陰陽師になりました。   作:ラリー

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21話

 

ー大友視点ー

 

「なんで鏡のガキが絡んできてるんですか!?」

 

電話の向こう側にいる僕の元上司…天海(あまみ)大善(だいぜん)。

禅次郎から事の顛末をきいた僕は、先程まで一緒にいた彼に

問題児について文句を叩き付けた。

 

「バカヤロウ。鏡は独立官だぞ?修祓で鉢合わせることだってあるだろうよ。

ちなみにだが、被害が出ているのは陰陽塾だけじゃねぇんだからな。

ニュースでも出てるだろ、都内でも負傷者や霊障を負った者だらけだ」

 

……。

 

「しかも霊災はまだ終わってねぇ…確認された鵺は四体。

鬼門と裏鬼門に二体ずつだ。

このうち上野と品川は仕留めたが、残り二体は逃亡し都内に潜伏している」

 

鏡だけじゃなく、他も逃がしたやて!?

 

「霊視官が全力で探しているが……見つけたとしても相手は飛行型。

捕捉は困難だ」

 

「ヘリを使えばええでしょう?」

 

「鵺の機動性にはおっつかねぇよ。そもそも関係各所に許可を取るだけでも手間が掛かる

上に『D』が関係しているかもしれねぇんだ……人員もそこまで出せねぇ」

 

確かに『D』を警戒する為に、人員を分ける必要がある。

だが……。

 

「そんなん手が空いてて無駄に顔が広い部長がやればええやないですかっ!?」

 

そう、この無駄に顔が広い人なら関係各所もすんなり許可を通してくれる可能性が高い。

部長に動くように催促する僕。

 

「なんだとテメェ!このクソ忙しい中電話かけてきやがった分際で!!

……まあお前を『D』案件の協力要請の為に呼び出した最中にこんな事になったのは

悪いと思っている。

呪捜部の……というより、俺のミスだ。すまねぇ」

 

「それは……」

 

……そう言われると、僕も大人気なかったも知れないと思えてくる。

いや、冷静に考えれば塾生から離れた自分も責任がある。

 

「…古巣の用事にノコノコ付き合ったんはあくまで僕の判断ですからね。

その点を責めるつもりは……」

 

「おう?そうか、ならいいや」

 

……は?

一度冷静になった感情がジジイの一言で噴火した。

 

「ってこらジジィ!!なんやその態度は!?人をただ働きさせときながら……」

 

「ただ働き?変だな…美代ちゃんからはギャラの請求が……」

 

「なんやて!?あのごうつくババァ!!!

 

あのクソババァ!!

部長の一言で怒りの矛先を一瞬で、笑顔でほくそ笑んでいるであろうクソババァに

むける。

なにが塾生の為ならお金は関係ないや!!帰ったら請求したる!!

今まで苦労させられた分もまとめて請求したる!!

僕がババァへの復讐に燃えていると電話越しからジジイの笑い声が聞こえてた。

 

「クククッ。美代ちゃんらしいぜ……とにかくだ、現場で何人か双角会のメンバーを

しょっぴいてる。だが、肝心のリーダー格や『D』はまだだ。」

 

「たしか比良多(ひらた)君が言うてた六人部(むとべ)千尋(ちひろ)ですか?」

 

「確証はまだないが鵺を逃がす手助けをした『妨害者』がクサイな…。

なんでもその場で霊脈を操ったらしい…手口が大連寺(だいれんじ)と同じだ。

旧御霊部は鬼気祓いの儀式で霊脈の扱いには詳しいからな。

まあ、そういうわけで俺は今とても忙しい、愚痴なら他にしときな…ああ…

だが、ちょうどお前にやれる情報が二つある。

一つは、例のメガネの少年だが…陰陽塾のシャワー室で無事に見つかった

縛られていただけで、ケガはないそうだ」

 

「…そうですか」

 

心配していた自身の生徒の情報に安心する。

本当に無事でよかった。

 

「二つ目だが……つい半時間前の決定だ。

もう、美代ちゃんの方に話は行っているはずだが……今回の霊災に対応するにあたり

祓魔局の修祓司令室は二年前と同じ作戦を立てたようだ」

 

ん?どうゆうことや?

なんで霊災に対応するために陰陽塾が関係するんや。

 

「…なんです作戦て?しかもなんで陰陽塾にその話が……」

 

僕が作戦について部長に問うと、部長の重い声が電話から聞こえた。

 

「二年前…祓魔局は動的霊災をおびき寄せる為に『餌』を使った。

動的霊災が好むのは上質の陰の気……『竜』だ」

 

「り…竜?」

 

陰陽塾に竜……まさか。

悪い予感と緊張でのどが渇く。

 

「二年前…土御門家当主で『竜』の主である土御門夏目の父親に協力を要請した」

 

「ちょ…ちょっと待ってください!いま竜を持っているのは……」

 

「ああ、土御門の竜を再び利用する為……祓魔局はその主…土御門家次期当主、土御門

夏目に協力を要請するそうだ」

 

そんな!!優秀ではあるがまだ彼は学生なんやぞ!!

あのバカ司令部は何考えとるんや!!

そんな作戦を聞いたら彼の父親が激怒して協力なんてとても……。

 

「ちなみに現当主である土御門夏目の父親は……すでに許可をだしたそうだぜ?」

 

部長の言葉を聞いた僕はケータイを地面に叩き付けたい衝動に駆られたが

乱暴に通話を切るだけに留めて、その場から駆け出した。

 

 

 




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