

絶対に阻止してみせる!!

 

幸い、俺の卒業試験は終わったし、1年生の進級試験までには時間がある!

準備をしつつ、1年生の実習試験の内容を確認しよう。

霊災修祓でなければただの夢で済まされるのだから……。

 

しかし……俺の運がいいのか悪いのか………春虎の情報によると1年生の実習試験は……

 

 

霊災修祓だった。

 

 

ー春虎視点ー

 

数多の誤解もようやく解け、日常を取り戻した俺だったが

あらたなトラブルに襲われていた。

そう!進級試験だ!!

今までの努力が点数として現れ、俺が2年に上がれるかが決まる重要な試験である。

なのに……。

筆記試験は惨敗。

夏目に散々しごかれたのに……。

だが、嘆いても仕方がない。

今日の実技試験で挽回できれば……進級出来るはず…たぶん。

 

「では…これより進級試験を始める!全員心して事にかかるように!」

 

『はい!』

 

先生の試験開始の言葉と同時に小さな霊災が発生し、事前に割り当てられた結界班

が霊災の周りを結界で覆い、霊災が次のフェイズに移行しないようにする。

 

そして、結界が張られた次の段階として俺達、修祓班が霊災の修祓を開始する。

が……。

 

「おい!強すぎるぞ、お前っ!もうちょっと弱めろって!!」

 

「ちょ!?春虎君、今度は弱すぎ!ちゃんと出力を安定させて!」

 

「何やってんだよツッチー!ずれてるだろ!!」

 

何故か来る、俺への非難の数々。

 

「おれかっ!?全部おれのせいかっ!?お前ら自分のミスまで俺のせいにしてないか!?」

 

周りの非難の集中を浴びた俺は作業を思わず中断して周りの奴に言い返す。

あ…やべっ!出力が…。

 

「何やってんの、バカ虎!!」

 

「やべっ!!」

 

俺が作業を中断した事により霊災の出力が一瞬だけ激しく乱れるが

隣に居た天馬が俺の前に出て、手印を結ぶ。

 

「臨!兵!闘!者!皆!陣!列!在!前!」

 

天馬のフォローのお陰で霊災は安定した。

危ない所だった……天馬には感謝だな。

 

「ありがとう天馬」

 

「…春虎君。お礼は後でいいから、前に集中して」

 

「お、おう。マジすみませんでした」

 

「百枝すげぇ!!」

 

「一気に安定したぞ!天馬ナイス!!」

 

「ただのメガネじゃなかったんだね!!」

 

試験に集中しているのせいだろうか?なんか、天馬が怖い。

怖がっている俺とは対照的に、クラスメイト達は天馬のファインプレーに称賛の言葉を

送っていた。

まあ、霊災も安定したし、このままいけば実技は安心…ん?

なんだろう?なんか違和感が……。

 

「あれ?おい、なんか変じゃないか?」

 

安心して作業を再開する俺だったが、霊災に先程はなかった違和感を感じる。

しかも違和感を感じているのは俺だけじゃなく他のクラスメイト達にも感じているらしい。

一体何が起こったんだ?

 

「絶対おかしいよ、これ!!」

 

「霊気が強くなってる!!」

 

ヴオオオオ!

 

「!?」

 

しばらく違和感を感じていると、霊災の霊力が強くなりやがった!!

瘴気も強くなって……かなりヤバイ状況だ!!

 

「結界班は、現状を維持!!修祓班は結界の外に出ろ!!」

 

先生が指示を飛ばし、結界の外へと退避する俺達、修祓班だったが……。

 

「百枝!!何をしているんだっ!!今すぐ結界の外に出ろ!!」

 

「天馬っ!?何やってんだよ!!早く逃げろ!!!」

 

霊災が強くなる中、一人佇む天馬に逃げる様子はない。

先生の言葉にも反応を見せずただ、目の前の霊災を見て天馬は……。

 

「この声は我が声にあらじ。」

 

パン!

 

拍手の一回で霊災の出力を安定させ…

 

「この声は、神の声。まがものよ、

禍者よ、呪いの息を打ち祓う、この息は神の御息。」

 

溢れ出る瘴気を散らし。

 

「この身を縛る禍つ鎖を打ち砕く、呪いの息を打ち破る風の剣。

妖気に誘うものは、利剣を抜き放ち打ち祓うものなり。」

 

跡形もなく霊災を消滅させた。

 

「て、天馬?」

 

霊災を単独で処理して見せた天馬。

皆、天馬の凄さに唖然としている。

だけど……目の前の天馬が俺の知っている天馬とは違う気がする。

もしかしたら実力を隠していただけかも知れないが……俺は

そう感じていた。

 

唖然と、皆が天馬を見つめている中、どさっ!と何かが崩れ落ちる音が聞こえた。

音の方を見てみると、頭を両手で抱え、地面に崩れ落ちている冬児の姿が目に飛び込んできた。

 

「おい…。全員…ここから離れろっ!いま…すぐ…に…」

 

「冬児!!?大丈夫か!?おい!?」

 

苦しみながらも、この場から離れるように訴える冬児の傍に駆け寄る俺。

声を掛けるも、聞こえるのは冬児の苦しむ声だけ。

返事をする事も出来ないのか!?

 

「ああぁぁぁぁああぁあああああ!!」

 

「冬児!!?」

 

苦しみのあまりに断末魔の叫びを上げる冬児。

まさか、このまま鬼に飲まれるんじゃ……。

そんな最悪の未来を考えていると大きな破砕音と共に一体のバケモノが姿を表した。

おいおい!こんな時にそれはないだろう!!

 

「フ……フェーズ3……『タイプ・キマイラ』――――『鵺』!?」

 

 

 

 

 


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